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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
42/473

41 地球の守護者たちと製鉄工場

 午後11時25分


 諸毘志製鉄工場前


「ちょっと早いがここで待機な」


 スーツ姿の男が後方から付いてきた仲間に話しかけた。


「・・・またずいぶんデカいな~。

 これサイトで見たのより大きいんだけど?」

「まあ、実物を見たら実際こんなもんでしょ。

 サイトのだと遠近感は判らないもんだし・・・」

「そうよね~。

 この辺りってかなり広いって聞いてるし」

「ま、どっちにしたってここで合流してから行動開始なんでしょ?」


 3人の少年少女が話し出す。


「ほらほらあなた達。話すのは結構だけど、``少し``はリーダーの話を聞かないと」


 秘書然とした女性が注意する。


「・・・今お前ニュアンスおかしかったよな?」

「何がでしょうか?」

「いや、だって``少し``はで立ててなかったっけ?」

「気のせいじゃないですか?」

「いやでも確か「気のせいでは」・・・・・」


 一瞬の間が生まれる。


「ハハハハハ、まあ、少し神経質すぎるから、聞こえた気になってる被害妄想なんじゃないの?」

「・・・ひどい言い様だな、被害妄想って・・・」


 ラフな私服姿の女性がスーツ姿の男に楽しそうに間に入った。


 そんなこんなと話し合っている中、次々と人が集合し始める。


「あら、珍しい。

 芽木白探偵事務所めぎしろたんていじむしょの皆さんが先に着いているなんて」

「ホントだ。

 いつもは到着するのがギリギリなのに今日はどうしたんですか?」

「・・・俺だってたまには早く着くことだってあるさ」

「いつも準備がどうとかでギリギリばかりなのに?」

「向かう現場が分からず、方向音痴なんだとばかり・・・」

「最近はマップによるナビだって優秀なんだ。

 そうそう、道に迷ったりするかよ」


「・・・よく言いますね。

 あんなにデカい目印があるのにどうやったら、反対方向に向かうことになるのか・・・」

「それを言ったらこの前だって、芽木白さんが教えてくれた場所、全く関係ない廃墟に行く方向だったんですよ?」

「はぁぁ、もともとの方向が山道なのにどうして、町の方向に行くよう誘導したんだか・・・」

「単純に、地図と私たちの位置が判らなかったんじゃない?読めなくて」

「ああ、確かに・・・」

「それなら納得だ」


「おい、そこ、コソコソ何を話してるんだ?」


 芽木白と呼ばれたスーツ姿の男は仲間の5人から無視され、ヒソヒソと話し合いを続けていた。


 午後11時40分


 更に工場に向かって歩いてくる複数の人の姿が見えてきた。


「来た、東京支部のもんだ」


 足音と誰かの声に全員が一斉に黙り、真剣さが出てくる。


「遅くなりました。

 防衛界誓(ぼうえいかいせん)第4支部から来ました、木下といいます」

「同じく岡部です」


 そう言ってスーツ姿の男女が現われ一礼した。


「どうも、柴垣正所(しばがきせいしょ)の代表の柴垣 勉(しばがき つとむ)です」


 一人のスーツ姿にロングコートを羽織っていて、手には白い布袋を着けた、若めの執事さんのような恰好をした、バトラーの男性が挨拶を交わす。

 続けて、もう一人の着物のようなキレイな服で着飾った、しなやかそうな女性が挨拶した。


「凱洞聖錬所《がいどうせいれんじょ》の代表をしており凱洞 花蘭(がいどう からん)と申します。

 以後お見知りおきを・・・」


 2人が挨拶を交わした後、芽木白が気楽にあいさつした。


「お~う、木下。・・・は、お前が来たのかよ」

「彰隆、お前の所のせいで俺が駆り出されることになったんだよ」

「ははは、まあそういうなよ。それに俺だって、結構神経使ってんだからな?

 ウチの子たちはヤンチャでなー。俺もそっちに謝罪しに回ったんだから、許してくれよ。

 ねー、岡部ちゃんはそう思ってくれるよね~?」

「・・・もっと苦しんでください」

「ひどっ!」

「俺、神経質なトコがあるからとか言って。

 傷ついた心を慰めてほしいな~と私をお酒に誘っておいて、よくそんな軽口が出てきますね?

 セクハラする気満々の人に同情なんて欠片もありません」

「お前・・・それって・・・ただの犯罪じゃ・・・」

「ちょ、ちょっ待ってくれ、誤解だって。

 ジョークを交えた、ちょっとしたお誘いだって」

「別の部署にいる私の友人が同じような事を言われ誘われたって聞いたことがありますけど・・・」


 ジトっとした目で岡部というスーツ姿の女性が芽木白を見る。


「・・・お前は・・・こういうところは治ってないのか?」

「・・・」


 芽木白は岡部の指摘に冷や汗を搔きまくりながら目線を逸らした。

 後ろの方で同じ事務所の仲間からもため息が漏れた。


「あのー?・・・木下さん」

「ん?ああっ、ごめんね。

 こいつのバカさにすっかり忘れるところだった」

「ちょ、浩太~、お前までひどくねえか?」

彰隆(あきたか)お前は黙ってろ。

 ・・・柴垣さん、凱洞さん紹介します。

 今回の仕事のサポートを務めることになる3人になります」


 紹介され、3人の巫女服を着た、女の子が前に出てきた。


白本 茉莉(しらもと まつり)です。

 よろしくお願いします」


 しっかりそうな感じの子が挨拶してお辞儀した。

 続いて二人も挨拶をした。


神橋 鏡花(かんばし きょうか)といいます」

寿 澪奈(ことぶき れいな)です」


 二人も倣って一礼した。


「3人共よろしく~」

「はぁぁ。黙ってろ」

「だから、俺に対してひどいって」


 二人の会話は昔ながらの付き合いからくる軽口のそれだった。


「バックアップは我々がしますので彼女たちのサポートの中、早めに処理、事態の収束をお願いします」

「・・・彼女たち自身は戦えるのでしょうか?」

「さすがにランクが高いとどうしようもありませんが、そこらにいる低ランクのモノなら自力で対処可能なメンバーを連れてきました」

「・・・分かりました。

 それで、今回の依頼内容は」

「東京支部が懇意にしている協会とコチラにいる3人の所属する組織から予知があったそうです。

 今夜12時前後この工場にて大規模な転移召喚が成され、モンスターが暴れだすそうです」

「・・・脅威は?」

「おそらく、一番強いモノは初段クラスになるだろう・・・と」

「ああ、なるほど。

 だから、こんな人数になったわけね」


 木下の話に柴垣、凱洞は真剣に聞き、芽木白は軽い調子で答えた。


「しっかし・・・これだけの人数って過剰過ぎない?

 俺、過剰って事に今とても敏感になってるんだよね~」


 少し離れた所からキッと睨む少女が見えた木下はわざと咳きこみ話を戻した。


「オッホン。

 ・・・これだけの人数が参加したのは、おそらく初段のモンスターが1匹。

 そこに取り巻きやその召喚に呼び出されるモノたちが最低でも100匹はくだらないという見解が出たそうです」

「ちょっと待ってもらえるかしら?

 さすがにこの人数では向こうの数に対して足りないんじゃないかしら?」

「・・・確かにそうですね。

 一番強いモンスターが初段だとしたら、最悪コチラの人数の約半数はその1体に参戦しなければなりません。

 それに・・・呼び出された他のモノ達の中にだって、強いモノがいると考えると・・・さすがに少ない・・」

「ご安心を、そのための巫女になります。

 この子たちが結界を張りこの工場の中に限定し、さらにそこからモンスターの位置を把握してもらいサポートの元、皆さんに討伐してもらう流れになっています」

「・・・なるほどー。

 じゃあ、彼女たちが隠れたりするモンスターを発見して、俺たちの討伐を効率よくさせるわけだ。

 それによるスピード解決を考えてるわけね」

「そういうことだ」


 木下は肯定し、周りを見ながら依頼を話す。


「現在この工場は政府からの連絡により、今は誰もいない無人となっている。

 出来る限り建物への被害は・・・避けてほしい・・・そうだが」

「無理だな」

「無理ですね」

「さすがに難しいですね」


 間髪入れず3人からの否定に木下は肩を落とした。


「浩太―、考えてもみろよ。

 向こうが俺たちの都合なんて考えてくれるか?」

「だよな~」

「・・・それに、この前の・・・この工場の支社でしたっけ?

 あそこもすぐには駆けつけられる者が居なくて・・・結果、建物が全焼してたじゃないですかー」

「・・・それを考えると私達で抑えても・・・どうしても、被害は出てしまいます」

「それを踏まえたうえで何か採算が取れたらよろしいのではないでしょうか?」

「採算・・・ですか?」

「はい。

 もし、我々だけでの討伐となりますと・・・少々の被害は覚悟の上なのでしょう?

 国にとっては・・・。

 そこから得られるものである程度は今後の発展に利益をもたらすとお考えになっているのではないでしょうか?」

「・・・」


 木下と岡部は黙っていた。


「そちらが求めているのは元手がより大きく手に入ること。

 モンスターによってもたらされる利益でしょう。

 困るのはそれが減らされることで、一番最悪なのは採算が取れず赤字で終わる事。

 被害を抑えたのは良かったが、それでも赤字に対しては清算しなければいけない。

 ・・・国にとっては痛手以外の何物でもない・・・ですよね?」


 芽木白と凱洞は納得と頷いた。

 柴垣の言葉に木下たちは大きく肩を落とした。


「・・・はい、ですからスピード討伐を、上は求めておいでなのです」

「でしたら、もっと同業者を呼んだ方がよろしいと思われるのですが?」

「現在他の方々も地方の都道府県へ展開しております。

 力のある大手になるとランクの高いモンスターの討伐に向かっていただいておりまして・・・。

 現在東京にいる組織の中で次に並ぶメンバーはここに居る皆さんだけになってしまいます。

 ですから、数が多く、被害も大きくなると予想されるこの工場をあなた方にお願いしております」

「つまり、俺たちのみで早く、被害少なく、利益を多く得る様に仕事を終わらせろ・・・と」

「・・・すまん」

「はあぁぁぁ。

 上は相変わらずか・・・まあいい、分かった。

 俺たちはとにかくこの数であたるってことで良いんだな?」


 芽木白の言葉に頷く木下。


「ま、どうせもうそろそろ始まるんだし良いんじゃない?」


 芽木白のメンバーの1人、ツインテールの活発そうな女の子古野宮 翼(このみや つばさ)があっけらかんと言った。


「ちょっと翼ちゃん、受け入れるの早すぎないか?」

「だってほっといても、もうそろそろ時間だし」

「え?」


 現在11時55分

 翼の言う通り、もう時間なんてのは残されてはいなかった。


「翼・・・あなたにしては、切り替えが早いじゃない。

 もっとそういう所、おりこうさんだと思ってたわ」

「あんたに言われたくないんだけど?」

「んもう~もうそろそろ始まるんだから翼ちゃんもケンカしちゃダメだよ~。

 ごめんね~澪奈ちゃん」

「なんで私が怒られるのよ!」

「うちの澪奈がごめんね翼さん。

 ほら澪奈ももうそろそろ始まるんだから集中して」

「分かってるわよ鏡花」

「茉莉先輩私たちは?」


 聞かれた茉莉は木下を見る。

 頷いた後、チームを発表した。


「色々すまないが時間だっ。

 今からチームを編成し、この子たちの結界が張られたのち向かっていってほしい。

 茉莉たちはそれぞれのチームに1人が入りサポートしてくれ」

「分かりました」


 聞いた3人は頷き、木下の話の続きを聞く。


「柴垣正所には茉莉が」

「はい」

「凱洞聖錬所には鏡花が」

「はい」

「そして、彰隆のチームの芽木白探偵事務所には澪奈が担当してくれ」

「わかりました」


 3人はそれぞれのチームメンバーに挨拶に向かった。


「皆さんよろしくお願いします」

「ああ、こちらこそよろしく頼む」


 茉莉は柴垣のメンバーに挨拶をしている。


「精一杯頑張ってサポートします」

「落ち着いて対処していこう」

「はい」


 鏡花も凱洞のメンバーと仲良くなれそうだった。


 問題は・・・。


「寿 澪奈です。

 よろしくお願いします」


 澪奈が芽木白のメンバーと挨拶する。


「いらっしゃい澪奈ちゃん。

 ま、見知った仲なんだし、気楽にいきましょう?」

「はい、楓花(ふうか)さん」

「澪奈さん、よろしくお願いします」

「こちらこそ、佳胡(けいこ)さん」

「っま、気楽によろしく頼むよ、寿さん」

「はい、斎藤さん」

「澪奈ちゃんよろしくね~」

「うん、よろしく來未(くみ)

「・・・・・」

「もう、翼ちゃん!」

「わかってるわよ・・・よろしく、澪奈」

「ええ、翼」


 少々、対立はあるようだが安心したと芽木白は思った。


「っよし!

 それじゃあ、この任務の間はよろしく頼むよ澪奈ちゃん」

「分かりました。

 出来る限りサポートしていきます」


 それぞれが話し合い向かう方角を決め、遠い所のメンバーはさっそく中に入った。


 続いて、2チーム目のメンバーが別方向に。


 そして、最後のチームメンバーが工場の中に入って行った。


「(・・・頼んだぞ)」


 木下と岡部は3チームの無事な帰りを待ち、工場の前で待機した。



 それとは別の場所からある男が1人、工場に潜入をしていた。





【十時影 純】 15才 人間?(ぽっちゃり)

 レベル 1

 HP 1 MP 1

 STR 1

 VIT 1

 INT 1

 RES 1

 DEX 1

 AGI 1

 LUK 1

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