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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
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413 人類の戦争

「ようやくこの時が来たか・・・」「ここからですよ、世界最後の審判は・・・。創世を担う大切な役目、しっかりと果たしましょう」「・・・ふふん♪ 2人ともやる気十分みたいだね~♪」


 映像で見せた玉座近くへと歩いて来るミキラルとアルタナル。彼等にレネッタは楽しそうに何度も頷く。


「助言通りにしたが本当に良かったのか? かなり不満が出たぞ?」「あぁうん、大丈夫大丈夫。たぶん、というか・・・きっとこっちに軍艦に乗った申し子が仕掛けてくると思うから。あぁーロクサーヌちゃん辺りはもしかしたらワンチャン単独とかありえるかも・・・」「魔力阻害はどうなりましたか?」「アイテムは作れなかったし、効かないだろうからこの島の機能頼りだね。だから手筈通りによろしく~♪」


 ヒラヒラと手を振って玉座前の階段を下りてくるレネッタにアルタナルは小さくため息を吐いた。


「そう思い通りにはいきませんか。それもまた神に至る試練・・・」「ふ、それはそれで喜びそうだな。奴らも不満だったら大陸に降りるだろうし」「その時はゴーレムちゃんを貸してあげるよ。流石に自力で下りるのは無理っしょ?」「どうだかな。シージッターやコンダート辺りなら問題なかろう」「マジ・・・?」


 数キロ以上の高さから申し子以外にそれが出来る可能性がいる事に流石のレネッタのちょっと引いてしまった。自分自身にそれほどの能力を持っていない為、データ基準となっていたのが原因だった。頭をポリポリと掻き、「直接データ集めときゃ良かった」とちょっとだけ眉を顰め、後悔する。


「しかし、あなたは残る事を推奨した。こちらは盤石なのでは?」「アルタナルちゃんも案外、世界を知らないんだね~♪・・・ま、私も言えないけど」


 白衣の中に入れていた袋付き棒キャンディーを加えると、予想外をちょっと楽しみそうにしながらレネッタはニヤついた。


「ふん。お堅い教会の者が本物の戦闘を見る機会なぞ、そうそう味わえん。大会とやらで見たと聞いたが、あれくらいなら可能な奴らは大勢いる。すでに浮島での準備の段階でなら貴様も確認しておろうが?」


 腕を組み、ずらりと並んだ大小様々なゴーレムを見ながら雑に言うミキラル対して「はぁ・・・」と何とも判然としないアルタナル。目的としている本懐が違うために、どうしても埋めがたい溝が出来てしまう。


「・・・私は世界の在り方に憂いた者です。・・・私の存在なんて些末なものですから・・・。ですが、本来の望まれる世界の形があるのなら・・・私は倒れる事はありませんよ」「・・・」


 普段はにこやか彼が目を開き見せるその顔にミキラルとレネッタは口角を吊り上げた。


 自分の思う世界の為に・・・。その目から垣間見える彼の言い意味で狂った思想は2人に通ずる所があるともいえた。世界に対するひたむきな姿勢。それが・・・どこかで彼にとっては掛け違い始めていたのだ。


「準備は出来ているようだな」「・・・もちろんよルグルット」


 近づいてくる足音と同時に姿を見せた元ベルニカ第一皇子にレネッタはゆっくりと歩み寄っていく。側近を引き連れてなのも気にせず2人は唇を交わした。そのさも当然の様な流れに、キネシュタとナルが舌を出して吐く様な不快な表情を見せる。それに対してヒース、フーバ、ディアスの3人は羨ましそうな反応を示す。


「~♪ いいね~。 オレも魅力的な彼女欲しい~♪」「やっぱ、こういう時に近くにいると色々と溜まったモノを受け止めてくれるのはありがてぇよな」「サイテー」「そんな都合のいい女なんていないわよ。っというかそんな女、私が殺してあげる」「ちょっ、それは男女比率に関わるから困るっすよ。ナルさん、キネシュタさん」「2人がこういう奴なのは昔からだから気にしないでくれ」「まぁ本心は・・・2、あいや・・・3、かな?」「「10」」「ちょっ、それは俺も勘弁だ」「せめてそういうの鬱憤を別の形に・・・」「ぁ、何なら俺達が──」「「・・・」」「なぁーんて・・・嘘です・・・はぃ」


 こいつ等、本当に元特殊軍の騎士団か?と汚物を見る様な目にディアスはもちろんフーバも引っ込んでしまった。


「ははっ♪ 何だか一気に賑やかになってきたね~。・・・準備の方はもういいの?」「ああ。ここにいる全員の準備は既に完了した」「何なら、今から乗り込んでも──」「慌てない慌てない。私達は戦争をするんだよ? テロリストじゃないんだから」「・・・ふふん。随分とウチ向きの連中じゃないか。是非とも勧誘したい所だ」「はいはいミキラルちゃん、その話はまた今度ね」


 ルグルットの手を引きレネッタは玉座にへと誘導する。微笑む彼女の顔を見て、意を汲んでゆっくりと腰かける。空気が変わった事に気付いた側近から順に、自然と列が作られていく。そこにはルグルット達について来た能力者達の姿があった。レネッタに続き、玉座の階段を上ったミキラルとアルタナルも新生国の王の側へと控える。


「あなたの生まれ故郷が、もうすぐ朝を迎える。・・・始めましょう。ここから・・・私達は創りかえる」「ああ。・・・全員、予定の位置に向かえ。本当の世界を・・・取りに行くぞ」「「「おおーーーっ!!」」」


 数人の雄叫びに一斉に玉座の間にいた同志達から歓声を上げる。その活気にルグルットや側近達は口角を吊り上げ、笑っていた。


 ・・・・・・


「ごめんなさいっ。寝過ごしましたかっ?」「あぁいや。大丈夫、問題ありませんよ」


 朝日がしっかりと射し込んできた頃、ようやく目が覚めたユティは慌てて、中央の作戦会議兼リラクゼーション室へと駆け込んできた。ゆったりと飲み物を飲みながら、何やら資料を確認していたドレッドが振り返って優しく答えた。


「朝から騒がしいわね」「そろそろ全員起きる頃やと思うし、そんな慌てんでもええよ?」「ぁ・・・はい・・・」「何をやっているんだか・・・。ほらユティ、髪がボサボサだぞ」「ありがとう・・・ナッちゃん」


 オメロス達が朝食の用意をしている中、ユティは親友に恥ずかしそうに髪を解されていたのだった。


 ・・・・・・


「いよいよね」「(コクリ)。そろそろ開始の時間」


 準備を整えたリエナとパミルは気合いを入れる。同意するレックスとは違いメリリカは少し緊張気味。そんな彼女の空気が移ってしまったミュティアを、わざとニーベルが発破を掛け、グロッグが楽しそうに拳を打ち付けた。


「ああそうだ。泣いても笑っても、時間は待っちゃくれねえ。オレ達もそろそろ離陸を始めるぞ」「・・・これから、なのよね」「うぅ・・・。何だか怖いニャ」「ここに残るか?」「い、行くに決まってるニャッ」「アイツ等を一網打尽にしてやるぜ」


 レジスタンスのメンバーにとってはそれぞれの想いもあるが・・・組織としての悲願が、そこには詰まっていた。


「さてお前達。もちろんだが、覚悟は良いな?」「当然です」「はい。その為の準備はしてきました」「お2人の力を私は知っています。安心して全力を出してください。1人で戦おうとせず、仲間と戦えば・・・君達なら十分に相手に通用します」「「・・・はいっ!」」「おいおい。彼等を指導したのは私なのだが?」「それに僕も参加しているのですし、問題はないでしょう」


 ドルゴの言葉にナルシャはやれやれと苦笑を返すが、バッツとロロナのやる気に免じて追及はしなかった。


「ふふ。なんだか変な感じ・・・。これから敵地に向かうのに」「武者震い、というものではありませんか? 私達はこの短時間で少なくとも多くの試練を乗り越えて来ました。それもこれも・・・この戦いに勝利するためにです」「(コクリ)そうですねお姉様。・・・もう、あの様な悲惨なモノはこりごりです。ここで必ず終止符を打ちましょう」「・・・はっ。そうだよな。絶対に勝ってやるぜ」「あんまり突っ走らないでくれよベラール?」


 そう言って従弟に注意するガジェットだが、その顔には自然と笑みが浮かんでいた。ここまでの間に全員が多少なりとも能力以上に精神的な面での成長を遂げていたのが彼等の笑みから窺えるようだった。


「オメロスさん、ヒーさん、シャノンノさん、ジルクト君・・・。船をお願いね」「おうっ、任せてくれ」「文字通り、乗り掛かった舟よ。責任もってアイツの託した船を護らせてもらうわ」「どうか気を付けてね。私も微力ながら船の防衛を頑張るから」「(コクリ)。ユティさんも・・・兄さん達も、無事・・・ううん(フルフル)。勝とうね」「ああ」


 ドレッドの心強い頷きに安心するジルクト。しかしユティはスッとその隣へと視線がスライドしてしまう。そこには見慣れない女の子がいた。見た目はユティ達と大して変わらない年齢に見えた。彼女はゆっくりと頭を下げると、ソファーに座っていたメリリカ達の方へと飲み物を運んで行く。


「あの・・・あの子は・・・?」「あぁ・・・彼女は・・・。忘れ形見・・・なのかな。いや、それとも・・・」


 女の子の後ろ姿を見つめ薄く笑って黙ってしまうジルクト。どこか寂し気な表情にドレッドの方を振り返ると首を振って、笑っていた。


「いずれ、話してくれるだろう・・」「・・・そっか」


 兄弟だからこそ分かる事なのか、姉を持つ身の彼女もまたこれ以上の追及はせず微笑んで流す事にした。


 ・・・・・・


 日の出して、おそらく1時間弱。季節は冬。あまり天候がいいとは言えない曇り空だが彼女達を送るには十分に日が射す明るい空だった。デッキには全員が集まっており、飛空船の外では少数の軍人とベルニカの代表のみだが見送りに来ていた。


「行ってきます」


 ユティの言葉に代表が静かに頷くと軍人達が敬礼した。その顔には敵陣地に向かう彼女達の無事と勝利を願う表情が見て取れる。周囲を見回せば、仲間達は笑みが返して待っていた。最後にレックスとジルクトを確認すると、OKサインが返って来る。前方を向いて彼女は元気よく号令を掛ける。


「出発っ!」


 ブォンッ・・・!


 主の意思に反応して船体には青い流線が入り、優しく浮上を始める。動き始めた飛空船は大きな音も立てずグングンと速度と高度を上げていった。追い風が発生するほどの勢いで飛んでいった船。見送り人がほとんど見えなくなるまでは1分と掛からなかった。


 ・・・・・・


 ユティ達が出立したのとほぼ同時刻のベルニカのある港町。寒さと緊張で僅かに震える防衛陣は霧の濃い海を監視していた。


「いよいよか・・・」「・・・緊張する」「こんな所にも来んのか?他の国が避難民を引き受けてくれていただろう?」「それでも残る奴らもいる。というか全部は支えきれない。アルメラにいた者達も引き受けてくれてるんだからな」


 どこもかしこも似た様な会話が行われていた。それだけ、軍に入っていても国・・・人間同士の戦争というのには未経験の者も少なからずいたからだ。それだけ平和だったとも言えるが、今となっては後の祭りであった。1人の男が隠すことなくため息を吐く。それは同僚も同じ気持ちである。


「はぁ・・・。ここを狙うのは自分の国だったからか? それとも潰しやすいから・・・?」「両方、だろうな。 全く嫌に──・・・?」「? どうし──・・・?」


 仲間の1人が足元を見る。同じく男も気付き足元をつい見てしまう。微かに振動を感じたからだ。もし別の同僚達が会話に盛り上がっていれば分からないくらいの小さな振動だった。彼等はたまたま気付くことが出来た。本当にそれだけだった。


「何だ・・・?」「おいどうした?」


 2人が地面に耳を付ける様にしゃがみ込んだ事でようやく他の仲間達や巡回していた同僚達が異変に気付いた。


 ・・・ン・・・・・・ン・・・・・・ズン・・・・・・。


「(何だ、何か来ているのか?)」


 分かるか?と同じく耳を付けていた仲間に視線を送れば、微かに首を横に返事が返って来る。どうしたもんかと顔を上げ、報告しようかと悩んでいた2人はそこで他の仲間達が立ち止まったままでいる事に気付いた。近くにいた同僚達は海の方を向いて驚きに開いたままだった。「「・・・」」恐る恐る2人も海の方へと覗き込むと・・・霧の遥か向こうから微かに黒い物体が動いているのが見えた。


「「・・・・・・」」


 何だあれっ?という言葉が出ないほどに理解できず棒立ちになってしまう軍人達。


 ・・・いや、分かってはいる。


 そもそも港町の防衛陣として使っている場所は海岸の砦。塀の向こうは一面海しかない。その遥か遠く・・・濃霧の向こうに黒い物体が自分達の方へと向かって来る。それが見える時点でそもそも距離も、その存在の大きさも馬鹿げている事が嫌でも理解できてしまう。しかもそれが複数・・・大小様々な点々と見えてしまっていた。


「ぁ・・・ぁ・・・ぁっ・・・・・・!」


 段々と大きくなってくる振動。誰かがその恐怖に腰を抜かし尻餅を付いてしまう。その音でハッと我に返った誰かが張り裂けんばかりの大声で叫んだ。


「敵襲ーーーーーーっっっ・・・!!!!」


 裏声が入ったとか声の調子がとかそんな事はどうでもいい。彼等は、海から現れた殺戮の使者に逃げ惑うのか戦闘するかの究極の選択を余儀なくされていた。


 ・・・・・・


 それはどこの港でも同じだった。海から現れた最大直径約3キロを超える超大型のゴーレムを筆頭に、馬鹿げた大きさのゴーレム達が海を歩いて上陸しようとしていた。


「ははっ。マジかよ・・・」


 流石のブルッカも、軍艦から見たその光景に嫌な汗を掻いて笑ってしまう。前日の攻撃をあっさり防がれたショックも癒えないまま、彼はそれ以上ではないかと思われる強敵複数体を相手にしなくてはならなかった。・・・さらに、彼を苛酷にさせているのはこれがおそらく大陸中・・・いや、代表の予想から世界で同じ現象が起きると聞かされている事が頭を悩ませる思いだった。


「(これを申し子で相手しろってか? ・・・いや、オレ達以外にも実力者はいる。ひよんなっ)っ!」


 頬を強く叩くと、意識を切り替え気合いを入れるブルッカ。


「ここら一帯はオレが何とかする。他の所のフォローに入ってくれっ」「分かったっ」


 近くにいた仲間達に告げると海に飛び込んだブルッカは能力を使い、ゴーレムのいる海に向かって大津波を発生させながら、自ら攻めに掛かった。


「来やがれゴーレム共っ。オレがすぐに藻屑にしてやるっ・・・!」


 どこからか現れた大きな錨を肩に担ぎ、褐色の肌が映える男は大きく口角を吊り上げ、最も近くにいた1キロ級のゴーレムへと攻撃を仕掛けるのだった。


 ・・・・・・


 レツガイスのとある山岳地帯。海上が見える、ほど近い山の山頂から申し子の1人であるジュンシーとその同門の仲間達が陸を目指し移動中の巨大ゴーレムを観察していた。


「あー・・・これどうすんの、ジュンシー?」「・・・町はまた再建すればいいと老師が仰ってくれたから・・・俺としてはもう少し陸に上がってから戦いたい」「はぁ・・・。後で文句を言われたらジュンシーのせいだって言っておくぜ?」「はぁっ?! 何でっ?」「あそこ・・・ミンソクの実家やヨジュンの実家が近くにあったはずだから」「あー・・・確かに言われるな。 なんでもっと早く倒さねえんだって」「いや、いくら飛べると言っても限度が──」「それってさ・・・。結局、後で泣きを見るのってお前じゃね?」「?」「考えろよ。ガオウ老師だぜ?」「・・・。お前ら、今すぐ行くぞっ・・・!」


 慌てて飛び出す同門を仲間達はやれやれとため息を吐きつつ、付いて行くのだった。


 ・・・・・・


 オーラル、ファーランは陸に上げてからの戦闘にすると決めている為、兵士達や能力者達も比較的大陸の内側に陣形を張っていた。ベルニカは軍としての人数が多く。また他の国々が避難民を受け入れてくれた事もあって防衛を張る場所が限定されていた。その結果、戦火になるポイントを絞る事が出来た。アルメラはどの大陸よりも浮島から近いために早々に放棄された状態となっている。


 問題はジルベガンだった。


 ベルニカに続き、平地が比較的多く見晴らしのいい地形のジルベガンはどちらにとっても戦いやすい場所になるかもしれないが・・・最大の問題が1つ残されていた。

 それはユティに並ぶほどの申し子がいない事だった。候補者や近い存在がいなくもないが、ずば抜けた素質を持つ能力者にジルベガンは欠けてしまっていたのである。


 ・・・・・・


 時はほんの少し遡り・・・。


「だからこそ私達が狙うとしたらここだね♪」


 作戦室として利用している部屋。その長テーブルに置いた世界地図にカンっとチェスの駒を模した様な木を少し強めに叩きつけるレネッタ。それを黙って見つめるアルタナル、ミキラル、ルグルットや他の面々達。


「ベルニカは軍人が多く、一見そこだけ見れば安~全・・・だけど~♪?」「首都は壊され、実力主義を唱えていた者達はあなたが生み出したゴーレムやアーマー部隊に蹂躙された。精神的に大きなダメージを受け、更には国の技術全てをあなたが掌握していた。能力をしっかりと学び、鍛え、真に戦える者は限られてくる」「なるほどな。奴らが受け入れ要請するのは想定内だったと・・・」「そ♪ だって実際にモンスターの討伐に積極的にあたってたのはルグルット達やドレッド君達ばっかりだよ? そこらのエリート新兵様なんて後方で雑魚モンスターを倒して息巻いてたんだから、程度なんて知れてるじゃん? まぁ一部、それが気に入らないと強情に鍛えさせようとしたお爺ちゃんとかいたけど・・・。案外、切れ者だったんじゃ・・・」「アンタが胡散臭かっただけじゃない」「ナル」


 ベンドに注意された彼女は気にした素振りもなく、頭の後ろで手を組んで舌を出しそっぽを向いていた。すみませんと謝るジパーグにレネッタもまた気にした素振りもなく笑って流す。それが向こうにとっては気に入らないのだが、お互い様と一切触れなかった。腕を組んで考えていたルグルットが質問する。


「ファーラン、モナメス、レツガイス、オーラルは申し子の脅威があるのは分かるが・・・。1人で大陸全土を護りくれるものなのか?」「んー・・・国の特性と性格によるかな?」「性格?」


 疑問に思う彼に駒を1つ1つ置いていく。申し子と・・・おそらく代表である王の駒であった。


「まずファーラン。あそこはケーティルちゃんの特性が強いね。侵入したとしても木々の多い大陸じゃ、こっちの分が悪いかな。あそこの王もその右腕や参謀も侮れない感じだし、ハッキリ言って戦いたくない相手。出来ればもっと有利になってからにしたい」「ほう、あなたほどの方がですか?」「くっくっく・・・。そういや、ウチの部下も覚悟しておけと忠告されていたな。なるほど、戦いとなれば面白いがあちらの土俵では分が悪そうだ」


 ミキラルの言葉にまたも意外な回答だったと少し驚くアルタナル。


「とまあファーランは、ぶっちゃけ・・・。浮島の力を使えば何とか出来るかもしれないけど、持久戦は覚悟してかなきゃならないわけ。こっちが勝つだろうけど、そっちにばっかり戦力は割けない」「・・・なるほど」「で、次にオーラルだけど・・・。あそこは種族的に能力値が高い人が多いってのは知ってるよね?」「(コクリ)」「数は少ないけど1人1が単独で軍1個小隊ぐらいなら簡単に蹴散らしちゃう。そんなのがファーランとは違う形の深い森の中に潜んでいる。しかもその中には申し子と女王がいるんだよ? だからこっちも現実的じゃない。残るは・・・モナメスとレツガイスだけど・・・」


 フォーランとオーラルの駒は無理と地図から除外しながら説明しているとミキラルも説明が加わった。


「レツガイスに関しちゃ、誰が一番強いかによる。伝統も大事だろうが統治者の思想が強く反映するからな。その時代・・・今はガオウだったか? あやつは建物等の被害は気にせん奴だろう。部下の報告では、古きしきたりに拘る害獣共を自ら排除に参加していたらしい。俺と同じタイプかもしれん」


 楽しそうにミキラルは歯を剥き出し大きく笑う。


「そんな男の部下達だ。どこまで戦えるのかは知らんが、ゴーレムでも大陸を蹂躙するには少々時間が掛かるだろう」「モナメスは海上を強みとした部隊が多い国。残念ながら私は彼の本来の実力を、この目で確認できなかったのですが・・・。もしかしたら彼1人でも、海からのゴーレムは殲滅されてしまう恐れがあるやもしれません」「私もそんな感じかな?流石に全滅は出来なくても、最悪数百キロ範囲は彼1人で何とか出来ちゃう気がする」「それほど凄いのか?」「申し子って、ホント理不尽でしょ? 相性によっちゃあ、そんな事も出来ちゃうって話なんだよ」


 驚くのはルグルットだけではなく、申し子達の実力を詳しく把握できていなかったベンド達も一緒だった。それに対してヒース、フーバ、ディアスの3人は直接と、違う意味でそれに類似する化け物をいつも見ていたからこそ共感して頷いていた。


「ルグルット様もちょっとは見てたと思いますけど、オレ達が玉座で戦えてたのはロクサーヌちゃんをレネッタちゃんがアイテムで抑えてくれてたからなんすよ」「(こくこく)。もしあそこで強力な阻害が無ければ、一瞬で消し炭になっていた可能性が・・・いや、ほぼ間違いないですね」「彼女達と俺達が上手く戦うためにはちょっと条件が必要って事なんですよ。この浮島みたいに」「・・・慣らしたり強化を急がせてたのはその為か・・・」「戦略の基本っしょ?」「ふ、確かにな」


 納得した所で最後のレツガイスの話に移行するが・・・。


「あれ? アルメラはいいんすか?」「いいんっす。 こっちの心理を逆手に取った所で目と鼻の先に魔動砲喰らって平気?」「あ、いや(ブンブン)・・・ないな」「でしょ♪?」


 ヒースの問いに楽しそうに笑うレネッタ。もう一度話を戻して・・・1つの駒に手を付ける。


「ここは・・・フローズンプリンセスのユティちゃんが守るかもしれないけど・・・。彼女の本来の故郷はモナメス。・・・あのブルッカちゃんが──」「フローズンプリンセス」「聞いた事ある?」「あるわけないじゃない」「うん。だって今付けたもん」「「「・・・」」」


 あっけらかんと話す彼女にヒース達もどう反応していいのか苦笑してしまった。他の会議参加者達も様々な反応を返すが・・・一番バラエティーに富んでいたのはルグルットの側近だった。驚き、笑い、嫌悪にイラつきと、本当に分かり易かった。「続けてくれ」と仕方なくルグルットが述べるとレネッタは平然と再開した。


「モナメスの海を・・・あるいは大陸もかな? 2つの強力な違う能力で抑え込まれたら流石にゴーレムちゃんじゃ太刀打ちできないかもしれない」「真っ先にそこからゴーレムを排除して、別の国の応援に向かうのは?」「流石に無理でしょ。いくら何十、何百キロをカバーできるといっても彼女達も1人の人間だもん。魔力を使えば疲弊はするし、国を渡るにも時間が掛かり過ぎちゃう。よってまぁ自然な流れでは義理人情でジルベガンを護るだろうけど・・・。果たして彼女だけで護れるかな? そもそもの特性があそこでは上手く活かせない可能性が出てくる。限定的な能力では防衛できる箇所が限られるんだよ」


 その説明に得心がいったアルタナルが頷きつつ地図の描かれたジルベガンを見つめた。


「あ~なるほど。隣接するファーランとて、回せる手は一杯。ベルニカに比べれば冒険者の皆さんの数も多くいるでしょうが、守備範囲が広くそもそも避難者達の数が圧倒的に多い。受け入れ過ぎた事が仇となりましたね。ここを潰せば精神的ダメージは他の国よりも圧倒的に大きい」「(ニッ)正解♪ その上、他国からの重要人であるユティちゃんを失えば、それがどれだけの損失と影響になるかな?」「「「・・・」」」「(ボソ)だから嫌なのよ、この女・・・」「(ボソ)定石を通り越して、悪質な嫌がらせばっかり・・・」


 レネッタの狙いに周囲から重い沈黙を作られていく。流石のキネシュタやナルの言葉にベンド達ですら返す言葉が出ないほどだった。それを聞いて一番に笑ったのはミキラルだった。


「がっはっはっはっはっ・・・! イイッ。実に良いぞっ。世界中に大きく波及させる殺戮。今すぐにでも参加したいぞっ」「ダメだよ。ミキラルちゃんが前線に出ちゃったら、こっちの戦力が落ちちゃうじゃない」「多少なら問題なかろう。どれちょっと遊びに──」「なりませんよ、ミキラルさん。戦う場所を決められておられるのでしょう? でしたら、これはあなた様の試練でもございます。どうかご寛容を」「・・・・・・はぁ。よかろう少し高ぶってしまったが、それに見合う者が現れる事に期待しよう。だがもしおらなんだ時は・・・」「どうぞご自由に」「まあ仕方ないんじゃない?」「(コクリ)。構わない。多過ぎても困るしな。多少の間引きくらいは目を瞑ろう」


 ニヤっと口の端を吊り上げたミキラルは部下へと視線を向けた。するとフードの男・・・シージッターはアフタネを連れて先に部屋を退出していくのだった。そうしてザックリと今後の方針が次々と決めていった所でレネッタ達も部屋を出て行く。

 夫になる予定の彼の腕に抱き着く彼女はとても楽しそうだった。


「(さってさって♪・・・ここから、どういう作戦で向かって来るのかな? 是非とも超えてきてほしいね~♪)」







  【ジン・フォーブライト(純、クリス)】8才 (真化体)


 身体値 301

 魔法値 314

 潜在値 355


 総合存在値 708


 スキル(魔法):干渉、棒術 8、マナ零子 8、感応 MAX

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