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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
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40 調整とひと時の安らぎと決戦の場

 純は土曜の朝、用意してくれた朝食を食べてから、さっそく目的の場所の下見に出かけた。


 自分の部屋のノートパソコンで見た時に思ったこと。

 それはとても大きく、もはやテーマパーク、遊園地の面積と同じくらいの広さを持っていた。


 その広い諸毘志製鉄工場は純の家から3駅分離れたところの在った。


 家から電車を使い約一時間半。

 前回の工場と違い電車の中から外を見た時、遠くにハッキリと見えるくらいデカい建物のため迷うことはなさそうだった。


「(今回は前のように迷子にはならないな)」

〔はい。

 しかし、純、下見に行くにしても早くはないですか?

 まだ昼前ですが〕

「(うん、ちょっと気持ち焦ったかなって思うけど、ちょうどいいから下見をゆっくりしてみようよ。

 前みたいに突然、警察が来たから隠れて何の出来なくなってしまうのは避けた方が良いし。

 いくつか、侵入できるルートは探っておいた方が良いと思って)」

〔確かに、しかし、そんなルートを探る必要があるかは疑問です。

 純の身体能力なら、数メートルの壁なんて簡単に飛び越えられますし〕

「(えっ!そうなの)」


 あまりに普段通りに話してたらとんでもないことをサポートはさらっと答えた。


〔ええ、体内マナをフルに使えば10メートル以上の高さから落ちても軽傷で済むでしょう。

 頭から落ちても、多少コブが出来てしまうかもという程度です。

 幸い今日は休日、普段より人は少ないですよ?

 学校の屋上から試してみますか?〕

「(やらないよ!そんな危険な実験!)」


 とんでもない提案を述べるサポートに突っ込みながら駅を降り、目的地に向かって歩き出した。


 歩いて徒歩20分くらいの所に民家が少なく、ほぼ軒を連ねるのは工場だらけだった。

 そこに、目的の製鉄工場がデカデカと広大な敷地を占拠して建てられていた。


 大きなパイプ小さなパイプがたくさん縦横無尽にむき出しに出ていた。


 さながら、独自発展した工場という名のお城に見えた。


 入口の門だけで横幅10メートルはあるんじゃないかってくらい広い。

 そして、奥にはいくつかの工場の中でも担当場所が違うのだろう建物の大きさも形も違っていた。

 普段だったら絶対に、ただ工場の一部と一緒くたにして、それ以上興味を持つことは無かっただろう。


 しかし、今回は状況が違った。

 突発クエストが発生する現場。

 そのため、警戒し慎重に辺りを見る必要があった。


「(入口のすぐ横に受付か・・・)」

〔この壁の高さは3メートル弱、飛び越えることは簡単ですね〕

「(他に目の無い場所は・・・あ、そうか監視カメラあったりするよな。

 これだけ大きな工場だ。

 もし、事故なんて起きたら周りの工場もただでは済まないかもしれない。

 ココには少ないけど家だって普通にあるんだから)」

〔この形ならいくつか緊急時に隠れられるところも複数あるでしょうから、夜中に侵入するのは問題なさそうです〕

「(ここからじゃ監視カメラの配置までは見えづらいか・・・?

 いや・・まてよ?)」

〔朝方のため、人の出入りが激しそうですね。

 しかし、夜ならば非番のもの以外はそもそも、この辺りはごく少数ですね。

 ・・・良かったですね純。

 これなら前回みたいなことは避けられそうです〕

「(・・・サポートさっきから何を言ってるんだ?)」

〔純こそ、先ほどからブツブツとどうしました?〕


 2人?は同じ方向性で考えてはいても着眼点のポイントが違いかみ合ってはいなかった。


 純は体内マナを活性化しそれによるソナーのように音波のような波を使った。


「(サポート手伝ってくれ)」

〔純?〕


 純は一方的にサポートにフォローを頼み目を瞑った。


 純は体内の感覚で建物内の形や人の配置が何となくだが見えるようだった。


〔現在はここで働く従業員が127名、のち運搬従業員が13名が現在駐車場にて積み荷の確認と配達に回るようです。

 現在出荷点検中といった感じですね。

 また、警備員は手前が4名、奥の控えに5名が配置、特定のルートで見まわる様に定期的に決めているそうです。

 監視員は7名がチェック、モニターで監視しているのは建物の外が2名、中が2名、1名が全体を、残り2名が機材のチェックをしていたりといった感じです。

 監視カメラは計23台、内が10、外が13です。

 建物の形から構造を計算、侵入が可能なルートを5つ確認〕

「・・・・っあぁぁぁ~」


 純は大きく息を吐いた。


 そして、ボーっと立ってこちらを見ている純に不審に思った警備員の二人が少しずつ近づこうとして来た所で純がその気配に気付き撤退。


 休みの土曜でも製鉄工場は通常通り仕事をしていた。


 純は近くの休業中の工場に隠れ一息つく。


「(やれるんじゃないかって思って試してみたけど・・・すげえ後悔してる。

 めちゃくちゃ頭が痛い、凄い疲れた)」

〔・・・はあ~。

 無茶しますね・・・あんな広大な範囲を把握しようなんて慣れない人がソナー代わりにマナで使ったら下手をすれば死にますよ?

 幸運にも純には``私``がついていたから疲労だけで済んでいますが。

 純だけでしたら、下手したらその場で倒れて何日も昏睡状態だったかもしれませんよ?

 ぶっつけ本番は出来る限り辞めたほうがよろしいかと・・・〕

「(・・・は~・・・ああ、分かってる。

 できれば2度とやりたくない。

 助かったよサポート、ありがとう)」

〔これも、私の仕事ですから〕


 純は少し気力が回復するまで座って呼吸だけに専念する。

 考えるだけで疲れが出てしまいそうだったからだ。



〔・・・それで純。

 この後どうしますか?〕

「(疲れたし、いったん帰ろう、侵入ルートを考えて再度ここに12時前にはココに来よう。

 それまでにスリングショットの点検もしたいし。

 それに、この近くには大きな川があったからそこで試し打ちをしよう。

 威力や瞬時の構えから発射までの時間とかも含めた戦闘をシミュレーションして)」

〔了解しました〕


 そして、近くの大きな川に着いた。


「(・・・向こうの陸まで何メートルあるんだ?)」

〔・・・約38メートル42、05センチ。

 間隔にばらつきが多少ありますが平均の距離がそれくらいです〕

「(・・・ずいぶん遠いーなー。

 いや逆にありがたいかも、威力と距離を測るにはちょうど。

 ・・・幸い、どうやら人もそんなにここまでは来ないようだし)」

〔そのようです、ここを通る橋を渡る者がほとんどのようです〕

「・・よし、それじゃあ、さっそく」


 純は人に見つからない草むらや段差になる坂の陰に隠れてスリングショットのため仕打ちを試みた。


「・・・異世界に居た時よりかなり強いな・・・普通に向こうの陸まで届くぞ」

〔これは、元来のこの世界にある基準の強さのようですね・・・。

 人に向けると下手したら死人が出ますね〕

「怖いこと言わないでくれ」


 簡単に想像が出来そうで純は怖くなった。


「とりあえず試しにマナを使って付与みたいにして使うと?・・・」


 純は威力のあまりの強さに気づいて方向と何もない川に一直線で飛ぶようにまっすぐ構えた。


「・・・まずは、軽く流して2割くらいで・・・っ!」


 微かに飛んで行く弾の石がヒュンと矢が飛ぶような音を出し着弾。


 バシャ―――ン!


 遠く50メートル以上も離れたところで高さ3メートルを超す大きな水しぶきを上げた。


 体が新しく構築されたこの肉体は視力も良くなっている。

 実際水面に着弾した距離は80メートル以上先だと思われた。


「・・・体内マナは身体強化もあまりせず2割程度の力でこれってことは・・・」

〔今の純なら命中率さえ高ければ見事な殺し屋に転職できますね。

 その命中率の私がサポートしますしほぼ間違いなく暗殺できそうですね〕

「俺はなりたくないんだけどっ?!」


 純の盛大なツッコミが川に響いて消えた。



 その後は試し打ちを数発、具合とバランスチェックの調整にマナを使わず試し、検証は終了した。


 それから、すぐに帰宅し武器を分解し隠した後、少し遅めの昼食を食べ、受験のための勉強をした。


 ちょうど勉強最中に義姉の美月がたまたま、もう一人の義姉の紅百葉と一緒に入ってきた。


「あれ?純、勉強中?

 あっ!それじゃあ、この前の約束、私が勉強見てあげる」

「・・・お姉ちゃんどういうこと?」

「もうそろそろ純も受験だから勉強見てあげようかと思ってたの」

「・・・そうだったんだ。

 じゃあ、私も見ようか?純?」

「え?」

「ちょっと紅百葉ー。私が先に見るって約束したのに」

「でも、お姉ちゃん、友達の課題手伝うんじゃなかったの?」

「うっ、あれはある程度は終わったの。

 だから、純のを見ようかなって・・・。

 ほら約束しちゃったし」

「でも、お姉ちゃんより高校生の私が見たほうが純も勉強の参考が分かり易いんじゃないかな?

 だって、高校だから中学の問題の応用として出てる部分も多いし」

「そうだけど・・・」


 2人の義姉がわざわざ自分のために勉強を見てくれるって言ってくれている。

 しかし、このままじゃ埒が明かないと思った純は。


「ね、ねえ?美月姉さんと紅百葉姉さんはどの教科が得意だったりするのかな?」

「「え?全部別に普通だけど?」」


 2人してハモってしまっていた。


 これだから、エリートの血はすごいというか羨ましいというか。

 優秀な家系の2人は当然頭もよく美人だから、色んな男が寄ってきて困っているそうだ。


 美月も紅百葉も苦手強化は特になく必死に勉強をしなくても良い成績を取るのは普通なんだそうだ。


「(一度だけ聞いたけど、平均90点以上を取ってるもんだから特に気にしたことがないって言ってたなー)」

〔素晴らしいくらいの優秀な血筋ですね〕

「(ホント、その10分の1でも分けてほしいくらいだ)」


 悩みながらそんなことを考えていた。


「そ、それじゃあ、強いて言えば得意なのは?」

「そうね~、私は数学とか物理かな」

「私は古典と歴史系かな」

「じゃあ、もともと今から数学とかをしようと思ってたから美月姉さんに教えてもらおうかな?」

「オッケー!ちょっと待ってて、参考になりそうな本とかまだ残ってたから持ってくるね」

「・・・純、私は?」

「あー、紅百葉姉さんは2時間後くらいにもし予定が無ければ古典を教えてほしいかな?」

「・・・2時間後ね?分かった」


 二人の姉はそろそろと純の部屋を後にした。



 二人はそれぞれの得意分野を純に理解しやすい様に教えてあげた。

 わからない部分を聞けば喜んで教えてくれた。


 純も器が昇華し存在が大きくなったことで理解の速さ、記憶領域が変化して物覚えが以前とは比べ物にならないくらい良くなっていた。


 美月は教えるときは家庭教師のように説明に順序を立てて話してくれた。

 純の主観では終始美月は楽しそうだった。


 しかし、紅百葉が入ってくると急に拗ねたような表情と声を出した。

 とても、コロコロと表情が変わる明るくて優しい姉だった。


 紅百葉の場合は椅子を自分の部屋から持ちだし、隣に座り友達に教える感じで丁寧に教えてくれた。

 美月と違いとても落ち着いた感じだが表情はやはり姉妹は似ていた。

 純に終始楽しそうに勉強を教えていた。


 少し雑談をしながらも、自分が得た知識と歴史やその時代の価値観の元、古典の話の理解の仕方や深め方を紅百葉は純に教えてくれた。


 夕食になる時間、知らせに来た美月が入ってくるまで勉強は続けられた。


 特に似ていた表情は夕食を知らせに来た美月が入って来た時の拗ねた時の顔だった。


 ご飯を食べ早めにお風呂に入り、仮眠をとった。


 午後10時12分


 部屋の電気を消し、寝てるように内側に毛布を入れ布団を盛り上がらせ、玄関から事前に持ってきていた靴を持ち窓開けた。


 事前にスリングショットの部品を組み立て、ダウンジャケットの内側に隠し、軽く小さな布を入れたポケット数か所にビー玉を入れ、準備を整えて窓から外に出た。


 純の窓の外は少しだけ小さな瓦に屋根がちょうど下にあり、そこに靴を履き足を付け、音を立てないようにゆっくりと窓を閉めた。


 そして身体能力を使い一気に明かりのない家の中庭に降り立ちそこから更にジャンプして家の外に降り立った。


 そして純は目的地に向かって夜の帳を駆けて行くのだった。






【十時影 純】 15才 人間?(ぽっちゃり)

 レベル 1

 HP 1 MP 1

 STR 1

 VIT 1

 INT 1

 RES 1

 DEX 1

 AGI 1

 LUK 1



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