38 準備と怖さと沈着に
純は次の日も通常通り、朝には起きて学校に向かった。
学校での登校、授業、休み時間は特に変わり映えすることなく時間を過ごしていった。
しかし、少々気がかりもあった。
それは、普段昼間や放課後には絡んできそうなイジメ主犯格の豪裡達が何もしてこなくなったことだった。
多少なりともアクションを起こすものだと警戒していた。
昨晩のサポートとの会話でもまだ直接来る可能性はあるとの話も出ていただけに、何もないというのは些か拍子抜けしてしまっていた。
だが、今は豪裡達にかまっている時間が惜しいと思い、これ幸いと、さっそく家にまっすぐ帰った。
手早く着替え、出かけた。
今回は事前に調べておいたお店に行く予定だった。
それが、エアガンと販売してるお店である。
そこであるものを販売してる事をネットで調べがついたからだ。
それは、スリングショットである。
純はクリスであった時によく使っていた武器を持っていこうと考えていた。
何もなければ素手で良い、それほど、警察も指紋で細かく調べたりするかどうかは怪しいからだ。
別に誰かを襲おうとも、事故を起こさせようともしてないのだからその辺りは気にしなかった。
しかし、この武器を買っていこうと決めたのは先日の事件の内容にあった。
一人の男が突然叫び暴走。
アナウンサーもニュースでもそのことが報じられた。
しかし、一転して暴れた男はなぜあの場に居たのかが曖昧で話が分からなかったそうだ。
曰く、突然、何か赤い者に襲われ、それから逃げるのに必死だったこと。
また、その赤い者が暴れ、建物内を燃やしていたとの証言だった。
事情聴取していた者は、もともと薬物を使い錯乱状態だったのではないかと考えていた。
しかし、暴れた彼の血液検査や唾液検査、尿検査で調べてみても、彼は薬物を使った痕跡がなく、またアルコールも事故前は摂取していなかったそうだ。
精神的な問題かと疑われたが、それも異常が見られず、なぜ捕まっているのかその当時の前後が本人も分からないそうだった。
その内容を知ったサポートが武器を持つことを強く奨めてきた。
〔もしかしたら、何かの現象かもしれません〕
「(え?それって・・・幽霊・・的な?)」
〔・・・レイスのような存在はこの世界でも確認できています。
別の言い方でゴーストですね。
これは、こちらの世界では非科学的な存在ですが、システンビオーネで言えば、強く残った魂の残滓ですね・・・想いともいえるでしょう〕
「(やっぱ向こうでもいるのかぁぁぁ)」
〔おや、純は苦手なのですか?〕
「(だって、怖いじゃん。
何してるかも考えているかもわからないし。
最悪、呪い殺したりするって言われているし)」
少しずつ声に震えや怯えが出始める純。
しかし、そんなことなどお構いなしのサポートは。
〔純、そもそも、幽霊ってのは一部のエネルギーが1か所に集まって出来上がった集合体であって、向こうの世界ではモンスターと呼ばれる存在がそれに近いと該当されますよ?〕
「(え?モンスター?
いや・・・でも、人間だったり、動物だったり・・・場合によっては異界のような存在だったりするのですよ?)」
〔・・・はぁ~。
純、私は何ですか?
あなたのマナは本来この世界でそんなに使えるものですか?
その力を発言した世界はこことは違う世界でしょう〕
「・・・・あっ」
サポートに指摘され、自分の力がサポートの誕生がシステンビオーネがすべて異界からもたらせたものであるという認識を純はすっかり忘れてしまっていた。
「(いやでも向こうは異世界で、幽霊は異界っていうか次元が違うっていうか)」
〔そもそも、マナは世界中、ひいては宇宙すべてに存在するエネルギーの一種です。
つまり、向こうが一方的に干渉できるのは、マナないしはそれに近いエネルギーを使って別の世界、つまりは現実世界に現象を起こしているのです。
逆に言えば、純のようにマナが使えるものは幽霊だろうと、感知も視認も干渉も可能なのです。
言い換えれば倒すことだってできるのです〕
「(・・・でも、呪いって、怨念みたいなもので簡単には解決できないって・・・)」
〔それは、マナに準ずる独自の力が弱いだけです。
純はたとえ強い呪いを持つ怨霊や妖怪とこの日本で言われる異界の物でも倒すことが可能なのです。
そして、マナを十分に扱える純はその呪いに対して間接的に与えたダメージでも根源に対して攻撃を加え倒せるのです。
つまり、呪いという拡散したものでもこの世界のものなら、今の純の力でも十分対処が可能なのです〕
「(そ、そうなの?)」
〔今の純なら大抵は可能です。
もちろん今の強さにも対処ができない者はいる可能性は十分考えられますが・・・おそらくその類になると、より専門家と言ったものがあたっているため、一般にまで出会うことはそうそう起こるものではないでしょう〕
「(・・・なんか、その言い方だと、フラグっぽいんだけど・・・)」
〔いえ、あくまで可能性があると言っただけで、それは、気にしても意味のないレベルの低さになりますよ?〕
「(そうなのか~、じゃあ、やっぱり今回のは・・・)」
〔あくまで予想でしかありませんが、幽霊ではない何かがその者を利用し暴れたのだと思われます〕
幽霊でも対処できると聞いて安心した純は今回のニュースに出た、暴れた男の行動から今回の正体不明の敵がいることについてを話し合いだした。
「(・・・やっぱ、対処可能でも怖いもんは怖いんだけど)」
〔いきなり襲ってくるモンスターがいる世界で生き延びたものの言葉ではありませんね。
それこそ、今更でしょう、あとは無意識に刻まれた先入観の問題です〕
「(そ、そうなんだけど)」
〔事前にマナをある程度使える段階にいればどこから来るかは対処可能です。
不意打ちや幻覚による騙し討ちも対処できます〕
「(・・・)」
〔それに、今回のはおそらくモンスターに近いと思われます〕
「(!どういうこと?)」
〔昨日のテレビでの映像にはマナを人為的に使用した痕跡がありました。
つまり、意図的にあそこを火の海にしたという事です〕
「(何のために?)」
〔わかりません。
しかし、偶然ではないでしょう。
突発クエストが発生した場所という事はもともとあそこで暴れることが前提だったのでしょう〕
「(え?じゃあ、あそこにいた人は全員・・・)」
〔それに巻き込まれた、ただの被害者です〕
純は絶句してしまう。
理由は不明だが明確に決めた場所で騒ぎを起こし、周りを巻き込む。
そんなことに意味があるのかわからないが、とにかく、純のステータスに反映されたタブの情報は事前に察知する事があると分かった。
〔念のために、純がよく使っていたスリングショットを今に内に持っておく方が良いと思われます〕
その言葉と理由を機に、出発し駅を超えてたくさんのお店がある大通りを脇道にそれ、細い路地を通ると、2階までがお店になってるサバゲ―ショップを見つけた。
純は中に入り、辺りを見回したあと、2階へ。
2階の一番奥にスリングショットのコーナーを見つけ、そこから自分に合ったものを探す。
少し前。
「(安くても、マナが反映するならエアガンの方が球数も多く、撃ちやすくて扱いやすいと思うんだけど・・・)」
〔そうですね。
片手で打てるもので手軽なものだったら純ならマナを使えばかなり威力の強い強力な武器になるでしょう〕
「(だったら何で?)」
〔一つは一発に込められるマナの強度の限界が近いからです。
そのため、たくさん撃てますが雑魚ならまだしも強力なモンスターだった場合はかすり傷を負わせられれば御の字かもしれません。
それだけの力を秘めた武器にするなら専用にカスタマイズされたものか、本格的なものを使わないとダメージを与えられません〕
「(つまり、本物の銃ってこと?)」
〔はい。
つまり現実的ではないため却下されます。
それともう1つが・・・これは純の問題ですが、もし家族に見つかった場合に備えてです。
当然スリングショットも持っていても問題になってしまわれますが・・・純の力なら固定付け替え、脱着といった、組み換えやカスタマイズが簡単にできるからです。
エアガンと違いマナの乗せる率も強度の幅が利きます。
普段使わないときは分解して2つの隠し場所に隠しておけばスリングショットとは気づかれにくいでしょう。
また撃つときに発射地点が分かりづらいこともあります。
あくまで程度の問題ですがエアガンほど、外に音は漏れにくいので奇襲がしやすいです〕
「(そういうことか、分かった。
じゃあ、組み換えしやすいものにしよう)」
〔その方がよろしいかと〕
純はサポートとの会話でスリングショット一択になりサバゲ―ショップを訪れたのだった。
純はその中から、手頃の値段のものを購入、組み換えがしやすいモノにし、玉はビー玉を購入した。
たくさん買うと怪しまれるので、その辺りをサポートと吟味し相談のうえ買った。
今まで大きな買い物をせず、ずっと貯めてきたためにそこそこお金はあった。
純にとって、居候になって以来、自分から進んで何かを買ったりする機会はほとんどなくなっていたからだ。
サバゲ―ショップで必要なものを買いさっそく家に帰宅。
時間が時間だけに兄弟たちが帰ってきていたので急ぎ、自分の部屋に行き、そこで買ったものをすかさず開き、中身を分解し、2つの隠し場所にそれぞれ隠した。
それから何食わぬ顔でリビングに行き、お茶を飲んだりして、まったりする。
家族に不審がられないようにするアピールのために。
休憩していると、義母が買い物から帰宅。
早速料理に取り掛かった。
先に帰って来た義妹の夏奈は義姉の紅百葉と一緒にゲームをして時間を遊んでいた。
少しして昂輝が帰宅、続くように義父が帰宅した。
その時には純は部屋に戻り、スリングショットの具合を調整、自分用に作り直していた。
全体的にマナでスリングショットも強化するが、自身の使いやすい様に作るのが伝達率にも多少は影響することがあるとサポートに言われたのでその通りに微調整を繰り返した。
調整途中でご飯の時間となり扉越しに呼ばれ1階に、スリングショットはバレにくいように隠し降りて行った。
食事のタイミングで義姉の美月も帰ってきて家族での食事となった。
いつもの日常を過ごしていった。
「ッチ、あのヤロー調子に乗りやがって」
盛大な舌打ちをしながら都心から少し離れた路地裏、そこでたむろする男たちが居た。
「つってもよ~、どうすんだよ。
俺たちが手えだしたらマジであいつ警察に連絡するぞ?」
「はっ、知るかよっ。
そんなのただのビビりの脅しだろ?
コッチがちょっと脅せばすぐなんも出来なくなるって」
「だったらあの時すればよかったじゃねえか」
「確かに、ビビッて損したぜ」
「ま、向こうが脅してきたんだから、こっちも脅してやろうぜ?」
「なんて?」
「確か、あいつ姉ちゃんとか居たよな?
しかも、かなり美人の姉ちゃんが二人」
「マジかよ、あんな奴にそんなのいたのかよ。
うわ~、勿体ねえことしたー」
「おいおい、ナニするつもりだったんだよ?」
「っふ、そんなの決まってるだろ?
人に言えないくらい楽しませてもらうんだよ」
「そいつは良いな~・・・よしっ!
早速明日にでもあいつ捕まえて脅し・・・いや、家着けて、バレない様に話しながら攫っちまおうぜ?」
「おいおい堂々としてんな~。
ま、賛成だけど」
「確かに。ちょっと曲がり角くらいまで誘えば、結構簡単にイケそうだな」
3人の下品な笑いが聞こえそうな声だった。
妄想がどんどんとエスカレートしていく。
「あ~やべっ、最近溜まってきてるからか早くシたくて仕方ねえよ」
「おいおい、我慢しろよ、その方が何倍も気持ちいいんだからよ」
「待てよ、それは拷問だって~」
最早、襲うことは前提であり成功することが間違いないという確信を持っていた。
しかし、そもそもサポートが主の家族に危害を加える輩に何の対策も取らないなんてことはあり得なかった。
が、そんな問題が起こる以前に事態は未然に防がれることとなった。
「んもう~、ココだって聞いていたのに~」
「だから、早く行こうって昨日話したのに、のんびりしたいって言ったのはあなたでしょ!?」
2人の少女が路地裏で言い合いを始めながら3人の男たちの方に近づいて行った。
【十時影 純】 15才 人間?(ぽっちゃり)
レベル 1
HP 1 MP 1
STR 1
VIT 1
INT 1
RES 1
DEX 1
AGI 1
LUK 1




