384 辿る軌跡
白かった視界が徐々に色彩を取り戻していく。空間だけでなく匂いまで戻ってくるようだった。微かに感じる寒い気配。風の音がどこからか聞こえてくる。
(・・・ぅっ。ううっ・・・ここは、どこ?)〔・・・どうやら。異空間を出たようですね〕(・・・ジン・・・)
眩しい光に目を細めていたゼクもようやく慣れ始めた時だった。前方に見える風景に口を開けて驚いていた。右ストレートを突き出したまま固まっているジン。その向こう数メートル先から遥か向こうまで・・・地面が綺麗にくり抜かれた様に抉られているからだった。目の前の壁も円形に吹き飛んで行った後が残っている。
〔これは・・・〕(地面が・・・無くなっちゃってる・・・!)
小高い山などは吹き飛び、遠くに見えた海すら貫通して割れていた。強力な引き戻しが発生し、海水が抉れた地面へと侵食する様に向かって来る。たった今、大きな川が出来上がったみたいだった。
ドサリ。
〔ジン!〕(ジン!)
呆けていた2人を置いて、ジンは前へと倒れたのだった。
・・・・・・
(・・・ねえ──に大丈夫?)〔──。奴からは──体力もマナも──せんから。放っ──時間と共に消えてしまいますよ〕
ゼク達の声がぼんやりと頭の中で響く。
(あれ?でもそうなると・・・らしんばんの事、──なっちゃうよ?)〔ああ。そうでしたね。ゼク、ジンの──出してください〕(えっ、ボクが?!)
体が重く、何か話し合っているが上手く頭が働かない。
〔ジンが起きない以上、あなたしかいませんから〕(ええ~?うー・・・そうだけど・・・)
不安そうに悩んでいる雰囲気が伝わる。意識した事が脳から伝わり覚醒への助けとなった。少しだけ寝苦しさもあって体が動く。
〔お、どうやら起きたようですね〕(あ、ジン・・・。良かった~)
薄っすらと目を開き、ぼやけた視界で周囲を確認すると覗き込む様にゼクの姿が見えた。
「みんな・・・無事、かぁ?」〔それはこちらの台詞です。もっとも、あなたの最後の一撃が無ければ確実に倒せていたか怪しい所でしたけどね〕(死ぬかと思ったよ~)
力が入らず弱弱しい声で聞いてしまう。体を起こそうにも気だるくて億劫だった。どうしたもんかと悩んでいるとサポートが〔少々お待ちください〕とシャボン玉を生成して、ジンを包み込んだ。補助具代わりに魔法を使ったのである。ゆっくりと勝手に立ち上がってくる動きに感動する。
「器用なもんだな」〔まあ、これくらいなら問題ないです〕「どのくらい経ったの?」〔5分といった所でしょうか?正確には分かりませんが、ジンが気を失ってからそんなに経ってはいないはずです〕「そうか・・・」(あ、ジン。それでね、そうだんなんだけど・・・あれをどうするか話してたの)
精々20メートル四方が良い所の薄暗い半地下?に当たりそうな場所にジン達はいた。周囲が煤けていたり半壊していたりとボロボロな為に詳しい階層までは分からないが・・・最初に入った時よりも明らかのは分かる。たくさんの光が入ってくるぽっかりと開いた大穴。自分自身で作り出しのモノだとジンでも分かる。遥か先にまで綺麗に三日月上に抉られた地面と見た事ない湖?が存在していた。起こしたという実感が湧かないが、そうだと納得しておく。ゼクが指し示したのはその穴付近で半分ほど照らされた状態で転がっている悪魔だった。手足どころか首から上、バストアップほどしか残っていなかった。心なしか白い粒子の様なモノがキラキラと薄く空へ霧散している。
「生きてるの?」〔辛うじて〕「じゃあ、サッサと聞かないとな」(覚えてるのかな?)「どうだろう?」
ゼクはジンに引っ付き隠れる様にして悪魔を覗き見る。先ほど異様な目をして襲って来たのが何気にトラウマになっているのかもしれなかった。
「さて・・・意識があるといいけど。・・・この状態で復活はあり得ないよね?」〔それはご心配なく〕「そっか・・・。っと・・・」
歩こうとした足元がフラついた。すぐには無理だとサポートに支えてもらいつつジン達は転がっている悪魔へと近づく。
「・・・起きてる?」「・・・」
話しかけられ薄っすらと赤い瞳を見せる悪魔。後ろでちょっとだけホッとした気配を感じた。
「約束・・・覚えてる?」「・・・ぁぁ」
弱弱しく答えた悪魔が天井を見る。その顔は納得したように薄く微笑んでいた。
「そうか・・・。私は負けたのか・・・」「ギリギリね」「ふふふ。・・・まあ、そうしておこう・・・。時間も無い事だ。先に言っておく」「頼む」((コクン))
ジンとゼクの目を横目で見た悪魔は再び天井を見上げたまま話し出した。
「この世界には、神と言われる存在が確かにいた。見守っていたらしい。直接見たわけではないから確証は持てないが、君のその胸に掛けたモノがその証拠だ」「これはその神様が残したモノ?」「(ふるふる)正確には違う。それは・・・この世界に遣わした使徒の力だ」「使徒?」(何それ?)〔神に選ばれた者です。アルメラがその1人だったように・・・〕「・・・私は異なる世界の存在だ。詳しい事情までは知らない。だが・・・それにはこの世界を管理していた、その使徒の力が宿っている」
改めてジン達は持っている羅針盤を眺める。そうなの?と首を傾げて見てくるゼクにジン達では答えられない。
「そこにはマナというこの世界の根源の一部が確かに宿っている。私が取り込んだカケラがそう伝えている」「分かるの?」「概念的なモノだ。すぐには分からなかったが、眠っている時に頭の中に入ってきた」「・・・。じゃあ、この力がその使徒の力だとして・・・なぜこんなモノが存在するんだ?」「・・・」
天井を見つめ無言になってしまう悪魔。バストアップまで残っていた肉体が徐々に頭や耳なども欠け始めてきた。時間もあまり無いなかでの無言は止めて欲しいと思わなくはないジン達。知らないのか分からないのか、それだけでもハッキリしてほしいじれったくなる気持ちを抑えて待つ。すると・・・ゆっくりと口を開いてくれた。
「・・・寂し、かった。いや・・・悲しかったのかもしれないな」「〔(?)〕 それはどういう?」「っ・・・ふふ。悲しい、か・・・。確かに・・・永い間、ただ見守るだけは・・・。私には分からないな」「・・・」(どういう意味なの?)〔分かりませんが・・・彼女の話を思い出すと``取り残された``と解釈できますね〕(そのしとの人達もずっと放っておかれたの?・・・神さまって、ひどいね)〔ええ。この世界にいた上位は・・・身勝手に色々とかき回したようですね〕「・・・」
それは人も変わらないと分かってはいる。だが、事は世界に住む全ての命運が・・・その上位の気まぐれで左右されるかもしれない。そんな考えが嫌でもジン達の脳裏を過ぎってしまう。それでも・・・今までの経験が絶対ではないとも思っている。誰かを守り、大切にしようとした人達がいたからだ。
「全ての人がそうというわけじゃない」〔・・・ええ。そうですね〕「・・・」
軽く息を吐いて思考を切り替える。他にも聞きたい事はあるからだ。
「これを全部集めるとどうなるのか知ってるのか?」「いや。私が求めたのはその根源たる力を取り込む事だけだ。・・・先ほど言った``悲しい``も、たまたま入ってきたに過ぎん。お前が揃えている理由こそ聞きたいくらいだった」「そうか・・・」
知らないのではどうしようも無い。諦めて別の質問に変えた。
「ここにいた人達をどうして襲った?偶然なのか?」「・・・いや。そういう計画だったからだ」(計画っ?どういうことっ!)「っ・・・ああ、そうか・・・」「〔っ!〕」(ねえっ、待って!)
僅かに目を大きく開き納得した瞬間。悪魔の肉体が急速に宙へと散っていく。
「知りたいのなら・・・聞け。その記憶の一部が残っているようだ・・・」「(記憶?)」(ねえっ!待ってよ!)「さらばだ。人間の子供と精霊よ・・・。最後の方は覚えておらんが、実に・・・たのし、い・・・たたか・・・い、だ・・・った・・・」(お願いっ。待って教えてよっ!どうしてボクは・・・っ!)「〔・・・〕」
存在全てが霧散していった床に、ゼクは悲痛な顔で見つめていた。そんな彼を横をすり抜け、悪魔が消滅した事で解放されたピースが羅針盤へと吸い込まれていった。赤と黒のグラデーションが他のピースと一緒に静かに波打っていたのだった。重い空気になったので少しでも和らげる様に声を掛ける。
「ゼックン・・・。さっき悪魔が言ってた事、聞いた?」(・・・ぇ?)〔聞けと言っておりました。つまり、何かが・・・っと、どうやらそれらしいモノが集まってきます〕「(?)」
外が見える大穴の中心に周囲のマナが渦を巻き始めた。それは始祖アルメラと出会った時に現れた異空間と似ていた。
「・・・この先に、ゼックンの知りたい事があるってことだろうな」(・・・ぐす・・・)〔行きましょう。少なくとも私達は知っておきましょう〕(・・・うんっ)
涙を拭ったゼクは力強く頷くとジンの方へと振り向いた。サポートに歩行の補助をしてもらいつつ一緒に渦へ向かって手を伸ばした。
・・・・・・
・・・
賑やかな街並み。大通りなど騒がしい場所も多く見られるが、穏やかで住民達の表情はとても明るく活気に溢れていた。そこへ一台の馬車が小高い山に建つ豪邸へと向かっていた。
ドンッ!
勢いよく両扉が開け放たれると、30前後の身綺麗な恰好をした男が元気に入ってきた。家の中で仕事をしていた給仕達に驚いた反応は少ない。仕事に数名が戻り、数名が控えるように並び頭を下げる。
「来てやったぞドミニスク。元気にしてたかっ!」「っ・・・はぁ・・・。ベルトルン、君もいい年だろう。少しは落ち着いたらどうだ?」「何だ?お前まで大臣達と同じことを言うのか?せっかく抜け出してきたんだ。たまには自由にしたいじゃないか」「はぁ」「あらあら。陛下・・・いらっしゃいませ。久しぶりですね」「ミルバさん。お久しぶりです。少しこいつをお借りしても?」「ええ。構いませんが?」「ちょ、待ってよ母さん。今、こいつは抜け出してきたと言ったんだよ?」「おいおい、仮にもこの国を統べる皇に向かってコイツ呼ばわりは~問題じゃないか~?」「はっはっはっはっはっ。少しは息抜きに付き合ったらどうだ。わざわざこんな辺境まで遊びに来てくださったんだぞ?」「だけど父さん・・・」「こっちは私達に任せて、たまには付き合って差し上げなさい」「・・・」
そうだそうだと、父の後ろで口には出さないが、態度を見せるベルトルンに仕方ないとため息を吐く。そこへクラレスメルクが幼いプリメラを抱きかかえて、奥の廊下から姿を現す。
「いらっしゃい陛下。お元気にしてましたか?」「おう。そっちは・・・ちょっと大丈夫なのか?」「ええ。少し体調を崩しただけですよ」「そうか。あまり無理はするなよ?コイツが慌てふためいて仕事にならんからな」「お前」「ふふふ。分かっております」「・・・」「おお~ぅ、プリメラも久しぶりだな~♪」「っ・・・」「あらあら。まだ陛下を見ると恥ずかしいそうですね」「・・・残念だ」「それじゃあ父さん、母さん。オレ達はこのまま行くよ」「ああ、夕方までには帰っておいで」「分かってる。どうせ泊まるんだろ?」「あ、分かる?」「妻子は大丈夫なのか」「ああ。たまには休暇してきたらと言われたよ」「だったら何で抜け出したなんて」「新しい港の創設開会式なんて俺が行かなくても言いだろ」「・・・お前な・・・」
口を尖らせてめんどくさがっているベルトルンに、ドミニスクはまたため息を吐いて頭を抱えてしまった。それを笑って流す皇帝。周囲でもクスクスと笑顔と笑い声が家の中で溢れていた。
「〔(・・・)〕」
一歩離れた視点。少し俯瞰する形で宙に浮き、まるで映像を見るかの様にジン達をその暖かな光景を眺めていた。無理やり肩を組まれ、連れていかれるドミニスクだがその顔はどこか楽しそうだった。
(とっても楽しそうだね)「これが・・・記憶なのか?」〔古いマナの一部でしょう。ほら場面が変わりますよ〕
周囲に様々な光が集まり乱反射する。まるで映像をスキップしているようだった。乱れた光が落ちつき始めるとフォーブライドではなく、どこかの部屋だった。窓から見える建物はまだまだ建設途中な所が見られるが見覚えがあった。ベルニカの首都である。
〔おそらく皇帝の城のどこかでしょう〕(お城ってこんな高い所に建ってるんだね)
部屋だけじゃなく、窓の外も覗き込もうと近づいたゼクだが何か透明なモノで阻まれた。何だろうと不思議そうに手で探っている。
(ゼク。ここは記憶の一部。私達は部外者なのですよ)〔・・・そうなんだ・・・〕
残念そうに戻ってくるのと同じタイミングで映像の中にベルトルンが登場した。そこ顔には少しばかり年齢を重ねた様に見える。雰囲気も心なしか落ち着いた様に映る。ノックの音がして、執事が外から扉を開けると部屋の中に小さな男の子が入ってくる。
「おお、来たかルグルット」「どうしたの父上?・・・その人はだあれ?」「初めまして皇子様・・・。今日からここで働く事になりました。レネッタと申します」「・・・」
ルグルットとより少し年上の女の子が笑顔で挨拶すると、少し呆けて見ていた少年は顔をちょっとだけ赤らめて小さく頷いた。
「これからこの子には、この城で技術協力をしてもらう事になった。彼女は遠方からわざわざここで働きたいと来てくれてな。お前とも年齢が近い事だし、話し相手になってやってくれないか?」「う、うん。父上が・・・そういうなら」「ふふ。これからよろしくね」「うん・・・よろしく」
レネッタに手を握られたルグルットは恥ずかしそうに顔を背け頷くだけだった。場面は急に変わり城の展望台へと切り替わる。夕日に映る街並みは壮観で至る所に大きく変化を予感させる工事が行われていた。それにはゼクも目を輝かせ、ジンは感動していた。
(うわぁ~・・・)「凄いな・・・」〔先ほどとは違う、熱気が感じられそうですね〕
街の風景を楽しんでいた所、誰かの近づいて来る足音が聞こえてきた。振り返ると画面が切り替わった。展望台にいるベルトルンにドミニスクが近づいてくる所だった。
「来たか・・・見ろ、この壮観を」「ああ、見たよ。着いた時には驚いた。僅か数年でここまで築くとはな」「まだまだだ。ここから、更に我が国は発展するぞ?既存のモノだけではなしえない改革を起こせる。レネッタは凄い。どうしてあの様な人物を誰もしなかったのか不思議なくらいだ」
夕日に輝く街並みを、髪を靡かせながらベルトルンは見下ろしていた。彼の瞳には明るい未来を想像してとても活き活きとしているようだった。
「君が元気になって安心したよ。王妃が亡くなって少し落ち込んでいたからな」「一番はルグルットだ。あの子の分も俺だけが落ち込むわけにはいかん。それに・・・彼女もいたからな。時期に元気を取り戻していくだろう」「・・・。これを世界はどう見るかな?」「世界、というよりは・・・貴族だろうな。どこでも利を考え、動く者がいる。全く、そのせいで余計な手間ばかりが増える」「出来るのか?その列車?というのは・・・」「可能だ。試作段階は済んでいる。来年には首都を中心に広げていく。すぐに、その便利さから各国も技術提供を求めてくる事だろう」「あまり急ぎ過ぎるなよ」「これでも遅れているほうだ。・・・俺達はずっと奪われている側だったからな」「・・・昔の話だろ」「だが、蓄積したモノはどこかで爆発する。・・・ここである程度、清算を付けていかなくてはな」「・・・」
傾く夕日にどこまでもベルトルンの気持ちは明るい。それに対してドミニスクの表情はどこか影を潜めている様に映った。
〔ベルニカは寒冷地が多くあるとも聞きましたね。もしかしたら食料など、生活基盤に影響が出ていたのでしょう〕「この世界の、マナの影響でそうなってるのかもな。緯度や経度に縛られてないようだし」(?)〔星というのは太陽との距離、角度によって温度が違うのです。ですがオーフェンツ・ヴァームではその影響をあまり受けていない。オーラルがずっと夜空だったのも、そのマナが関係していると考えられるのですよ〕(へ~・・・)
分かっているのかは怪しいがとりあえず納得した様な返事だった。そんなジン達を置いて再び、画面は切り替わる。そこに映るのは玉座の間だった。窓から射す光が暗い。厚い雲に覆われた影響が広間の中の暗い雰囲気をより助長させているようだった。そこへ剣幕した様子でずかずかと入ってきたドミニスクが傍に控える兵士に止められながら見上げていた。対して冷たい表情で玉座に座り見下ろすベルトルン。
「考え直せベルトルン。今まで上手くやっていただろうっ」「ここは玉座の間だ。立場もある」「っ・・・!陛下、どうしてあの様な強制労働をっ。あれでは軋轢を生むだけでしょう」「相応の能力に相応の場所を与えた。問題はあるまい。第一、ドミニスク。貴族でもある貴様もどうして協力を拒むようなことをする。それが市民の・・・国の為になると考えているのか?」「お言葉ですが皇帝陛下。市民は人です。道具ではありません。誰にだって家族はおりますし、尊厳だって持っております。あの様な不当な扱いでは・・・」「何か問題が起きたのか?起きたとすれば・・・それはその領地の問題だ。私は相応しいと思う者にあの地を預けていたのだがな・・・」「なっ・・・!」
あまりの冷酷に言い放つ言葉に、ドミニスクがヨロヨロと後退る。
〔かなり雲行きが怪しくなってきました〕(さっきの人とちがう・・・)「(時間と共に人が変わった?それにしては随分と・・・)」
そこへゆっくりと成長したレネッタが姿を見せる。まだまだ少女の見た目は抜けていないが、歩く雰囲気や白衣にはそれなりの地位に付いているのだとジン達にも分かる。
「皇帝陛下~♪ちょっと相談なんですけど・・・。あらぁ?これはドミニスク辺境伯、お久しぶりですね。どうかされましたか?」「・・・いや。何でもない」「あ、そうそう。あなたの所のジルクトちゃん。凄いわね~。私とは違う発想で技術に付いて考えていたのよ。もしよかったら学園ではなくて開発局の方に引き抜きたいのだけども・・・」「・・・あの子が、そう望むのであれば・・・」「助かるわ~♪。私は別の事で手一杯だから困ってたの~。職員だけじゃ足りなかったのよ」「・・・息子も喜ぶでしょう」「それで・・・この雰囲気は・・・?」「問題ない。ちょっとした行き違いだ。話は以上だドミニスク。今後も国の為に頑張ってくれ」「っ・・・失礼、します」
去って行く彼を、残念そうな表情とは裏腹に口が笑っているレネッタと冷たいベルトルンが見えなくなるまで見届けるのだった。
(ねえ。何か上手くいってない感じだけど・・・)〔はい。非常に悪い状況かもしれませんね〕
ゼク達を置いて、ベルトルンは周囲の者達を遠ざけるとレネッタが傍へと耳打ちする様に寄った。画面は2人のすぐ傍へと近づく。
「どうした?」「例のマナの件。どうなりましたか?」「・・・難航している。存在するのは間違いないのだな?」「それは確かです。文書にはいくつもその内容に触れている箇所がございました。ですが明記はしていないようです。何か理由があるのでしょう」「忌まわしき歴史か・・・。確証は持てないが・・・1つだけ、その可能性に心当たりがある」「っ・・・。何処ですか?」「フォーブライト邸だ。その地下に・・・とある石が眠っている。赤と黒のよく分からないモノだそうだが・・・ずっと大事に持っているそうだ」「それだけですか?」「ドミニスク達の世代では分からんだろうが・・・あそこの先祖は強欲貴族の1人だ。力や金、権威に動く強硬派だったと聞く。そんな奴らがわざわざあの地に留まり、大事そうに残す理由があると思うか?」「・・・可能性の1つ、ですね?」「残念だ。よき友であったのだが・・・」「今後の計画に戦力を増やしておこうかと考えておりましたが・・・よろしいですね?」「好きにしろ。だが・・・最後は私も見届けよう。それが・・・友に送るせめてもの手向けだ」「では・・・後ほど」「ああ」
ゆっくりと離れて行く2人を、映像の向こうのジン達は険しい表情で見ていたのだった。
【ジン・フォーブライト(純、クリス)】8才 (真化体)
身体値 178
魔法値 195
潜在値 211
総合存在値 333
スキル(魔法):干渉、棒術 6、マナ零子 5、感応 8




