378 人の価値
門から一斉に逃げてくる住民達。その姿はまさになりふり構わずといった状況だった。そこへ駆けつけてきたのは秘密裏の送られていたファーランの兵士達とレジスタンスだった。
「クソッ、遅れたかっ」「まだだ。先にオレ達が奴らを倒す」「分かった。我々は市民の救援に当たる。半数は彼等に付いて行けっ」「「「了解」」」
軽く手でジェスチャーするだけで、即座に半数に別れ動いて行くファーランの兵士達。思わず、その練度の高い動きに下を巻くレジスタンスのリーダー、レックス。
「さすが」「我々の仲間もそちら同様、どこかで戦っているはずだ」「分かった。見つけ次第、報せる」「頼む。こちらも、そちらの仲間を見つけ次第、報告しておこう」
互いに頷き、仲間達も理解したと首肯する。そして武器を抜くと同時に一斉に門へと向かってレジスタンスとファーラン兵士が駆け込んでいくのだった。
・・・・・・
「くっ」「うう゛っ」「我慢してっ、走ってっ!」「っ!」
建物が瓦礫の山と化し、いたる所に死体が転がっていた。五体満足な状態もあるが悲惨な者も数知れず、直視してしまった生徒の吐きそうな口を必死に堪えていた。プリメラは中等部の先輩と別れて出口へ向かうと、すぐ先へ出発したばかりの教師や生徒達と合流した。グループ分けされ最後のチームに加わったようである。どういう理由かは大体わかる。取り残されたグループだ。能力や血筋を大事にする国の行動は優劣を決め、優秀な者達には手厚い保護の下、避難したと分かる。
「クソッ、あのガキッ」「ひいぃっ!」「どいてっ!」「お・・・ごっ・・・!」「走ってっ!」
プリメラが1人、また1人と引率した教師と中等部の1人に加わって襲い掛かるデッドグレムゲン達を屠りながら逃げる。大きな風穴をお腹に開けられ倒れる。怯んだ生徒を教師や先輩が檄を飛ばし、止まりそうになる足を動かせる。学園にいた方が安全かもと感じてしまうが、学園ではさらに激しい爆発音が起こっていた。釣られた改良型のゴーレムらしき存在とアーマー部隊が入って行くのを遠目で目撃する。
「(あれでは先輩達がっ・・・)」
悔しい思いに顔を歪ませるが、足を止める事は出来なかった。先輩達の無事を祈り、プリメラは走る。
「きゃあっ!」「っ!」
殺人マシーンと化したゴーレムが一般人を襲おうとしていた。思わず魔力を撃ち込んでプリメラは助けてしまう。威力が弱かったのか、直撃した箇所に穴が開いたが気にすることなく標的を変えた。それと同時に離れた位置にいたゴーレムが2体追加で襲い掛かって来た。
「っ・・・!」「逃げなさい!」
教師が慌てて彼女の前に走ろうとするが、プリメラは冷静に立ち止まり魔力を練り始めた。
(狙うんじゃない。引き寄せる・・・)
一瞬、姉が教えてくれた言葉が頭を過ぎった。勢いよくしゃがみ込むと練った魔力を両手に地面へ付ける。ゴーレム3体は何かに反応し引っ張られる様に地面に向かって殴り掛かろうとしていた。そこへ埋めるように回転した魔力が頭から貫通し、ゴーレム3体を再起不能にした。
「これはっ・・・!」「強い魔力に反応した・・・?」「あ、ありがとうございます」
襲われていた女性は赤子を抱えて礼を言って来た。
「先生っ。この人も一緒に」「っ!わ、分かりました。さあ、ここを非難しますよ」「っ・・・!」「今度はどうしたっ?」「・・・。私を置いて先に行っててくださいっ」「あ、ちょっ」「待ちなさいっ」「先生っ」「っ・・・先を行きますよ」
プリメラは女性が逃げて来た脇道に向かって1人走って行く。残されたグループは教師達が引率の下、戦場が少ない道を目指し、首都の外へと避難するのだった。
・・・・・・
「ひぃっ、助け・・・」「神さっ・・・ま・・・」「止めて・・・お願いっ・・・」「いやあああーーーっ!!」
周囲で巻き起こる叫び声。誰かの反応するたびにレックスの顔が険しくなる。
「お前は先に行け。オレ達が助ける」「すまん」「こっちは我々が」「わかった」
散り散りになり救援に向かうレジスタンスとファーラン兵。
「何だ貴様らっ」「何故、ここに──」「これは国際──」
家に隠れていた市民を襲おうとしてアーマー部隊を問答無用で斬り伏せる。そこには一切の躊躇もなかった。
「ちっ、何だこのゴーレムッ・・・」「硬いっ・・・」「しっかりと魔力を上げろ」
頑丈なゴーレムに苦戦しつつ、何とか破壊に成功する。
「機械兵か・・・。防御結界!」「ははっ♪」「耐えろっ!そのまま操縦者を狙えっ!」
魔法弾とミサイル、宝石から捻出し溜められた魔力砲を叩き込む機械兵。その破壊力と存在感に操縦者は愉悦声を漏らす。自分のやっている行いを心底楽しんでいるようだった。
「(下衆め・・・)」
指揮を執っていたファーラン兵の顔が歪む。その気持ちが他の者達にも伝わったのか防御結界で耐えつつ、後方からの仲間の1撃による待つ。程なくして弱った一瞬、機械兵の姿が見えた瞬間、2人の兵士が生み出した魔力の槍が操縦席のある腹部目掛けて飛んで行く。走行にプラスして纏っていた常備型防御結界をあっさりと貫き、突き刺さった槍。ガクンとガク付き機内で小爆発が発生し煙を上げて完全に沈黙した。ダラダラと隙間から大量の血が滴り落ちていた。
「せめてもの償いだ」
それだけを吐き捨てるとファーラン兵達は人々を救助、襲い来る敵を倒しに向かった。改良型ゴーレムにはかなりの苦戦を強いられるが、アーマー部隊と機械兵は対策さえ分かれば問題ないと分隊はさらに分けられ首都に散っていくのだった。レジスタンスも同様で、1,2が付いて行く形に分けられ、それぞれがテロリスト達の排除へと向かっていくのだった。
・・・・・・
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
息を荒げながら周囲を探すプリメラ。破壊された建物で溢れかえるなか、彼女の走っている区画はまだ比較的壊された箇所が少ない様に見られた。
「(どこ?)」
副次的なのか自分が練った魔力に比例して身体強化された耳か感覚か、魔力なのかが・・・直感的に友達の居場所を報せてくれたように思えた。理解はできない。詳しく考える余裕も無い。ただなんとなく・・・こっちにいた様な・・・。そんなアバウトな感覚を捉えてしまった。
だがそれもほんの少しだけだった。
研ぎ澄まされたものかと知覚しようとするが・・・既にこの辺りに気配を感じなかった。遠くで鳴り響く爆発音と微かな振動。今いる場所には誰も居なくなったように静かだった。
「(ここじゃない?・・・いったい──・・・!)」
探し回っていた足が止まる。遠くの方で誰かの声が聞こえた。急ぎ方向転換して駆け出す。先に続く道が徐々に暗くなろうとも彼女の足は止まらなかった。
・・・・・・
静けさが強まったほの暗い空間。横幅が10メートル程もあり前後には遠くにどこかへ通じる光があった。その先に本通りへと出る道が通じているのにベルニカ学生はその中間で立ち往生していた。理由は簡単だった。死体だらけのその道に時折、襲撃者が徘徊する様に現れるからだった。今やこの静かな空間でも1,2人目撃するだけで彼等は出ようとしなかった。
「どうするんだよっ!貴様が安全だというから僕はこんな所まで付いて来てやったんだぞ!」「そうだっ!貴様のせいでオレ達は死ぬんだぞっ!」「どう責任をつもりよ!」「ごめっ・・・ごめんなさい・・・っぐ」「泣いて謝って許されると思っているのかっ、ええっ!貴様諸共、ここを生き延びたら家族全員を打ち首にしてやる・・・」「っ!止めてっ!」「うるさい!」「あぐっ・・・ごほっ・・・えほっ・・・」
その恐怖と絶望、無責任さを棚に上げ、平民であろう女の子を寄ってたかって貴族の子供達は怒鳴りつけ、あまつさえ暴力を振るっていた。蹴られた女の子は壁に叩きつけられ、お腹を押さえて蹲る。怒りに任せさらに殴りつけようとする前に1人の貴族が声を掛ける。
「どうするんですかこのままでは・・・」「分かっている・・・。こいつを盾にどこかへ・・・くそっ」「ほ~ら僕ちゃ~ん♪こんな所で遊んでいたの?ねえお姉さんと気持ちいい事しない?決して後悔させないわよ~?」
デッドグレムゲンが現れ、取り残された子供達は恐怖に竦み上がる。
「あら?怖いの?んん~♪その顔も良いわね~、ゾクゾクしちゃう。先ずはどの子にしようかな~・・・?」「死にたいのかしら?だったらあなたからにしましょうか?」「ひっ!」「あら、ウソ、やだもぅ・・・。はぁ~あ。最悪」
イラつきをそのままに魔法を撃ち込んだ貴族の女の子。だがそれを片手間で相殺すると油断した所を首を掴み持ち上げた。
「・・・っ!邪魔よっ!」「アンタこそ邪魔ねぇ」「はっ?あぐぁっ!」「死にたいのかしら?だったらあなたからにしましょうか?」「ひっ!」
身体強化で簡単に持ち上げられた女の子は目の前の女性に恐怖し漏らしてしまう。
「あら、ウソ、やだもぅ・・・。はぁ~あ。最悪」
靴を汚された女の声が猫なで声から素へと変化する。それと同時に内包する魔力を解放した。その瞬間、彼等は誰も声を発する事が出来ず恐怖でガタガタと震え出す。
「優秀な子供って割には呆気ないわね~・・・。あ~・・・だから、大会にも出てなかったんだ~」「「「っ!」」」
貴族達から悔しいが何も言い返せないという涙混じりの睨んだ目を向けられるが、テロリストの女はそれを恍惚と体を震わせ喜んだ声を上げた。
「ああ~♪良いわ~。その悔しい顔・・・ホント、たまんないわね~♪」「っ!」
下から舐め付ける様に歪んだ笑みで見られた女の子が恐怖に涙を溢した瞬間だった。魔力が掴んだ女性の腕に突き刺さった。突然の痛みと魔法に腕を抑え、飛び退った。
「つっ!」
血がポタポタと垂れる下がった腕を支え、飛んできた方角を睨む。そこには駆け込んで来た中等部の女性がいた。
「今すぐ、その子達から離れなさい」「っ・・・へっ。誰が」
女性が無事な腕を上げて手首を捻る。するとどこからともなくゴーレム2体降って来た。まるで指示に従う様に彼女の前後で立ち止まる。
「あーら、形勢逆転。可哀そうにちょっとは助かったとか思った?」「・・・」
睨む女の子を無視して、喜んでいた子供達がまたしても絶望に落とす。「行きな」と号令を掛けられたゴーレムが女の子に向かって飛び出した。武器を構え緊張した面持ちで対応しようとした女の子の左右を何かが通り抜け、次の瞬間にはゴーレムは大部分を貫通し、ガラクタへと変わった。
「はぁっ?!」「えっ!」
同時に振り返るそこには、プリメラが立っていた。
「すみません。勝手に出しゃばった真似をしてしまって」「え?ああ、いえ。・・・助かったわ」
ほくそ笑み女性の方へと振り向く中等部。それに対してテロリストの方は驚愕の顔をしたまま固まっていた。
「(ウソでしょ。あんなの倒せるなんてただの子供じゃ・・・ってその顔っ!)呪われた貴族の生き残りがぁ、アタシの邪魔をすんじゃないわよ!」「「「っ!」」」「(呪われた?・・・そうか、この子)」
ピンときた子供達の視線がプリメラに集まる。だが彼女は一瞬こそ驚きはしたが、堂々とした佇まいで答えた。
「どう言われようが結構です。それでも私は・・・フォーブライト家をっ・・・!家族をっ・・・誇りに思っています!」「黙れぇっ!」
感情に身を委ねた女はプリメラ目掛けて飛び込んだ。それを見たプリメラが一瞬だけ辛い表情をして呟く。
「ごめんなさい」「ぎゃああああああああああ・・・──」
一瞬にして体中に燃え広がり、ドサッと床に転がって絶命する女。何が起きたのか分からない子供達。中等部の女の子だけがプリメラが瞬間火力で発した魔法を認識できていた。
「そう・・・あなたも被害者なのね・・・」
デッドグレムゲンのトレードマークとも言える衣装よりも真っ黒い隅へと変わり、横たえる遺体に彼女は静かに祈った。少しずつ危険が去った事を認知した貴族の男が笑った。すると他の男の子達も笑う。
「はは、ははは、はははははははははは」「「はははは、はははははははは」」
どういうワケか一頻り笑うと先ほどと同じ傲慢な態度へと戻る。
「よくやった。褒めて遣わす。多少使えるようではないか。そこの平民よりよっぽど忌み子の方が優秀だ。特別に貴様達には僕達の安全な避難を頼むぞ。なに、忌み子とはいえ僕が父に頼めばそれなりの褒美はやれるぞ。期待するがいい」「よっしゃあ、これでオレ達は無事だ」「はぁ~早くこっからおさらばだ」「あの」「黙れよ、役立たずがっ!貴様は後で覚えておけ」「っ・・・」「「・・・」」
勝手な振る舞いに中等部の女の子は溜め息を、同じ貴族の女の子は何も言わず下を向いた。同じく悔しくて何も言い返せないまま涙を浮かべていた女の子へ向かってプリメラは近づくと、手を差し伸べた。体を支えようとしゃがみ込む。
「大丈夫ですか?立てますか?」「ぇ?・・・あの・・・?」「おい・・・お前。聞こえてなかったのか」「頑張ってください。ここは危険ですから」「え、あの・・・ありがとう、ございます」
チラチラと交互に見るがプリメラは女の子に優しく微笑み支えてあげるだけだった。
「貴様っ。オレ達の話がっ──」「そんな元気があるなら。いますぐ逃げればいいのです。あなた方は貴族。ベルニカ学園に通う事の出来る優秀な血と能力を持たれた方々。ならば・・・今の戦い、少しは魔法を使われては良かったのではありませんか?」「は?何を言って・・・」「そんな事出来るわけ──」「相手は待ってくれませんよ?そんな言いわけが通用するのなら、こんな悲惨な出来事何て起こっていません。違いますか?」「「「・・・」」」「事情は存じ上げませんが、サッサと逃げるにしても早くした方がよろしいですよ?」「「「?・・・なっ」」」
プリメラの視線の先にはこちらを見つけたと言わんばかりにゆっくりと機械兵が1機、近づいてくる所だった。
「ひぃっ!」「に、逃げろっ」
慌てて逃げようとする貴族の子供達。急ぎ中等部の女の子が盾に入る様に全員の前に立つ。すると怯えていた貴族の一番偉い子が立ち止まった。釣られて逃げようとした男の子達も止まって振り返る。
「(そうだ・・・安全な所が何処にあると約束できる?あんな機械、先ほどの魔法があれば・・・)」「どうしたんですか?早く逃げましょうよ」「(コクコク)」
必死な2人に対して男の子は笑みを深め、堂々と立ち上がる。
「はっはっはっ。何を逃げることがあるここで、あの敵を倒せば問題あるまい。安全というならここ以外にないではないか」「そ、そう言われましても・・・」「逃げたければ逃げるがいい。その先が安全ならな」「えっ・・・」
ゆっくりと近づいて来る機械兵。走行の一部が開きそこからミサイルが飛んでくる。すかさず女性が魔法を拡げ結界を張った。汎用性が高いが消費と持続に問題がある緊急用であった。
「(辛い・・・!)早く行きなさい!私が喰い止めてる内にっ!死にたくないでしょ!」「「「っ!」」」
その言葉にプリメラと一番偉い貴族の男の子以外が反応し、反射的に立ち上がったがどうすれば良いのか右往左往してしまう。
「(どうして動かないのよっ!)そんなにこれは持たないのっ、早く逃げて!」「はははっ、だそうだ!早く先ほどの魔法を撃ちたまえ」
ビキっと額に青筋を浮かべそうになる中等部の女の子にため息と共に小さく息を吐くプリメラ。
「先輩、少しだけ時間をください」「ええっ!ここからどうするのっ」「慣れてないんです。時間を稼いでください」「っ・・・ああ、もう。分かったわっ」
ヤケクソだと防御魔法に注力を注ぐ。丁度そのタイミングをミサイルが撃ち終わる。どれだけ格納していたのか不明だが、次には魔法弾を撃ちながら、器用に魔力砲を撃つチャージまで開始し始めた。
「(ヤバッ!)早くお願いっ」
流石に受けきる自信がないと叫ぶ彼女を置いて、プリメラは魔力を練り始めた。
「(大丈夫、少しずつコツは分かって来た。それに・・・よくはないけど魔力がいつもよりも集まってくる)」
プリメラは目を閉じ体内に巡るマナをしっかりと感知、循環させたものを無意識に手に集中。ゆっくりと持ち上げた両手にマナは集い、引き絞るようにして矢を射る構えを取った。目を開くとそこには魔力で生成された火を纏った矢が1本出来上がっていた。魔法の矢であった。
「限・・・界っ!」
防御魔法が弱まり、その入れ違いで放たれた機械兵からの魔力砲。直撃すれば即死も免れないなか、プリメラは意識して矢を射った。意思に呼応する様に一直線に飛んだ魔法の矢が魔力砲と衝突する。激しいぶつかり合いに周囲の建物へ魔力の一部が飛んで行き破壊して行く。最初は小さい穴、そこから徐々にホースの水があらぬ方向に飛んで行くように広がっていく。ガラガラと崩壊する周囲の建物。だがその散った魔力粒子は全て魔力砲のモノだった。気付いた時には操縦者は遅かった。一瞬の攻防はあっさりとプリメラの魔力が勝ち。機械兵諸共、数十メートル先まで大きな穴を穿つのだった。
「・・・ふぅっ!」「あ、大丈夫?」「ええ。ありがとう、ございます」
一瞬立ち眩みを起こし、平民の女の子に支えてもらう。魔法の矢は生成者の能力に左右される。そう簡単にポンポン使用するのは難しいが、この瞬間は圧倒的にプリメラの方が強かった。それだけの事だった。
「はぁ~。助かった~・・・」
流石に気力と魔力をかなり使ってしまい、少し座り込んでしまう中等部の女の子。
「ありがとうございます。おかげで助かりました」「(ふるふる)いいえ。どうせあのままでは、こっちの身が危なかった。感謝するしかないわ。それに・・・」「はい?」「何で、あんな凄い魔法を撃って平然と立っていられるのっ」「いえ。さっきフラッと」「だとしてもその元気って・・・。はぁ~(本当はこの子の方が恐ろしいんじゃないかしら?)」「大丈夫かっ!」「え?なに?」
安堵していた所へ見知らぬ男達が声を掛けてきた。
「オレ達はレジスタンスのモノだ。ほら、あそこにファーランの兵士もいるぞ」「どうしてファーランが・・・というかレジスタンス・・・?!」「驚くのも無理ないが、立てるか?ここは危険だ早く首都の外まで避難するんだ。この通りを出れば安全だ。さあっ」「・・・やったー。オレ達助かるんだ」「死ななくて済んだ」「良かった・・・本当に、良かった・・・」「「「・・・」」」
安堵する貴族の男の子達と平民の女の子。気が抜けそうになるがもうひと踏ん張りと立ち上がる中等部の女の子。そんななかプリメラはずっと視線を変えず前を向いたまま。貴族の女の子はバツが悪そうに視線を逸らし、立ち上がっていた。
「ふん。まあ、いいだろう。貴様らが来た事で僕も活躍が出来たわけだ」「・・・はぁ?」
誰が言ったのかは分からないが、理解できないという言葉だったのは確かである。そんな偉そうな貴族の子供はプリメラの肩に手を乗せた。ゆっくりと顔を近付け耳元でささやく。
「今回の事は僕のおかげだ。分かったね?」「(はぁっ!)」
驚く中等部の女の子を置いて彼は続けた。
「今回の采配と勇姿は僕がいたからこそ、起きた勝利だ。君の手柄ではない。・・・その事を重々、理解してくれたまえ」「っ!」「ぶはっ!」
バチンというには重かった。平民の女の子が無意識に魔力を込めたビンタは掌底と変わらず、激しい戦闘でも、まだ残っていた壁に向かって顔面をぶつけたのであった。驚く全員(プリメラを除く)。頭に来た貴族の子供達が詰め寄ろうとする前に女の子は言った。
「そんなに自分の手柄が大事ですかっ!」「「「っ!」」」
あまりに気迫の籠もった声に足を止める子供達。涙を浮かべながらもその強い意志には誰も口出しできなかった。見かねた先輩が立ち上がりゆっくりと女の子の肩に手を乗せる。
「量る天秤を間違えてはいけない。・・・行きましょう」
震えながら立ち上がろうとする貴族の少年に言葉を残し、先輩は女の子を連れて大通りへと歩いて行く。
「あのっ。あなたも・・・」「ごめんなさい。私は行かなきゃならない所があるから」「あっ」「あ、おいっ」「そっちはっ」
女の子の呼びかけに振り返らずに答えるとプリメラは周囲の制止も聞かず真っ直ぐに何処かへ向かって駆けていくのだった。慌てて追いかけようとするレジスタンスだが、身長差と邪魔になった瓦礫のせいで見失う事になるのだった。
・・・・・・
かつては首都でも人通りが少ない道で、今やボロボロになっていく灰色の町にある一角の通り道。そこは隠れた名店がいくつも存在し、よく通ったケーキ屋さんもあった。
「・・・」
最初の頃よりもかなり騒ぎが小さくなり、爆発音などが少なった気がした。今いる場所に、生きている人はおそらくもう居ないだろうと思われた。そこに惹かれたのは偶然な気がしなかった。そして見つけた。
「・・・プリメラちゃん」「・・・良かった。無事だったんだキャリー」
その親友はテロリストと同じローブを着ていた。
【ジン・フォーブライト(純、クリス)】8才 (真化体)
身体値 178
魔法値 195
潜在値 211
総合存在値 333
スキル(魔法):干渉、棒術 6、マナ零子 5、感応 8




