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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
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366 再会・・・優しいひと時

「霊石種は体内に宝石を持っていると習った事はありますけど・・・他の種族も?」「(フルフル)。元々、体内に持っているのは霊石種のみなの。彼等もそれを無理矢理取り出すことはしないわ」「あー・・・(まあ、そうだよな)」〔余程、それが気に入らない心情的な何かでもない限りは・・・そうですね〕


 命に関わるかもしれない危険な行為だからジン達も納得する。


「何らかの事故などで取り出されない限りは霊石種だって放置する。だから・・・それが取り出されるという事は・・・命に関わる時だけ。・・・普通は亡くなった時に残る遺物なの」「・・・それが、あれ」

「・・・。(コクン)」


 ジン達は、量自体は少ないのにマナの質が高い理由にようやく理解できた。


〔なるほど。生命の残滓・・・。それなら質が高く残るわけです。器から離れれば、時間と共に消えて行くマナエネルギーですが・・・。代わりとなる受け皿があれば・・・長く留まる〕「(死んだ事に変わりはないの?まだ生きてるとか?)」〔思い出・・・データの一部と同じで、遺品と違いはないでしょう〕「(・・・そうか)」


 マリティカが精霊達と一緒に持ち出した理由も分かる。


「あの工場は・・・裏で霊石種や他の種族の魔力を吸い出したその宝石を闇に売りさばいていたの。行き先は掴めなかったけど・・・かなりの組織と繋がっているのは確かだった。・・・あの宝石の量。きっと長い時間を掛けて、人身売買や誘拐で集めたんだと思う。命すら奪って魔力を抜き出し、亡くなった遺体の宝石すら取り出す・・・。どこまで腐ってるの」


 潜入時にその光景を見たのだろう。マリティカの表情には怒りと悲痛の思いが込められていた。


「盗んだ資料。そこから判る身元には・・・辛いかもしれないけど、お届けしなくちゃ・・・」「・・・だから大切に持って来てたんですね」「・・・ごめんなさい。暗い話になっちゃって」「ああ、いえ。こっちが聞きたいと思ってた事なんで気にしないでください」「・・・。随分と成長されたのですね」「?」「あ、いいえ。何でもありません」〔・・・〕


 知りたかった話は聞けた。他にやれる事はないだろうと思い、部屋を出て行く。


「ありがとうございました。それじゃあこれで失礼します」「あ、少し待って」「?」


 ジンの傍へ近寄るとしゃがみ込んで、出来るだけ同じ目線の高さになる。


「あなたなら分かっていると思うけど、今回の事や特殊宝石については秘密にしてね?ギルドだけじゃない、他の国々にとっても慎重な話なの。だから、不用意に誰かに話さないでね。もしかしたらあなた自身も巻き込まれちゃう」「・・・はい、わかりました」「・・・今回は巻き込むことになっちゃったけど・・・。あなたの旅が無事である事を祈っているわ」「はい。・・・じゃあ、マリティカさん。ありがとうございました」「気を付けてね」


 頭を下げ治療室を出て行くジン。その見えなくなった後ろ姿をしばらく彼女は見つめていた。


「(どうか、お気をつけて・・・。ジン様・・・)」


 ・・・・・・

 ・・・


 人質達を救出してから1日が経過した夜のとある貴族邸。


「んぼっ!」


 顔面を殴られ伯爵は盛大に倒れ込む。怒りに震えた男はそれだけでは収まらなかった。


「貴様・・・!自分がどれだけの失態を犯したのか分かっているのか?!これは身分だけの問題ではないぞ!」「がっ・・・あが・・・」


 押さえる鼻から血をボタボタと垂らし、何とか震える体に力を入れて起き上がろうとする。


「貴様だけの問題ではない。私の命までも危険に晒したんだぞ。この馬鹿者がぁっ!!」「す、すみまぜん・・・。夜間の侵入に誰も気付かず──」「万全だと言ったのは貴様だぞ!」「は、はいぃぃ!そうなのですが・・・無能な警備共が眠りこけ、油断し捕まったようで・・・。奴らは即刻処分」「貴様も処分してやろうか!」「ひぃぃっ。も、申し訳ありません・・・!」


 土下座をしてガタガタと震える伯爵。

 男はテーブルに置いてあった酒の入ったグラスを一気に呷る。

 少しはその美味しい味に溜飲が下がる。


「はぁ・・・っで。被害は」「っ。今回の収穫物を全て・・・。挙がって来た報告からは、あの工場での内容と実験結果の資料が盗まれたと・・・」「くそっ!・・・計画の見直しが必要か・・・」「あの工場は即刻廃棄。我らの名を語った別会社だと残しておきました」「・・・だが、こちらの立場が危うい。分かった。ほとぼりが冷めるまでは貴様は大人しく自分の領に下がっておれ」「あ、その事なのですが・・・」「なんだ・・・」「っ」


 不機嫌を更に煽る形にさせまいと、まだ固まっていない鼻血もそこそこに伯爵は立ち上がり、慎重に言葉を選んだ。


「侯爵・・・確認したいのですが。兵はいくらほど動かせますか?」「?そんな事を聞いてどうする?」「こちらの計画は・・・無能な部下共のせいで失敗に終わりました。再起するにも時間を要します。ですが、もう1つの計画が・・・」


 苛立っていた侯爵が顔色を窺う伯爵の瞳と言い方にピクリと眉を動かした。


「・・・表立っては無理だろう。だが、直属の小隊なら・・・」「あと少しだと報告を受けております。近々にでも、あちらへと・・・」


 その言葉を聞いた侯爵がようやく笑みを見せた。


「ようやくか・・・。全くしぶとい奴だ」「内包している魔力の高さが原因かと。耐性があったのでしょう。ですが、それが仇となる事もあります」「気付くころには死の手前か・・・。ようやくいい話が聞けた。よかろう。いつ動かす?」「近日中。また連絡員をそちらへ向かわせます」「そうか・・・。他の者共にそれらしい口実をつけなくてはな」「伯爵以下には、日付をずらして既に送ってあります。後は・・・侯爵のご判断次第」


 少しずつ気持ちが落ち着いてきた侯爵は、ソファーに腰かけ、空いたグラスに酒を入れる。


「随分と手が回るじゃないか・・・。全く、今回の失態は何だったのだ?」「・・・申し訳なくとしか、言いようがありません」「偽装は出来ているのか?」「ははっ。今日中には完了すると聞いております」「(コクコク)・・・よし。とりあえずこの計画まで邪魔されるわけにはいかん。裏での活動を抑え、粛々と表向きの仕事をこなしておけ。国か冒険者かレジスタンスかは知らんが・・・突かれても大人しくしておけよ」「承知しております」


 深々と頭を下げる男。侯爵はテーブルに置いてある明かりを見つめながら酒を飲む。


「(・・・誰かは知らんが、こんな事で世界は救えんぞ。私は勝ち馬に乗る)」


 ・・・・・・

 ・・・


 首都ベルニカ。


「・・・」「・・・」


 プリメラとキャロラインは休日に街中が異様な雰囲気に包まれている事に気が滅入りそうだった。


「はぁ・・・。全く、どこもかしこも戦争戦争と・・・。不安なのか起こしたいのか、分からなくなりそうよ」


 プリメラの発言に思わず苦笑してしまうキャロライン。


「仕方ないよ。みんな今の生活が大事なんだよ。それが無くなるって思うと誰だって怖いから」「だからって、ただの噂を広めて何の意味があるの?国は本気で起こそうとしているの?」「それは・・・私には分からないよ」「そうだったわね。ごめんなさい」


 自分が苛立っている事に気付き素直に反省する。


「今日はこれからどこに行きましょうか?」「キャリーはいつもの本屋ではなかったの?」「うーん。そうしたいけど・・・ちょっと気になる洋服を見つけちゃって・・・」「じゃあ、そっちを先に行きましょ?その後は、近くのお店でお食事ね」「ふふん。あのケーキ・・・。気に入っちゃったんだ?」「そ、そうね。ちょっとだけよ。私はいつものショートケーキが好きなの」「はいはい。じゃあ、そっちも時間があったら行こうよ」「・・・ええ」


 周りの暗い空気などを無視する様に、楽しく話し合いながらプリメラ達は休日のベルニカを楽しむのだった。


 ・・・・・・


 コンコン。


「もうそろそろ到着するよ。支度をしなさい」「分かりました」


 広げてしまった荷物を手早く直す。


「・・・久しぶりね、ユティ」「うん。お父さんも、お母さんも元気かな~?」「あ、そっかぁ。あなたは入学式前以来だったわねぇ」「うん。だから・・・8ヶ月ぶり?」「・・・もう。あの夏休みに顔を見せたらよかったのに・・・」「あの時はお姉ちゃんとおじさんの警護とお手伝いが優先だったからね。私もずっとは帰っていられなかったし・・・」「・・・全く。テロリストには困ったものね」「ふ・・・タイミングを気にするような相手じゃないよ」「それで、思い出した。大会にも現れたそうね。無事でよかったわ」「どこから・・・って、学園長だからか」「ええ。詳しい事はおじさんが教えてくれたわ」「流石、商売人。そういうツテも持ってるんだね」


 服装を正し荷物を持ち上げるユティ。今日は学生服ではなく、長袖のワンピースを着ていた。

 冬に入ったとはいえモナメスは平均的に気温が高い。だから羽織るもの1枚とワンピースだけで十分に過ごせたりする。


「・・・こうして帰ってくると、ジルベガンやアルメラも本当に寒かったんだね」「ベルニカは山に雪が積もるのが当たり前だそうよ。中には一年中、雪に覆われた場所もあるとか」「ええ~。流石に寒すぎるよ~」「あなた・・・氷の属性でしょう」「耐性があっても、寒い事には変わりないよ~」「・・・んも~。我が儘ね」


 呆れる姉のレティシカ。ユティと一緒に、ゆっくりと立ち上がって簡単な手荷物を持って外へと出るのだった。


「おじさん。お待たせ」「ああ。いや構わないよ」


 暖かい笑顔で答えるユークリッド王。そばにいた護衛が気を利かせて離れて行く。

 個人用としてはなかなか豪華な船に乗っていたユティ達。

 王であればもっと相応しいモノを、との声も言われるが・・・今回は家族に会うための帰省に近い。

 王専用の船や軍艦だと目立ちすぎて、居場所を報せる様なものだった。わざわざ危険な状況に追い込む必要はない。


 ただ家族が集まる・・・それだけなのだから。


「・・・見えてきましたね」「あー・・・そっか、思ったよりもあんな形してたっけ~?」「おや、帰ってくるのはいつぶりかな?」「8ヶ月だそうです」「あ、はっ・・・。それは、義姉さん達も喜ぶだろうね」「うん・・・でも、本当に知ってるの?」


 ユティの視線に釣られてユークリッドもレティシカの方へと振り向く。


「(コクン)たぶん、ね。お父さんも知っている可能性もあるけど・・・一番は・・・」「お母さん、か」「ワープポータルは移動や訓練用としか聞かない。自身との対話だと言っても・・・本当にそんな事が起こるのかい?」「・・・。少なくとも学生達に聞いた話では、知らないそうです。あのテロリスト・・・。おじさんなら何か──」「(ふるふる)。ジン君という子に倒されたショックもあるかもしれないが・・・。過度の魔力供給による精神異常のせいだろう。あれではマトモに話しも出来ないと言われたよ」「・・・そうですか」「じゃあ、やっぱり・・・。お姉ちゃんが見た召喚獣について知っているのは、お母さんだけ・・・」「そうなるわね。無視してもいい話とは思えないから、ここまで来たのだけど・・・」


 外に視線を移せば、少しずつ近づいて行く孤島が見えた。

 レティシカは不安な気持ちが拭えないまま、故郷の島へと辿り着こうとしていた。


 ユティとレティシカの故郷である島は大陸から1時間といった距離にある、孤島といっても正確には島群であった。


 中心となる大きな島には村が7つ、大きな町が1つと港町が1つあった。

 様々な商品はそこへ定期船によって集まってくる。屋台も多く、漁業船も含め、そのほとんどがこの場所に停泊していた。


 彼女達の実家はそこから寄り添う形に点在する小さな島の1つにあった。

 地元民しか使わないための簡素な港。しかし、そこに到着した瞬間、ユティは帰って来たという気持ちが強く押し寄せて来た。


 真っ先に降りると両手を伸ばし、全身で空気を吸い込む様に体を反らして風を浴びた。


「んんーーー・・・あぁっ。この塩の臭いに、変わらない景色・・・。本当に帰って来たね」「こーら。ちゃんと荷物を持って降りなさい」「はっはっはっ。久しぶりなのだから、まあ多めに見て上げようレティ」


 叔父に言われては仕方ないとため息を1つ溢し、下りてくる。


「ありがとう」「いえ」


 護衛騎士がユティの荷物を一緒に運んできた。

 レティシカも港に降り立った時、周囲の景色を改めて見回した。


「・・・ここは変わらないわね。ま、いきなり変わったらそれはそれで驚くけど・・・」「私は落ち着けていいですね。首都だとなかなかしがらみも多くて・・・」「あら?それだとせっかくの護衛騎士が迷惑だと」「いやいや。十分に助けて貰ってますよ?ただ・・・少し1人で居たい気分というモノがあるからね。レティだってそうじゃないかい?」「私は・・・。ふ・・・ネミリアがいるから。何かあっても彼女なら大丈夫よ?」「時間も確保できる・・・。大切にしなさい」「当然です」


 羨ましく思いつつもユークリッドは姪の元気な顔に少しホッとしていたのだった。


 ・・・・・・


 小高い丘の様な山には所々にぽつぽつと大きめの家が建っていた。

 石で出来た部分もあるが比較的、現代の技術を用いたセメントの様なしっかりとした壁で作れらていた。

 その1つ、港から一番奥の丘の頂上。そのなだらかになった場所に2階建ての敷地の広い家が一軒建っていた。


 コンコン。


「はーい?・・・あら、ユティにレティ。お帰りなさい」「ただいま、お母さん」「ただいま」


 久しぶりの再会に娘達を抱きしめ喜ぶ母。


「ユークリッド。どうしたんだ、お前まで?」「久しぶり兄さん。ちょっと大事な話があって来たんだ」「そうか・・・。ああ、待ってくれ。ほら母さん。みんなを入れないと」「ああ、そうね」


 ・・・・・・


「時期的にはもうそろそろ大会だろ?大丈夫なのか?」「ああ、それは。ちょっと別の国からの要望で繰り上がってね、既に終わっているんだよ」「そうなのか?」「でもユティは帰って来なかったわよねぇ?」「そっかー、お母さん達は知らなかったんだね」「「?」」「この子も大会に出たのよ」「「ええっ・・・?!」」「ふふふ。まあ驚くのも仕方ないだろうね」


 用意されたクッキーと紅茶を楽しむ娘に驚く2人。


「今回は、ユティ達、申し子達にもデモンストレーションとして出てもらったんだよ。大会とはいえ、お祭りの意味も兼ねているからね」「そう言えば、どうしてこの子も出る事になったの?」


 ユティの疑問にユークリッドへ全員の注目が集まる。

 彼は飲み物を1口含むとゆっくりと置いた。


「彼女達寵愛者は、その実力上、他の者達と競わせることが出来ない。怪我人が出る大会だとしても、ね。しかし、それではせっかくの磨いた力を披露する場も与えられない。それでは不公平ではないか?との意見が出てね。畏怖の対象とも呼ばれ渋る声ももちろんあったが・・・なによりあの大会は学生達の成果を見せる場だと、私は思っている。私達大人でもユティの様な子達をしっかりと理解しているわけではない。ただ・・・噂が不安となって大きく広まり・・・今の世にまで、強く語り継がれてしまっているのが現状だと思う。だからここで1つ・・・民衆達にも知ってもらい。恐怖の対象ではなく、希望と安心を与えるチャンスに出来ないだろうかという話に持ち上がったんだ。その結果・・・私を含め、各国が了承したという事だよ」「・・・そういう事でしたか」「なるほどね・・・」


 まくしたてる様な説明だったが、その理由に誰もが納得した。

 兵器という意味合いが強く、国からの束縛が付きまとう不憫な子達でもあるとユークリッドは思っていた。

 だからこそ、今回の大会の提案には・・・意味合いを強めてしまう側面もあるが、それ以上に別の可能性を切り開けるのではないかと考えた。


「・・・まあもっとも・・・。ユティにはそれがあまりないようには見えてしまうがね」「くくく・・・違いない」「お父さん」「ひどーい」「ユティの話なのにずっと、お菓子を食べているからでしょ?」「ええ~」「「「はっはっはっはっは」」」


 家族だけでなく、その場にいる全員が笑顔に包まれた。


「あ、そうそう。ユティ・・・近所に住んでた子、覚えてる?」「え、なに?」「あなたがいっつも突っかかってくるて文句言ってた男の子よ」「・・・あー・・・そんな子いたね~」


 遠い目をするユティ。何となく覚えているが、同時に思い出したくないとすぐに投げようとしていた。


「あの子、キュレム学園に通ってるんですって。合わなかった?」「・・・どうして私に聞くの?そういうのはお姉ちゃんに」「だって、あなたが先に学園に行った時・・・港で最後まで見送ってくれたじゃない」「昔の話でしょ。うー・・・あんまり覚えてないよ」「・・・んもう。薄情ね~」


 顎に手を乗せ、分かりやすくため息を吐く母。


「他の子供達も学園に向かったんだけど・・・ユティは会っていないのかい?」「ううん。夏休みの時には会わなかったよ?みんな学園にいるの?」「さあ?・・・少なくとも私が覚えてる範囲だと・・・半数、かな?学園は別の町にもあるし・・・。優秀なんだったら貴族学園にも入れるわよ、お父さん?」「え?そうなのか?」「私達とは時代が違うんだよ兄さん。もちろん他の国では権威が残っている所もあるけど・・・それは寧ろ少ない方。今はレティが言ったように、学力や実力が伴えば・・・十分に受け入れられると聞いてるよ。学内の問題もそれほど・・・大きくはないと聞いてはいるが・・・どうなんだろう?」


 レティと護衛騎士の部下達に視線を送る。


「流石に詳しくは・・・」「我々も聞いた話ですが・・・首都などでは問題ないと・・・」「しかし、確かに他の国ですと、やはり既得権益の力が強く。良識ある学園の講師達は意図的に別の学園を推奨して、ぶつかり合わないようにしていると聞きます」「・・・やはり、まだまだ壁は大きいな」「のようですね」


 次代を思う王と育てる学園長にとっては、まだまだ頭を悩ませてしまう問題の1つだった。


「ま、私は今の学園好きだし。離されるなんて嫌なんだけどね」「そう・・・。良いお友達が見つかったのね」「そうかそれは良かっ──」「そうね、大事なお友達(・・・・・・)だもんね」「?それはどういう」「さあ、何だろうね?」


 キッと睨む妹に、気にした様子もなく美味しそうに紅茶を飲む姉。


「(あら・・・へー・・・)」「・・・お母さん、その顔止めて」「だって・・・。ユティがそんな顔するなんて思わなくて・・・。(ボソ)あの子が残念そうね」


 楽しそうな含み笑いを見せる母と姉に不貞腐れたユティはクッキーを頬張って、そっぽを向くのだった。


「(ボソ)・・・ユークリッド。まさか・・・ユティに・・・?」「(ボソ)いや、流石に自分にも・・・。って兄さん、考え過ぎでは?」「(ボソ)いや。そんなはずはない。ユティはいつかパパと結婚するって言ってたのに・・・。最近はそんな事を一切・・・」「お父さん。いつの話をしてるの?昔の話でしょ?」「むかし・・・。はは・・・そぉ。むかし・・・・・・むかし・・・」


 俯いた父を優しく宥める母。愉快な家族団欒のひと時だった。







  【ジン・フォーブライト(純、クリス)】8才 (真化体)


 身体値 136

 魔法値 145

 潜在値 153


 総合存在値 251


 スキル(魔法):干渉、棒術 6、マナ零子 5、感応 4

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