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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
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365 命の救出

 布で覆われた馬車の中、薄っすらと外に明かりが漏れている。

 そこでは男が仲間達と確認し合い動き出した。そして最後に残った女性へと振り返った。


「・・・マリティカさん。本当によろしかったんですね?」


 彼女は一度横を振り向き、そこからゆっくりと前方にいる男へと向き直ると力強く頷いた。


「・・・はい」


 ・・・・・・


 時は少し遡る。


「「「・・・」」」


 仲間の連絡よりも先に冒険者ギルドにやって来たマリティカに驚き、何事かと近寄った元々の協力者パーティー。

 その内容に、慌てて職員とギルドマスターを呼び、急ぎ集合場所のアジトへと向かった。

 そして現在・・・転がっている仲間だった男と他10名ほどの男女に開いた口が塞がらなかった。


「他にも・・・私を襲って来た者達が入り口近くの裏路地に・・・」「分かった。そっちは連れて来た奴らと向かう。お前達は倒れている奴らを捕縛、連行してくれ」「わ、分かりました」「案内します」「頼む」


 マリティカはギルドマスターと彼が連れて来た者達と一緒に出掛けていく。

 残された冒険者パーティーと職員達は倒れた者達を縛り上げ、荷車に乗せてとテキパキを仕事をこなすのだった。


「(・・・もうちょっとマリティカさんを強く守っても良かったんじゃないのか?)」〔すみません。もしかしたらという可能性も考えまして、緩くしか張っていませんでした〕「(・・・まあ、疑いたくなる気持ちも分かるけど・・・。あの人は善人だと思うよ?)」〔そうですね。・・・一応、今は強めの結界を薄く張らせています。流石に離れ過ぎれば私でもどうする事も出来ませんが・・・。向かった距離的になら問題ないはずです〕「(ありがとう。そのままお願い)」〔了解です〕(ははは。もう~くすぐったいよ~)「きゅぅ~、きゅぅ~♪」


 隅っこで邪魔にならないように座っているジン達の目の前でゼクと小動物の形をした精霊達はじゃれ合って遊んでいた。


「・・・可愛い~♪」「触っても大丈夫かな~?」「ほら、仕事をしろって。壊されたモノを運び出すぞ。手伝え」「「・・・はーい」」


 残念そうに、女の子の冒険者と職員達は壊された家具などを襲撃者と一緒に外へと運び出すのだった。


 ・・・・・・

 ・・・


 冒険者ギルト・・・冒険者用作戦会議室。


「とりあえず全員は捕縛できたな・・・。まあ武器や服が無くなっていてもそれは自業自得だと諦めてもらおう。町の治安改善は後の課題だな」


 数パーティが入っても大丈夫な程の広めの空間に、現在マリティカの関係者達が集まっていた。

 挙がった簡素な報告書に目を通し、ギルドマスターが代表して話を仕切っていた。


「今回の協力関係だけでなく・・・どうやらあの裏切者には、昔から怪しい兆候が見られていたそうだ。感付いた奴は怪しまれる前にパーティーを抜けていたから、今までは仲間内の問題だと処理されていたのだろう」「くそっ」「いっぺん張っ倒しておくんだった」「最悪~」


 仲間だった者達も心当たりがあるのか、色々と思い出し、悔しそうな顔をしていた。


「今回は本当に良かった。伯爵級となると他の貴族が黙っちゃいない。こぞって消し合うか・・・取り込まれて、隠蔽される所だった。流石にこれだけじゃあ信用には足らんだろう・・・」「「「?」」」


 証拠としてテーブルに座っている精霊達と宝石。

 その可愛さに職員や冒険者の女の子達はすっかり魅了されていた。


「可愛い・・・」「あ、フワフワだ」「こっちの子はなんかモチモチしてる~♪」「私にも触らせて」「あー、ズルい私にも・・・」「オホン!」


 話そっちのけで盛り上がっていたのをギルドマスターが気付かせる。

 一瞬硬直し、振り向いた女性陣の手が緩んだ瞬間、精霊達は抜け出しジンの下へと寄って来た。


「あ・・・」


 1人の女の子が寂しそうな声を漏らすが、軽く睨まれて大人しく引き下がった。

 仕切り直しと冒険者の1人が質問する。


「今回の件で伯爵の悪事を暴けるのか?」「いや・・・。証拠次第では、かなりの権力を弱らせることは出来るだろうが・・・尻尾切りだろう。女王もこの手には困っていると聞く。それでも・・・今は急がなくてはならん。証拠を握りつぶされても・・・早めに対処して命の保護を優先する」


 チラッと秘書らしき職員に振り返るとどこかの地図といくつかの記されたルートが出て来た。


「彼女の仲間の命もある。手短に行くぞ?では──」


 蚊帳の外にいるジン達だが、とりあえず真剣な打ち合わせなので黙って成り行きを見守る事にした。


 そして・・・森の中にある伯爵が仕切っている巨大工場へと時間は戻る。


 ・・・・・・

 ・・・


 暗闇の中を連携して、小さな明かりを頼りに動く冒険者パーティーとマリティカ達。

 その最中に1人の男が彼女の傍へと近づいてきた。


「本当に・・・彼を同行してもよろしかったのですか?」「(コクン)信じられないかもしれませんが・・・あの時、私を助けてくれたのは彼です。馬車での見張りですが・・・私は彼なら大丈夫だと確信出来ます」「・・・そこまでですか?」「学生用カードは見たはずです。色々と事情はおありでしょうが・・・今は心強い味方です」「・・・失礼しました」「いえ・・・」


 疑ってしまうのは当然。それでも自分の非を認め、大人しく下がる冒険者。

 このような信頼が持てたからこそマリティカは助けを求めたのだが・・・自分自身も反省する所だった。


「(彼等は悪くない。欲望を満たすために手を染める者がいてしまった・・・。それだけ。深く入られなかった運を喜ぶべきよね)」


 胸に手を当て、小さくゆっくりと息を吐き・・・。そして、大きく吸うとマリティカは気合いを入れ直して前を向いたのだった。


「(待ってて・・・。必ず助けに向かうから・・・)」


 森の切れ間から徐々にその大きな工場の姿が現してくる。

 彼女達は出来るだけ音を絞り、警備にバレないよう近づいて行くのだった。


 ・・・・・・


「(どんな感じ?)」〔現在、マリティカ達は工場まであと数分で到着といった所です。ゼク達精霊部隊は・・・・・・どうやら工場内部に侵入したようですね〕「(救助は必要?)」〔今のところは大丈夫かと。・・・警備の数が多いようです。人が多く倒れているようです〕「(それって今すぐに──)」〔お待ちください。まだ息はあります。一部の精霊達が残って彼等を助けてくれるそうです〕「(・・・わかった。もし必要ならすぐに飛ぶよ?)」〔分かりました〕


 ジンは1本の高い木の枝に飛び上がって座り、遠くから工場を眺めていた。

 一緒に残った冒険者から``あまり遠くへ行かないように``と言われたので、隠れて大人しく木の枝から工場を見張っていたのだった。


「(・・・精霊達を使って何をしようとしてたんだ?)」〔そういえば・・・一緒に持っていた宝石も分からず仕舞いでしたね〕「(聞けるタイミングがあればいいんだけど・・・)」〔今は見守りましょう。幸い、ゼク達が侵入した事はバレていないようです〕「(警報音周囲にシャボン玉は?)」〔見つけ次第、張っていっているようです。これなら初動は遅れるでしょう〕「(みんな、頑張れよ)」


 ・・・・・・


 そんなジン達の思いに応えるように、ゼク達精霊部隊はいくつかのグループに別れて行動していた。

 シャボン玉による音の遮音。風に精霊の光などによる屈折などで姿まで隠し、秘密裏に動き回っていた。


(こっちにもあった)


 音がなる警報っぽい装置をシャボン玉で包むゼク。そして一緒に来た精霊達に視線を送る。

 受け取った精霊達はフヨフヨと浮かんだまま移動して壁をすり抜ける。その後をゼクも付いて行った。


(・・・なんだこれ・・・?!)


 そこでは作業場の近くでうつ伏せて倒れている人々がいた。様々な種族がいるがその多くは霊石種だった。

 とても起き上がれるような状態ではなかった。そんな彼等のマナを用意された宝石が勝手に吸収し始める。


「ぅ・・・」「ぐ・・・」「ぁぁ・・・」


 微かに呻く以外何も出来ず、ただ宝石へとマナが持って行かれる。


(やめろー!それ以上したら死んじゃう!・・・あぐっ!)


 宝石に向かって飛び出したゼクを何か見えない障壁が邪魔をした。


(・・・なんだこれ?)


 固い膜の様なモノがゼクや精霊達の侵入を防いでいた。


「きゅぅ~」


 悲しそうに首を振った1体の精霊。

 悔しそうに握り拳を作り歯を噛んでいるゼク。周囲を見回し、何が原因かを必死に探す。


(はやく・・・どこかにあるってサポートなら言う・・・)


 マナ出力を上げ、見えるようになった障壁。円形になっているその壁をなぞる様に動き回る。

 すると、妙な紙を見つけた。宝石の様に硬そうな質感だが、くしゃくしゃに丸まったソレは紙に見えた。


(あれだ)


 流すマナと吸収するマナが一点に集まる紙に確信したゼクはシャボン玉で包み込んだのだが・・・。


(あれ?上手く止められない・・・)


 何十にもマナを強めて抑え込もうとするが、少しずつ吸収され紙を完全に抑え込むことが出来なかった。


(ど、どどど・・・・どうすれば?)


 ゼクの脳裏には壊せば、警報を鳴らされ、救出失敗という考えが浮かんでしまった。

 苦しむ倒れた人々。吸収される魔法。オロオロと左右を行ったり来たりと焦ってしまう。


〔何かありましたか?〕(っ~・・・サポート!)


 思わず目の端に涙を浮かべて喜ぶゼク。


(おねがい助けて。よく分かんないんだけど・・・なんかマナを吸ってる変な紙を見つけたんだ)〔少々お待ちを・・・。ふむ・・・ゼク、その周囲に小さな何かありませんか?別のマナです〕(他の?・・・何かある?)


 精霊達に協力してもらい周辺を探してもらう。すると妙に黒く小さな粒の宝石が発見された。


〔精霊でしょうか?今、持って来たモノから別の力を感じます。破壊してください〕(え?大丈夫・・・なの?)〔念のために少し大きめのシャボン玉を作ってください〕(う、うん・・・!)


 急ぎ生成し、今いる工場内を薄く膜で覆った。


〔今なら大丈夫です。もし何かあれば私達の方でフォローします〕(わ、分かった)


 ゼクが精霊達に振り向き、相槌を打つと意図を理解し、持って来た黒い宝石を破壊した。


 バシュン・・・シュー――――――――・・・・・・。


 中から煙となってマナが周囲へと拡散する。


〔ゼク。今です。その紙を破壊してください〕(っ!)


 シャボン玉で包んだ紙と生み出した水玉をぶつけ消失させた。

 その瞬間、工場内の薄っすらとした明かり消灯。数秒後、赤く点滅しだした。


(ええ?!だ、だだだいじょうぶなの?)〔問題ありません・・・〕


 ゼク達が不安そうにするなか、僅かに点滅していたライトに火花が走った。

 一瞬にして作業場は真っ暗となる。


〔これで問題ないでしょう。この距離では私の力もあなたを周囲でしか援護はできませんので注意して進んでください〕(・・・うん。ありがとう。・・・もうだいじょうぶだって)「きゅぅ~♪」「ほわぁ~」


 諸手を上げて喜ぶ精霊達。


(行こう。ここはマリティカ達に任せて、ボク達は精霊と他のみんなを助けよう)「「「きゅぃ」」」


 小さく頷くとゼク達は更に工場内を回り始めた。


 ・・・・・・


「・・・あそこか・・・」「警備は2人だけか?」「いや・・・上の監視塔に・・・あれ?」


 門の横の監視塔らしき場所に目をやるが・・・冒険者達の位置からでは確認できなかった。


「少し待ってくれ」


 1人が慎重に近くの木に登る。身体強化によって木から木へ三角飛びし、更には枝のバネを利用して、登頂近くまで昇った。


「・・・?」「(ボソ)どうした?」


 ボリュームを絞って、仲間に声を飛ばす。すると帰って来たのは仲間の持っていたライトによる信号だった。緑の明かりが何度も点滅する。


「・・・どういう事だ?」「何か問題が?」「あ、いや・・・。仲間からは問題なしと」「どういう?」


 ゆっくりと下りて来た冒険者。マリティカ達を見て、今度は首を振った。


「ホントか?」「(コクン)仕事疲れかどうかは知らんが、突っ伏していた。恐らく寝たんだろう」「だったら好都合だ。目の前の警備を倒して、サッサと進むぞ」「「「(コクン)」」」


 暗闇に少しずつ慣れていた冒険者達。シルエットくらいはお互いに確認できるので手振りで作戦、合図を送った。

 頷いた者が警備側の別方角に石を投げ、音を鳴らせた。

 気を取られ警戒し、視界から見切れた瞬間。シーフっぽい冒険者が飛び出した。


「んぼっ」「ぎっ」


 ドササ。


「行きましょう・・・。ここからは時間との勝負です」


 警備を暗闇に移動させ、縛ると冒険者達は慎重に巨大工場へと潜入した。


 ・・・・・・


〔今、マリティカ達が潜入に成功しました〕「さて・・・ここからが勝負か・・・。周囲にモンスターがいないのは救いだな」〔野生の勘なのでしょうか、工場周辺にはいないようですね〕「さっき話してた吸収する物が原因かもしれないな。一体なんだ?」〔分かりません。・・・ですが、あの・・・巨大モンスターと戦った時に見た画用紙と似たマナを感じました〕「・・・誰かが意図して作ったモノだったって事か・・・」〔ここが精製所かどうかわかりません。横流しの可能性もあります〕「伯爵、工場・・・。思ったよりも大きな何かに関わったようだな」〔はい。ですが、今は救出を優先しましょう〕「だな」


 ジンは立ち上がり、工場を睨みつけるように監視を続けた。


 ・・・・・・


(あ、いた)「きゅぃ~!」「ほがほが」


 拘束されたらしき人物。そして仲間の精霊達を見つけゼク達は急ぎ救出に入った。


(サポート、お願い)


 ジンのマナを送ってもらい仲間達に分け与えた。

 最初は弱弱しく死にかけていた精霊達も徐々にその元気を取り戻す。


「きゅぃきゅぃ」「むがむが」


 回復しながら事情を聞いた彼等は、力強く頷くと協力する意志をゼクに見せた。

 ゼクもそれを理解し、一緒にバラバラになった仲間達を探し始める。


 ・・・・・・


「こんなに・・・!」「多過ぎる、持って来た馬車では足りないぞ」「そこに在るのを使わせてもらおう。手伝ってくれ」「巡回が来た。先に倒すぞ」


 ・・・・・・


(こっちにもあった。破壊するよ)〔OKです〕


 ・・・・・・


「こっちは満杯だ。お前達は先につれて集合場所へ向かってくれ」「分かった。すぐに戻ってくる」


 巨大工場内では忙しなくゼク達と冒険者達が動き回っていた。

 そして・・・上手く行き過ぎるくらいに事が運び、冒険者達は戻って来た。

 帰る頃には馬車が2から5に増える事となった。


 ・・・・・・

 ・・・


「無事でよかった」「マリ、ティカ・・・。お前も・・・無事で」「喋らなくていいわ。・・・本当に良かった」


 捕らわれていた仲間を無事に救出出来て思わず涙を浮かべてしまう。

 そんな彼女に、ボロボロの肉体で無理矢理、笑みだけを見せる仲間の男。


「人質・・・精霊に資料。これだけあれば伯爵の失墜も可能かもしれない」「無事、ギルドに運び終えるまで気を抜かない方がいいぞ。前回はそれで先手を打たれてしまったそうだ」「少なくとも・・・権力の一部を削ぐ事は出来るだろう。必ず連れて帰るぞ」「「「(コクン)」」」


 全員の士気は高かった。

 これなら問題ないとジンは安堵する。


「「「~♪」」」


 その足下や周囲には大量の精霊達が群がっていた。


〔ふふふ。モテモテですね〕「(分かってて言うな)」


 遠慮なく吸い続ける精霊達。顕現すら珍しい存在が大量に工場内に捕まっていた事には驚きだった。


「うわ~・・・すべすべ~♪」「ふふ、可愛い~♪」「ふん・・・♪」


 女性冒険者はジンの周囲に集まっていた。

 理由は分かりやすく、精霊達を愛でたいからだった。


 ・・・・・・

 ・・・


 2時間ほど経った頃。


 プア―――――ー、プア―――――ー・・・!!


「何事だ!」「伯爵様、侵入されました!」「誰だ!賊は?」「それが・・・もういなくなった後の様です」「何だと!警備はどうなってる、警報は!?」「それが、我々もつい先ほど知ったばかりなのです」「はぁー?!一体どうなってる!すぐに賊を探し出せー!」「は、はいー・・・!!」


 ・・・・・・

 ・・・


「うむ。証拠も報告書も用意出来た。ご苦労だったな。もう安心していい」「「「・・・はぁ~」」」


 ギルドマスターの言葉に、冒険者と職員達の緊張の糸が切れたようだった。


「何だお前達。こんな事で根を上げるな」「いや、こっちは緊張しっぱなしでしたよ」「流石にあんなにたくさんの人や物を秘密裏に運ぶなんて初めてですよ」「はっはっはっ・・・。それも慣れだ。お前達の評価もこれで上がった事だし・・・次回からは指名で呼び出すから、覚悟しておけよ」「ちょっ、自由はどこ行ったんですか?!」「そうだそうだ」「独自の立場だと言っても、結局は人に寄り添っている仕事でもあるんだ。文句を言うな。指名されるという事は知名度を上げてるって事だぞ。信頼されているんだ。そこをもっと大事に考えろ」「「「・・・」」」


 一理あるとお互いの顔を見合わせ黙り込んだ冒険者達。


「それに・・・あそこの坊主を見て見ろ。お前等の引き攣った顔の時も平然と寝ていたぞ」


 そう言って、遠くに備え付けられていたソファーで眠っているジンを指差すギルドマスター。


「いや、あれは・・・」「子供だからか?にしては一番余裕を見せていたぞ。彼女(マリティカ)が彼を押した理由がオレにも少しわかったぞ」「「「・・・」」」


 色々と言いたい事はあるが、それ以上に精神的疲労で文句を告げる気力も無くなってしまっていた。


「ふん・・・んん゛ん゛ー・・・・・・あぁ」〔お目覚めですか?ジン〕「(うん・・・。おはよう)」


 背伸びした後、目を擦ってゆっくりとソファーから下りるジン。

 彼の周囲には勝手に精霊達が集まり眠っていた。


「起きたか、坊主。随分、懐かれているようだな」


 ギルドマスターが話しかけてくる。


「おはようございます。なんか勝手に魔力を吸いにくるんですよ」「はは、余程坊主の魔力が気に入ったようだな」「話し合いは?」「ああ。たった今終わった。このままオレは仕事だが・・・お前は帰っていいぞ。突き合わせて悪かったな」「ああ、いえ。それは・・・」


 キョロキョロと周囲を見回す。


「?どうした?」「マリティカさんは?」「ああ。彼女なら近くの治療室にいる。帰る前に会いに行ってくれ」「はい」


 それじゃ、とジンはそそくさと部屋から出て行き、治療室へと向かった。


 扉を開けて中に入ると彼女は1つのベッドに寄り添って、寝てしまっていた。

 ずっと仲間の看病をしていたようだった。

 そして人が入って来た事に気付き、目を覚ます。


「・・・ん?・・・ああ。ジン君・・・。ごめんなさい」「あ、すみません。起こしてしまって」「ああ、いいの。大丈夫」「・・・その人の状態は・・・?」「ああ、うん。捕まってたけどすぐに助け出せたから大丈夫。今は疲れてるから眠ってるだけよ。・・・お医者さんの話では明日にでも退院できるって」「・・・良かったです」「ええ。本当に・・・」


 仲間の寝顔を微笑む彼女。

 マリティカの元気な姿も確認できた事だし、帰ろうと思った時だった。フと気になっていた事を思い出し、反転していた体を戻した。


「すみません。ちょっと聞きたい事があったんですけど・・・?」「?・・・ええ。私に答えられる事なら・・・」


 ジンの方に体を向け、答える姿勢になった。


「マリティカさんが持って来たあの宝石・・・。一体何なんですか?なんか照明に使われている物と違ったようなんですけど・・・」「・・・」


 笑顔だった彼女の表情が徐々に沈んでいく。そして黙って、下を向いてしまった。


「(あ、これ聞いちゃダメなやつ)」〔失敗しましたね。ここは大人しく下がりましょうか〕「ああっ、答えられないのなら別に結構で──」「あれは・・・」


 静かな、だけど芯の入った声がジンの言葉を遮った。

 彼女はゆっくりと顔を上げジンの目を見てしっかりと答える。


「あれは、人の命・・・。霊石種の命の欠片・・・ううん。それだけじゃない。無理やり吸われ続けた人々の命。・・・その結晶なの」







  【ジン・フォーブライト(純、クリス)】8才 (真化体)


 身体値 136

 魔法値 145

 潜在値 153


 総合存在値 251


 スキル(魔法):干渉、棒術 6、マナ零子 5、感応 4

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