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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
368/473

364 精霊と仲間達

 ガサガサガサ・・・。


 僅かに照らされた月明りすら避けるようにして、女性は大きな荷物を抱え森の中を走っていた


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」


 布で覆われた荷物を大事に抱え、必死に足を動かす。

 遥か遠くで微かに誰かの声が聞こえる。


「はぁ・・・はぁ・・はぁ・・・。ゴメンね。もう少しだけ辛抱してね」「「「クゥー・・・」」」


 荷物から弱弱しそうな声が返ってくる。

 汗すら拭わず、森を抜けて彼女は見えて来た大きな町へとひた走った。


 ・・・・・・


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」


 裏路地へと隠れて、ようやく誰の気配も感じなくなったと息を整える。

 思わず座ってしまいたくなる気持ちに活を入れ、再び足を動かした。目的の場所へと向かって・・・。


「はぁ、はぁ・・・はぁ・・・。ようやく見つけたぞ」「こんな面倒な所まで逃げ込みやがって」「っ!」


 しかし、先回りされてしまっていた。

 ジリジリとにじり寄られる。2人だった相手が・・・5人・・・8人と増えて来た。


「っ・・・!あなた達のやり方は明らかな犯罪よ!許されることじゃない」


 気丈に振る舞い、荷物を胸に大事に抱え込んで後退する。

 だが、逃げ道を塞がれてどんどんとどこかの壁へと追い込まれていく。


「お前こそ分かってんのか?盗んだモノはこっちのモンなんだよ」「犯罪者が何言ってやがる」「おら、商品を返しやがれ」「っ!」「おっと、ここでそんな事して良いのか?ん?」「っ・・・」


 武器を構えようとした所で、追っ手達も武器を構えた。わざとらしくニヤつきながら周囲の建物に視線を向けて女性にどうなるのかを理解させようとする。


「卑怯者!」「おいおい。それこそお前等の事だろうが。人様の建物に侵入して商品を盗み、逃亡。これを世間はなんて思うかな~?」「あなた達もモノでもないわ」「それはお前が決める事じゃないだろう。おら・・・大人しく返せ、そうしたらたっぷりと楽しんで解放してやる」「・・・お断りよ」「おっと、さっきの事、すぐに忘れちまったのかな?」「っ・・・」


 チラつかせられる武器。周囲の建物に何人の人が現在いるのか女性には分からなかった。

 激しく嫌悪を示すだけで抵抗する事が出来ない。

 とっくに壁に背が付いてしまい、捕まるのも時間の問題だった。


「・・・ごめん。せっかくここまで来れたのに・・・」「「「くぅ~・・・」」」


 僅かな鳴き声が荷物から聞こえた。

 持っていた武器を下ろし、力なく座り込んでしまった。

 目を閉じ小さく謝って荷物を抱きしめる女性。

 そんな彼女に追っ手の男達がニヤニヤしながら近づいた時だった。


 スタ・・・。


「?・・・なにこれ?」「な、なんだお前?」「何処から来たガキ」「?」


 突然、空から現れた子供に男達は驚いた。その声で、女性は目を開き俯いていた顔を上げた。


〔・・・ジン。サッサと倒してください〕「(・・・あれか?)」〔はい〕


 相棒と同じく、彼女が抱える荷物から不思議なマナを感じたジン。


「?・・・ぁ」


 一瞬、目が合わさった女性が声を掛けようとした所をジンは手で止めた。


「確認の為に聞きますが・・・。あっちはお仲間ってわけじゃあ、もちろんないですよね?」「「ああ゛っ」」「・・・」


 指を刺された男達は少しだけ声を荒げるが、ジンは気にせず女性を見ていた。

 彼女は空いた口が塞がらず、ただ黙って見ている。


「じゃあ・・・。申し訳ないんですけど、勘違いなら後で謝りますから倒したっていいんですよね?」「・・・(いや、あの)」


 脳は働くのに喉がカラカラになっていたのか上手く声が出せなかった。

 疲れた体に鞭打って立ち上がろうとした時、力が入らずガクッと頭が先に落ちてしまった。


「じゃあ、倒しますね」


 軽い調子の返事に驚き、必死に止めようと頭を上げた瞬間だった。


「ま・・って・・・」


 カスカスになった声で止めようとする彼女の前でジンは向けていた男の武器を持ってズルズルと押し込んでいく。


「ちょっと狭いんで向こうに行きますね」「がっ・・・ぐっ」「何だ・・・このぐぁぎっ・・・」


 大人が子供に力で押し負け、3メートル、5メートルと離されていく。

 そのあまりの光景に彼女はもちろん、男達も驚き開いた口が塞がらなかった。


「(ボソ)この辺りでいいか」「「ぐぁっ」」


 更に軽く押し込むと2人の男は簡単に転がされた。

 唖然とその光景を見ていた他の追っ手達はすぐに意識を切り替えてジンに襲い掛かった。


「ガキがっ」「調子に乗んなっ!」


 数秒後。息巻いて襲い掛かった追っ手達は路地裏に転がるのだった。


 ・・・・・・


「あ・・・ありがとう」「いえ。それよりも・・・」「?」「ああ、いえ」


 ジンは荷物が気になり視線が落ちる。しかし、流石に失礼だと控えた。


「ごめんなさい。私行く所があるの。助けてもらってなんだけど、ここで失礼させてもらうわ」「ああ、はい・・・。(まあ・・・そうですよね)」


 頭をポリポリと掻きながらジン達は路地裏の追っ手を放置して、明かりのある通り道へと出た。


「それじゃあ、ここ・・・で・・・」「?・・・はい。あっちは町にある冒険者ギルドにでも頼んで・・・・・・」「・・・」


 振り返った女性はジンを見て大きく目を開いたまま硬直していた。


「あの・・・?」「(ボソ)・・・どうして、こんな所へ?」「?」


 小さかった為に何を言っているのか上手く聞き取れなかった。


「・・・あ、いえ。その・・・すっ・・・ごめんなさい」「〔???〕」


 薄っすらと涙を浮かべた彼女は背を向けたので、何を?とは言い出せなかった。


「スン・・・冒険者ギルドでしたね。私も少し用事がありますので、一緒に向かいましょうか?」「場所を知って?」「はい。元々、そこで仲間と落ち合う予定でしたので・・・」


 そうなんだと納得しつつ、彼女の案内で付いていく事となった。

 そうして歩き始めて数分。チラチラとジンを見ていた彼女が聞きにくそうにしながら問いかけた。


「・・・あなたは・・・その・・・」「?・・・ああっ。そういえば・・・ジンです」「っ・・・!(ボソ)やはり・・・」「?やはり?」「え?ああ、いえ、申し訳・・・ごほん。・・・ごめんなさい。マリティカです。その・・・ジン君はこんな時間にどうして外に」「あー・・・」〔まあ、聞かれますよね〕


 なんとなく頭を擦りつつ視線を横へと逸らし、適当に答える。


「ちょっと上手く眠れなくて・・・その気分転換に・・・」「あの様な所へ?」「その・・・見た目はこんなですが一応、学生でして・・・。クエストも受ける事も出来ますので」「クエストっ!」


 思わず叫んでしまったマリティカに道行く人々が振り返った。

 咄嗟に口元を隠した後、適当に笑い周囲に頭を下げる。そして、少ししょんぼりしながらゆっくりとジンの方へと振り向いた。


「ごめんなさい・・・」「ま、まあ皆、そんな感じなので別に・・・。ですから学園の実技でクエストも何回か受けた事があるんですよ」「へ・・・へ~・・・そうなんだ・・・」「?」〔まだ、すぐには信じられないといった感じですね〕「(まあそれも仕方ないか)」


 そんな風に受け入れているジン達に対し、マリティカは彼女の中の何かが崩れていっているのか引き取った笑みのままだった。


「マリティカさん・・・。さっきの連中は?」「へ?・・・あ」


 自分が少し間抜けな顔をしていた事に気付いた彼女は前方へ振り返ると・・・徐々に深刻そうな顔へと変化していった。


「・・・ちょっと、追われちゃってて。危険な連中だったから、私も逃げる判断が遅れて、危なかったわ。・・・ジン、君・・・。その・・・ありがとね」「いえ。んーじゃあ、まあ他にもいたら危ないし俺が護衛しますね」「いや、そんなの悪いわよ。それに・・・ご家族が・・・心配されていらっしゃるかも・・・」「あー・・・大丈夫ですよ?色々とありまして、今は友達の家族に助けてもらって旅をしている所なんです」「っ・・・・・・そう」「はい・・・」


 愛想笑いをしつつ適当に誤魔化す。それほど間違っていないと思いつつ、彼女を見れば、口を強く引き結んでいた。


「ごめんなさい・・・。辛い事を・・・」「ああ、いえ。全然なんですけど・・・」〔・・・〕


 少しだけ気まずい時間が流れる。

 どう切り出せばよいのか考えている最中だった。彼女が角を曲がり、付いて行くと荷物から微かに鳴き声がした。そしてガタガタと動き出す。


「っ・・・。ごめんね、もう少し辛抱して・・・」(ジン~・・・)


 荷物を抱え直して優しく話しかけている時、ゼクが手を振ってやって来た。


「(あれ?ゼックンどうしたの?)」〔寝ていたのでは?〕(うん。まだ眠いけど・・・なんか呼んでる・・・あ、あれか・・・)「(ゼックン?)」


 スーッと滑るように飛んで行くとマリティカの荷物を覗き込んだゼク。


「(ボソ)ちょっと・・・どうしたの・・・?」


 思った以上に激しく揺れる荷物に抱え込んだまましゃがみ込む。するとその拍子に結んでいた布が解けスルっと落ちてしまった。

 そこには籠の中にいくつもの宝石と同時に数匹の弱弱しく輝く小動物達がいた。


「・・・精霊だ」「・・・え?」


 思わず呟いたジンに振り返るマリティカ。

 そんな彼等をおいて、ゼクやジンに向かって顕現化した精霊達は弱弱しく鳴き声を上げて、小さな手を差し伸べていた。


 ・・・・・・


 冒険者ギルドへ向かう途中で、本来の待ち合わせ場所の一軒家に到着したジン達。

 誰にも見られていないかをマリティカが警戒しつつ、扉を閉めた。


「・・・驚いたジン君は・・・精霊が見えるのね」「夏頃に・・・見かけた事があります」〔・・・少しずつ回復してきました〕(良かった~・・・。でも、どうしてこんなに弱ってたの?)「・・・きゅぅ~・・・」


 マスコットの様に人懐っこい顔にデフォルメされた精霊達はジン達が放つ魔力を吸収しつつ、悲しそうな顔をした。


「・・・その時は、テロリストが実験に呼び出したと聞きました。・・・普通はこんな風に顕れる事は珍しいとも・・・」「・・・」


 説明してくれますか?とジンが目で訴え、視線を逸らしてどう答えればよいか迷っている彼女。

 後ろめたさなのか、それともジンを巻き込みたくないからなのか理由は分からないが、無視するわけにはいかなかった。


「・・・ごめんなさい。詳しくは言えないの。本来は異界、自然界に住む精霊達。彼等を縛る事なんてあってはならない。だから・・・追われてでも救いたかったの」「・・・この宝石は?ここにあるランプとは違いますね」「・・・ごめんなさい」〔これも、言えませんか・・・〕


 彼女は両手を前で組んで俯く。その為、これ以上強くは出られなかった。

 何となくだが、マリティカからは黒い裏があるようにはジンには思えなかったからだ。

 サポートもまた、彼女に関して強く言及させたり、警戒心を持っていなかった。


「(どう?)」〔少なくとも、ツアーで見た宝石とは明らかに違いますね。内包されているマナ量がかなり少ない。しかし・・・妙に質が高い・・・。宝石自体からもマナを発している様に感じられますね〕「(特殊な宝石か・・・。ゼックンは?)」(え?・・・うーん・・・)


 精霊とじゃれていたゼクは改めて、ジッと宝石を見て考える。


(・・・わかんない。だけど・・・なんだろう?ジンに似てる?)「(俺に?)」(うん・・・。なんか・・・そこにいるって感じ?)「(そこにいる?)」(うん・・・あっ。そうか僕達みたいな感じ)〔精霊の一種ということでしょうか?〕(一種?・・・うーん。そういうのとは違う様なー・・・)


 ハッキリと答えられず腕を組んで唸るゼク。

 そんな彼をおいてジン達のマナを十分に吸った精霊達は、ゲップを満足そうな顔をしていた。


「・・・!(精霊達が回復した・・・!?しかも、こんな短時間で?・・・一体どれだけ・・・)」


 元気になった精霊達の頭を撫でるジンに驚くマリティカ。

 そんな彼女にジンが振り返りドキッとさせられた。いや、正確にはその後ろを見ていた。


 そして数秒後。


 コンコン・・・。


「っ・・・。はい・・・」「オレだマリティカの嬢ちゃん」「っ・・・!来てくれたんですね」


 ガタ。


「?」「?どうした?」「ああ、いえ。ちょっと待ってください」


 突然、立ち上がったジンが精霊達と宝石をマリティカのカバンに隠し、首に引っ掛けた。

 籠は布で覆ってテーブルに放置する。気になった彼女はソロソロと近づく。


「ど、どうしたの?」「仲間?」「え?ええ、そうよ。まあ、本当は協力者なんだけどね」「何人くらいで来る予定だったの?」「え?そりゃあ沢山よ。大勢いた方が助かるからね。正確な人数は・・・ちょっと──」「おーい、嬢ちゃんどうしたんだー?」「ああ、ごめんなさい」


 返事を返し小走りにドア前に向かうマリティカ。ジンが椅子から下りて壁側へと歩く行動に疑問に思いつつも扉に手を掛けた。


「(サポート)」〔分かってます〕「(ゼックン)」(うん。・・・みんな、ジンがいれば大丈夫だから静かにね~?)


 シーっとカバンに隠れる精霊達にジェスチャー混じりで伝え、理解した彼等は両手で口元を抑えた。


 彼女が開けると同時に笑顔で頭部が薄くなった男性が入ってきた。それに続いて男女10人ほどがゾロゾロと家の中に上がり込んでくる。


「こんなにたくさん・・・。ありがとうございます」「いやいや。オレ等もあの話を聞いたんじゃ無視するわけには行かねえからな。先に信用できる連中を連れてきたんだ」「っ~~~・・・!ありがとうございます」


 感極まっているのか、深々と頭を下げて感謝を示すマリティカ。

 そんな彼女の肩を優しく叩いて、男は周囲を見回す。


「・・・そこにいる子供は?」「あっ、たまたま知り合った子供です。困っていたのを助けてもらって」「ほう。よくやったな坊主。やるじゃねえか」「ど、どうも」


 適当に頭を下げて置くジン。そんな彼の頭を少々乱暴に撫でる男の仲間。


「それで・・・嬢ちゃん。お仲間は・・・?」「(ふるふる)私を逃がすために・・・」「そうか・・・。だったら早く向かった方がいいな」「はい、お願いします。無事なのか心配で・・・」「よっしゃ、すぐに出発の準備をしよう・・・。所でそれが・・・?」


 テーブルにある籠を指す男。

 

「え?・・・ああ、はい」「?」


 一瞬、チラッとジンを見た彼女は曖昧に答えてしまう。

 不思議に思いつつも男は視線で仲間達を見て、布に覆われた籠を持った。

 その瞬間、男は笑った。他の連中達も・・・。


「?・・・どうかしましたか?」


 ジッと籠を持ったまま、動かない男の背に声を掛けた瞬間。傍にいた女が剣を抜いて、マリティカの首に付きつけた。


「な、なにを・・・?!」「ふふふふふ。・・・あはははははははははははっはっはっはっは・・・」


 男が笑う。それに同調する様に周りの連中も笑った。そしてゆっくりと振り返る。


「馬鹿な連中だ。本気で信じるとは思わなかった」「っ・・・!裏切ったのね?!」「裏切る?オレは最初から伯爵の使いだが?何か問題だったか?」「っ!!」


 大きく見開き・・・次には強く歯を噛みしめて睨みつけるマリティカ。


「ああいや、そうか。すまんすまん。確かに伯爵に雇われた身でまんまと盗ませた(・・・・)のは裏切り行為だったな」「・・・他の連中も・・・」「ん?・・・はっ。あのバカ共が分かるわけないだろう?自分の功績ばかりに目が向く連中だ。報酬が半分以下になっている事も理解できねえ奴と一緒にされるのは困ったもんだな~」「っ・・・」「ふ~。いいね~♪その表情。ゾクゾクするぜ」


 本性を現した連中は思い思いに武器を取り出し、まるでアジトの様に立ち振る舞った。

 女が乱暴にマリティカをテーブルへと近付けて、叩きつけようとした所へ男が止める。

 そして布を外す。


「待て待て。先に・・・何処だ?・・・商品をどこへやった!」


 空っぽの籠に男はマリティカの顔を乱暴に掴もうとした。


「やっぱり。護衛が必要だったでしょ?」「あ゛ん!っ・・・!」


 ドサドサ・・・。


 イラついて男がドスを効かせた声で振り返ると同時に仲間の2人が倒れた。


「・・・は?」「(ボソ)あんまり女性に暴力ってのは気が引けるけど・・・」〔そんな今更でしょう〕「だね~。事情が事情だし・・・」


 首からひっかけたカバンを床に下ろす。


「おい、何を言ってやが──」「はぁ・・・?!──」「んぐっ」「あぐっ」〔マナを吹き飛ばす技術。漫画の気絶みたいで使えますね〕「(勝手はいいけど・・・。その例え・・・まあいいか)」「てめぇー・・・!がっ・・・」


 次々に倒れ、静かになって行く部屋。

 ゆっくりとジンが歩いたと思った次の瞬間には姿が掻き消え、仲間が倒れていた。

 何が起きているのか分からないまま、残すはマリティカを捕縛している女と頭の薄い男だけとなった。


「(何なのよこれ・・・)聞いてないわよ、こんなの・・・!」「っ!」


 自分でも知らず知らずに体がガタガタと震え、人質である彼女を強く引き寄せた。


「動くんじゃないわよ!」「?」


 ジンに向かって叫ぶ女。首に刃をくっつける。


「コイツがどうなってもいいの・・・!」「っ・・・!いいです。私を放って冒険者ギルドへ!」「黙れ!」「ぐっ!」


 強く引っ張られ、体のどこかを痛めるマリティカ。


「・・・流石に放ってはおけないし。・・・人質にはなってませんよ?」「え?」「は?(コイツ何言って・・・見えてないのか?)」「マリティカさん。動いても大丈夫ですよ?」「っ・・・?」「刺さらないんで」


 意味が分からずジンを見る彼女。そんなマリティカにゆっくりと近づいてくるジン。


「・・・。(バカにしてんじゃねーよ!)」


 ジンの態度にとうとう頭にきた女はマリティカの首を剣で裂こうとした。

 しかし、何か強い弾力が邪魔をして引く事が出来なかった。


「なっ!」「はい、おしまい」「がっ!」


 強引に剣ごと腕を引っ張られ、がら空きになった鳩尾辺りを殴られ、ドスンと膝から崩れ落ちて気絶するのだった。


「・・・怪我しなかったでしょ?」「え?・・・あ、うん・・・」


 首元や手首などを確認するがどこにも負傷した痕が無い事に困惑する彼女。

 そしてそれ以上に、混乱しているのは最後の男だった。


「(な・・・なんだ。このガキ・・・。一体何しやがっ・・・)っ!」


 思わず後退り、周囲に倒れている仲間を見回していると、ジンが置いたカバンに目が行った。

 モゴモゴと動いていた何かが・・・精霊が顔を出した瞬間、思わず息を飲んで飛び込んでしまう。

 だが、その手前に何か突然現れた分厚い水の入ったシャボン玉が邪魔をして進めなかった。


「ここまで来たら、色々と聞きたい事があるけど・・・。後でいいかな?」「え?」「あのおじさん・・・。倒して問題ない?」「・・・」「なんだ、これ!くそっ、くそっ・・・離せっ!」


 必死に藻掻くが粘着性が高いシャボン玉に拘束され、全く身動きできない男。

 そんな彼を少しずつ冷静になったマリティカが軽蔑の目を向けた。


「っ。た、助けてくれ・・・。本当はオレもお前達と同じで潜入していたんだ。大貴族相手じゃ、真っ向勝負では勝てない。だからオレが汚れ仕事を──」「言いたい事はそれだけ?」


 拘束されたシャボン玉に歩み寄って行く。


「っ!ち、違う・・・!本当にオレはお前達の仲間で・・・」「そうやっていつも私達を・・・。仲間達を騙してきたんでしょ?違う?」「いや。あれはオレなりに嬢ちゃん達を思って」「・・・今なら、なんとなく分かるわ。あなたはずっと・・・そうやって生きてきたのね」「・・・」


 シャボン玉の前にまで来た時、息を飲んでいた男はニヤっと笑い本性を見せた。


「馬鹿がっ!無闇に近づく奴が───っ!」


 靴の中の隠しナイフや、口の中に仕込んだ特殊液の武器など・・・男は奇襲を仕掛けるつもりだった。だが・・・シャボン玉がその全てを完封しているとは気付いていなかった。


「どうしたの?・・・もう言い訳は済んだかしら?。臭い息にはこりごりなのよ」


 おそらく毒だったのだろう、口の中で暴れる自らの武器に藻掻き苦しむ男。

 しかし、そんな事などマリティカには関係なかった。

 体から溢れ出す魔力。そのマナを拳に集中すると、男の顔面目掛けてぶちかました。


 ドゴン・・・!


 鈍い音を放ち、男はシャボン玉から解放されて転がった。

 そして、そのまま2度と起き上がる事はなかった。ビクビクといつまでも痙攣するだけだった。







  【ジン・フォーブライト(純、クリス)】8才 (真化体)


 身体値 136

 魔法値 145

 潜在値 153


 総合存在値 251


 スキル(魔法):干渉、棒術 6、マナ零子 5、感応 4

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