360 戦力図
「それじゃあ、アーマー機械対特殊部隊・・・。試合開始~♪」「「「おおおーっ!!」」」
レネッタの合図で、中央に集まったアーマー機械部隊とバロット、セッテ、レクシア、ニルバの試合が始まった。
今回は一気に攻める形で動くバロット達。それに対しアーマー部隊はローラーでも付けているのか、機動性を活かして翻弄しようと動き回る。
「「!」」「止まるな。ニルバ、魔法で足を止めろ。セッテ・・・」
足元に氷の魔法を走らせ、逃げ遅れた数機が捕まってしまう。そこへセッテが飛び出し、その胴体を思いっきり剣で斬り裂いた。
「くそっ」「離脱!」
2機が真っ二つに分かれて破壊。他の機体はガードが間に合い、何とか腕を大きく破損するだけで抑えられた。
すかさずセッテにアーマー機械の魔力砲と太い釘の様な鉄が連射される。
「「「うわあああ~~っ!」」」
思った以上の土煙を上げた破壊力と衝撃に体育館の端にいた観客達が避難する。
「・・・っ!」
上げた煙の視界がクリアになるにつれ、勝利の表情をしそうになった搭乗者達。
しかし、次の瞬間。しゃがんでいたセッテの前をバロットが魔法盾を構え防いでいるのに気付いた。
思わず急ぎ体を動かして逃げようとするが、魔法による拘束は健在で動く事が出来なかった。
そこへ、どこからか現れたレクシアが腕を足を・・・そして搭乗者の場所以外をコマ切れに斬り裂き破壊して行った。
「(・・・くそっ)」「離脱、ぐあっ!」「あぐっ」「きゃあっ!」
離れるよりも先に爆発に巻き込まれ、搭乗者の3人ほどが外へと放り出されてしまった。
見学者の同僚が慌てて、転がった者達を急ぎ回収する。
「・・・これならっ!」「んぐ!」
魔力を絞り、集めたブレードが跳ねたアーマー機械からバロットに振り下ろされる。
質量とそのブレードの威力に魔力盾が僅かに歪む。受け止めた彼の足元を浅くクレーターが作られ、地面が割れた。
「セッテ」「させるか!」「くっ」「ニルバ」「させない!」「っ!」
援護を阻まれ、それぞれが遠くへと押し出される形で突き放された。
・・・・・・
「・・・ほう」「なかなかやりますね。あれは・・・列車と同じモノでしょうか?」「いや・・・足裏に魔力を噴出させる場所があるのだろう。歩かせている場面を見るに、搭乗者・・・。いや、あるいは両方か。とにかくそう長くは使えないようだな」「・・・豊富な武器と魔力の転用。内包している事を考えますと・・・短期決戦型」「(コクン)だろうな。しかし、それも先ほどと同じ人を選びそうだ。・・・考え方によっては十分な戦力だろう」「・・・こんな機械をいつの間に・・・」
数十年前はまだ緩やかな進化だったベルニカ。
しかし今の時代・・・何時がその転換期なのかは不明だが、シンギュラリティーのような文明の大きな発展期にいた。
そして、そこへ皇帝の指示の下、集められた化学者達。
いや・・・集まってしまった者達によって作られた目の前の機械に・・・ラナットはただただ驚愕するしかなかった。
「・・・欲しい条件が見つかったのだろう」「え?」「奴らにとって、ここは遊び場だ。自分達の気になったモノを好きに作る。そんな場所だ」「・・・それを軍が・・・皇帝が許した・・・」「利害の一致だな。多少の不満を超えるモノがここにはある。・・・そういう事だ」「・・・いったい、何処へ向かわれるのでしょうか?」「・・・。我々の行く道に、安定は遠い、という事かもしれんな」「それはどういう・・・」
振り向いたラナットに振り返ることなく、ドレッドはただ黙って目の前の模擬戦を見ていた。
・・・・・・
「おいおい。なんか凄くないですか?!」「ちょっとベンド、邪魔」「うるさいから黙ってくんない?」「とんでもないモノを研究者達は作りましたね」「ああ。・・・先ほどのアーマー部隊といい、かなりの戦力増強は見込めるだろう。・・・しかし」「・・・それでも勝てないのよね」「アイツ等って本当に人間なの?」
ナルがそう言ってしまいたくなるくらい、ドレッドの部下達は強かった。
苦戦する場面、対等に渡り合っている展開はあったが・・・。結局は全機が破壊、ないしは搭乗者が捕らえられ、アーマー機械達は全滅する事で幕を下ろすのだった。
「しゅ~りょ~!!」
レネッタが声を上げた時、最後まで戦っていた搭乗者達の首には剣を突き付けている形でバロット達は止まり完全降伏状態だった。
「くっそ~・・・!」「ああん。どうして?!」「もっと戦えたでしょ・・・?!」
一部不満を漏らす化学者達を残し、観客達から盛大な拍手をもらいながら模擬戦第2試合は終了したのだった。
・・・・・・
・・・
「まあ、概ね。予想通り勝ったな。正直、あそこまでアーマー機械が俊敏に動けるとは思っていなかった」「本当です。危うく、1発貰う所でした」「かなりヒヤッとした」「お互いに出力は抑えていたと思うから怪我は少ないとは思うけど・・・」「これが本番だったら、僕達にも死者が出た可能性があった」「(コクン)。ニルバの言った通り。彼等の技術力も私達の予想を超えて進歩している。いつか、その立場が逆転する可能性だってあるかもしれない。うかうかしていると置いて行かれるだろう。今後はより一層気を引き締めていきたい所だな」
開発局から持ち出してきた作業用のアーマー機械と、アーマー部隊が協力して、バロット達の破壊した機械達を運んで行く。
振り返ってその光景を黙って見ている特殊部隊の面々。
「あれに負けるって・・・そんな事あんのかよ?」「わかんねえ」
思わず呟いてしまったヒースとディアスに、口の端を吊り上げて振り返るラナット。
「10倍の給料・・・。無駄金だと削減されないようにしないとな」「「!」」
冷や汗が止まらないヒースとディアス。
先ほどまでの他人事がなくなり真剣を帯び始める。
「やべえぞヒース。マジでやんねえと俺達も」「えっ?マジで?!」
焦る2人の肩を叩くフーバに振り返ると、そこには無言の笑顔があった。
「ちょっ、ふざけんじゃねえ」「そうだ。オレ達はそっちに行かねえよ・・・!」
ディアスとヒースは疫病神から急ぎ離れようとするが、逃がすまいとフーバは追いかける。
それを離れた所から楽しんで見ている仲間達。
「はっはっは。精々、気を付けなさいよ」「いつまで、その意思が持つか賭けて上げましょうか?」「・・・すぐにボロが出る」「明日が限界」「テメエ等・・・面白がってんじゃねえよ!」
わちゃわちゃと暴れ出す面々。それに頭を掻いて、やれやれとラナットは眺めているのだった。
・・・・・・
「局長、それじゃあ・・・」「うん。あの子達で良いんじゃない?元々そのつもりだったし・・・」「分かりました」
持ってこようと、訓練場の通路へ向かっていくレネッタの部下達。
それを楽しそうにしながら見送る彼女。
「(さあ、改良ちゃんの調整はある程度できた。申し子達から得たサンプルでどこまでやれるか・・・見せてちょうだい?・・・ドレッド、ちゃん♪)・・・ふふ♪」
振り返ると、示し合わせた様にお互いが顔を見た。
微笑む彼女に対し、彼はムスッと気難しそうな表情のままこちらを見つめている。
「(楽しみだね~♪・・・どこまで成長したかを是非ともその身で味わって♪)」
興味を失ったのか、視線を外された事で少しだけ寂しそうな顔を見せるが・・・それでも、このワクワクを抑えられないと彼女はドレッドに熱い視線を送り続けた。
「・・・」
そんな彼女は、視線が送られ続けている事に気付いていなかった。
・・・・・・
・・・
「なんだと?」「え?6体だけなのレネッタちゃん?」「ちょっと予想外なんだけど・・・」
研究者に引き連れられ、スムーズに中央へと集まった改良ゴーレムに驚くラナット達。
「ん~?もっと連れてくると思った?」「正直、申し上げると・・・」
ゴーレム達の最終点検をする部下達を置いて、1体の肩に手を乗せたレネッタが代わりに聞く。
困惑するのはラナット達だけではなく、周囲に居る観客達も同じ様子だった。
「さっきまでは、君達にリベンジしたいっていう人で集めたからね。それで多かったんだよ~。んまあ・・・。それが従来の人数になっちゃったから、そういう意味では・・・拍子抜けかもね~」「「「・・・」」」
お互いの顔を見るヒースとディアスを放って、ラナットは気合いを入れ直した。
その表情にいち早く気付いたレネッタ。
「ふ~ん♪ラナット副隊長さんは・・・分かっちゃうんだね」「過信・・・と思いたい所ではありますが・・・。あなた方はそれで十分だと、考えたのでしょう」「「!」」
ラナットの答えに、笑みを深めるだけのレネッタだった。
・・・・・・
「それでは・・・特殊部隊VS改良ゴーレムちゃんによる試合を始めたいと思いま~す♪」「「「イェーイ・・・!!」」」
最初は戸惑っていた観客達も、なんだかんだでノリは良く。すぐに状況を受け入れていた。
そしてすぐさまレネッタ達全員が避難して行き、端へと着いた頃。振り返った彼女が開始の合図が送った。
「模擬戦第3試合・・・始め~!!」「「「オオオー!!」」」
盛り上がる客達に対し、選手達は静かなモノだった。
副隊長の真剣な目に、部下達もスイッチを切り替え、一斉にお互いの邪魔をせず、またすかさずフォローしあえるちょうどいい間合いへと移動した。
日頃の戦闘経験と訓練が、その一瞬で表れているようだった。
「「「・・・」」」
それぞれが武器を構え相手の出方を待つ。
先ほどまで何の反応も示すことなく突っ立っていたゴーレム達だったが・・・一斉に体を震わせると、頭をキョロキョロと動かし周囲と探る。
そして標的を見つけたと判断。一斉にラナット達へと飛び掛かった。
「(げっ。3体かよ!)」「ディアス!」「ふっ!」
カバーを入るディアスと入れ替わり、ラナットは前進して別の3体の相手を一気に引き受ける。
ガキガキガキ、ゴガンドガンボゴン・・・!!
訓練場に土煙と僅かな振動が発生する。
ラナットがヒース達から離れ、程よくゴーレムを引きつつ後退していく。
「(かった・・・!!)なんだよこいつ等・・・?!」「全然違う・・・!」
片手て刃を受けつつ、反撃に出るゴーレム達。その時に起きる衝撃を平然と受け止められ、ヒースとディアスも回避優先を余儀なくされる。
「おお~♪やるね~・・・。頑張れー」
レネッタの応援に追随して、他のチアメンバーも声を上げる。
一層盛り上がる観客達。予想以上の成果に研究者達にも熱が入る。
「ちょっとちょっと。何やってんのよ!サッサと1体くらい片づけなさいよ」「ヒース、引くな!攻め込め!」「ディアスも、回避ばかりしてんじゃねえよ!もっと前に飛び込めよ!」
外野の仲間達からも野次が飛ぶ。それに少し苛立ちを感じつつも、ヒースとディアスは必死にゴーレムと斬り結んでいた。
「(こっちは真剣だっつの・・・!)」「(マジで硬ぇ。それに速ぇ・・・)こんなのどうやって作ったんだよ・・・!」
左から来る薙ぎ払いをしゃがんで回避。腹を突き立てようとするが貫通せず、踏ん張られる。そこへ横から来たもう1体が蹴りを繰り出し、ヒースを突き飛ばしたディアスが魔力を込めた剣の腹でガードする。
「っ!」
驚き振り返った視線の先では、ゴーレムが蹴り飛ばし、壁に思いっきり仲間が叩きつけられる所だった。
「ディアス!」「よそ見するなヒース!」「!」
ラナットの言葉に、急ぎ首を横へと倒す。コンマ数秒後、彼の頭をゴーレムの腕が通り過ぎた。すぐさま反撃に出ようとするがそれよりも先に、ゴーレム達の徒手空拳が振るわれる。
ストレート、蹴り、ひじうち、回転蹴り・・・。地面を叩き割る勢いにいくつもの小さな穴が作られていく。
戦闘が開始してまだ僅か2分弱。盛り上がっていく観客達とは裏腹に、特殊部隊の仲間達は徐々にラナット達の必死さに真剣な顔へと変わっていく。
「どういうこと?」「手加減・・・じゃないのよね?」「(コクン)必死・・・。副隊長がほとんど喋らない」「「「・・・」」」「その余裕がないって事か・・・」
明らかな苦戦。先ほどの2戦が嘘の様な展開に、特殊部隊達に不穏な空気が漂う。
「・・・」
ドレッドは、ただ黙って戦闘を見守った。
「(思った以上だ。噂は聞いていたが・・・)はぁぁああああああっ!!」
ラナットは繰り出す拳や蹴りを一手に剣で受け止めつつ、魔力を解放すると、薙ぎ払った。
放物線を描いた改良ゴーレム達は、何度かバウンドしガラガラと転がった。
人なら間違いなく怪我をするような頭からの落下だったが、ゴーレムには関係ないだろうとラナットは追撃に飛び出した。
ガガァン、ドン・・・!!
1体に力強く振り下ろされた剣。狙われたゴーレムはいち早くガードを選択したが、それを上回る破壊力と地面を凹ませる程の重みに腕ごと体を真っ二つに割られる。
他の2体は瞬時に飛び退って、間合いから離れた。
「・・・」
その瞬間を観客達だけでなくヒースやゴーレム達も注目してしまった。
その隙に小爆発を起こしたように壁が弾け飛んで、向かって来たディアスがヒースの相手をしていたゴーレム達に思いっきり剣を振るう。
反応が僅かに遅れたゴーレムの1体が片腕を失い、腹部を切り裂かれて後退しようとする。
「逃げんじゃねえ!」
頭からの出血を無視して、追い打ちだと魔力の斬撃を飛ばした。
反応した他のゴーレムが肩代わりと自分の腕を犠牲に仲間と後退する。
「くそっ。妙な所人間臭くしやがって・・・」「おい、大丈夫か・・・?」「ああ?大したことねえよ」
視界を邪魔しない少量の出血なら問題なしとディアスは魔力を噴出させ、攻撃へ転じようと走り出す。
「ヒース、行くぞ!」「あ、ああ」
一瞬、気後れしつつも魔力を解放して、彼の後を追いかけた。
「(あっちは問題なし・・・)少し驚いたが・・・いい刺激になった」「「!」」
目の部分を点滅させたゴーレムはラナットに向かって飛び出した。
ドガガガ、バゴドゴボガ、バキ・・・!!
剣と徒手のぶつかり合いが再開された。戦闘のスピードが少しずつ上がっていく。
10秒足らずで、研究者達の視覚には高速で斬り結ぶ、大きな物体が移動している様にして見えなくなっていった。
「・・・」
ドレッドは誰にも気付かれずに小さく息を吐く。
そして驚く研究者達の中にいるレネッタへと視線を向けた。
「・・・(ちょっと予想・・・外、ねぇ・・・)」
思わず引き攣った笑みが崩せなくなってしまう彼女。
能力は予想通り。ただ色々と自分の思っていた事と違う行動を示すゴーレムと、それ以上に粘り強い特殊部隊達の能力に驚いてしまう。
「・・・!」
ドレッドに見られている事に気付いた時。自分はいったいどんな顔をしているのか分からなかった。
ただ、これまでの余裕が全く無かった事だけは分かる。
慌てて口を閉じ、表情を引き締めるが・・・内心、笑われている様に感じてちょっとだけ悔しい思いをする。
「そ・・・そんな・・・」「これでも、ダメなのか・・・?」「ウソでしょ?だってアレは大会の・・・」「ゴーレムにはまだ・・・追いつけないのか・・・」「いや、逆だ。たった6体で、あれだけ保っているんだ。それだけでも・・・」「そうだ。そうだな・・・。はは・・・ははははは」
何とか希望を持とうとする研究者達。
時折、パーツか何かが破損して飛んで行くのに気付きながらも、今後に活かそうと自分達に言い聞かせているようだった。
開始からわずか5分足らず。
多少の負傷を追いながらもヒースが胴体を切り裂き。ディアスが脳天から叩き割り。ラナットが最後の1体を粉砕する事で第3試合は終了する事となった。
・・・・・・
・・・
「予想外の強さでした」「あんなのほとんど、図体の小さいBランクモンスターと同等だろう?いや、Aだってあり得るぜ?」「まだ改良途中かもしれねえけど、あんなのと戦ってると命がいくつあっても足りねえだろ」
少し服が汚れただけのラナット。ヒースとディアスは数発ほど攻撃を喰らい、服の一部が破れつつ、そんな感想を述べた。
「・・・まあ、やるじゃない?」「よくやったわね。アンタ達にしては」「お疲れさん。いい経験になったんじゃねえか」「(コクン)」「魔力の練りが甘いんじゃない?」「解放までが遅かったな」「もっと労ってくれてもいいんじゃねえか・・・?!」「フーバだって。ぜってえ俺達と同じようにケガをしたって」「そ、そんなことは・・・」
汚れた服を叩きながら仲間に文句を言うヒースとディアス。
そんな彼等を無視してラナットはドレッドへ近づく。
「・・・基準としては?」「ヒースの言った通りBランク相当。ただし本来の武器と魔法を駆使すれば・・・我々の中ではCランク上位といった感じです」「・・・学生が数名いれば1体は戦える感じか・・・」「私はその様な印象でした。・・・ですがそれは、事前情報と意識が戦闘状態に入っているという前提が含まれそうです」「実践を想定すると、もっと派手に暴れるだろうな。より多くを集めなければ、対応しきれない脅威か・・・」「はい(コクリ)。これほどのゴーレムを短期間で改良するとは・・・やはり研究者達は凄いモノを作りますね。・・・これでは本当に我々の立場が危ぶまれそうです」
そんな現実が見えてきそうで、思わず苦笑するラナット。
ドレッドは腕を組み考えながら、回収されていくゴーレム達を観察していると・・・。
「納得いかなーい!もう1回。勝負させてー!」
レネッタから希望のもう1試合が申し込まれた。
帰ろうとしていた観客やルグルット達が止まった。
「何をするつもりだ?」
終わったはずだが?と表情で訴えるドレッドを無視して、人差し指を立てる彼女。
「今回は私が作ったゴーレムちゃんで相手して。・・・あなたが」「「「!」」」
クルっと手首を捻り、立てた人差し指でドレッドを指名した。
「え、ちょっと待ってよ・・・。それはいきなりなんじゃ・・・」「そうだぜレネッタちゃん。いくら何でも」「負け惜しみ・・・」「悔しいのは分かるけどさー。流石にもう終わりで良いんじゃない?」
何だかんだで、戦闘に出た部隊メンバー達は休みたい気持ちの方が勝り消極的だった。
「いや、それは分かってるんだけどね~?私もやっぱり局長なわけなのよ。だからせめて・・・ね!もう1回!」
両手を合わせ拝むようにお願いするレネッタ。
副隊長の確認する様な表情に特殊部隊隊長はため息を吐いた。
「~~~っ!待ってて。すぐに用意してくるから」
いち早く気付いた彼女は一目散に訓練場を出て行った。
その声が聞こえた特殊部隊達だけじゃなく、観客達も内容を察し、動揺が生まれる。
「え?ウソ・・・マジっすか?!」「隊長が直接・・・?!」「で、でもあの人が持って来るって事は・・・」「(コクン)たぶん、ゴーレム」「絶対、さっきのよりも強力だよな?」「ああ。・・・俺達の武器だって・・・ボロボロだし・・・どうやるんだ?」「いいんですか隊長?」「こっちが不利ですよ?」「別に引き受けなくても・・・」
次々に不安そうな声が上がる。
「(ボソ)何かお考えで?」
ラナットは訓練用の剣を取りに向かうドレッドに追いかけて、聞いた。
「いい機会だ。この模擬で、奴の能力を知っておきたい」「先ほどのゴーレムも十分に協力でしたが・・・」「あれは常備型だろうな。帰還した時・・・それほど関心が無かった所を見るに、大体の目途は付いていたのだろう」「つまり・・・次が本命と?」「部下を引き連れていなかった所から・・・奴独自のだろうな」
適当に1本を選ぶと、軽く型に沿って流しながら体を動かす。
「気を付けろ。開発局は奴の遊び場だぞ」「・・・」
数度ほど、同じ型を繰り返すとその1本を持って中央へと歩くドレッド。
そして彼が到着するのとほぼ同じタイミングで、通路から1体のゴーレムを引き連れてレネッタが戻って来た。
「はぁ・・・はぁ・・・。いやあ~。ごめんごめん。まだこれ実験中なんだけど・・・」「・・・それでいいのか?」「うん♪よろしくー♪」
少し息を上げつつも陽気に歩いて来るレネッタ。
そんな彼女の後を、ぎこちない動きでパペットの様なゴーレムが1体、続くのだった。
【ジン・フォーブライト(純、クリス)】8才 (真化体)
身体値 118 → 136
魔法値 145
潜在値 153
総合存在値 237 → 251
スキル(魔法):干渉、棒術 5 → 6、マナ零子 5、感応 4




