351 静か?な切り上げ
「(くそっ、被害は?!)」〔分かる範囲で落ちた学生はいません。学生ではない者の気配が4つほど混ざりました。警備員でしょうか?〕「(どうなってる?)」「ジン君・・・?!」「っ!」
微かに聞こえた声から上を見上げると、氷柱の上にユティの姿があった。
周囲を確認し、すぐにシャボン玉で飛び上がった。
「先輩達。ここで何かあったんですか?」「それはこちらの台詞だ。いったいどういう?」「っていうか、その恰好はどうしたの?」「え?・・・あ」
ローブに下に教会の見習いの恰好をしていた事を思い出す。
「ちょっと、気になる所に調べに行くために・・・」「それよりも会長、あの者達は?」「え?・・・あ!」「あそこだ」
ナルシャが示す先、建物の一部に降り立った4人の姿があった。
「ちょっと・・・ねえ!コンダート・・・!ねえ!」「おいおい。コイツがこんなにボロボロになるっていったい何が・・・」「っつうか今の内だろ。早く逃げんぞ」「そうよぉ。そういう作戦だったでしょう?」「(ボソ)勇んで戦おうしてた奴らがよく言う」「あん?「んん?」」「な、何でもねぇよ。とにかくここは何処かに・・・って何処に?!」「そんなの下に決まってんでしょ?!」「ええ~」
光りが入っても、奥が暗くて見えずハッキリとイヤそうな顔をするドトクル。
そんな彼の耳をアフタネが引っ張ろうとした時だった。
「っ・・・!」「起きたの、コンダート・・・!」「・・・やあ、みんなぁ。こんな所で会えるなんて奇遇だねぇ」
薄っすらと目を開けた彼は無理やり笑みを浮かべて言った。
「ふざけんな!お前のせいでオレ達は苦労してんだよ!」「そうよぉ?危うく、私達全員が捕まっちゃう所だったんだから」「反省しろっての。テメエの我が儘で振り回されるオレ達の身にもなれよ」「「・・・」」「なんだよ」「いえ。何でもないわ。それより・・・飲んで」「・・・んぐ」
念のためと持っていた小瓶に入った液体を飲ませた。
みるみるコンダートの体が癒されていく。
「・・・あぁ。助かったよ。ふぅ・・・傷は治ったけど・・・これじゃあ、ねえ?」
肩や首をゆっくりと回し立ち上がる。調子を確かめるように手を閉じたり開いたりと確認する。
「贅沢言わないの。動ける?」「問題ないよ」
体内に残る魔力残量を確かめて答えた。
「だったら、ここからサッサと脱出しましょうよ~」「そうね。とりあえずこの下から──」「止めといた方がいいよ。あの下には化け物がいる。そして・・・あそこにも、ね」「へ?」「んなもん分かってんだよ。だったらどうすれば・・・」「便乗しよう」「便乗?」
示し合わせた様に地下から瓦礫と共に宙へと飛び出してきた者がいた改良型ゴーレムである。
「あれ?」「違うけど・・・この際、行こう出口に近いのは?」「え?えーっと・・・」「たぶん、あっちよ。初等部達の安全の為に中等部と警備員が近くに大勢集まっているから、手薄なはず」「それじゃあ、行こう」
市街地の更に向こうを指し示したアフタネ。その予想を信じて、迷うことなくコンダートは走り出した。
「待ってよ~」「置いてくなって」「オレ達を放って置く気かよ」
ゾロゾロと彼の後に全員が付いて行く。
「待ちなさい!」「待った」「え?!」
ユティが動こうとするのをジンが止めた瞬間、更に大きな・・・岩すら飛び上がってボロボロになったパペットが地上へと跳び上がって来た。
「なにあれ?!」「気にしなくていい。今の内だよ」「ほら、私達は逃げるの」「逃がすと思うか!」「邪魔だっ!」「あぐっ!」「「!!」」
走り出した所を学生が止めようとしたが、その前方の足場を砕いてジャグラが叫ぶ。
あまりの迫力に思わず学生達は止まった。
そこには、未だにハッキリと実力差がある事を分からせるモノがあった。
瞬時に気付いてしまった学生達が二の足を踏んでしまったのも仕方なかった。
「殺しはしねえよ。テメエ等が来なければなぁ」「「「っ・・・!」」」
生唾を飲むほどの威圧に、誰もその先へは進めなかった。
「だったら、私達は敢えて進もう」「っ!」「ここで逃がすわけには行きませんからね」「んもう!」
ナルシャとドルゴの攻撃に何とか凌ぐことで、被害を受けなかったが・・・一瞬、そんな事が頭に過ぎった時だった。
「こっちはともかく。そちらは斬るつもりだったからな」「私が前に出ます。皆さんは安全な場所へ」「っ、すまん!」「ありがとう」
礼を言ってゆっくりと崩落していく市街地を退避していく中等部達。
そんななかゆっくりとデッドグレムゲンのメンバーはある1人へと振り返る。
「仕方なかったんだよ♪掛かってくるから」「お前はこういう時に戦闘狂なんだな!」「私達が居る事を忘れないでよ。この事はジッター様に報告するからね」
やれやれと出していた魔力の鎌を消して大人しくなる。
「せっかくの所悪ぃんだがよ~。お互い、そんな悠長な状況でもないんじゃないか?」「なに?」
ナルシャ達が疑問に思っているとどこかで爆発する音が聞こえた。それも複数だった。
「どうやら・・・あのゴーレムちゃん達、結構やるようよ?放っておいていいのかしら~?」「・・・く」
渋い顔になる2人。それをとても楽しそうに見ているジャグラとリダリー。
「ああ~♪その顔よ・・・!その顔を見たかったの」「ガハハハ、残念だったな」「行くわよ」
アフタネの指示で全員が移動を再開する。去り際にリダリーは投げキッスを。ジャグラは手を振って挨拶する様にしてその場を去って行ったのだった。
「・・・くそ!」「今は、ゴーレムの制圧が先です」「分かっている」
2人は戦いが起きている現場へと救援に急ぐのだった。
・・・・・・
「(コイツ・・・なんてデタラメなの?!)」
氷槍をいくつ飛ばせど、その全てをボロボロの体で簡単に捻じ伏せるパペット。
「(刃が通らない。こんな硬いのもゴーレムなの?)」
柱を新しく生成して、急接近して戦う。既にこの時にはナイトドレスの換装状態であった。
ガンカンカンガン・・・ギリリリーーーギィン!
破損している部分を身体を最大限活かして戦うパペット。
ユティは相手が人形という事で、予想の軌道とは違う動きに戸惑いながら戦闘していた。
遠心力、破損した腕の一部を使う。予想とは違う反対の足でいきなり蹴ってくる。
戦力が落ちたはずなのに、それを補って技量が急成長し始めていた。
「(代わるなんて大見え切るんじゃなかった)」
ほんの少しだけお姉さんぶろうとしたしっぺ返しが来たと思ってしまった。
「(ま、負けるもんかーーー)てやあああああああ!」
大技が使えなくとも、戦えるという事を見せつけるようにユティもパペット同様、果敢に超接近戦で戦った。
・・・・・・
「なんだコイツ等!全然効かねえぞ」「下がれ!」「ぐあ。・・・ぐ・・・ぐぞっ!」
魔法をぶつけようと、魔力を込めた武器で殴ろうと僅かな破損以外、ほとんど無傷な改良ゴーレム達。最初から破損していた箇所はジン達に巻き込まれた結果、出来た傷痕であり。中等部の攻撃はほとんど通用していなかった。
「待ってろ!」「ぐ・・・が・・・あ゛っ!」
首を掴まれ持ち上げられた学生の力が抜けていく。口から泡や涎が出るが、ほとんど息が出来なかった。急ぎ助けようとするが、その前に別のゴーレム達が立ちはだかり救出できないでいた。
ガシャン・・・。
とうとう武器すら持てなくなり、意識が消えかけていた頃、ジンが救出に到着した。
「大丈夫ですか?!」「がはっ!ゲホエホッ・・・」
腕を破壊し、すぐに仲間の下まで運ぶ。
「良かった」「子供?!」「それは後!今すぐ避難してください」「え・・・」
初等部・・・いや、それよりも小さく見える子に声を掛けられてどう反応していいのか困る中等部達。
〔仕方ない。ジン、倒してください〕
一も二もなく、すぐさま行動を開始。切断と破壊。
ゴーレム達がジンを見て一斉に飛び込んだが次々とスクラップへと変える。
「「「・・・」」」「早く非難を」「え?あ、は、はい・・・!」
呆けていた1人が声を出すと我に返った者達も市街地を出て行こうと離れて行った。
「(他には?)」〔中等部数名がまだ交戦中。一部はナルシャとドルゴが対処。次はアチラです〕「(分かった)」
体内マナの一部を矢印の様に流し方角を示す。ジンは急ぎその場を離れた。
・・・・・・
「っだあああっ!!」「はあああああっ!!」
ハンマーのような重い一撃が振り下ろされ、紫電を内包した質の高い魔力が叩き込まれた。
受けたゴーレムは破損し砕かれた。
「はぁ・・・はぁ・・・。何て硬い・・・」「はぃ・・・。会長が戦っていたゴーレムはこのような相手だったのでしょうか?」「分からん・・・」
肩で息をしながら、何とかこれで6体を撃破した2人。
「他に戦っている者達は・・・?」「・・・恐らく、会長だけでしょう。後は・・・」「彼が対処してくれたか・・・。正直助かる」
自分達でもハッキリとは認識し辛い速度で動き回るジンを見つけた。
もはや何体・・・何十体破壊して回っているのか見当も付かなかった。
「ふぅ・・・私達は、残った者達が他にいないか見て回るぞ」「分かりました」
壊れた壁から外に飛び出て、再び走り出した。
・・・・・・
ガンカンギン、ガキゴンゴゴッ・・・!
「ぐっ・・・」
受け方をミスってお腹に一発入ったユティ。ガリガリと生成した氷柱の上を滑る。
「ジ・・・ジ・・・」
ビシビシと魔力がショートを起こしたみたいに体の一部から火花を走らせるパペット。
体勢が悪くなるが、ディスクへの損傷は未だ軽微だった。
まだまだ戦えると言わんばかりに彼女をジッと見つめていた。
「はぁ・・・。ちょっとはやるのね」
強がってはいるが、何度か攻撃をもらっていた。
体力は問題ない。魔力も十分にある。ただ・・・単純に悔しいのであった。
「(少しずつ感覚は取り戻してると思ったんだけどね。・・・反省)」
心の中で反省して、軽く息を吐く。
そしてゆっくりと魔力を練る。普段なら簡単に出してしまう所を敢えて体内に留める。
コントロールでは魔力をただ扱う事だけだったのだが・・・最近のある人物の影響で、体内に巡らせるという事も自己流で練習し始めていた。
「(今だから分かる・・・。これってホントに難しいんだね。当たり前だったから見落としてしまう)」
体内マナの循環。練るでは集めるのが中心。自在とは多彩なんだと知った。
「・・・ちょっとは近づけたかな・・・」「!」
ほくそ笑んだ彼女を見たパペットは一瞬、足が下がりそうになった。
ほんの少しとはいえ、先ほど戦った少年と同じモノを感じてしまったからだった。
「どこまでやれるか分からないから・・・すぐに終わらせるわ」「!!」
死刑宣告をされたパペット。しかし、まだ勝てるという判断したのか迷わずに氷柱を割るほどの力を込めて飛び出した。
「すぅぅ・・・」
ゆっくりと息を吐きながら、流れるように滑る彼女。その瞳が薄っすらと水色へと変わる。
向かって飛んでくる相手が少しだけスローに見えた。そして・・・自分の刃が通るポイントを薄っすらと白く光って報せてくれているようだった。
ザンザンザン・・・!ガジャッ、ズシャッ、ザアアアアアアアアア・・・・・・!!
3回・・・。
あの遅くなった世界で確かに・・・3回だけ斬ることが出来た。
振り切ったユティはすぐに崩れる足場を離れるために飛び去る。
「(ありがとう)」
心の中で感謝し、その場を離れた時。丁度、下から入れ替わるようにジンが飛び上がって来た。
擦れ違うほんの一瞬、2人は頷き合った。
「(ありがとうございます)」
そんな声が聞こえた気がして・・・嬉しくなった。
「っ!!」
足を一本切られ、バランスを崩し氷柱から地下の穴へと落ちていくパペット。
すぐ傍には腕も転がり落ちていた。首は何とか切断されずに済んでいたのだが、目の前にあの子供が現れた時、全ての事が真っ白になってしまった。
その一瞬が最期を告げた。
〔オッケーです〕
サインが出た時、ディスクにマナを集めビームを撃とうとするが、そんなもの関係なかった。
「はあああっ!!」
これまでの制限を取っ払った飛ぶ斬撃がパペットに向かって放たれたのだ。
ズゥゥゥゥオオオンンン・・・!!
またしても巨大な何かが雲を大きく裂き、空へと飛んで行った。
そんな光景に観客達は驚き不思議そうに見ていた・・・が、その興味はすぐに逸れてしまう。
未だに終わらない大会の行方を見守るので忙しいからだった。
まだ崩れ落ちてない建物の屋上に降り立った瞬間。突然何かがジンの胸へと飛んできた。
「おわっ!何だ?」
一瞬、攻撃かと思った。だが何もなかったのでゆっくりと目を開けるとアクセサリーが光っていた。
「これって・・・」〔どうやら手に入ったようですね〕
勝手に大きくなった羅針盤。その六芒星の中には新しく青とオレンジのピースが入っていた。
その位置的はモナメスのピースの横だった。・・・つまり。
〔おそらく、あれが玉樹と呼ばれたモノを持っていたのでしょうね〕「ん?でっかいディスクみたいなヤツ?」〔たぶん、それかと・・・〕「・・・もっと、宝石とか巨大な石みたいなのを想像してたんだけど・・・」〔さあ?時代と共に変わって伝わったのかもしれませんね。何せ何処にあるのか分かっていなかったのですから〕「はぁ・・・・。(それがアルメラってのも、怪しんでくださいって言ってるような気しかしないんだけど・・・)」〔たまたまと考えるのは・・・まあ、ないですね。いつから手に入れていたのかは知りませんが〕
そんな話をしている時だった。
4つのピースが光り出し、ある方角を示す。遠くまで伸びていないため、ザックリとしか分からない・・・と思っていると空いた穴の中に小さい点が波紋の様に点滅し、在り処を証明しているようだった。
その点滅している箇所は・・・。
〔オーラル、ですか〕「鎮魂の星畑・・・」
図書館で調べた一番、可能性がありそうな場所を思い出す。
〔どんなモノかは分かりませんが。目的地は決まりました〕「次はそこかぁ~・・・」
アクセサリーを服の中に仕舞い込み、伸びをして座り込む。
思った以上に精神的に疲れてしまった。
丁度そのタイミングでユティ、ナルシャ、ドルゴが建物へと近づいてくる所だった。
・・・・・・
「ぶはっ!・・・え?ちょっと何・・・終わったの?」「・・・どうやらそうみてぇだぜ?」「ちょっとどうなったの?」「んなもん・・・。その辺りの静けさで分かんだろ。大会はまだドンパチしているようだがな」「・・・」「そうしょぼくれんなよ。とりあえずはオレ達もここを離れようぜ」「・・・後てちゃんと確かめなきゃ」「その辺りは、他の連中がやっ──」
やっと追いつき地上へと這い上がって来たのに、メリリカ達は事情も分からず、その場を立ち去るしかなかったのだった。
・・・・・・
「・・・はぁ~・・・疲れた」「お疲れ。カッコ良かったよ?」「先輩こそ、最後凄かったですね。(循環が出来るようになったのかな?)」「え?そう?ふふん。・・・まあお姉さんもたまには」「はいはい。今はいいからユティもジン君も、この場を離れた方がいい」「へ?」「お2人とも部外者ですからね。もしバレたら・・・」「ヤバッ。行こうジン君」「・・・はい」
ヘトヘトになりながらも大人しくユティの案内に付いて行くジンだった。
こうして、人知れず起こったテロによる問題は未然?に防ぐことが出来たのだった。
・・・・・・
「ふ~ん。全滅か~大体の学生は・・・まあ、概ね通りかな?でも・・・一部は違うみたいだね。今年は豊作だって噂を聞いたけど・・・ほんとだったようだね~♪」
ほとんど砂嵐で見えなくなった虫眼鏡でなお何かを覗き込むように見続ける。
レネッタの表情はとても楽しそうだった。
「あのゴーレムちゃん達・・・回収できないかな~♪いいサンプルだと思うんだけどな~。・・・ああーでも、これだけ壊されたんじゃ、すぐ修理かぁー・・・。ああ、でも・・・こんなに何か大変な事件が発生したんだ。調査しないわけないよね~♪一体、何で起きたんだかー・・・。調べたいけど誰かに、一部でも回収させようかな~?ああ~勿体な~い。でも・・・こっちも忙しくなるからな~・・・やっぱり廃棄かなー・・・くふふ♪」
頭を押さえ、非常に悩んだかと思いきやフと冷静になり。また面白そうだと考える・・・。表情をコロコロと変えてその瞬間を1人楽しんでいた。
そして、あの出来事の中で一番気になった事を頭の中で反芻する。
「(人形ちゃんは・・・予想以上の成果を見せてくれたね。まあ、あれを操作すのは見た感じ不可能そうだ。・・・それより・・・。瓦礫で視えなかったけど、あの小ささ・・・恐らく子供。一体どこの学生かなぁ?でもあんな小さい子供が入れる場所って限られてるよね~?)・・・ふふ♪一回調べて見よっと」
スキップをしながら帰るレネッタは今日一番の収穫だったと上機嫌だった。
「楽しくなってきたーーーっ!っふ~♪」
思わず飛び跳ねてしまうほどに、彼女にとっても満足いく試合だったようである。
【ジン・フォーブライト(純、クリス)】8才 (真化体)
身体値 90 → ?
魔法値 107 → ?
潜在値 115 → ?
総合存在値 178 → ?
スキル(魔法):干渉、棒術 3 → ?、マナ零子 3 → ?、感応 1 → ?




