348 学生達による裏活動
「・・・何だ何だまた新手かよ。・・・結構可愛いお嬢さんじゃないか?」
突然、戦場に現れた少女。上から下までじっくりと見てニンマリしながら感想を述べる。
「・・・最悪」
それに対しアフタネは本気で愚痴を溢し、自然と少しずつ後ろへと下がる。
「お?どうかした?奥にいる子達も何年かすればイイ線行くと思うけど・・・。あの子、絶対近い将来美人になりそうだし、今の内にちょっとお楽しみも」「逃げるわよ」
ついさっきまで殺す気でいた2人。特にアフタネの方がその意識は強かった。
しかし・・・彼女がユティから視線を外さない事で察した。いや、外せないと事で分かった。
「・・・・・・そんなにヤバいのか?」
不意に近づき過ぎたのを理解し、ゆっくりと後退しながら小声で問う。
「何処へ行こうとするのです?」
そんな2人をゆっくりと直刀に近い刀を引き抜きながら、投げかけつつ相手の周囲に氷を張って行くユティ。
「ぃっ・・・!」「っ・・・!」
飛び出すのは簡単。しかしそれが意味する事を察して、足元を越えて遠くまで拡がって行く白い世界を黙って受け入れるしかなかった。
ゆらりと立ち昇る魔力。それは自分達と同じく落ち着いた魔力の波だった。
しかし・・・そこに加わる圧力が違った。
「・・・申し子、どうしてここに残って・・・」「(申し子っ・・・!)え?あの子がっ・・・?」
発した魔力で揺らめく青い髪、純粋で真っ直ぐな緑の瞳が侵入者を逃がさないと訴えている様に感じられた。
「(逃げ切れる可能性は・・・低い)ホント・・・最悪よ」「マジかよ・・・」「本当の化け物に会えた気分は?」「・・・聞かなくても分かんだろ?」
こわばる表情を必死にポーカーフェイスで隠し、腰を落とす2人。
戦う覚悟を決めたようだった。
「(全く、何でいるのよ・・・!)」
それがアフタネの本音だった。
間は30メートル弱。しかしこんなものは両者にとって大した距離ではない。
簡単に詰められるほどだ。だが、そのほんの一瞬の余裕が生死を分けると2人は経験から知っている。
丁度良い間合い。逃げれば斬られ、責めれば倒される。少なくとも僅かに手順が掛かる。それが大事だった。そのどちらかの判断を考えさせるギリギリのラインだった。
「・・・(この霧は・・・もしかしてジン君?・・・ううん。そんな感じがしない・・・でも)」
間合いを図っていたのはアフタネとドトクルだけで、ユティは気にせず周囲を見回す。
いつでも、対応できる範囲にいるからだ。
「皆、ケガはない?」「は、はい。大丈夫です」「あ・・・アンタが居なくても・・・私が・・・」「助かった。ありがとう・・・」
分かっているけど強がるリエナの肩に手を置いてパミルが感謝する。思わず口元が緩みそうになる。
いつも通りの雰囲気。少し恐怖に飲まれたと心配していたが・・・杞憂だったと安堵する。
「先輩、他の人達は?」「あなた達以外の各初等部は恐らく中等部が安全な場所に誘導しているはずよ。他の代表達も連携して手伝ってくれているわ」「よ、よかったです」
ロロナ同様、ホッと胸を撫でおろすプリメラ。
「あなたは・・・ベルニカの・・・プリメラさんでしたっけ?」「は、はい。・・・あ、助けてくださって感謝いたします」「こういう時はお互い様よ。行って。あなた達まで巻き込まれてしまう」
一瞬、食い下がろうとしたプリメラをリエナ達が止め、潔く下がって行く。
その避難する先では駆け付けた中等部がバッツ達を連れて行く所だった。
そんななかユティに、ある方向へと腕ごと指し示す。
「「?」」
分からない侵入者2人を置いて、ゆっくりと頷く事で返事を返した。
そして5人を連れて立ち去って行く。
「(ボソ)・・・ゼックン。いたら返事をしてくれる?」
突然、小さなシャボン玉が生成され弾けた。
それを見て微笑んだ。
「皆をお願い」
(まかせて・・・!)・・・遠ざかって行くような何かの気配がそんな事を言ったような気がした。
直感だけど確信したユティはゆっくりと振り返った。
「今のタイミングで攻めてこなかったのは、感謝します。・・・そのついでと言っては何なのですが・・・。大人しく捕まっていただけると助かります」「ふ・・・冗談」「遠慮願いたいですね」
口元を笑わせて答えるが、冷や汗をハッキリと掻いていた。
攻められないと分かっての皮肉だとしても、キツイ冗談にしか聞こえなかった。
「オレに合わせろ。さっきの同じだ」「嫌な役目・・・」「だったら変わるか?」「それこそ嫌よ」「・・・我が儘目」
本気で悪態を吐きたいのは相手にである。だから、その気持ちも乗せた攻撃をぶつけるだけだった。
「「っ!」」
一足飛びで襲い掛かるドトクル。その半歩、遅れる形でアフタネが追いかけた。
ガキィィィ、カン、ガン・・・ガガン、ガガガキドゴ、バキ・・・!!
受け止めた者を流し弾いた所へ、割り込んでいた攻撃を払い斬り。
諦めず、体勢を立て直すと同時に飛び出して攻撃。複数匹のヘビのように別れる剣技。しかしそれを薄い氷の膜でガードして正確な一本だけを叩き斬る。
アフタネはその隙を狙って死角から、毒々しい色の魔力を剣に纏わせて連続突きを繰り出す。
しかし、それすらほとんど見えないほどに薄く張っていた膜で防がれた。
貫通した所に合わせるように刀で受け止められ、バランスを崩されるとそのまま引き込まれ、蹴りを入れられた。
「っ・・・!」「なめんな゛っ!!」
向きになって攻撃を繰り出す2人。手数では圧倒的に多いがそのどれもがユティには届かない。
魔力を乗せた叩き込み、払い斬り、回転斬り。魔法による目暗ましからの巨石やつむじ風、純粋な魔力の連弾。
次々と森だった地形が荒れ地となり、凹凸がたくさん作られるほどの激しい攻撃を繰り出していく。
あまりの連撃に、霧と土煙で視界が全く見えなくなってしまった。だがユティの存在を気配で掴んでいる2人は迷うことなく、上空へと跳び上がると最大級の魔力玉を剣に乗せて、加速落下と同時に叩き込んだ。
ボゴゴオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアア~~~~~~ッッッ・・・!!!!!!
「「「・・・!」」」
映像越しに大会を楽しんでいた観客達は、一際大きな爆発音と衝撃波。そして上がった大きなキノコ雲のような土煙に驚いた。
会場にしか伝わらなかったが、10キロ以上も離れているにも関わらず届いた風と音、煙に驚き目を丸くさせた。
「何があったのでしょうか・・・。映像が魔力にあてられて見えません!いったい何が起こったのでしょうか・・・?!」
いくつかのスクリーンが捉えようとするが砂嵐の様に激しく乱れ、全く見えなかった。
映像が切り替わる。不満を漏らす観客達。
「どうやら一部が誤作動を起こしているようです。皆様にも分かり次第お伝えしたいと思います」
不満が完全に消えるわけじゃないが・・・激しい戦闘と爆発音は至る所で起きていた。
「ええー、次々と各初等部達がステージを降りていきます。これだけの激しい戦闘。流石についてはいけなかったのでしょう」
悔しそうな顔や残念そうな顔が映し出される。少し怪我を負った子もいた様子だった。
「運ばれていく中等部の方々もいます。どれだけ苛烈なのかが窺えます」
上手く同情を誘いつつ、意識を誘導させるアナウンスだった。
「「・・・」」
ゆっくりと立ち上がり、モクモクと立ち昇る土煙の中を背中合わせで警戒する2人。
煙を切り裂き、光る刃が向かってきた時、咄嗟に仲間を押してガードしようとしたドトクル。
「っ・・・!」「ぐ・・・!」
転んだアフタネはすぐに立ち上がって、剣の先にいる相手に振り下ろす。
ガキィィンンン・・・・・・!
「「・・・っ!(はあ?!)」」
ぶつかり合った風圧で周囲の視界が開けた時、服を少し汚しただけの少女に理解が出来なかった。
「分かっていましたが、確認します。いったい誰なのですか?」「「っ!!」」
魔力が練り上げられた時、サッと後方へと飛び去る。
負傷したドトクルをフォローする様にアフタネが前に立つ。
「・・・嘘だろ」「本物の化け物ってこういう事よ」
もはや冷や汗も引き攣った顔も隠す気すら失せた。とそこへ・・・。
ボッオオオオンンン・・・・・・!!
「っつ~・・・。今のは効いたぁ・・・!」「何なのよあの娘。この前より明らかに強くなりすぎじゃない」「あなた達・・・!」「助かった!」「ん?」「なに?」
頭を振っていたジャグラと文句を言っていたリダリーの下へと、飛んで行く2人。
「アフタネ・・・ボロボロじゃない」「お前もだ。怪我でもしたか?」「そっちも同じでしょ。それより手伝って」「?」「マジで助けてくれ。あいつバケモンだよ」「?・・・あら?あらあら・・・あなたもこんな所にいたのね。お久しぶり~。元気だった~?」「ガハハハハ。まさか、こんな所でテメエとも再会できるなんて、嬉しいぜ~」
自分の状態なんかを無視して本気で喜ぶジャグラとリダリー。
一瞬本気でアフタネは``こいつ等、狂ってる``と心の中で思ってしまった。
こういう所が同類だと思われているのだが本人達は気付いていない。
「あの人達って・・・」「デッドグレムゲンだ」「テロリストがこの大会に紛れ込んでいたのです」
ユティの疑問に簡単にナルシャとドルゴが説明した。2人の顔や服には汚れが付いていた。
それだけ激しい戦闘をやっていたのだとすぐに分かる。
「受験や鉱山での仕返し?」「どうやら誰かを探しているようだ。だがそんな情報は入っていない」「同じくです。デマカセ・・・というには些か大胆過ぎます」「・・・あの子達から聞いておけば良かったな~。失敗しちゃった」「ん?もしかして・・・バッツ達が戦っていたのか?」「え?あ・・・うん、まあ。仕方なかったんじゃないかな?」「・・・無茶をする。一歩間違えたら大惨事ですよ?」「皆が精一杯、頑張ってくれたから被害も少なく済んだんだよ。ここは穏便に・・・ね?」「しかし・・・」
ドルゴが言うよりも先にナルシャが手を上げて遮り、数歩前に進んだ。
「今は・・・あっちが優先だ」
その言葉に同意する様に頷くと2人も前を向いた。
「うん。そうだねナッちゃん」「で?ここからどうするのかな?」「ナッちゃんやドーマ君が来た道の反対。ちょっと先にある市街地に向かわせて。みんなが準備を整えてくれた」「確かに・・・ここでは目立ちすぎますな」「すごい爆発だったぞ。危うく巻き込まれる所だった」「それはあっちに言ってよ。私は受け止めただけなんだから」「それでその程度ですか・・・。さすがです」「その褒め方は嬉しくないかな」「す、すみません」「少しはお前も鍛えなくてはな」「しょ・・・精進します」「うふふふふ」「ははははは」
立つ瀬がないと萎んだ背中に思わず笑ってしまうユティとナルシャだった。
「・・・つうわけでマジで、シャレにならん」「おいおいマジかよ」「そんな凄い子だったのね」「あんた達、よくそんな相手に平然とケンカ売れたわね」「知らなかったんだから仕方ねえだろ」「あの時はちょっと能力の高いお嬢ちゃん達だと思ったんだけどね~」
それぞれは小さな小瓶に入った液体を飲んで喉と傷を潤した。
「回復薬。しかも高級か?」「巨大な組織とは聞いていましたが、強力なバックがいるようですね」「でも魔力の回復があっても、時間は掛かる。疲労だって無視は出来ない。2人とも大丈夫?」「問題ない」「はい。少々汚れてしまっただけですので」「そう・・・」
ほくそ笑むとユティはゆっくりと迂回する様に動き出した。
それに少し遅れて拡がって行くナルシャとドルゴ。
「・・・どうするの~?回復はしたけどぉ・・・」「あいつが見つかってない。が、このまま逃げた方が組織的にはいい様な気がしてきた」「それには同感ね。・・・でも、逃がしてくれると思う?」「向かってくるんだ。いっそ殺ってやろうじゃねえか」「「はぁ・・・」」「な、何だよ」「認めるのは嫌だけど・・・。申し子を除いてもあの2人だって驚異よ?たぶん他の学生にもまだまだいる可能性も十分にある。そんな相手に・・・あなたはこの4人で戦うつもり~?」「オレを巻き込まないでくれよ」「私もよ。そういうのはあんた達だけでやって」
鼻息と共に両手を広げて見るリダリー。
ジャグラは頭を掻きつつ、拡がって行く3人を目で追いながら、改めて考えるという事をした結果。
「・・・どうすりゃいい?」「・・・あなたにしては懸命な判断ね」
肩を落としつつも、ちょっとだけ安堵するアフタネとドトクル、詰まんなそうにしているリダリーがいた。
「逃げるにしても4人ね。バラバラになると全滅する可能性の方が高いわ。そもそも・・・アレから逃げられる?」「無理だな」「・・・」「・・・?」
即答する仲間に頷く事で強制的に話を続ける。
「ジッター様には申し訳ないけど、中心部にはまだ学生が大勢いる。巻き込むわよ」「・・・」「♪」「ヒッ」
それぞれが同意する。そして、理解した瞬間。一気に走り出した。
「逃がさない」「ドーマ!」「んん゛ん゛っ!!」「「「っ!」」」「(チッ)」
先回りする様に氷の壁を立て、ドルゴが地面に剣を強く叩き込む事で宙へと浮かばせた。
タイミングをずらされた所にナルシャが紫電の魔法で4人を捕縛する。
すぐにジャグラが大剣を振り回し、魔法を払いのけるが、その時には目の前にユティが迫っていた。
「あは♪」「っ」「(マジか!)」「(器用ね!)」
伸ばした黒い爪を宙で捻り避けると、鞘に戻していた刀を抜刀。
氷風の強烈な風圧に数キロも離れた市街地へと飛ばされてしまった。
一直線に地面が抉られていく。土を巻き上げる勢いと共に飛んで行く4人。しかし、この光景に観客が気付くことはない。
様々な条件が重なる事で、何が起きているのかを知っている者達は限られていたからだった。
「・・・無茶苦茶よ」「何なのよあの娘も~。この前は手加減してたっての~?」「だから言ったじゃん。化け物だって・・・。いや、可愛いけど」「このまま逃げ・・・る事は出来ねえみたいだな」「・・・ほんと、なんて日よ」
ユティ達が到着する少し前に、気付いたジャグラ達。
そこには建物の屋上や、路上に、何人もの学生が待ち構えていたのだった。
回せる人材。しかも戦闘系に向いた者達を各国代表チームが派遣したのだ。
人数にして精々20人もいるかどうか。少数だが回せる部分をかき集め、秘密裏に対処に当たらせようとしたのだった。
「終わりです。観念して武器を捨てなさい」「「・・・」」
到着したユティ、ナルシャ、ドルゴ。
見た瞬間にまたしても嫌な汗を掻いてしまう2人。・・・だが、そんなものを無視する者達がいた。
「ああ、もぉーやってらんな~い」「だな。ここでウダウダしてるのは性に合わねえ」「ちょっ、ちょっと・・・」「どうせ、逃がす気ねえんだ。だったら・・・とことん暴れてやるだけだろ!」「そうね~♪た~~~っぷりと甚振ってア・ゲ・ル♪」「・・・本当にこいつ等は・・・」「・・・諦めよう。オレ達もやるぞ。ヤバいのはあの娘とそのお友達の2人だ。そっちさえ何とかすれば、可能性は出てくる」「・・・」
4人がそれぞれ武器を構える。それに反応して学生達も臨戦態勢に入った。
「おっほ♪ワクワクしてきた・・・」「ふふふ、さあもっと楽しみましょう♪?」「「「・・・!」」」
魔力が身体から吹き上がる。それだけ戦いに興奮してきたのである。
その威圧的な存在感に一瞬たじろくが意志を強く持って立ち向かう。
「いいね~♪・・・楽しもう」「遊びましょ♪」
どんどんと膨れ上がる魔力。その質は更に向上していた。
「理性が飲まれてるのか・・・」「本能で動いていますね」
武器を構え、ジッと相手の出方を窺う。
「失礼ね~。これでもしっかりと・・・獲物は、選り好みするタイプなの♪」「第2ラウンドと行こうぜ?何なら、そっちの嬢ちゃんも追加で構わん」「もとよりそのつもりです。ここで・・・あなた達を捕らえます」「ははっ、やってみな!」「その余裕、ズタズタに引き裂いてあげる♪」
一瞬、内心ホッとした2人は狙う相手を周囲の学生達に決める。
「・・・無茶はしないでよ」「へへ・・・どっちが」
笑い合う2人には、僅かだが活路が見えた気がしていた。
そして、全員が動こうとするその時だった。
ゴガン、ビィイイインンン・・・!!!!ズォオンズォオン・・・・!!ドッゴオオオオオオオンンン・・・!!!!!!
突然、地中から光が空へ向かって伸びていった。
そのすぐ後を、エリアの端から端までを寸断するほどの勢いとスピードで伸びた光の柱で走り抜けていった。余波と風で地面の土が大きく空を舞う。
「な、何だ?!」「一体、なにご・・・コンダート!」「「「なに!!」」え?!」
ガラガラと崩れる市街地。割れた地面の底から空へと向かって探し人が飛んでくる姿を見つけた。
「何だ?」「ナッちゃん!」
全員が宙に放り出された。親友に手を伸ばそうとしたが間に合わず、急ぎ氷を全体に伸ばし、救出しようとする。
「助かった」「良かったぁ」「助かりました」
次々とユティの巨大な氷の柱に捕まって助かる学生達。
急いで全員がその場を離れようとするなか・・・彼女だけがある人物を発見した。
「えっ?(ジン君・・・!)」
【ジン・フォーブライト(純、クリス)】8才 (真化体)
身体値 90
魔法値 107
潜在値 115
総合存在値 178
スキル(魔法):干渉、棒術 3、マナ零子 3、感応 1




