34 選ぶコトと突発クエスト
純の両親は交通事故だった。
週末の休日に入る前、金曜の夜中に仕事で出かけて行った。
一泊二日で帰ってくる予定だった。
純が小学二年生のころだった。
「じゃあお父さんたちは仕事に行くから、ちょっとだけいい子にして待っているんだぞ?」
「ふふ、純は良い子だからちゃんと守れるわよ。・・ね?純」
「うん、大丈夫だよ。
だってすぐ帰ってくるんでしょ?」
「そうだ。
日曜の夕方には帰ってくるからな」
幼い純の頭をなでる大きな手。
「うん、じゃあ今度帰ってきたら、連れてってよ」
「?どこにだ?」
「遊園地!
友達が楽しかったって言ってたから。
俺も行きたい!」
「ああ!この前言ってたやつか!
確かCMで新しいテーマパークが出来たって言ってたな」
「うん!・・・だから約束!」
「ははは、分かった。
今度、お父さんたちが休みの時に行こうか」
「ホント!約束だからねっ!」
「ああ、分かった。
約束だ」
父と子の楽しそうな笑顔に喜ぶ母親。
「ふふふっ、じゃあ、そのためにも今日からちゃんといい子のできるかな~?」
「うん!大丈夫!」
「も~調子良いんだから~」
そう言いながらも優しく純の頭を撫でてくれる母親。
「じゃ、行ってくるから戸締りはちゃんとするんだぞ?」
「あと、お父さんたちが居ないからって夜遅くまで起きちゃダメよ?」
「わ、分かってるよ~」
ホントは両親が居ないことをいいことにゲームを夜遅くまでしようといていた。
そこを突かれ、ついドキッっとしてしまう純。
荷物を持ち玄関で靴を履いて両親が振り返って純を見た。
「じゃあ、行ってくる」
「じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃ~い」
日曜の夕方には帰ってくる予定だった。
見送ったその笑顔が純にとっては最後の両親の記憶だった。
事故はその夜だった、遠くの方に仕事に行くため純の両親は深夜バスで同僚たちと高速に乗って向かっている最中だった。
その隣を超大型トラックが猛スピードで通過しようとした時・・・事故は起きた。
居眠り運転ではないか?
それが、おそらく事故の原因だろうと、純は聞かされた。
山の中、高速道路で運転中、猛スピードで通過しようとした超大型トラックはハンドル横に切ってしまい深夜バスを巻き込み高速の壁を突き破り高さ10メートル以上の谷底に落ちた。
またトラックの中に積まれた積み荷に化学薬品があった事でそれが引火、大爆発を起こしバスもトラックも中に居た全員が死亡。
誰も助からなかったそうだ。
そして、帰りを待っていた純のところに警察が来て・・・両親が死んだことを知らされた。
純の家族は親族から嫌われていた。
両親もまた親族の考えには付き合えなかった。
また、唯一純たち家族に親身になってくれた父方の祖父母は他界していた。
純が5才の時に祖母を、7才の時に祖父が他界した。
その結果、孤独となった純は紆余曲折を経て、現在の白星家に引き取られることになった。
「・・・あそこに住むのか?」
「・・・はい。
・・その・・前からそうしようと・・思って・・・たので・・・」
そして現在、白星家の義父義母からこの家から独り立ちしてみるよう勧められ純は意を決して伝えることにした。
「・・・確かにあの家は、今は純のものだけども・・・」
「・・・分かった。
お前が決めたのならそれでいいだろう」
「・・・ありがとうございます」
「「・・・」」
とても静かな、空気の中、家族会議はひとまず終わった。
実際には純の家でもその預かっている責任者は白星家になる。
正確には優一が持っている。
純が大人になるまで優一が預かっているのだった。
父方の祖父母の家は純の両親が売り払い、遺品などを純の家の倉庫にしまっている。
家族会議が終わり、純は自分の部屋に戻って、ただ物思いに耽る様に両親と撮った写真を見ていた。
「ふう・・・やっとあいつは出て行くのか・・・」
ひどく清々して気持ちで昂輝は言った。
「・・・」
それを黙っている優一。
「あいつが居なくなってくれるだけで、こんなに嬉しいとは思わなかった」
「・・・」
「それに、勝手に家族の面でここに居座り続けても困るんだよね~・・・」
「・・・昂輝」
「だって父さんも母さんも嫌だっただろ?
親族ってだけで・・・仕方なく引き取っただけなんだから」
「昂ちゃん、もうやめなさい」
「父さんも母さんも、本当に嫌だったら、早く言ってあげるべきなんだよ。
そうしないといつまでたっても気づかないよ・・・あいつは」
「「・・・」」
それだけを言い終わると昂輝はリビングを出て行き自室へと向かった。
「・・・一人暮らしか。
・・・出来るかな~?俺」
〔向こうの世界ではしていませんでしたか?〕
「いや、あれは旅だったから出来たけど。
・・・実際、自分で炊事とかできるのかやったこと無かったから」
〔なるほど。
・・・まあ、大丈夫でしょー〕
「そんなあっさりと。
・・・楽観的だなー、サポート」
〔本来私の人格はあなたの性格を反映されています。
もし私の発言がそうならそれは・・・〕
「俺の性格だってことね」
両親の写真から目を離し、この先についてをサポートと話していた。
「・・・確かに。
まあ、実際その時に初めてわかることが多いだろうし、今はまずするべき事をしておいた方が良いだろうな」
〔はい〕
「じゃあ、教科書とノートの復習をしよう」
そう言って机に向かい、おいていたカバンから教科書とノートを取り出し復習を開始した。
少し経ち。
「そういえば、あいつらはどうなるんだろう?」
〔・・・純をイジメていたあの者どもですね〕
「う、うん。
・・・サポート、若干だけど怒ってない?」
〔いえ、気のせいです〕
「いや、でも・・・今ニュアンス的に〔気のせいです〕」
きっぱりと言い切られたので純は話を切り替える。
「・・・また、絡んでくるかな?」
〔・・・おそらく、関わってくるのなら今日よりも過激にはなるでしょう。
たとえジ・メ・ツだとは言え、ケガを負わされたと考える奴らですから〕
「・・・やっぱそうなるか」
〔あの手がしつこいのは異世界も含めて世界共通かもしれないですね〕
「・・プライドが高いのもどうなんだろう?」
〔低すぎてもダメなので程よくがいいのでしょう〕
「難しい所だな・・・」
そこでこの話は一旦終わる。
「・・・そろそろ、ここで復習も切り上げるか~」
手を上に背を伸ばし固まった体をほぐす。
「忘れてた・・・サポート」
〔はい、何でしょう〕
「ステータスがオール1でもシステンビオーネで得たステータスは反映されてるのは分かったけど・・何で1なんだ?」
〔それは再構築で新しく汲みなおし現在のステータスとその上がり値を正確に数値として計るためです〕
「前回のままじゃダメなのか?」
〔以前にも申し上げたと思いますが、昇華した器にはそれ相応のものでないと正しく表れないのです〕
「ああ、あれか。
それで・・・なんでオール1?」
〔おそらく計り直しの結果ではないかと、今の存在を基準にしているためでしょう〕
「・・・ということは、またこっから上げれば」
〔はい。
数値上は再び上がっていき、その力も反映されます〕
「・・・なるほどねー。
・・・ステータス」
純は自身のステータスを改めて見る。
「・・・清々しいまでのオール1」
そう言いながらも、またこれからも強くなるかもと思うとちょっと楽しくなる純だった。
「・・・なんだコレ?」
表記されたステータスとは別のスライドできるタブがあることに気づいた。
純は指でスライドし画面と確認した。
【突発クエスト】まで
木田福製鉄工場
18時間42分30秒・・・29・・・28・・・27・・・
いきなりな文字にカウントダウン。
純は何が起こっているのか理解できずにいた。
「どういうことだ?
突発クエスト?・・・サポートどういうことだ?」
〔わかりません。
純の``ステータスも私も``未だ分かっていないことが多いのです。
自分で言うのもなんではありますが、純の表記はかなり異常なのです。
そのため、何らかの意味があるとは予想はできるのですが・・・それが純にとって必要不可欠なものなのかが曖昧なのです〕
「・・・曖昧なものをステータスが使ったりするか~?」
〔・・・考えにくいことですが・・・先ほど申し上げた通り純のは異常なのです。
あるいはその異常が急速に器を大きくさせているのかもしれません〕
「・・・この工場とカウントダウンは・・・」
〔おそらくその場所で何かあるということです〕
「それはこの流れから何となくわかるけど・・・」
〔実際にそこに行かれないとわかりません。
が、クエストと表記しているように何かしらが起こるということでしょう。
純・・・向かうにしても用心することに越したことはありません〕
「・・・」
純は悩んでいた。
そろそろ受験が始まる頃、そんな時に起こるイベント・・・絶対良くない事だと判ってはいるが・・知ってて行かない選択肢を取るのもどうかと考えていた。
純は机に置いてある型の古いノートパソコンを起動した。
実際は美月たちのために優一が新しいパソコンを買ってあげた時に、以前使っていた物をお下がりにもらったものだ。
型は古いといっても2~3年前のものなのでそれほど古くはない。
早速純は木田福製鉄工場を調べた。
製鉄工場と書いてあるから大きなところかと思ったが本社が大きなところで、この製鉄工場は支社で運ばれた者の整備、管理を下請けで負っていることが主な仕事のようだった。
規模はそこそこだと思った。
大きな工場が2つ重なるくらいだろうと画像のスクリーンから受けた印象だった。
〔・・・行くつもりですか?〕
「・・・まだ、わからない。
もし、何かあったとしても部外者が入っていい場所じゃないし不法侵入になっちゃう。
それに、こんなこと言っても俺自体これが何なのか把握できてない。
・・・とにかく、行くにしても様子見になるだろうな」
純は工場のサイトを上から下まで見て言った。
「それにこの時間って・・・」
〔現在の時刻から考えて明日の午後7時13分あたりになると思われます〕
「夜か・・・」
純は家から勝手に出て怪しまれた時にどうするべきかを考えていた。
仮にも居候をしている身、しかも特に塾などに通っているわけでもない。
明確な理由がないのに家を出るのは少しだけ罪悪感があった。
〔少し気分転換に出かけてくるでよろしいかと〕
「いや、流石にそれでは・・・」
〔以外に大丈夫だと思います。
試験で少しピリピリしてしまっていると言えば問題ないでしょう〕
「・・・そんなもんなのか?」
本当によほどの事でない限り純が夜中に家を出ることは無かった。
そのため、いざその時が来てしまうとモゴモゴしてしまう事が過去にあって以来、極力出ないようにしていた。
「・・・そうだな。
とにかく、明日様子だけは見に行ってみよう」
〔了解〕
純は行くことに決めその日はお風呂に入った後すぐに眠った。
【十時影 純】 15才 人間?(ぽっちゃり)
レベル 1
HP 1 MP 1
STR 1
VIT 1
INT 1
RES 1
DEX 1
AGI 1
LUK 1




