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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
345/473

341 魅せてしまった戦い

 唖然とする観客達。

 用意されたステージなどお飾りでしかなかった。そう思わせるほどの光景が目の前、映像に映り込んでいた。


 そんななか、それをとても楽しそうに笑う大男がいた。


「がっはっは・・・あっはっはっはっはっはっはっはっは・・・。これが寵愛者達の戦いだ!どうだ、お前達、これと戦ってみたくはないか・・・?!」「「・・・」」


 部下達の返答に興味はなく、目を爛々とさせながら食い入るように戦いを見ているガオウ。

 少しだけ不満そうな顔を見せる彼女達も、黙って目の前の光景を見つめる。


「・・・思ったよりもやるではないか」「やはり、申し子達の戦いでは・・・」「それは状況次第だ」「・・・」


 離れた位置で会話するベルトルンと側近のグスタに、視線と耳だけを傾けて、その様子を窺うゼテルク。


「やはり、神に愛された者達の戦いはいつ見ても凄まじいですな」「たまには鬱憤を晴らしてやらねえとどこかで爆発するかもしれねえな」「それは困りますね。折角、復興して新しく建て直したばかりだというのに・・・」「はっ。問題ねえだろ。そもそも・・・あれを利用と考えてる時点で・・・神に対してケンカを売る様なもんだろう」「「「・・・」」」


 ドォン・・・ドォン・・・!!


 遠くから響いて来る音がガラスを微かに振動させ、部屋の中にまで届く。


「そうですね・・・。災厄を払う力として・・・皆様には大切にしていただきたいものです」


 アルタナル枢機卿の言葉に同意する者が数名。しかし一部は彼の心意を探るように、窓の傍に立つ彼の後ろ姿を黙って見ているのだった。


 ・・・・・・


 戦闘が開始されて約半分ほどが経った。

 しかしその間、ほとんどの者が口を開けて目の前の光景を黙って見ていた。

 いや・・・空いた口が塞がらないまま、時間だけが流れていた。


「2人共。これが申し子達の・・・ユティ達の戦いだ」「僕達も換装させ、大会のルールに従わなければ多少はあの様な事が作れますが・・・。これが次元の違いです」「・・・」「・・・無茶苦茶だ・・・」「だからユティは、この力を意図的に制御していた。誰かを傷つける力を恐れたからだ」「昔の事は詳しくは知りませんが・・・学園に来た頃に比べれば格段に扱い方は上手くなっています。今なら会長も、能力を忌避する事はしないでしょう」「・・・そうだな。きっとお前達との出会いがあの子を変えたのだろう・・・」


 少しだけ寂しくも、それ以上に喜ばしい光景に、ナルシャとドルゴの表情は微笑んでいた。


「(あの子(ジン)が・・・キッカケだな)」


 自分とは知らない魔力の扱い方、生き方をしてきた少年と学園生活を送る事で親友が変化して行った事をナルシャは確信した。


「(まあ・・・だからこそ、この光景を・・・ユティの活躍を見せてやりたかったな)」


 別れる少し前、恥ずかしそうにしていたユティに思わず笑ってしまう親友だった。


「・・・バッツ、ロロナ。どれだけ彼女が違う存在に感じたとしても・・・」「すげ~・・・やっぱ先輩って美人で強かったんだな・・・!」「・・・。私も頑張る。それとバッツ・・・鼻の下を伸ばさないで、みっともない」「そ、そんな事してねえよ」「ホントに?」「もちろんだって」「「・・・」」


 杞憂だったと分かった先輩2人は思わず笑ってしまった。

 そして、そんな4人の和気藹々とした雰囲気がまるで移ってかのように会場では少しずつ、だが徐々に勢いを増し・・・やがて歓声へと変わっていった。


 結果的に、観客達はあまりの光景に最初は驚いていたが、1つのショーとして受け入れられたのだった。


 会場を超え、音は、空気は伝播し外へ外へと拡がっていく。

 それはモニターを見ていた首都の観客達にまで届いたのだった。


 ・・・・・・


「ヒュ~♪・・・盛り上がってるね~♪そんなに楽しいお祭りなのかな~?」


 全身を黒に近いほどに濃いグレーのローブに身を包んだエルフが、建物の屋上から微かに見える映像を覗き込んでいた。


「・・・あ~♪・・・あれは・・・・・・ふふ、僕にもやれるかな~?難しいかもな~♪」


 身長ほどのある鎌を肩に担いで、天然パーマの入ったエルフ男は楽しんで観戦していた。


 ・・・・・・


「ん?何だ?」「へ・・・?」「・・・(ゴーレム?見ていたのと違う、最新型?)」


 戦闘していた申し子達は視線を落とす。そこにはゾロゾロと先ほどまでいなかったかなり人間ベースに寄せたスマートなフォルムのゴーレム達がいた。

 その数は数十から・・・数百へと上っていく。


「・・・何かご存知ですか?」「いや、あんなの聞いてない・・・」「僕も・・・何だあの魔力・・・?」「どうしました?」「いや・・・」


 不思議そうに首を傾げていたリビットだったが、そんな彼等が答えを探し出す前に突如、全機体が一斉に申し子達を見上げた。そして一斉に飛び掛かって来た。


「うげっ。気持ち悪い」「おいおい。なんだコイツ等・・・。ちっと硬ぇぞ」「(これは・・・!お兄様がおっしゃっていた・・・)」


 襲い掛かって来たゴーレムに標的を変えて次々と蹴散らしていく申し子達。

 倒せなくはないが、妙に動きが機敏で硬く、倒すのに少しだけ手間取らされてしまう。


「まだまだ来ます」「リビットさん。ゴーレムを一か所に」「わかった・・・」


 一個撃破では埒が明かないと、ゴーレムを結晶で閉じ込めルートを誘導。そこへジュンシーが魔力を込めた拳を叩き込んで一気に破壊する。

 数百メートルほどの大きなクレーターを作り出し、地面を割りつつも全てを破壊した。


「・・・やれやれ」「まだ来ますよ」「なに?」


 ユティの言葉に返事でも返したかのように地面が縦に大きく揺れた。

 そして・・・大きな裂け目を作り出し、その下から全長300メートルというとんでもないスケールのゴーレムが2体現れた。


 ・・・・・・


「おいおいおい。何だよアレ。見たこともねえ大きさだぞ。どうやって動かしている」


 ナミュリカも驚き、立ち上がって窓へと寄っていく。


「あのようなモノが大会に出るとは聞いておりませんが?」「随分・・・ベルニカは提供してくれた様じゃないか?そんな戦力があるなら、越冬は余裕だろう?」


 スメラルとゼテルク両王に投げかけられた皇帝ベルトルンだが・・・彼はいたって普段通りに椅子に腰かけたまま、目の前の光景を見て答えた。


「あれは実験機だろう。少々、使い所に難があり、投入に役立つかを試しておるのだ。・・・実用には・・・まだまだ至っておらんよ」「「「・・・」」」


 どこまでが本当かは分からない。だが王たちやその使い達はその存在と脅威。

 起動している事を知った。それだけで、ベルニカという国の発展スピードは異様な成長をしている事をまざまざと見せつけられるのだった。


「がっはっはっはっはっは・・・。これは面白い見世物だ」


 そんななか、膝を何度も打って笑うガオウ。


「確かに・・・あれは脅威だな~・・・だが・・・こいつ等でもやれるんじゃ、足止め(・・・)としては弱ぇな」「・・・」


 後方の自分の部下を親指で指すガオウに、正面を向いたまま視線だけを動かすベルトルンだった。


 ・・・・・・


「は~ぁ・・・もっと、後に取っておきたかったのに」「おうおう・・・出し惜しみなんて勿体ねえ。全力で行こうぜ」「・・・仕方ありません」


 魔力を解放していたが、それはあくまで特性上の能力を使っていたに過ぎない申し子達。

 そして今、純粋にそこに鍛え培ってきた魔力を、身体から燃え上がらせるように溢れさせて本当の意味で力を使う。


「足を止めます」「(コクン)・・・任せた」「あなたも手伝ってください」「ええ~・・・」


 ユティ達も魔力を解放。その瞬間、地面の水が溢れかえり絡まった太い蔦と共にゴーレムの足ごと体を凍り付かせる。


「やっぱ僕がやらなくてもよかったじゃん」「先輩としての威厳を見せてくださいと自分は言ってるんですよ」「・・・」


 鼻息を漏らすと、仕方ないと結晶とゴーレムの足と体に這い付いた氷などから生成した。


 ゴギン、バギ、ゴギ、ドゴン、ガス、ボギギギギッ・・・・・・!!


 剣山の様に無数に生えた鋭い結晶が体に突き刺さり、深いダメージを与える。


「・・・へ~。やるじゃない」「では、こちらも・・・どっせい!」


 巨大錨をフルスイング。それだけでゴーレムの腕が1本吹き飛んで行った。

 そこへ空から白く太い光線がゴーレムを突き刺す。光は貫通し地面の奥深くまでくり抜いた。


「ご心配なく。調整は出来ておりますので」「・・・」


 ケーティルが何かを言う前にロクサーヌは答え、少し遅れてバランスを崩したゴーレムが傍にあった巨大な木に寄りかかるように倒れ込む。


「お~い。サッサと倒しちまえ!」「・・・分かったわよ。全く年長者をちょっとは労わりなさい」「後はよろしくお願いします」「ほんっと、そういう所だけ切り替えが早いわね」


 仕方ないと彼女は身動きがほとんど取れないゴーレムの傍にまで幾重にも絡めた蔦で下降していく。

 そして、同じ高さくらいになった所で蔦を拡げると、そこから巨大な蕾を作り出した。

 何枚にもピンクの巨大花びらが折り重なった、その中心から僅かに光が漏れる。


「ほい。こっちも崩したよ。後はお願いね」「承知」


 ジュンシーもまた翼人種としての飛行能力を活かして、ゴーレムと同じ高さにまで下りる。

 そして、ゆっくりと右腕を肘から後ろへと引き絞り、それと共に右足を大きく後ろへと引く。


「・・・」「飛んでるんだよね?あれって意味あるのかな?」


 ユティが思っていた事をリビットがハッキリと口に出す。

 しかし、当の本人は魔力を練りだすと精神統一して右手に魔力を流し込む。


 そして・・・。


「いっちゃえー!!」「はっ!」


 大きく膨らんだ蕾の先端をゴーレムに向けて、中に溜まった魔力の種を放つのと正拳突きが繰り出すのはほぼ同時だった。


 黄色い大きな塊と、空間が捻じれ炎の柱のようになった魔力がゴーレムに飛んで行く。


「最大防御!逸らせ!!」「「「っ!!」」」


 少し前に気付き、受け止めるのは危ないと判断した指示で、高等部達は壁の角度を僅かに魔力と共に変える。

 そして、放たれた巨大な魔力の塊はゴーレムの上半身ごと抉ってあっさりと貫通し、ぶち当たった壁によって空の彼方へと飛んで行った。


「「「っっっ!!!!」」」


 僅かでも角度が変わった事で、強烈な突風が観客席にまで届いてくる。

 思わず、顔を手で隠さなくては前が見えないほどの風が巻き起こっていた。


 VIPルームには影響が無いため、全員が事の行く末を見守っていた。


 そして・・・風が無くなって数秒後。ゆっくりと映像にはゴーレムが崩れ、倒れ込む姿が映っていた。


「「「・・・」」」


 思わず、黙ってしまう観客達。


 そんななか、映像では顔を手で仰ぐケーティルと振り抜いたまま静止しているジュンシーがいた。


「エッホケホ・・・くさ・・・くっさ・・・くっさ~~~い・・・!!」


 周囲に漂う異様な臭いに慌てて、避難し体と、服・・・そして大切なぬいぐるみを嗅ぐケーティル。


「ちょっと・・・もうちょっと角度を考えてよね!それになんなのよ今の攻撃。ひどい臭いだったわよ。臭いから止めてよね・・・!!」


 怒った彼女は、急ぎジュンシーの所へ行って文句を言った。


「いや、あれは・・・空間の捻じれと摩擦が・・・」「あんたの臭いも混ざってるんでしょ・・・。ああ、いやちょっと待って。近寄らないで・・・」


 近づこうとした所で何かの感じ取った彼女は再び、離れる。そして再度、自分の臭いを確かめる。


「いや・・・あの・・・だから・・・」「臭いのよ、近寄らないで・・・!」「・・・ぐぅ」


 ガックリと肩を落とすジュンシー。精神的ダメージがあまりに大きく、立ち直るのが困難な状態になっていた。


「・・・ど、どんまい」「・・・リビットさん」


 肩を叩き、慰めてくれる彼に心が幾分か軽くなるジュンシー。


「こういうのは慣れだよ。大丈夫、何日も入らないなんて珍しくない。君だって修行でそんな事は経験済みだろ?」「・・・」「・・・あれ?」


 再び、肩を落とすジュンシーだった。


 ちなみにユティもロクサーヌも彼の傍には近寄ならかった。

 そうしてゴーレム破壊を完了した所でタイムアップとなったのだった。


 盛大な拍手が観客席を包み込む。それは観戦できたエリアでも同様に見られた。


「そういえば言ってなかったわね」「?何がですか?」「ファーランで起きた問題。あなたが解決してくれたんだって?ありがと。あたしじゃ相性がちょっと悪かったから」「ああ~・・・。いえ、お互い様です。もう大丈夫なので?」「そうじゃないかしら?あたしが呼ばれてないから・・・たぶん問題ないんだと思うわ」「・・・良かったです」「ふふ・・・。今日は楽しかった。またどこかで会いましょ?それじゃ」


 言いたい事を言ったとケーティルがそそくさと会場へと戻っていく。

 そして、先にいたジュンシー達を見て敬遠するような行動に、一悶着が発生するが・・・単なるじゃれ合いとユティは判断した。

 実際、男性陣は落ち込んだ者や笑っている者がいたからだ。ケンカのような空気は綺麗サッパリなかった。


「お疲れ様です」「あ、はい・・・。ロクサーヌさんも・・・」「まあ。まずまず、といった所でしょうか」「厳しいですね」「それが私の務めのようなモノですから」「・・・私には無理かな~」「・・・」「?」


 立ち止まったロクサーヌに釣られ、ユティも立ち止まり振り返る。


「・・・同じ土俵を目指さなくても良いのです。重要なのはあなたの立ちたい所でさえあれば、どこでも・・・」「・・・・・・。何だか難しいですね」


 微笑むユティにクスリと笑うロクサーヌ。

 移動を再開させ、彼女はユティに言葉を掛けた。


「いずれ、あなたにも見えてきますよ。自分が・・・立つという事を・・・」「・・・」


 靡く長い赤髪。そんな彼女が一体どんな思いでその言葉を自分に言ったのかユティには分からなかった。


「・・・あ、そういえば。私も言ってない事がありました」「?」「モナメス首都防衛に、力を貸していただけたようで・・・。代表に代わり、ありがとうございます」「・・・あなたは・・・」「はい。出身がそこなので」「・・・そう」


 ユティに向けて微笑むだけで終わらせるロクサーヌ。

 だけど、そこにはとてもやさしく、慈しみを感じる温かい気持ちが伝わってくるようだった。


 ・・・・・・


 パチパチパチ・・・・・・。


「いや~・・・良いモノを見せてもらったよぉ。あんなの見せられちゃあ、疼いちゃうな~♪・・・ふふ・・・んふふふふ・・・んふふふふふふふふふふふ・・・」


 全身ローブで包んだエルフ男は、人知れずゆっくりと建物の屋上から降りて、闇に紛れるように暗闇の中へと消えて行った。


 それから少し遅れて・・・。


「いたか?」「(ふるふる)。ダメ、ついさっきまで確かにいたのに・・・見失った・・・」「・・・大将の予想は当たってたってか」「・・・。もう一度、周辺を探すわ」「念のためにオレも一緒にいく。どこだ?」「・・・こっち」


 メリリカ先導で、グロッグも同じく建物から降りて、人が少ない脇道通りを消えて行くのだった。


 ・・・・・・


「・・・すっげ~・・・。先輩達、めっちゃカッケー!!」「うん。あのゴーレムを簡単に倒しちゃった。凄い・・・」「ははは。思った以上の大盛況だな」「どうやら、これは・・・。次回も大変そうですね」


 興奮している後輩達に先輩達は周囲と、今後の事を考えて、少しだけ友人を同情するような気持ちになってしまった。しかし、その表情はとても明るく、可哀そうという気持ちには見えなかった。


「・・・お。噂をすれば・・・」「ユティせんぱ~い!!」「せんぱ~い!!」


 たまたまなのか偶然かバッツ達を見つけた、当の苦労するかもしれない彼女は、暢気に親友達に向かって元気に手を振っているのだった。


 ・・・・・・


「なかなか面白い余興だった」「あ・・・失礼します」「それでは私も、これにて失礼させていただきます」


 ベルトルン達と一緒に、大会が終わるとアルタナル枢機卿も同時に帰ってしまった。


「・・・あの子には、もう少し真剣に向き合って頂かないと」「その様に、伝えておきます」「それでは皆様、失礼します」


 スメラル達。オーラルの用が済んだと帰って行った。


「・・・ふぅ。なかなか心臓に悪い戦いですな」「そうか?たまにはこういうのも良いだろ?」「おんや~・・・さっきまでビビっていたのはどこの誰だったか、お父さんに言ってみな?」「誰がお父さんだ。殺すぞ」「す、すみませんナミュリカ様」


 ファーラン王に代わって頭を下げる宰相。


「・・・アンタも大変だな」「は・・・ぁ、はぁ・・・。いつもの事なので・・・」「国の苦労が窺えるよ」「ナミュリカ・・・」


 カルダリに同情していた所で、同行してきた男に声を掛けられる。

 何を言いたいかを察し、スクッとソファーから立ち上がった。


「そうだな。それじゃあアタシらもこれで失礼するよ。何かあったら親父に言ってくれよ?」「お・と・う・さ・ん」「黙れ耄碌クソ爺共が。・・・ふん」「それでは・・・」


 男が頭を下げ、ナミュリカ達も部屋を出て行った。


「・・・あれ、僕も混ざっていません?」「きっと反抗期なんだよミゲイラ君。いずれ君のところ──」「止めて!娘達は、そんな事にはなりません!」「いやいや、既に始まってるんじゃない?現に君からは──」「恥ずかしがり屋なんです。あの子達も色々と一人で・・・ひとりで・・・。そうか・・・ベラール達か・・・!!」「いえ、単純に親離れでは」


 頭を抱えたと思っては、憎らしそうに一点を見つめるミゲイラ。

 カルダリの言葉など耳には入っていなかった。


「わ・・・私も、今日はこれにて失礼させていただきますね」「ああ。お疲れ様・・・っと、その前に・・・」「はい?」


 ユークリッドと肩を組んで顔を突き合わせるゼテルク。


「(ボソ)優秀な組織と手を組んだそうじゃないか。私達もそこに噛ませてはくれないかな?」「(ボソ)何の事でしょうか?」「(ボソ)とぼけなくていい。別にお互い、今の関係を壊したいわけじゃない。ただ・・・もしもの時には手を取り合いたいなと思ってね・・・」「(ボソ)・・・その話は、いずれ」「(ボソ)いい返事を期待しているよ」


 要件を済ませたゼテルクはあっさりと離れた。そして再び、挨拶を交わすと今度こそユークリッド王達は退出するのだった。


「・・・大丈夫ですか?」「問題ないだろ。あちらも、抱えているモノが似た様なものだからな。いずれ、合図を送ってくれるさ」「それでは、私も」「うん。よろしく頼むよ。・・・おい、ミゲイラ。いつまで悩むつもりだ?」「そうは言ってもだなゼテルク。これは娘達と私の将来が掛かった大切な──」「カルローラ(リエナの母(妻))リレーネ(パミルの母)に黙って勝手に動くつもりかい?」「・・・。さあ2人共、帰りますよ・・・!」


 スッと大人しく立ち上がっと思うと、ミゲイラが王と宰相を追いやるようにサッサと部屋を出て行くのだった。


「「・・・(なにあれ?)」」


 これがガオウの部下の最終的な感想であった。

 途中までは一応、王達が集う会議のような場でもあったため緊張していた2人。

 しかし、いざ蓋を開けてみれば・・・その空気は雑談に近い印象が多く。最後に至っては慌ただしくバタバタと出て行く始末。

 とても重要な会議を話し合っている様な雰囲気も見届ける空気も感じられない、ただの見学者達の集まり・・・それが記憶に残るまとめた感想だった。


「・・・?」「老師?」


 そんななか誰よりも先に来て、誰よりも最後まで、ジッと視線を外さず外の光景を見ていたガオウは静かに震えていた。


「・・・ふ・・・うふふ・・・」「「(あ)」」


 微かに聞こえる笑い声。興奮がこらえきれずつい口から洩れてしまったその声を聞きつけた時、すぐに察して呆れ返ってしまうのだった。







  【ジン・フォーブライト(純、クリス)】8才 (真化体)


 身体値 90

 魔法値 107

 潜在値 115


 総合存在値 178


 スキル(魔法):干渉、棒術 3、マナ零子 3、感応 1

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