337 気付けば運に救われた場面が多々あった事を改めて理解しました。
「こんな所に子供がいるとは珍しいですね。何かお探しの物がありましたか?」「え?あ・・・はい。その・・・アルメラに関しての・・・」「ほう。始祖アルメラに付いてを?」「はい・・・。ちょっと気になって」「アルメラの軌跡を知りたいのですか?でしたら・・・これなんかはどうでしょう?救ってもらった者達の子孫が残したという記録だそうですが・・・。始祖の素晴らしさを記したなかなかの話だそうですよ?」「へぇ・・・」
ジンはアルタナル枢機卿が差し出した本を素直に受け取って、軽く目を通し始めた。
「・・・ちょっと、知りたい事と違うのかな~?」「おや?そうでしたか。申し訳ない。では、どんなことを?」「・・・。アルメラの最後はどうなったのかを」「・・・あー・・・」
枢機卿は何とも言えない反応を口にした。
そんな反応を気にしてないフリをしながらジンは枢機卿の次の言葉を待った。
するとフッと表情を崩し笑顔になったアルタナル枢機卿。
「すみません。その事は私達も知らないのですよ。誰も・・・彼女が消えた理由と行方を見つけることは出来ませんでした。本にもその事が書かれていますよ?」
そう言うと返した本の末尾辺りを、見せてきた。
確かに、そこには彼女を探すが足取りは一個も掴めなかったと記されていた。
「他に苦しんでいる人達を救いに?」「その可能性は十分に考えられます。何せ昔は、今ほどに気候は安定していませんでした。荒れた地なども多く。その中には険しい道もざらだったと記述されております。付いて行こうとした者もいたようですが・・・彼女はそれを拒んでいた事が多かったようです。神の天啓と恩恵を受けている、自分だけなら安全だと分かっていたからでしょう。救った者達を危険に合わせないために彼女もこっそりと出掛けることが少なくなかったそうです」「本末転倒は避けたいし、安全を確保するならその方が合理的・・・」「彼女なりの心配りですね」
本を元の場所へと戻しつつ苦笑するアルタナル枢機卿。
「彼女の考えを、私も知りたいと思いました。しかし、彼女の心は純粋に人を助け、幸せの道へと進むこと。神を信じ・・・その導きに従ったまで・・・。私には・・・彼女の様に人を導けるのか・・・たまに不安になってしまいそうですよ」「〔・・・〕」
眉を下げて話しかけるそれは、教会現トップというより親しみやすい近所のおじさん。そんな風に感じられた。
「と、私がいう事ではありませんでしたね。失礼・・・あ、この事は内密でお願いします」「はは・・・あ、じゃあ俺はこれで」「はい。また何か気になる事がありましたら、この図書館を自由にお使いください」「はい。失礼しまーす」
一瞬出来た空気の間に気付き、すぐにジンはそそくさとその場を去る事にした。
そんな彼を微笑ましそうに見つめながら、アルタナル枢機卿は自分の調べ物を探しに本棚を見て回るのだった。
「(ボソ)・・・不敬、でしたかね」
・・・・・・
「・・・ふぅ、あぶねー・・・」〔色々と驚かされました〕「流石に勘弁してほしいよ、あれは」〔すみません。・・・気付きませんでした〕「やっぱり・・・本に集中していたからってわけじゃないんだな」〔・・・はい〕
図書館を出て、誰もいない階段を下りつつ話し込むジン達。努めて冷静に教会から離れて行く。
サポートの悔しそう声がジンにも、その緊急性に拍車を掛けて伝わって来た。
「・・・あまりにマナと自然過ぎて本当に人か分からなかった」〔・・・精霊ではありません。おそらく・・・あの大聖堂を中心とした独自のマナがそうさせたのでしょう〕「・・・同化みたいな事か?」〔ある意味そうだと思われます。私も出遅れました。近すぎる性質のせいで鈍らされましたね〕「マナの視覚でもか?」〔ええ。ですが、もう大丈夫です。あの場で人を見分けることが出来ましたのは良かったです。寧ろ、あそこで襲われていたら、厄介でしたね〕「はぁ・・・運がよかったよ。ホント」
ホッと胸を撫でおろすジン。
上を見上げれば、巨大な大聖堂は周囲の建物を通り越して、その存在感をアピールしていた。
しかし、物理的に離れた事で、速まっていた鼓動が徐々に落ち着きを取り戻してきた。
「同化か・・・」〔いい勉強をさせてもらいました。私達の向上のためにも、忘れないうちに早速ちょっとチャレンジしましょう〕「・・・そうだな~。(ユティ先輩達の所には戻らなくていいか)」
ここで胡坐をかくわけにはいかない。ジンはさっそく周囲を見回した。
〔ジン。そこを右へ〕
サポートの指示で路地の先、明かりが射し込んでいる方へ歩くと・・・人もほとんどいない小さな広場らしき場所へと出て来たのだった。
〔・・・。ちょうど大人達は、高等部の大会に注目する時間みたいですね。子供達も大通りやその付近で遊んでいるのでしょう。好都合です〕「・・・。(本来は・・・俺がゼクのマナの波長を合わせるようにだっけ?)」〔そうですね。質、量、波長・・・あるいは波形。使用者か相手側の歩調を合わせる様な事だと予想されます。ユティ、ナルシャ、ドルゴもそれに分類されるかと〕「(一種の相乗効果か・・・。同化って中等部でもほとんど出来ないんじゃなかったっけ?)」〔高等部でも、出来る人は限られるという話だそうですから・・・。彼女達はかなり優秀なのでしょう〕「はー・・・」
改めて、関わっていた先輩達の凄さを実感する。
〔ま、普段が普段ですから〕「・・・」
約1名の行動が、そのイメージを無くさせているのだから・・・それはそれで凄いとも考えさせられた。
・・・・・・
「ックシュ・・・!」「どうした?」「ううん。何でもない・・・(キラン)いや。これは誰かが・・・。そう、どこかの可愛らしいの少年が私の事を思ってくれたのかも・・・」「・・・」「ん?どうかしたの?」「・・・いや(何で、そんなピンポイントなんだ)」「カン」「私の心を読まないでくれないか?」「ふふん♪」「はぁ」「「??」」
・・・・・・
「?」
一瞬、妙な感覚に周囲を見回してしまう。そんなジンに対し、サポートは黙っている。
・・・いや、ジンの中の感覚では何かを睨みつけているような雰囲気を感じとった。
〔・・・ちょっとだけムカつきました〕「?」〔いえ。こちらの話です〕
よく分からないが気を取り直し、さっそく備え付けられたベンチに座る。
そしてゆっくりと目を閉じ、自分を中心に周囲のマナを感知しようと体内マナを拡げた。
足元の塵が僅かに振動し浮かび上がる。ジンのマナの圧力に周囲の空間が僅かに反応したのだ。
〔・・・この首都に流れるマナは普段とは少し違うますが・・・教会ほどではありません。先ずは広場に漂うマナを軸に合わせてみてください。量を減らし、出来るだけ揺らめきを抑え、一体となるように・・・〕「すぅ・・・はぁーーー・・・」
緻密に練り上げているジンのマナは密度が濃い。そこを敢えて意図的に解き、緩やかにさせ、周囲に溢れるマナと波長を合わせるように呼吸と共に調整する。
サポートも流動させ、マナをジンに細かく感じさせる。
「・・・・・・」〔練り上げはまた後で。今はマナの糸を解いてください。質を合わせて・・・〕
必要な情報以外をシャットダウン。サポートの声にだけ耳を傾け、周囲に舞う自然のマナとすり合わせていく。
要領は違うが普段の練習の成果は早くもあらわれた。
徐々に・・・近くにいた鳥達がジンの近くへと下り立つ。
どこからか現れた小さな動物達もジンの真横のベンチに寝転びスヤスヤと日向ぼっこをし始める。
〔その調子です・・・。今から私が感じ取った教会に漂うマナをあなたの中にイメージとして流します。ジンは頭の中で感じたマナの流れにゆっくりと動きを合わせてみてください〕「・・・」
返事はないがサポートは了承を得たと判断した。
そしてゆっくりと、大聖堂で発していたマナをジンの中へと流し込んでいく。
「(ピクリ)」「「(ピク・・・ピク・・・)」」
不思議な何かを感じ取った動物や鳥達が僅かに反応を見せるが、すぐに気に留めなくなる。
その状態が数分ほど続いた。
遠くの方で騒ぐ声が広場まで届く。驚いた動物達が一斉にその場を去って行った。
その時の飛び立った鳥達、動物達の数はいつの間にか最初の頃の2倍以上に増えていた。
「おーいこっから・・・?」「どうかしたか?」「あ、いや・・・」「?なに?」「ああ、いや・・・。あそこに子供っているよな?」「?ああ、そう・・・。?・・・あれ?」「「???」」
普段なら気に掛けない様な場所。そこでたまたま目に留まった子供を見つけた男が目を擦り首を傾げる。見ているはずなのに認識が出来てないような感覚。それに混乱する通りかかった大人達。
薄い存在に見えるようで・・・確かにそこには、カリスマとでも言われるほどの惹きつける様な力を感じさせる。
あまりに不思議な感覚に通行人達は首を何度も傾げるが、そこに話しかける者はおらず。
自然とお互いの顔を見合わせて、どこかへと去って行った。
〔・・・成功です。単純な波長合わせなら、ある程度は可能になったでしょう。私も細かな感知に使えそうだと確信しました〕
去って行った男達の反応から確信したサポートが終了を告げる。
「(・・・でも、実戦にはむずいぞ、これ)」
初めての経験と不慣れな調整に、思っていたよりも目を開けた時には額に汗が滲んでいた。
〔まあ、ほぼマナを外に出さない練り込む方に特化してきましたから。しかし、これはカモフラージュに使えますね〕「(・・・尾行や、逃走用か・・・)」〔いえ、それだけじゃありません。周囲のマナに溶け込ませるという事は、逆に吸収して魔力回復にも使えますよ。古代遺跡にあった濃度の濃い魔力を吸収したのは偶然でしたからね〕「(あれは・・・魂も肉体も限界だったからな。たまたま吸えたんだろうな)」
ジルベガンの鉱石の町、トルースサンド。
その地下にあった密度の濃い魔力をジンは瀕死の状態が功を奏し、たまたま吸収した事を思い出していた。
土偶に肉体を寸断され、普通なら死ぬのは間違いなかった状況。
しかし、ジンの持っている自己回復の向上と器となっている存在の高さが、魂の消滅を無くし、この世界に留まらせた。
そして、緊急回復の為に周囲に溜まった大きな湖の魔力水を全て使い、ジンは粒子化の更なる向上と共に復活したのだった。
〔回復薬がどこまで私達に効くかは怪しい所でしたからね〕「(あそこは特別。それに・・・取り過ぎれば、今度はあの町が地盤沈下で崩壊していたかもしれない。一瞬とはいえ、やばい事をしていたって後で気付いたよ)」〔今後は自己回復を更に早める事が出来るのですから、結果的に良かったですよ。それに・・・〕「?」〔ジンは・・・感じているのでしょう?〕
相棒が何を指しているのかを理解し軽く息を吐いて、何の気なしに周囲を見回す。
「(・・・確かにな)」〔はぁ・・・。私が言う事ではないのかもしれませんが・・・。感応、厄介な能力を手に入れてしまいましたね〕「・・・」
それに関しては苦笑で返すしかないジンだった。
・・・・・・
・・・
とある宿の一室。
「・・・どう?」「はぁ(ふるふる)、ダメだ。どこにもそんな場所なんか見つかりやしねえ。本当に合ってんだろうな?」「リーダーとレックスが持って来た情報で間違いないって。・・・ここの国は私、ちょっと苦手・・・」「あ?どうしてだ、中立だからか?」「違うの(ふるふる)。んー・・・何ていうのかしら・・・魔力が合わない感じ・・・かしら?」「は?性格か?・・・おっとと、冗談だ冗談」
軽く睨まれた男は顔の前に両手を出して、怒りを鎮めてもらおうとする。
彼女も本気ではないので軽く息を吐いて話を続ける。
「この国は特殊なのよ。始祖アルメラがここに人々を救い集めたのも神の教えだって話だし、何か関係があるのかもしれないわね」「そんな昔話を信じてんのか?」「私達のご先祖様の話よ?冗談で人類が消滅まで追い込まれたらたまったモノじゃないでしょう」「・・・確かにな」
彼女の向かい側の席に、イスを引いてドカリと座る男。
「ここでは私の能力での索敵は調子が狂うの。そもそも、首都として大きすぎるのもあるわね。地形も昔の建物や道路を再利用したりで、迷路になってるみたい」「そりゃあオレも感じたな。まっ、こっちとしても都合が良さそうだ」「ちょっと。私達は盗賊じゃないのよ?」「はは、それは状況と見方次第だな」「・・・」
やれやれと女性はため息を吐くと、立ち上がり窓の方へと歩いて行く。
空はすっかり夜になっているが、街の喧騒と明るさにちっとも大通りは暗くなかった。
「すぐに見つけられると思ったんだけど・・・」「そっちはどうだった?」「患者は何も覚えていないそうよ。いえ、重症ね。中には自分の事も碌に思い出せない者までいるって話よ」「・・・。冒険者の話じゃ、素行の悪さでいつライセンスを剥奪されてもおかしくなかった奴らだって聞いたぞ?」「それでも・・・もっと更生させる方法はあったはずよ」「・・・一般人にまで被害が出てたのか?」「・・・」
答えない彼女。だが、その握り拳がハッキリと答えてくれていた。
「・・・明日は地下を探す。お前は今日行っていない裏道を探せ」「・・・(コクン)」「寝るぞ。疲れが溜まってたら、何にも出来ねえからな」「ちょっと、同じ部屋で寝る気・・・!」「仕方ねえだろ?部屋はここしか借りてねえんだから」「・・・」「安心しろ。オレは殺されたくねえ」「何か言った?」「その元気も明日に持っておけ」「・・・」
イスから立ち上がりベッドに倒れ込んだ男は、仰向けになるとすぐに寝る態勢に入った。
1分後・・・いびきが聞こえてくる。
「・・・飽きれた」
少し気を張っていた自分が馬鹿らしく思い、彼女も布団にくるまり睡眠を取る事にした。
・・・・・・
異様な明かりが点った地下3階。
そこでは教会の兵士達が、どこからか連れて来た者達を繋がれたチューブだらけの椅子に座らされていた。
「「「・・・・・・」」」
連れて来られた者達の目は虚ろで、意識がハッキリとしていない様子だった。
「・・・どうだ?」「・・・まあまあなんじゃないか?よく分かんねえけど」「出力何てどうやって調べるんだか・・・」「・・・いいから、次の魔力を押し込んでやれ」「はいよ」
男は目の前に機械の操作。メモリを回し、レバーを引く。
バチ・・・バチチ・・・バチチチ・・・!!
淡い発光を繰り返すと、座らされた者達が痙攣を起こしたように飛び跳ねる。
「おいおい。上げ過ぎじゃねえか?殺すなよ?」「処分が面倒だ」「・・・連れてくる素材を間違えたな。誰だよ地元の奴ら引っ張って来たの」「さあな。・・・お?」「・・・やっと動き出したか」
イスに繋がれたチューブを経由して1つの巨大なビーカーへと魔力が流れ込んでいく。
ヒトが入るのに十分な広さの円筒形、その中には1体の機械仕掛けの人形がいた。
パペットにも似たそれは全体に錆びた様な状態だった。
手足が細く、胸からお腹に掛けて巨大な円盤が取り付けられている。
円盤だけが異様に綺麗であり、それ以外がひどく不格好な形をしていた。
・・・キュルルル・・・。
ビーカーの中へと魔力に反応し円盤が独りでに回転し始める。
「よしよし・・・。やっと起動もスムーズになってきたと報告できるな」「でも、何でこんなボロい機械なんだ?」「さあな。聞いた話じゃ、渡された時にはこんな状態だったそうだぞ?必要なだけの魔力を取り込めたら動き出すそうだ」「・・・あの円盤は動いてるんだがな」「年代が古すぎてガタでダメだったりしてな」「ははは、それならこれも意味ねえな」
笑い合っていた兵士達だったが、急に淡い光が無くなった事で座らせた者達を見る。
「はぁ・・・。もうダメだな」「ああ、交換だな」「それじゃあ・・・この後はどうする?」「カードでもやって時間を潰すか」「はいよ。あ、この前の賭け。忘れてねえよな?」「あれは無理だって。そんな事したら、オレが妹に殺される」「だからちょっと上手く話を持ち掛けろって言ってるだろ」「それならお前が考えろよ」「おーい、消すぞ~?」
男達は連れて来た者達を放置。部屋の明かりを消して去って行った。
・・・・・・キュルルル・・・・・・ン・・・!
そこに1つの機械が初めて起動した事にも気付かずに・・・。
翌朝、日も昇らぬ早朝・・・。
交代に来た兵士達が不用意に空いている扉に気付き、螺旋階段を駆け下りる。
そこで見たのは仲間のバラバラ死体と何かを引きずった様な跡だった。
【ジン・フォーブライト(純、クリス)】8才 (真化体)
身体値 90
魔法値 107
潜在値 115
総合存在値 178
スキル(魔法):干渉、棒術 3、マナ零子 3、感応 1




