330 巡り合い
メルギス学園長が用意してくれた1人用の宿で寛いでいるジン達。
「んあ゛~っ・・・モンダールとは違うけど。ここなら楽になれるよ」〔何だかんだで人混みも多かったですしね〕(んんふぅぁあ~~~っ・・・。・・・眠い)「ゆっくり寝ていいよ」(うん・・・)
ゼクは頷くとフラフラとしながらベッドの上に乗っかり、そのまますぐに爆睡した。
〔やはり・・・この子も疲れていたようですね〕「周りから見えてなくても楽しかったんだろうな」〔ふふ。そうですね〕
ゆっくりとジンも部屋にあるソファーに寝転びながら、窓の外を見る。
外からは明かりと楽しそうな笑い声が聞こえていた。
「どんだけの人が集まったんだか・・・」〔人口の1割とか?〕「流石にそれは言いすぎだろ」〔ですね。・・・ですが、隣町も人がいっぱいだとか・・・〕「そっちの方が会場は近いからじゃない?みんなも近場に建てられた専用の施設に行ったし・・・」〔明日からますます人口が増加しそうですね〕「・・・。行くのが大変だ」〔ですが観に行かないと、彼女等が悲しみますよ?〕「分かってるよ。まあ・・・あのホログラムの映像で観戦できるから、問題ないとは思うけど・・・」
事情を説明しなくても多少は理解してくれるという事は分かっているが・・・彼女達の分かりやすく悲しそうにする顔をイメージできてしまう為、無視する事が出来ない。
「ま、後は会場に入れるか・・・」〔まあ、一部は学生優先用の区画があるそうですし・・・。もし無理でも、建物の上からなら・・・〕「バレないようにするのが面倒そうだ」
バーン・・・!パラパラパラ・・・。
遠くで花火の音と光が聞こえる。一層、活気づく街並み。
〔中立国と聞いていましたが・・・こう言う所はエンタールモットと変わりませんね〕「厳粛にし過ぎるのも、質素でつまんないんだろ。生活にゆとりが出来ている証拠だね」〔なんかジジ臭いですよ〕「うるさいな」〔・・・なるほど。そうやって地球でもお祭りは避けていたわけですね〕「・・・。そんな事はないと思ってたんだけどな・・・」
一体いつから・・・祭りを楽しめなくなったんだろう・・・。
若いと言ってもたくさんの出来事があった。その1つ1つを覚えていられるほどにジンの頭は機械ではない。理論的にはかなり覚えているそうだが・・・そこまでして必死に思い出すほどでもないように今は感じた。
「・・・それで?視た感想は?」〔今の所は特に。悪意というか不快なモノがチラホラ・・・〕「はぁ・・・やっぱり、便乗する奴はいるか」〔行きますか?〕
ジンの僅かな空気を敏感に察知したサポート。
「ああ。ゼックンは置いて行こう」〔分かりました〕
学生服を脱ぎ、フードを被ってジンは窓を開ける。幸い、ジン達の泊っているホテルは人通りが少ない。盛り上がっている商店街はブロックが1,2つ向こうだからだ。
「(これじゃあ、ただの自己満足みたいだな)」〔いいのではないでしょうか?これも世直しという事で〕「(お気楽だなぁ)」〔とりあえずは・・・ここから4時の方角です〕「(はいよ)」
返事を返すとジンは体内マナを使い、夜の街を飛び出した。
・・・・・・
「・・・これで何件目だ?」「今ので・・・8件になります」「はぁ・・・今日だけで既にこれか。誰か知らないが、まあ助かるな。・・・にしても・・・よくもまあこんなにゾロゾロと」
兵士や冒険者達に運ばれていく者達。全部が酔っ払いや、強盗、空き巣など祭りに雰囲気にのまれた・・・あるいはあやかった者達だった。
「なぁ・・・?毎年思うんだが・・・まだ本番前だというのに、コイツ等のこの行動力は何なんだ?分かってやってんのか?」「小遣い稼ぎでは?」「わざわざ国まで渡ってか?」「あるいは吸い寄せられたとも言えそうですね。これも・・・神のお導きでは?」「はん・・・。改心させろってか?涙が出るぜ」「・・・」「ああ、冗談だ冗談。そんなマジになるなって」
男が顎で部下らしき者達にジェスチャーすると、頷き返し次々とどこかへと運ばれていった。
「お疲れ様です」「おたくは・・・?」「聖堂教会の者です。そちらで全ては捌ききれないでしょう。我々の方でもお手伝いしたく参りました」「そうか。助かる。こっちも人手が不足するかもしれなかったんだ」「分かりました。では」「「「(コクン)」」」
許可をもらった教会の者達が次々と現れ、あっという間に犯罪者達を運び去っていく。
「そういや・・・ずっと気になっていたんだが・・・」「はい?」「教会ではあいつ等をどうするんだ?」「・・・そうですね。罪を償わせる為に神の教えを説き。その上で自分が何をしたかを理解していただき、奉仕活動に従事させるといった具合でしょうか?」「具体的には?」「監視の下、畑仕事のお手伝いなんかをさせております。気になるのでしたら、ギルド長も見学に来られますか?」「いや。オレぁ。遠慮しておこう。・・・そうか。なるほどな」
気になる部分も多少あるが、これ以上問題を拡げる方が面倒だと思い、今は処理にあたる事に専念すると決める。
「それじゃあ、まだまだ増えるかもしれねえが」「はい。連絡をくださればすぐに向かいますので。・・・では」
ゆっくりと頭を下げ、どこかへと去っていった。
「・・・よろしいので?」「・・・まあ、本当に問題なら上が黙ってはいないだろうな。・・・先ずは目の前を片付けるぞ」「・・・分かりました」
去っていく補佐の女性。それを見送りつつギルド長は空を見上げて辟易する。
「ったく・・・。集まってくんじゃねえよ」
・・・・・・
・・・
ミルトニア大会は専用に作られた巨大な会場で行われる。
首都と隣町の中間にあたるだだっ広い平地でだ。
会場と言っても、代表達が戦う競技場は魔法により何度でも作り変えられるように設計されたオリジナルの魔法陣の上で行われるとのこと。
その為の専用ステージが・・・現在、見晴らしが草原になっている場所だった。
競技内容は軽く聞いたが、学生とはいえ異世界での魔法を使った競技。
派手になる事が分かっている為の考慮だと思われる。
そしてそんな大会を楽しみに会場にはたくさんの人だかりが出来ていた。
すぐ傍には並ぶようにたくさんの屋台などが建っており、始まる前から商売が活気付いていた。
「(本当に入れるのか?)」〔・・・既に10万以上に人が集まっていますね〕(10万・・・!)「(驚かなくていいよゼックン。適当だから・・・)」〔しかし。この人数だと・・・入るのに時間が掛かりそうですね〕(ホントだね~。会場があんなに遠い・・・)「(これ、絶対前日入りってのをしてるでしょ)」(ぜんじつ・・・?)〔ありますねー・・・〕
巨大な会場のはずが、現在ジン達がいる所から数百メートルは離れている。
それでも見えるくらい大きいという事だけは分かるが・・・入場にいったいどれだけ掛かるのか分からなかった。
「はぁ・・・」
帰りたくなる気持ちが既に強くなるジン。
〔ほら、しっかりしてください。バッツ達の応援に向かわないと・・・リエナとパミルが落ち込みますよ〕「・・・分かってるよ」(・・・ちょっと。ぼく前の方を見て来るよ)
ゆっくりとした歩調で全体が動く。屋台で買い物をする者と会場に向かう者で警備による交通整理はされているが・・・遅々と進んでいる気がしなかった。
割り込もうとする者やマナーの悪い者がいるために警備のみならず冒険者も駆り出されて、動き出す始末・・・。
「(・・・マジでいつ着くの?)」〔・・・おそらく、早くとも1時間は覚悟しましょう〕「(マジかよ・・・)」
これが首都に泊り、少し距離があった者の結果だと感じるジンだった。
・・・・・・
「・・・ふぅ」
会場内も非常に人が多かったが、どうやら遅々として進まなかったのは手荷物検査をする人数の問題だった。元々、配備する人数は多め頼んでいたはずだが・・・どうやらトラブルにあったらしく急遽、人を集めて今のスピードがなったそうだ。
「昨日、浮かれてバカをやらかした奴らが多くいたらしいぜ」「ああ、聞いた。それでしょっ引かれて、人手不足になったんだってな」「会場警備に、入口チェック。交通整理にエトセトラ・・・と、昨日捕まったバカのせいでオレ等に迷惑が掛かってんだから・・・勘弁してほしいよな」「(すみません)」〔謝る必要はありませんよ〕
昨日だけでジンが関わったのは20件に上った。
一部は軽微なモノだったためちょっと驚かす形で気付かれないようにして良心を煽る形で立ち直らせた。
しかし、人数が多くなり、腕っぷしに自信があると・・・その行動は大胆になる。
結局、サポートの合計によればジンが倒した犯罪者達の数は58人になったらしい。
その中にもしかしたらこの警備の仕事を請け負っていた者もいたかもしれないと思うと、少し申し訳なく思ってしまった。
「・・・(さてと)」(ジ~ン、こっちこっち)「?」
ゼクが手を振ってアピールをした場所へと向かい、2階へと上がって行く。
会場の2階・・・3階と間の間隔が非常に高かった。横はもちろんのこと大勢を集客と交通させやすくするための構造だった。
(こっち。たぶん、学生が使う場所だよ?)〔・・・その様ですね〕
サポートは案内板だけでなく、行き交う人々を見て理解したようだった。
「んじゃ、行きますか」(うん!)
元気よく返事をしたゼクを先頭にジンは学生用観客席へと向かった。
「・・・凄いなこれ・・・!」
非常に広い半球状の空間。高い天井は傘の様になっており日差し避けを作っていた。
「・・・ドーム球場ってこんな感じなのかな・・・?」〔さあ?行った事がないので実感が湧きませんね。それよりジン・・・どこにしますか?〕「(・・・それじゃあ・・・ここで)」
人がほとんどいない端っこの方へと座ったジン。ここならすぐに外へと出ることも可能だからだった。
(ねえねえねえ・・・ジン、すごいね・・・!)
気分が高まり興奮しているのかゼクはずっとあっちこっちと見回しては動き回る。
〔あまり遠くには行かないように〕(わかった~!)
本当に分かっているのか、許可を貰ったとばかりにゼクは会場を探検し始めた。
「エンタールモットの舞台もデカかったけど・・・ここは比じゃないな」〔・・・ザッと17倍といった感じでしょうか。あそこは町の中という事で建てられる大きさが決まっていましたからね~〕「・・・これにも魔力が?」〔緊急用と補助機能くらいは。もしもの為でしょう〕「(って事は、ほとんど建築技術で建てたのか・・・凄いな・・・)」〔ええ。ヒトの力です〕
改めてその莫大な規模と計画を立て、実現した人達の凄さに圧倒されるジン達だった。
あまりの人数が喋るため会場は終始、音が反響していた。会場のならではのあるあるだ。
だからか遠くから呼ぶ声など全く聞こえない。徐々に近づき呼んでいる事に初めて気づくくらいだ。
「ジンく~ん・・・。探したよ・・・」「あれ?先輩達・・・どうしたんですか?」「会場で観ようかと思ってな、控室から出て来たんだよ」「あそこは確かにのんびりと出来るのですが・・・少々。ピリつきますからね」
ジンの隣をユティが、その横をナルシャ、ドルゴと順に座っていく。
「やっぱり大会の緊張ですか?」「まあね。こればっかりは相当プレッシャーになっちゃうから」「ふふ。そういう割にはロロナは落ち着いたものだったな」「たぶんバッツ君のおかげでしょうね。緊張とリエナさんやパミルさんに気に掛けられたのが・・・」「結果オーライだな・・・と。そうだジン君。君は会いに行かないのかい?」「え?行っていいんですか?関係者以外が勝手に入るのってまずいんじゃ・・・」
その言葉を受けて、今更気付いたユティとナルシャ。
「あー・・・まあ、そうよね。いつものメンバー同士だったからつい・・・」「場合によりけりなのかもしれないが・・・。確かに、今はマズいか・・・」「なんだかんだで会長もナルシャさんも、浮かれていましたね」「・・・うふふふふふ」「・・・否定はせん」
ドルゴの言葉に笑うユティに、少し恥ずかしそうにするナルシャだった。
「あ、そういえば・・・」「なに?」「チームワークはどうですか?連携とか・・・?」「あー・・・」
チラッとユティがナルシャ達に視線を送った。
それに対しナルシャが腕を組んで目を瞑り、ドルゴは上を向く。
大会に向けて、合宿など行われた際。度々、言葉の端々に疲れと苛立ちにも似た愚痴がバッツとロロナから聞こえて来た。
悩んだり、いがみ合ったりするのもそれもまた良い社会勉強だとサポートが言うためにジンは敢えて触れて来なかった。
「・・・まあ、例年通りだな」「そうです・・・ね。自分を良く見せるための場であるのは間違いありませんが・・・。協調性という言葉が頭に入っていると信じたい・・・と思う事が、ですかね」
皆まで言わずとも・・・という事だった。
その苦笑が体験してきた者の感想なんだろうとジンは納得した。
「・・・まあ、中等部も同じような所があるけど・・・」「そうだな。こっちはある程度、可能性と役割分担を把握できているといった所だな。上手く、その辺りをまとめる指揮官が優秀だと、些細な問題になる」「初等部はムラがどうしても大きいですからね。分かっていても今年もやってしまうでしょうね」「ああ・・・そうね!」「(?)」「見ていれば分かるさ」
表情を読み取ったナルシャが答えてくれるが・・・ジンとゼクには何の事だが分からなかった。
ジン達が会場に入って約1時間が経過した頃だった。
選手用の入り口から関係者らしき人達が草原に向かって歩き出した。
それを認識した人からどんどんと静かになっていく。いよいよ大会が始まろうとしている空気を察知したからだ。
関係者達は観客席からかなり奥の草原へと行くと、その場で等間隔に開いて行き、魔力を解放した。
ゴゴ・・・ゴゴゴゴゴゴ・・・・・・ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・!!!!
「「「うぉぉぉぉおおおおおおおおおおお・・・・・・」」」
観客がどよめく。
そんななかステージは草原からどんどんと土が盛り上がり地形が変形。・・・そしてジャングルへと姿を変わった。
それと同時に会場だけではなく、外の入り口や、街の広場などに巨大なホログラムのスクリーンが表示された。
そこには第一試合と書かれている。
「それではミルトニア大会、初等部による第一試合を始めたいと思います。ベルニカ代表、入場してください」
会場の照明が選手用口へと集まった。そして・・・演出によるカラフルな色の爆発。
煙の中からベルニカ初等部の学生達が入場した時、一斉に観客が湧いた。それは外でも同じだった。
「・・・ふん。まあ、国の為ですもの。確実に勝ちますわ」「ええ。そうねプリメラ」
プリメラと呼ばれた煌めくツインテールの紅い髪を手で払い、堂々と入場した。
他の初等部の面々にも目立つ者はいたが、その子は一際、異彩を放っていた。
「・・・?」「?どうかしたのジン君?」「あ、いや・・・」
会った事も見たことも無いはずだが、何となく既視感のようなモノを感じる。
「彼女はプリメラ・フォーブライト。幼くともその実力は中等部と同等とも言われる実力者だよ。将来も期待されているという噂だ」「詳しいですね」「ああ。ちょっと他の学生達の情報も知りたくなってな」「なるほど敵情視察という事ですかな?」「おい人聞きが悪いぞ。私は純粋に──」
ナルシャとドルゴの会話を他所にジンはスッと半眼にさせてプリメラを見る。
それを気付かれないように、横目で見るユティ。
「(同じ苗字・・・そんな事。ううん(ふるふる)。人なんてたくさんいるんだし名前が被る事だって、あり得るよね。・・・でも。・・・本当に似てるだけ?)」
髪の色はジンとプリメラでは全く違う。だがそれは確実な照明にはならない。
ユティはメルギスから多少、ジンの事情を教えてもらっている。
その為、これ以上踏み込んだ質問をしていいものかと悶々として、聞けずじまいになってしまった。
〔・・・ジン〕「(ああ・・・。偶然・・・と、無理矢理結びつけるのは考えすぎだが・・・)」(・・・ああっ!!ジン。あれってジンのお姉ちゃんだよ、ほら・・・!!)
指を指してハッキリと口にするゼクを見て、ジンとサポートは確信を持った。
「(・・・こんな所で出会うとは・・・)」〔この子の事を詳しく調べられませんでしたからね〕「(逃げる形でベルニカを去っていったからなー・・・。さて、どうしたもんか・・・)」〔向こうが接触をしてこないのならスルーしていきましょう。流石にマズいです〕「(だよね)」〔ゼクには私から言っておきます〕「(頼む)」
次々と入場してくる代表者達を見ながら、2人だけの作戦会議を終了させる。
そして・・・。
「ジルベガン代表の入場です・・・!!」
ワーー―――――――・・・!!!!
盛り上がりを見せるなか、堂々とした態度で、リエナ、パミル、バッツ、ロロナがステージに向かって姿を現した。
【ジン・フォーブライト(純、クリス)】8才 (真化体)
身体値 90
魔法値 107
潜在値 115
総合存在値 178
スキル(魔法):干渉、棒術 3、マナ零子 3、感応 1




