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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
324/473

320 秋に入ってそうそう、やる事は山積みです。

 夏も終わり、秋になりました。


 思ったよりも短い帰還だったが、それでも・・・全体的に見れば今までの中では最長となる旅だった。

 僅かな日数だったが久々にリエナとパミルの実家に帰還してみた。


 あまりの感動の対面に喜ぶミゲイラ。

 思わず飛び込んで来た父をリエナとパミルははっ倒し、カルローラ(リエナの母)リレーネ(パミルの母)に帰ってきた報告をするのだった。


 あまりの不憫な状況に思わず同情するのはジンだけで、他の面々は通常運転だった。



 情報交換を交わしたが・・・。現在、縁綾(えんりょう)ファーランではそれらしい宝物・・・だと思われるものはあるが、すぐには渡せないとの事だった。

 目ぼしい場所に心当たりがあるそうだが・・・ちょっと厄介との話。


「あくまでも可能性・・・だからね。・・・今も調査中といった所さ。全国の伝手を使って鋭意探索中だよ。もう少し待っててほしい」


 との事だったので、とりあえずは保留となった。


 そうしてあっという間に夏休みは終わりを迎え、ジン達はそれぞれの通っている学園がある町へと帰った。


「ああ~~~っ・・・まんま・・・」「はいはいはい。アフネシアさ~ん」「はーい」


 カウンターの奥で忙しく洗濯などをしていたハーフエルフの女性がやって来た。

 ここ、ジンの下宿先``モンダール``を経営しているグルタモン(獣人)さんの奥さんである。


「は~い。どうしたのかな~?」「あう~・・・う~んまっ・・・」「あらあら♪・・・お腹でも空いたのかな?・・・ジン君、ちょっと席を外すわね~?」「あ、はい」


 入れ替わる様に空き室の掃除を完了させた亭主が現れた。


「・・・はぁ。すまないねジン君。じゃあ、昼食の用意をするから待っていてくれ」「ありがとうございます」


 ホローグメッツ学園が始まって数日。

 のんびりとした日常を過ごしていた。


 つんつん・・・つんつんつん・・・。


「ふふふ♪」


 隣でジンの頬をつついて嬉しそうにしている中等部生徒会長のユティ。


 つんつん・・・つんつんつん・・・がばっ・・・!


「はぁ~・・・タージュ君(赤ちゃん)もジン君ぐらい懐いてくれたらな~♪」「いや、別にユティを懐いているわけではないと思うんだが」「ふ~ん♪・・・幸せ~♪」


 親友である風紀員のナルシャの声も彼女には届いていなかったようだった。


「・・・くっそ~・・・見せびらかしやがって~・・・」「はい。そこ間違えてる。邪念退散・・・!」「あだっ!」


 ・・・・・・うん。いつも通りだ。


 ・・・・・・

 ・・・


「──という事ですので。休み明けですが・・・皆さんの中からも選ばれることだって十分にありますから。頑張っていきましょう~」


 元気よく勢いを乗せて片手をあげたのは担任のチルミ先生。

 それに対して、生徒達の反応は静かだった。


「え・・・?・・・あれ?ど、どうしました?」


 思っていた空気と違い困惑する先生。


「・・・先生。それって・・・必ず上位クラスが絶対ってわけじゃないんですね?」「え?あ・・・はい、そうですよ?AクラスからHクラスまで、それぞれの実力と成績を見て私達教師が話し合います。そしてそれを踏まえて最終的に学園長が選抜します。当然皆さんもその対象の1人になりますよ?」


 可能性は十分にある。その言葉を受けた瞬間、一気にクラス中でやる気を歓喜する声が拡がった。


「・・・え?そんな凄いの?」「前にも言っただろ。それに選ばれるだけで、仕事の幅が増えるって・・・」「顔をしっかりと売る機会・・・。冒険者としてよりも、高給職を考えるなら絶対に出たいと考える」「ロロナは夢がねえな~・・・」「バッツと違って堅実に生きる事も視野に入れてんの」


 手を叩いて、盛り上がっている生徒達を静かにさせるチルミ先生。


「はいは~い。選出期間は来週になります。ワープポータル内で先生が出す課題を頑張ってクリアしましょうね~?」「「「は~い」」」「はい、それじゃあ今日はこれまで♪」


 終了と同時に、解放された生徒達が次々と思い思いに出て行った。


「・・・なんか気合入ってるね」「・・・あー、そうか・・・。お前は出ないんだったな」「うん」


 バッツもカバンに教科書をしまうと立ち上がる。


「んじゃ、俺とロロナはちょっと行ってくるぜ」「どこへ?」「ワープポータル」「集団で入る事になるけど・・・申請すれば来週までには何回かは使わせてもらえるからな。外で特訓するよりは安全だし使わない手はないだろ?」「・・・確かに」


 嫌味な奴とか絡んでくる奴はいるかもしれないが、問題行動は教師達が見逃さない。

 ポータルを管理する以上、中で何をやっているかも駄々洩れだろう。

 モンスターの出現も自由自在。安心して訓練に励めるわけだ。


〔我々も入りますか?〕(みんなが何やってるのか見て見たい~♪)「(ダメだよ。大勢使いたがってるんだから邪魔できないよ)」(ええ~・・・)〔そうですね。残念ですが、諦めましょう。ゼク〕(ぶー・・・)


 ふくれっ面になるゼク。本気で拗ねているわけじゃないから問題なし。


「それじゃあ、ジン。また明日ね」「うん。また明日ー」


 バッツの後を追う様にロロナも教室を出て行った。


「・・・」


 気付けば教室に残っているのはジン1人だけとなっていた。


「さて、俺も・・・」〔待ってくださいジン〕「?」


 予定はないのでサッサと帰ろうとした時、教室に顔を出した人物がいた。


「あ、いたいた。ちょっといいかい?」


 学園長が手招きをしていた。


 ・・・・・・


「・・・っ、あああ゛~っ・・・」「随分、疲れてますね。本当にさっき帰って来たんですか?」「そうだよ~。いや~・・・この年になると首も肩も腰も・・・」


 バキ・・・ボキ・・・ガコ・・・!


「来週から大会選抜が始まるんですってね」「ああ゛~・・・。そうなんだよ~。例年とはいえ、揉めに揉めるから嫌なんだよね~」


 顔を覆い、落ち込んでしまうメルギス学園長。


「あー・・・貴族・・・?」


 黙って頷く学園長。


「面子って事ですか?」「分かるかい?生まれた時の才能と権力を未だに押し出してくる人が多くてね~・・・。少なくなっても・・・いざ、大会のような公の場になると・・・もっと欲しがる奴もいるんだよ」「立場が弱くなったとかは?」「しっかりしてる所はマシさ。ちょっと子供達の活躍を見たい・・・。親としての我が儘を言っているだけだからね。問題は・・・才能によるエゴの方だよ」「あー・・・」


 上下のある世界では切っても切れない課題。

 それは親から子へとずっと引き継がれてきた問題だった。


「教師陣はね。色々と考え方に問題もあったりするが、まだ生徒達を見る機会があるからいい。・・・問題は親だ。教師に何かしらを握らせたり圧力をかけるかける・・・ははははは」


 自分で言ってて馬鹿らしく思えてきたのか暗い笑いを見せる学園長。

 ちょっとキャラが変わってしまっているほどに、この面倒事が嫌なんだろうなとジンも察しが付いた。


「そのまま大会に?」「?・・・あ、その辺りを知らないのかな?」「はい」「この学園では・・・大体200人くらいが選抜されるんだよ」「200ッ・・・」「ふふ。多いだろ?まあ、実際はその年によって人数が変わるから分かんないけどね。今年は・・・初等部、中等部、高等部、合わせると・・・もっと増えるかもしれないな・・・たぶん」


 常識を知らないジン(純)。この世界からすると、それが選抜なのかと疑問に思ってしまった。


〔大会は各国の代表者・・・ですよね?〕「(あ・・・そうか)。ここで決めても国の代表は別?」


 ニヤリと口角をあげった。


「正解。先ずは1次試験だね。そこから首都にジルベガン中の学園から選ばれた生徒達が集まって、またそこで大会が行われる。そこで選抜されて初めて、ジルベガンの代表ってわけだ」「・・・全国から選抜して、世界大会・・・。凄いですね」「そうだよ。毎年あるけど・・・凄い数の人々が各国からアルメラに集まるんだよ」「・・・アルメラ?」


 そこはこの世界では中立の立場にある法国だと覚えているジン。

 そして・・・ちょっときな臭さもありそうだとメルギスから教えられた国だったような・・・。


「・・・国としては真っ当。教会に興味があるなら是非一度は行く事をおすすめするね・・・」「でも?」「・・・これは私の直感かな。いや・・・どっかの誰かさんのおかげ(せい)かもしれないな」


 ``きっと、そのエルフは奥さんにこっぴどくしごかれているんだろうなー``とジンとサポートは思った。分かっていないゼクだけは``誰だろう?``と頭を左右に捻るばかり。


「あそこは・・・何と言うか、綺麗すぎる。・・・確かに、街並みは美しいが・・・。組織としてはもうちょっと派閥というか、そういうモノが多くあっても良いと思ってしまう。・・・あ、いや。その結果、内政が安定しないよりはいいんだが・・・。解釈と思想は多様だ。後世に残した著者の気持ちなんて分かるわけがないんだ。自分のその時の心の在り様なんだよ結局は・・・」「だから・・・それを正しいと思い込んでいる状況が怖い・・・?」


 小さく頷く学園長。しかし勝手な一存っで決めつけるのも悪いとメルギスも思ってはいる。

 だからこれは、あくまで個人の解釈。別にアルメラを悪く言いたいわけじゃない。


 ・・・そう・・・正直に言えば・・・・・・不気味なんだ。


「当たり前だけど・・・見えないって怖いね~」


 しみじみと言ったその言葉。それが永い時を生きて来た学園長の感想だった。


 そして1つ、膝を打つと意識を切り替えた。


「ま、君は行かなきゃならないんだ。そこに手掛かりがあるかもしれないからね」


 メルギスの視線の先は・・・ジンの服の中に仕舞っているアクセサリーを見ていた。


「あるとは決めつけられないが・・・情報は手に入るかもしれない」「図書館、ですか?」「ああ。聖堂の隣接された大図書館だね。教会だけじゃない、この国のも含めて違う解釈の各国の歴史が残されているはずだよ」「国より知ってたりして・・・」「・・・その可能性も十分考えられる。``あの国は設立されてから一度も変わっていない``という噂だよ?」「一度も?」


 今度はしっかりと頷いた。嘘を言っている風には見えない。


「・・・大変そうだ・・・」「・・・。大会の滞在期間の間、私の方で宿等の手配はしておこう」「助かります」「まあ、私がしなくても・・・あの人なら喜んで力を貸してくれるだろうけどね」


 少し茶目っ気を言いながら、紅茶を持って立ち上がった学園長は窓の外を見ながらゆっくりと飲む。

 そこには楽しそうな生徒達の笑顔があった。


「前途有望な若者を・・・。しっかりと支えてやらなくてはな」


 大変さを感じつつも・・・この瞬間もまた悪くないと感じていた。


 話は終わっただろうとジンはゆっくりと立ち上がった。


「それじゃあ、俺はこれで」「ん?ああ。長々とすまなかったね。また、何かあったらその時は私から呼びに行くよ」「分かりました」


 一礼して学園長室を後にした。


(ね~え?その国って・・・怖いの?)「(ん?・・・さあ~、どうなんだろうね?)」


 直接見ていない以上、どう受け取っていいのか分からなかった。・・・ただ。


〔少なくとも、ミゲイラの所で鍛えられた学園長の言葉です。警戒をして損はないでしょう〕


 1つ相槌を打って、ジンは下宿先へ帰るのだった。


 ・・・・・・


「おそ゛~い゛っ・・・!」


 宿に帰ると涙を流しながらジンの方を見てくるユティ。

 両手には手足をジタバタさせて、抜け出そうと泣き叫びながら藻掻いているタージュ君の姿があった。


「あらあら。ホントに・・・どうしてユティちゃんにはあまり懐いてくれないのかしらね~?」


 アフネシアがタージュ君を抱き上げて、背中を優しく叩いてあげる。


「んっ・・・んっ・・・んっ・・・」


 泣いていた表情が徐々に落ちつき始める。そしてゆっくりと胸に顔を埋めて寝ようとし始めた。


「ううっ・・・ねえ~。私、なんか悪いことしたかな゛~っ?」


 あまりに懐かれなくてショックだったのだろう、ジンに抱き着いてシクシク泣くユティだった。


 ・・・・・・

 ・・・


 それから数日間。実技の授業で講師による課題をクリアしようと躍起になっていた生徒達。

 ジン達H~Eクラスはかなり意欲が高まっていたそうだ。

 それに対してD~Aクラスはある程度見切りを付けた者もいて、どうやらその態度は見事に真っ二つに別れたそうだ。

 焦るこの者達と受かると信じている者達。その評価をどう判定するのか最終的な決定を下すのは学園長であるメルギスに委ねられる。

 教師によるプレゼンテーションによってはかなり評価に左右されそうだが・・・。


〔あの学園長なら、しっかりとしたジャッジを下すでしょう。地位や権力を振りかざせば却って評価が悪くなる。担当教師もその辺りは承知済みですよ〕「(・・・後は・・・。いかに普段から、向上に努めてたかね・・・)」(ロロナ、大丈夫。自分を信じて・・・!バッツーッ・・・早く、急がないと・・・!)


 応援するゼクの姿と声は誰にも伝わっていないが、とても楽しんでいるようだった。


 ・・・・・・


「ウソだろーっ。何でっ!」「よっしゃ!」「やったー!」「おめでとう~」「・・・ありえない」「・・・ふ、不正だ。直接、学園長に・・・!」「止めとけって。気持ちは分かるが後の事を考えろって・・・!」


 喜ぶ者と肩を震わせる者。どんな結果になっても、今はそれがこの学園が下した結論であった。


「くっそ~・・・やっぱ受かったか~・・・」「へへへ。まあ、な♪」「おめでとうロロナちゃん」「うん。嬉しい」


 教育方針に違いがあったのか概ね・・・Hクラスでは順当に受かった者達がいたらしく。またそれを祝福する声があった。


「皆さん素晴らしいです。まだ代表に決まったわけではありませんが・・・10人も選ばれるなんて担当して初めてですよ」


 チルミ先生も少し目に涙を浮かべながら、生徒達を見て喜んでいた。


「先生。ありがとうございます」「ああ。先生のおかげだよ」「そ、そんな・・・。皆さんの・・・」


 笑顔に包まれる空間。選ばれた者も選ばれなかった者も・・・皆が皆、喜び、励まし合っていた。


〔・・・最初の頃と随分違いますね〕「(うん。・・・思いはあるけど・・・暗い表情がない・・・。こんな事ってあるんだな)」


 悔しそうにしている者も今は実力不足だったと自らを認めていた。

 だからか、そこに妬みや嫉妬のような・・・人を恨む感情が見られなかった。


〔・・・いい環境に私達は恵まれたのですね〕「(そうだな・・・)」


 こんな学園生活を送ったのは・・・何時だったか・・・。

 長く暗い時を歩んでいた。そんな感覚を感じていた。


 トン・・・。


「?」〔どうしました?〕「(あ、いや・・・ううん)」〔?〕


 何かが触れた様な気がしたが・・・よく分からなかった。


 ・・・・・・

 ・・・


 1次選抜は終了。ホローグメッツ学園からは大会に出る選手。それをサポートする要員も含めて、今年は348名もの生徒が国内大会に参加する事になった。

 ここから更にふるいに掛けられ・・・世界大会代表選手が決まる。


 舞台となる国は創慧(そうけい)法国アルメラ。


 そこにベルニカ、オーラル、レツガイス、モナメス、ファーラン。

 そして・・・ジルベガン。


 選手が一同に集まった学生による最大級の催し物が開催されるのである。



「じゃっ。選ばれるのを待ってろよ」「もう~。ふふ・・・でも。うん・・・待っててね」「それじゃあ私達も向かうから後は頼んだぞ」「会長、少しの間失礼します」「はいは~い。行ってらっしゃ~い」


 朝・・・ホローグを発ち、2次選抜試験の為にバッツ、ロロナ、ナルシャ、副会長のドルゴがジン達に挨拶を交わす。


 下宿先``モンダール``からジンとユティ・・・グルタモン、アフネシアと、まだ眠そうなタージュ君が見送りをする。


「・・・皆、頑張ってね」「帰ってきたら、また新作ケーキを作って上げるからね」「わ、やったー・・・!」「グルタモンさん・・・楽しみにしてますからね」「ははは。わかったわかった」


 今から涎を垂らしそうなバッツに笑いながら答えた。


「場所って・・・首都だっけ?」「の、たぶん隣町だな。そっちの方が設備が充実しているらしい」「研究所があるとか言ってましたね」「ふ~ん。・・・ま、2人なら合格間違いないんだから・・・気楽に頑張ってね?」「気楽に頑張るって・・・」「難しい事言わないでくださいよ」「エッヘヘヘヘ・・・」


 和やかな空気が流れ・・・。

 そして4人は、2次試験の会場に向けて町を出て行くのだった。






 【ジン・フォーブライト(純、クリス)】8才 (真化体)


 身体値 55

 魔法値 60

 潜在値 63


 総合存在値 118


 スキル(魔法):干渉、棒術 1、マナ零子 1

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