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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
32/473

31 以前の日常と憂鬱

 純は目を覚ました。


 現実では時間軸として昨日もこの世界で生きた十時影 純として。

 しかし異世界ではクリスとして3ヶ月もの間、生活していた影響か寝る時間と起きる時間のサイクルが少し異なってしまった。


 普段なら朝7時半に起きて、または起こされてベットを出る。

 時計のアラームをセットしてずっと生活していたため、誰かに起こされるということはほとんどない。


 その上、クリスとしての向こうの世界での旅による生活も含み自然と共にと起きるのが早くなった。


 現在朝の6時、家族が起きるのはもう少し遅い。


 純は部屋を見て、それから起き上がりカーテンを開ける。

 窓から見える、外の風景。


 隣とは少し離れていて、遠くの大きなビル群が見える。

 目線を下げて少し下を見れば電柱、電線があり、家の屋根とかにはたまに羽休め鳥が、ちらほら見えた。


「・・・帰って来たのか、いや、もともと時間は経ってないのか・・・」


 クリスとして生きていた感覚がハッキリあるために、何とも不思議な感覚がする純。


「・・・ステータス」



【十時影 純】 15才 人間?(ぽっちゃり)

 レベル 1

 HP 1 MP 1

 STR 1

 VIT 1

 INT 1

 RES 1

 DEX 1

 AGI 1

 LUK 1



 地球に居た時にはまず存在しなかった半透明な表記を見て、自分が異世界に確かにいたことを確認する。


「サポート」

〔はい、なんでしょう?〕

「・・・いや、なんでもない」

〔そうですか〕

「・・・・わかってるだろ?」

〔・・・はい〕


 異世界から帰還したときに新しく身に着いたもの``サポート``。

 純の内から作られ生まれた存在。

 そして純をサポートをするための存在。

 そのため純の内情を理解していることもある。


 確認のために呼ばれたことを。


〔マスター、おはようございます〕

「ああ、おはよう・・・。

 ・・・マスターっての何とかならないか?」

〔はい?〕

「俺は・・・そんな偉い人じゃないし、凄い人でもないから」

〔・・・では・・・純、と」

「ふ、読んでくれたんだな。

 それでお願い」

〔分かりました、純〕


 純は部屋を出て洗面台に行き顔を洗い歯を磨いた後、部屋に戻って制服に着替えた。


 机に向かい学校用カバンから教科書を取り出し見る。


 いくつもの部分が落書きされ破られ、切り刻まれているためよく読めないが改めて教科書見てみた。

 ノートにも落書きされ一部はボンドなどで塗られて剝がれなくなっている。


 ずいぶん昔のように感じる自分のノートを見ながら今どんな授業をやっていたかを思い出す。


〔破損している個所は私がサポートして純に見られるようにします〕

「?どうやって」


 そうすると、ステータスで見るような半透明な表記が読めない部分の補足を画面に表してくれる。


〔これでおおよそのことが読めるかと思います〕

「・・・・凄いな。

 どうなってるんだ?」

〔あくまで純のサポートの一環です。

 その程度なら情報収集をしても問題は無い様です〕

「・・・?

 無理なことがあるのか?」

〔はい、前回のような存在などの世界の理に大きく関わる事は出来ません。

 そもそも今までのものはあくまで純を中心に知りえる情報のみになっているからです。

 その枠を超えると今の力ではどうしようもありません〕

「サポートも成長するのか?」

〔はい。

 もともと私は純の中から生まれた存在。

 純の想い等から作られた部分でもあります。

 従って、あなたの成長が私の成長につながるのも当然です〕

「・・・初めて聞いたんだけど」

〔言ってませんから〕


 何とも言えない表情になり沈黙する。


「・・・えっと、その想いって?」

〔あなたの``こうしたい、こう思う``といった性格や願望といったものが私の中にも入ってます。

 いわば、あなたの心情、本心です〕

「・・・・」

〔そうです。

 これからも自分と向き合ってください〕


 少しこの力について考える時間が必要と感じた瞬間だった。


 そうして、教科書やノートをザックリと``サポート``の助けの借りてアラームが鳴る時間まで読み続けた。



 目覚ましが鳴り、そこで読むのを止め、1階のリビングに向かった。


「・・・何となく前よりも理解できるような気がする」

〔それがステータスによる反映の一種です。

 ただ能力が上がるだけではなく、純の場合は器が昇華したために表れた効果でしょう〕

「もしかして、レベルが上がってステータスが成長すればもっと頭がよくなるとか?」

〔あくまで程度の問題です。

 比較的、以前よりはマシになる。

 そうお考え下さい〕

「そこまででもないのかー」

〔こればかりは純、次第なので〕

「それって、俺はもともとかなり〔こればかりはどうしようもありません〕」


 先に言おうとした、自分はバカだからという部分を消されてしまった。


「そういう部分は鋭いな」

〔まあ、あなたの``サポーター``なので〕

(・・・ほんと、厄介なやつを手に入れた感じだ)

〔心外です〕

「読まないでくれ」


「さっきから何をぶつぶつ言ってるの?

 ご飯が出来たんだから早く食べなさい?」


 義母の白星 咲恵がテーブルに食事を用意した所だった。


「あ、・・・はい」

「私は夏奈たちを起こしてくるから」


 そう言って、リビングを出て2階に上がっていった。


〔私と話すときは声を出さなくてもできますよ?

 心の中で話してください〕

「心の中でってどうやるんだよ?」

〔頭の中とも言います。

 考えた時に声を出さなくても頭の中で喋るような言葉を出すような感覚です〕

「う~ん、何となくわかるような・・・」


 純は首をひねりながら、うんうん唸る。

 そのまま自分のテーブルに着き、食事をしながら考える。


「(・・・こんな感じかな?

 頭で文字とかイメージを浮かべるような)」

〔はい、その通りです〕

「(おっ、今の俺の考えが伝わったのか。

 なるほどー、これねー。

 結構難しいな)」

〔意識するのとしないのとの違いでしょう。

 慣れれば問題なく使えるようになります〕

「(なれの問題か・・・。

 ま、がんばってみるよ)」

〔はい、是非そうしてください。

 そうしないと純が変な目で見られてしまいますから〕

「(そうだよな、気を付けよう)」


 慣れない、心の中?頭の中の会話に苦戦しながらもご飯を口に運んで行った。


 そうこうしながら食事をしていると気づいたら、テーブルには家族、揃って食事をしていた。


 厳格そうな雰囲気で新聞を読む義父の白星 優一(しらほし ゆういち)

 その隣で資料を読みながら食事の後のコーヒーを飲む咲恵(さきえ)

 向かいには腰近くまでの髪をポニーテールのようにしたどこか優しさと活発さがあって才色兼備な長女美月(みつき)

 その左隣をストレートで背中まで伸ばしている、少し物静かでおしとやかな感じのするこれまた才色兼備な次女、紅百葉(ことは)

 そのさらに左に座り食事をする、イケメンで利発そうな子が長男昂輝(こうき)

 その向かい義母の隣に座る、天真爛漫で元気な三女夏奈(かな)

 今は眠そうにしながらご飯を食べている。


 そして、その輪から少し離れて(正確にはテーブルがあるため気持ち離している)純が座って食事をしていた。


「ねえ、お母さん?

 私、今日お母さんの仕事見学していい?」

「いいわよ別に、どうしたの?」


 チラッと美月が純の辺りを見た後。


「私も今後の事を考えて早めにどんな仕事に就きたいか参考にしようかなっと思って」

「そう?

 まあ、美月なら結構簡単に見つけられると思うわよ」

「そうかな~?」

「ふふ、まあ、お母さんの仕事、今日は見にいらっしゃい」

「うん、そうする」


 白星家の何気ない日常会話だった。


「・・・ごちそうさま」

「あ、食器はそのままでいいから」

「はい」


 純は告げた後、リビングを出て自室へ戻った。


「・・・あいつどうするつもりだ?」

「昂輝。

 純にそんな言い方しない」

「別にいいじゃん、文句言われたことないし」

「そういうことじゃない」


 昂輝の発言に注意する紅百葉。


「ねえ、昂輝お兄ちゃん。

 どうするって何が?」

「ん?ああ。

 もう2月だからなぁ。

 あいつも中学を卒業するんだよ。

 私立に行くのか公立に行くのは、それともそのまま就職するのか・・・まあ、俺には関係ないけど。

 いや、この家にいるんだし・・・迷惑かけられたらいやだなぁ・・・」

「・・・昂輝!」


 大きくないけどしっかりと強い口調で注意する紅百葉。


「はいはい、わかってるよ。

 兄貴ね、アニキ」

「・・・」

「ふぅ、昂輝はなんでそんなに純が嫌いなの?」

「は?別に嫌いとかそんなんじゃないけど」

「・・・ま、いいわ。

 それより紅百葉、今日はゆっくりでいいの?」

「うん。

 今日は大丈夫だから」

「あれ?

 生徒会に入ってなかったっけ?」

「あれは一時的な助っ人。

 体調を崩した生徒の代わりに何日か手伝っただけ」

「あ、そうなんだ」

「ねえねえお母さん、私立とか公立って?」

「ん?高校の事よ。

 ・・・そういえばあなた私立の試験あと少しよね?

 純に聞いた?」

「・・・・いやまだ何も。

 今夜にでも聞いておこうかと思っていた。

 まあ、この辺りにはいくつも高校はある、行かせるにしてもあいつの成績から判断して2か3つだから、そこから選ばせよう。

 ・・・あとはあいつ次第だ」

「・・・分かりました。

 じゃあ、出かける前に純に伝えておくわね。

 あなたもそろそろ時間でしょ?」

「そうだな、じゃあ行ってくる」


 優一は新聞を置き、上着とカバンを持ち、玄関に向かった。


「ねえ、お母さん。

 純の成績ってそんなに悪いの?」

「・・・まあ、ね。

 でも、あの子はあの子なりに頑張っていると思うわ」

「・・・」


 そんな会話が1階で話されているとは知らない純は。


「(とりあえずは、何となくだが出来てきたんじゃないか?)」

〔はい、先ほどよりはスムーズになってきていますよ、純〕

「(結構難しいな、こう意識を頭の中っというか心の中っていう文字やイメージで話すのは。

 どっちかっていうと思念みたいな感じか、言い方の違いだけだけど)」

〔そうですね、そちらの方が概念としてはしっくりくるでしょう〕


 純たち?はずっと思念伝達の練習に食事中からずっと行い続けていた。

 些か成果が出始めてきたところだった。


「っと、もう時間か。

 ・・・はぁ~。

 学校に行くか」


 純は今までの学園生活で学校に行くのはただの苦痛な時間でしかなかった。


〔純、今までのとは、少し違うかもしれませんよ?〕

「?どういう・・・まあ、お前もいるしね」

〔いえ、そういうことではなく〕

「?・・・ま、いいや。

 とにかく行かなきゃいけないし」


 憂鬱な気持ちになりながらカバンを持ち部屋を出て玄関に向かい学校に行こうとした。



「あ、純、ちょっといいかしら?」

「え?・・・なに?」

「あなたのことについて話しておきたいことがあるの?

 高校に行くのか、行くにしても私立か公立かどこに行くか考えておいてちょうだい?

 今日の夜、お父さんとお話しするから」

「あ・・・・はい」


 純は素直に話を頷いてそのまま、靴を履き玄関を出、学校に向かって歩くのだった。

 内心はとても憂鬱な気持ちがさらに上乗せされて。






【十時影 純】 15才 人間?(ぽっちゃり)

 レベル 1

 HP 1 MP 1

 STR 1

 VIT 1

 INT 1

 RES 1

 DEX 1

 AGI 1

 LUK 1

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