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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
299/473

295 相応の対価

「私の命令を聞けっ!」


 オメロス、ヒーちゃんと呼ばれたヒトデの言い合いを聞かされている状況に業を煮やした子爵悪魔が口を挟んだ。ヌルッとオメロスが彼の方を見上げる。


「・・・何?」「召喚者は私だ。サッサと従って戦え!」


 嘆息混じりに聞いて来るヒトデに、立場というのを主張して指示を出そうとしている悪魔。


「・・・うっさいわね。契約者はアナタかもしれないけど・・・そもそも不十分なのよ」「だから、その分を奴の血肉で──」「まず、それを実行するための力を・・・。アナタ(・・・)が呼び出せていないのよ・・・!」「っ!」


 不十分だと言われ、ぐうの音も出ない様子。


「大体何よ、命令って。アナタぐらいの雑魚が偉そうな事言わないで」「ヒーちゃん。ストレス溜まってる?」「ああ゛?」「何でもない」


 個人的な事情で鬱憤が溜まっていたらしいヒトデのヒ―ちゃん。思わず、少し優しく聞くオメロスだがすぐさま身を引いた。


〔あの雰囲気・・・覚えがありますね〕(ぼくも・・・!・・・あっ!遠征の時だ)「・・・」


 変な冷や汗を掻きそうになるジンは出来るだけ無反応を貫いていた。


「倒せ、倒せってうるさいけども。中途半端な力で・・・どうやってって・・・?!そもそも、その意味わかってる?」「・・・」


 驚愕と困惑顔の子爵悪魔。


「(ボソ)・・・本当に分かってないのね」


 思わず唾を吐きたくなるような嫌気を指す声で呟くヒトデ。


「とにかく・・・他にないわけ?代わりになる魔力とか・・・」


 埒が明かないと悟り、召喚獣の方から譲歩の声が掛かる。

 お互いの面子を気に掛けたちょっとした優しさだった。


「いや・・・その、魔力は・・・」「はぁ~・・・。でしょうね」


 意気消沈する悪魔にため息しか出ないヒトデ。


「・・・どうするの?」「(ボソ)・・・仕方ないわね。ここは頂いた魔力分で仕事をしましょ?それに・・・」


 ヒトデはジンの方を改めて見る。


「(ボソ)正直・・・場所といい分が悪いわね」「(ボソ)うん・・・。何かあの子供・・・明らかにオカシイしね。まだちょっとヒリヒリする」


 ジンから受けた自分の足の症状を確認するオメロス。

 見た目の症状よりも感覚的にかなり尾を引いているようだった。


「(ボソ)それとなく、戦って報酬分という事にしましょうか」「そうするか。モンモフォットちゃんが待ってるし・・・」「アナタ・・・いつの間に・・・」


 やる気を見せたオメロスと言われた異界の巨大ダコは足をうねうねとくねらせて、活動を再開。

 ギュルとその大きな体を動かしてジンの方へと振り向いた。


「は・・・ははは、そうだ。それでいいんだよ」


 独りでに笑う子爵悪魔を無視し、ジンとオメロスが戦闘態勢に入った。


 ゆっくりとした挙動からの高速の突き。

 風を切って高速のたこ足が何本もジンに迫る。


 ドガドガドガドガドガドドドドガガガガ・・・・・・。


 乱舞というほどの連続の突きだし。直撃の確認もせず、休む事の無い連続攻撃。


 ドガガガガガガガガガ・・・・・・。


「(ぐっ・・・!)・・・。ははははは・・・。素晴らしい・・・!」


 弱った体が強烈な風圧に飛ばされそうになるが、攻撃が止んだ瞬間。周囲の柱や燭台なんかがほとんど壊滅状態になるほどの破壊力を目の当たりにし思わず笑いが出てしまった悪魔。


「「・・・」」


 更に追い打ちと、自分で巻き上げた土煙を吹き飛ばすつもりで数回、上段から叩き落とす。

 その行為に子爵悪魔は勝利を確信。思わずオメロスに声を掛けようとする。


「よく──」「おごっ!」


 ズドム・・・!


 重い一撃を頬?の辺りに受けて目が飛び出しそうになりながら、横へと僅かに吹き飛んだオメロス。


「っ!」


 悪魔は突然、目の前に現れたジンを見つけ、体が硬直してしまい思わず声が出なかった。


 ドシン・・・!


 ほんのわずかな浮遊とその後の落下。オメロスほどの体格からくる振動は、あまり広いとは言いづらいこの空間では簡単に地震と勘違いしそうなほどの揺れを起こす。


「・・・アデェッ!」


 倒れてもすぐに足の1本を反撃に動かしていたオメロスだが・・・帰って来たのは鈍い痛みだった。


〔過剰攻撃・・・。あの悪魔よりは、意識されてますね〕「(・・・こっちとしては倒すのが、難しそう・・・)」〔ですね・・・。ゼク?この空間を壊してしまうとどうなりますか?〕(え?・・・う~ん・・・。何かさっきと違って、あの召喚獣が出て来てから異界っていうのかな?その空間に近い感じになって来た・・・と思う)


 自身がないゼク。それでも精霊である自分なりに思った感想を述べた。


「立てる?」「大丈夫・・・。デッ!・・・くっそ~・・・。あの子供の攻撃・・・凄く痛い」「我慢して。もうちょっとだけよ」


 起き上がりつつも何度も攻撃を繰り出すオメロス。

 8本の足を器用に連続で繰り出しつつ体制を立て直す。

 ジンも負けずシャボン玉や水、風、マナ活性と・・・身体強化を油断をせずに受け流し、掻い潜り、攻撃を繰り出していた。


 圧倒的な質量と体格で動くオメロス。たった1手1歩がジンとの距離を開かせる。

 詰めようとするが上手く詰められず、結果、器用に動かすたこ足に翻弄されてしまうジン。


「(・・・てぇ~っ・・・。一発も当たんないんだけど)」「(やっぱり、あの子供は異常ね。このままじゃ、オメロスの方が先に根をあげそう・・・)」〔ジン、刃は?〕「(今回は出ない)」(ダメだよ。ぼくの水じゃ、横に逸らすのが限界・・・!)


 両者、お互いに縛りが発生し決定打に欠け、長考に入りかけていた。


(ジン。もっと力を使えば・・・)〔ダメです。これ以上出しては、この異空間でどんなことが起こるか・・・〕「・・・っ!何をやっている!早くトドメを刺せ!」


 戦闘開始から数分。

 何度も位置を変えて動き回る戦闘。それでも決着が突かない事に業を煮やしたのは子爵悪魔だった。


「貴様のような雑魚を呼ぶために使ったのではないんだぞ!」


 それはあまりに決着がつかない苛立ちから、つい出てしまった言葉だった。

 例え戦闘中とはいえ、その言葉は・・・オメロス達には容認できなかった。


「あ゛?・・・今、何て?」「サッサと始末しろと言ってるのだ!そんな事も分からないのか・・・!」


 攻撃の手を急に休め、ゆっくりと子爵悪魔の方へと向きを返るオメロス。

 先ほどまでと違い、感情が高ぶっていた悪魔は相手の機嫌などお構いなしに、言葉をぶつける。


「この術にどれだけの力が使われたと思ってる・・・!500人だ!・・・それだけの力を吸ってこんな出来損ないを呼んだ覚えはない!」


 自分の不手際を顧みない発言にとうとう、攻撃対象が変わる。


「・・・もういいわよオメロス」「・・・分かってる」「は?」


 理解できないと反応を返そうとした瞬間、1本の足が目の前に向かって来た。


「っぐぼ」


 ドガ~~~ン・・・!!


 オメロスにとっては軽く振り払ったつもりだ。だが、そのスピードと重い一撃をまともに受けた子爵悪魔は石碑のある壁にまで吹き飛び叩きつけられた。


「が・・・ぐほっ・・・」


 埋まった壁から抜けると、床へと受け身も取れず落下。鈍い音を立てる。

 死んではいないようだが、起き上がるには時間が掛かりそうな程のダメージを受けていた。

 体を震わせ、何度も起き上がろうとしている。


「んん゛・・・・・・んぐ・・・!(こんな事が・・・あってなるものか・・・)」


 何とか上半身だけでも起き上がる事が出来た悪魔の顔には屈辱にまみれていた。


「・・・・・んん゛ん゛ふっ・・・!」


 這いずるようにして動き、近くにある石碑を壁に立ち上がろうとする。

 震える体に鞭を打って早く起き上がろうと力を入れる。


「(こんな無様・・・!)」


 子爵悪魔の脳裏には、数か月前・・・。どこぞの貴族の娘を操ろうとして失敗した、かつての同胞を仲間と共に馬鹿にしていた記憶が蘇っていた。


 ・・・(あのような下等種・・・貴族の娘を操作しようとするから失敗するのだ。魔力での支配も完全ではない。いずれ綻びが出る。・・・分かっていた事だというのに)(全くですな)・・・


 震える手で石碑の角を掴もうと手を伸ばす。


 ・・・(操るのなら、罪の意識を突けばよいものを・・・)(目の前の欲に溺れてしまったのでしょうな)(その結果、数日も持たんとは・・・。全く・・・)(・・・奴は悪魔としてはまだ若い。実力を考えたのでしょうか?)(はっ。それであっさりと死なれては・・・ここに来た意味が無い)(仰る通りです)・・・


「(黙れ・・・)ぐっ・・・!」


 かつての記憶。当時の調子に乗っていた自分に悪態を吐きたくなる。


 ・・・(そういう事で女王を?)(ええ。近頃、収穫も滞っている・・・。純粋な力を抽出は・・・やはり子供か・・・)(ひっひひひひひ・・・。なるほど。そのほうが・・・再来はずっと早い・・・)(計画に変更はない・・・。ふ・・・この身体が、この時ばかりは使えるとはな・・・)(これで・・・食事に戦力・・・。何と美味しい事か・・・)(場所の特定は?)(既に見つけております。後は・・・奴が開けるタイミングを待つだけです)(よろしい)・・・


「(うるさい・・・)」


 こびりつく様な2人の笑い。あの時の自分達を殴り飛ばしたくなる。吐き気がするくらい不愉快な記憶だった。

 思い出される記憶、それが何を意味するかを永年生きてきた悪魔もとっくに分かっていた。だからこそ、この状況を何としても変えようと必死に足搔こうとしていた。


「こ・・・んな・・・ところ・・・で・・・」


 手を伸ばして石碑の角を掴もうとした時だった。


「ジン君!こんな所に!」「見つけた・・・!」


 駆け下りてくる2人の少女。

 視界の片隅でそれを捉えた時、悪魔は光が射したような錯覚を覚えた。


「っ!」「えっ!」


 何処にそんな力があったのか、石碑を掴んでいる手に力を込めると少女に向けて飛び込んだ。

 階段を降りている最中に少女は突然の事に、一瞬硬直してしまった。


「ぐっ・・・」「パミル!」「うごぐナ゛・・・!!」


 咄嗟に着き飛ばしたパミルが捕まり、首に僅かに伸びた爪がくい込む。

 もはや、なりふり構わず見る影もなくなっている子爵悪魔。それでも生にしがみ付き、そのチャンスを掴もうとしていた。


「どけっ!!私の邪魔をするな!」「ぐっ・・・!」「・・・リエナ」


 僅かに爪が刺さり、血が滲み出るパミル。

 その状況に感情が爆発しそうになり、周囲に火の粉が溢れだす。

 しかし・・・首に手を掛けている子爵悪魔がパミルの顔をリエナによく見える様にと僅かに持ち上げた。


「フー・・・!!」「はぁ・・・はぁ・・・ははは。そう・・・それでいい」


 今にも倒れそうな体を踏ん張りながら、階段を上がろうとする悪魔。それに引きずられる様にして上がらされるパミル。

 怒るリエナは決して目を離さず、理性的な部分で相手の僅かな変化も見逃さないと睨みつける。


「待ってて・・・助けるから・・・」「・・・」「っ・・・、来いっ・・・!抵抗するな・・・」


 僅かに残った力で何としてもこの場を抜け出そうとする悪魔。

 リエナに脅しが効くのを良い事に、徐々に落ち着きを取り戻していく。そして、余裕が生まれ僅かに笑みが零れ、魔法陣の方を振り向くと・・・。


「はっ・・・?」


 オメロスはその巨体からすぐに分かった。しかし・・・。


「(あのガ)っ!」


 それは本能だった。何の理由もない、無意識に取ってしまった行動。だが、それが僅かばかりの命を救った。そして本能のままに子爵悪魔は身を出した。受け身を取ることも出来ず、ただ・・・魔法陣(・・・)がある方へと飛び込んだのだ。


 ドサ・・・。


 僅かに遅れて階段に落ちる腕。


 転がった状態から見たのは、自分の腕を切り落とし、フードの少女を抱き寄せて守った少年だった。


「ごめん」「ううん。ありがとう」「・・・よかった」


 言葉少なめだが、感謝を述べるパミル。その体は僅かに震えていた。そんな彼女の傍へ寄る親友。


「パミル・・・怪我は?」「・・・ちょっとだけ」


 いつも通りの友人に安堵の息を吐くリエナ。

 そんな2人の前へゆっくりと下りて盾になるジン。その手には先端に光の刃が作られていた。


「っ・・・!」


 串刺しにされ、消滅する自分の片腕。

 更に、2つの脅威に挟まれた状態に汗が止まらない。

 僅かに翼を動かすが、思った以上に鈍く、そして重い。脱出の退路も断たれ、絶望的な状況だった。


「(ワタシが・・・?)」


 この時初めて、死を予感した・・・だが。


「おい」「・・・?」


 理解するよりも先に、低く冷たい声を掛けられた。

 恐怖に引き攣る顔でゆっくりと顔を上げる。


「・・・分かってるな?」


 見下ろすその大きな両目。それを見た瞬間、子爵悪魔は完全に委縮してしまう。


「ワイらへの杜撰な召喚に言動。・・・あまつさえ・・・!レディに対しての暴力・・・!・・・落とし前を払えよ?」「あ・・・あ、あっ・・・!」


 体が震え思う様に口が動かない。しかし、そんな事など・・・オメロスには知った事ではない。

 何もしていないのに体が金縛りにあったかのように動かず、ただ見上げているだけの悪魔。

 その悪魔の遥か上空に・・・ゆっくりと巨大なたこ足が1本上がっていく。


「は・・・あ・・・ああ・・・」


 恐怖に涙が出てくる。だが、その大きな足から目を離す事が出来ない。


「供物は決まった」「ぁ・・・あ・・・」「アナタよ」「っっっ・・・!」


 ズドーンンン・・・!


 ヒトデの冷たい言葉が言い切ると同時に振り下ろされたタコ足。

 子爵悪魔が悲鳴を上げる暇すらなかった。

 窪んた地形、僅かに飛び散った血の跡。それ以外に悪魔が存在した痕跡は何も残らなかった。



「えっと・・・なにあれ?」「(フルフル)。知らない」


 ちょっとだけ落ち着いてきたリエナとパミル。2人は初めて見る召喚獣、オメロスの存在に驚き、固まっていた。


「・・・」「終わったわね」「契約は不履行ってことだな」「もともと受ける気なかったくせに」「だって勝手に呼ばれたんだもん。仕方ないじゃん」「はいはい。今回は仕方ないわね。・・・で、それはそれとして・・・」


 巨体を動かし、確認するのは小さな子供・・・ジンである。


「・・・どうするの?戦う?」「う~ん・・・」


 別に今更争う理由もないため、器用に腕を組んで悩んでしますオメロス。


「帰ってもいいんじゃない?」「それで許してくれる?」「それは・・・」


 チラッと見た少年・・・は、いつの間にか手ぶらになって、こちらの様子を見ている。


「(あ、いけそう?あいや・・・でもな~・・・)」


 何だかんだで、それなりにやり合っていた両者。このまま大人しく引けるのか怪しいという考えが浮かんでしまう。


「・・・たぶん、大丈夫・・・じゃない?」


 ヒーちゃんの言葉にやっぱり?と思いつつ、組んだ腕を解く。

 その時だった。


「ジ・・・ジン君・・・あれは?」「見た事ない・・・」


 オメロスに警戒しつつもジンの方へと近づいて行くリエナとパミル。

 先ほどの、怒りのままに動いていた時と違い冷静になっているオメロスは2人の美少女をしっかりと両目で捉えた。軟体の体とは思えないくらいの勢いでギョロっと頭部を動かし、ジンへと駆け寄る彼女達を捕捉する。


「・・・オメロス?」


 友達の呆れた声が耳に入らないほどに、2人の女の子から目を離さない。

 そんな中、ジンの傍に到着したリエナとパミルが改めてオメロスを見上げる。


「これってモンスター?」「・・・正確には異界のモンスター・・・。召喚獣?って言うんだって」「本で読んだことがある・・・!これが・・・」「色んな生物がいるって話には聞いた事あるけど・・・」


 少し興奮しているパミルとちょっと興味を持ってみるリエナ。


「・・・?な、なに?」「?」


 突然、こちらを凝視していた召喚獣が顔を・・・目を隠す様にタコ足を動かす。


「どうしたの?」「さあ・・・?」


 もはや、敵意が無いのは両者も分かっている。だからこそオメロスの行動が気になり、まじまじと見てしまう2人の少女。


〔ああ。これは・・・〕「(?何かわかるのか?)」(えっ!教えて・・・!)〔いや・・・まあ、そうですね〕


 何とも言いづらそうに言葉を濁すサポート。


「・・・ちょっとオメロス」「えっ?今どこから?」「ん?あそこだよ?」「・・・化石?」「誰が石ですって?ちゃんとした生物よ」「うわっ、ホントに喋った」「ふしぎ発見・・・」「・・・(やり辛いわね)」


 驚くリエナに、目をキラキラさせているパミル。

 2人の純粋な反応と目に・・・流石のヒトデも先ほどまでの高圧的な態度が取れなかったようだ。


「ちょっとオメロス、さっきから何をやってるの」


 それよりも気になるのはオメロスの態度だった。


「あ・・・いや。こんな可愛いお嬢さん達とは思ってなくて・・・」


 僅かに照れくさそうに手?をのけて頭に持って行き、掻く動作を取る。


「・・・」(え?どうしたのジン?)〔・・・分かり易い〕


 ここまでくれば流石に分かるモノで、半眼になってしまうジン。

 そんなジン達を置いて、気持ち?なのかキリリとした引き締まった目を?したオメロス。

 器用に2本の足を動かしリエナとパミルの方へと持って行く。一瞬だけ警戒する彼女達だが、すぐに解いた。

 巨大なたこ足のその先端には小さな花が1本ずつ・・・。


「フ・・・お付き合いを前提にお友達になりましょう・・・」


 低く落ち着いた声。

 オメロスの中では、片膝を付き、花を少女達に差し伸べているイメージなのだろう。


「「・・・っ~!!」」


 それに対し、無意識に寒気を走り背筋をゾクッとさせた2人の女の子。

 深いため息がヒトデからハッキリと聞こえるが、オメロスには届いていなかった。

 返答を待つまでジッと止まり、切れ目とも言える目をずっと維持していた。流石にこのままではマズいのではという空気が出始めた頃・・・。


「ちょっとオメロス。引かれてるわよ」


 友達のヒトデが言葉を掛けた。


「そんな事ないさ。ただ・・・いきなりの事に戸惑ってしまってるだけさ」「・・・確かに困ってるわね」


 強調する様に花をより目の前に差し出されるリエナとパミル。

 お互いを見て、どうすればよいのか反応に迷っていた。答えは出ているが、色んなことがいきなりだった為、返答に困っている。2人の少女は、前にいる少年の後ろ姿を見ていた。

 流石のジンも間に入ろうかと思った時。


「・・・あのね、オメロス?」「?」「彼女達。・・・アナタに気はないわよ?」「いや、まだ始まって──」「それ以前の問題。全く気のない相手からの積極的アプローチって・・・。行き過ぎればストーカーになるわよ?」「そ・・・そんな事はないさ」「その口調も止めなさい。似合ってないから」


 震えるたこ足。それを無視してハッキリと告げられる言葉。


「女となればすぐに声を掛ける・・・。アタックするのは構わないけど・・・。もう少しは女性というのを知りなさい」「そんな!これほど世の女の子の事を思っているのに・・・!」「その言い方も止めなさい。異界でも問題になりかけてたでしょ」「あれは、彼女達が困ってたから」「都合よく利用されているだけでしょ!」


 紳士然を決めていたオメロスは瓦解。あっさりといつも通りのような会話が始まった。


「えっ・・・と、何?」「・・・痴話ゲンカ?」「ははは・・・」


 乾いた笑いしか出ないジンだった。


「だからもう、諦めなさい」「いや最初は嫌っていても、それは照れ隠しであって・・・」「だったら、もう一度確認してみなさいよ」「いいよ」


 売り言葉に買い言葉。

 向き直すオメロスが改めて、声を掛けようと喉の調子を整えて目を向けた時だった。


「っ・・・!!」


 声に成らない声が出た。軟体のはずの体がまるで凍った様に固まっている。


「ほら見なさい」「・・・」


 言葉も出ない。だが視線も逸らせない。

 2人の美少女が少年の服の裾を掴んで隠れる様にしている姿を・・・。目が離したくても離せない。

 拒絶しようとしても理解してしまう。


「・・・(・・・いや!まだだ)」


 しかし・・・再び目に闘志を宿し再アタックを仕掛ける。


「・・・どうでしょう?お友達から・・・」


 自分なりに歩みの慎重に考えて出た言葉だった。自画自賛してもおかしくないくらいの気持ちを抑え、2人の可愛らしい花達の返事を待つ。


「え、ちょっと・・・ごめんなさい」「(コクリ)」


 驚きの目をするオメロス。その顔が``どうして?!``と言っている様に見えた。


「えと・・・普通にキモ・・・ごめんなさい」「ムリ・・・」「・・・・・・」


 失礼な言葉を吐きそうになったリエナ。慌てて口を抑えて、すぐさまお断りの返事を言い直す。

 それに対してパミルは直球で拒絶。

 ハッキリと断られた事で今度は化石の様に固まるオメロス。


〔器用なものですね〕


 サポートの他人事がジンの脳内に哀しく届いた。






 【ジン・フォーブライト(純、クリス)】8才 (真化体)


 身体値 50

 魔法値 50

 潜在値 50


 総合存在値 100


 スキル(魔法):干渉、棒術 1、マナ零子 1

 おまけ


オ「美しく、可憐なキミ達だからこそ・・・この花は似合う・・・(キリッ)」

リ・パ「「・・・」」

ジ「?2人とも可愛いけど?」

リ・パ「「・・・(テレ)」」

オ「なんでじゃい!」

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