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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
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292 その香りに誘われたのは・・・?

「(・・・身体がジンジン?・・・ううん。ビリビリする。何これ?)」


 ・・・フワフワと気持ちいい感覚がした・・・。


 でもそれと同時に邪魔する様な・・・痛いって程じゃないけど気になる振動も感じた・・・。


 ・・・それも最初はどうという事はなかったが・・・。


 やがて・・・。


 ハッキリとした痛みへと変わってきた。


「ううっ(ちょっ、何よ・・・!ちょっと・・・。ホントに・・・。っ!・・・ホントに・・・、・・・ッ!!)・・・痛いじゃない!」


 そう叫んだ瞬間。急に体が軽くなった気がし、いきなり目を覚ました。


「・・・ええ?」


 ワケが分からず左右を見る。ついさっき一瞬、誰かが謝った様な声を聞いた気がしたがそれ所ではなかった。


「何で玄関にいるのよ?」「・・・たっ!」


 不思議に思ていると後方から、声が聞こえて振り返る。


「パミル・・・!」「?・・・??、ここ、何処?」


 若干、涙目になり、また頭が働いておらず反応が鈍い。少しずつ周囲を理解し始めた彼女。その目が徐々にいつも通りの半目に近い形になる。


「む?・・・リエナ。どうして玄関?」「わ、私が聞きたいわよ」


 困惑する彼女はそれでも周囲を探ろうと目を走らせる。


「・・・ここって宿の玄関よね」「・・・そう(コクリ)」「夜中だし、お店の人も寝てると思うんだけど・・・」


 そう言いつつ、玄関の先。外が気になるリエナ。それはパミルも同様。


「・・・何でこんなに静か?」


 可愛らしいフードを被った頭で首を傾げるパミル。

 そう本来ならもう少し人の気配がしてもおかしくはない。例え、夜で寝静まってるとしても・・・ここ最近の行方不明事件を考えると明らかな異常である。


「パミル。ガジェット兄とベラールは?」「・・・探してくる」


 言葉短めだがお互いに何を求めているかすぐに理解し、それぞれは行動に移った。

 リエナはパミルが階段を上がって見送らず、ゆっくりと宿の玄関を開け、外を確認。


「・・・」


 そして、誰もいないと分かるとすぐ近くの馬車へと向かった。ここには非常時用に2人ほど騎士が傍にいるからだ。ついでに旅用の道具・・・。こと戦闘に必要なアイテムをしまってあったりするからだ。


「・・・!(寝てるっ!でもこんな音を立てれば・・・)」


 リエナは隠密に向いた動きをしていない。子供かくれんぼくらいのものだ。だから、必然と訓練された騎士なら違和感を察知するくらいの音を立ててしまっている。それも目の前に来るまで・・・。


「(どうして・・・!)ねえ、起きてっ・・・!起きなさいっ」


 声を掛けても反応しないため、イライラしたリエナが男性騎士の頬をバシバシと叩く。


「?・・・??・・・???」


 どんどんと顔が赤く、というかハッキリと張れ上がっていく。思った以上の力が入っているがそんな事を気にするほどリエナも余裕がなかった・・・が。


 ドスン・・・!


「・・・イィッッッッテェェェ・・・!!!!」


 宿の中から鈍い音と大きな声にハッと我に返るリエナ。


「あ・・・」


 自分のやってしまった事に僅かに冷や汗を掻いてしまう。目の前の男性騎士の顔は頬だけでなく唇も明らかに腫れぼったくなってしまったからだ。


「あ、あはは、あははははは・・・」「?」「??」


 心の中で謝りつつ、覚醒し始めた騎士達を何事もなかったかのように見守るのだった。



「~~~っ・・・っつ~、まだガンガンする」「これが最善。手加減もした」「何処がだよっ!」


 頭を押さえ若干、ヨロヨロしながらもベラールがリエナ達の傍に立つ。


「皆は?」「ガジェット兄さんが、起こして集めてる」「・・・非常事態の様だな。・・・ってジンは?あいつなら起きてるんだろ?」「「・・・」」


 リエナが厩舎にいる騎士を。パミルがベラール達を起こすと真っ先に向かう場所は決まっている。本来なら最初に向かう所を前回の反省を踏まえて彼等の方へ先に向かったのだ。


「・・・ダメだ。見つからない」「?ガジェ兄、どういうこった?」「子供達がいないんだよ。協力して、起こした村人に探してもらったんだが・・・」「・・・おい、まさか・・・」


 そこでようやく気付いたベラールが、オイルの切れかけた人形の様にぎこちなくリエナ達の方へと振り返る。


「・・・いなかった」「・・・」「「・・・」」


 その言葉は思った以上にベラールとガジェットに重くのしかかった。


「あ、あいつが行方不明に・・・なった?」「「・・・」」「いやいや、だとしてもアイツならなんとか──」「ベラール」


 暗くなっていく2人の少女。沈黙が余計に空気を重くしていく。


「で、でも~・・・。どうして急に、こんなことが?」


 何とかこの空気を換えようと話題を振る女性騎士。

 それにガジェットも乗った。


「前からあったとは聞いていたが・・・。まさかこのタイミングで・・・」


 苦虫を嚙み潰したような顔をしていた時だった。

 捜索していた騎士と村人数名が帰って来たのだ。そして代表にもう1人の女性騎士が報告を上げる。


「ただいま戻りました」「どうだった?」「周囲には見当たりませんでした。わずかに子供の足跡があった事から村の外に出たのではないかと。ただ・・・その姿を誰も見ていません」「他には?」「残っている子供の数は若干名。今回でおよそこの村の8割方が行方不明となりました・・・」「・・・そうか」


 報告が余計に周囲の空気を重くしてしまう。村人に至ってはもはやこの世の終わりのような顔をしていた。涙を浮かべる母親達の姿もある。

 っと、そこへリエナ達から少し離れた所で騒ぎが起こっていた。


「待て・・・!落ち着くんだ。1人で行ってどうする?!」「離せっ・・・!俺は1人でも探す。このまま子供達がいなくなったままでいいのか・・・!」「落ち着けゲルノース。探すにしてもどうしろと」「そんなの足跡があった場所を辿って──」「攪乱の為か、踏み荒らされた場所をか?目的もないまま探したって見つかりはせんぞ」「だったらこのままでいいのかよ!」


 村長に止められ、村人に後ろから羽交い絞めされながらも、暴れようとするゲルノース。


「目的地だって。よく子供達が言ってた──」「そこに城なんてない事は朝も夜も調べた俺達も見ただろうが!」「だったら何処に行きやがったんだよっ!!」「落ち着け。お前達が争ってどうする・・・!」


 ほとほと困り果てたのか大きく息を吐く村長。


「(どうすれば・・・)」


 ガジェットもどうすればいいのか分からず、悔しそうに唇を噛んでしまう。それはベラールや他の者達も一緒だった。・・・とそこへ。


「?・・・どうした?お前等?」


 目の端でリエナとパミルが動いたのに気付き声を掛けた。

 それは村の脇道。森に向かって進む方角だった。

 慌てて注意するつもりで声を掛けたベラールだったが、不意に2人はしゃがみ込んで何かをしている。


「・・・一体どうしたんだ?」


 気になったベラールが近づくと、ガジェット達もそちらへと視線を向ける。

 暴れていた村人達もたまたま視界に入り同じくそちらへと目が移っていく。

 そこへリエナが手を突き出して見せた。


「おわっと、あぶねえな!」


 急に来るもんだからぶつかると思い仰け反ったベラール。しかしリエナはそれ以上動かず。何かを示そうと真剣な目になって手を・・・指に掴んでいる何かを見せる。

 それは・・・淡く光る木の実。


「・・・何だよ?」


 理解できずベラールがどう反応していいか困っているが、村人達は違った。


「そ、それは・・・!あの花の・・・。蜜を吸った豆か・・・!」「味付けしただけで光るなんて・・・」


 理解できないが初めて見る事なのか、困惑する村人達。


「そ、それがどうしたって言うんだよ」


 代表する様にベラールがリエナ達に聞いた。それに対してスクッと立ち上がった2人は反対の・・・森の先を見つめる。


「・・・私じゃちょっとしか・・・。どうパミル?」「・・・気配は分からないけど・・・確かに、少しだけこの豆みたいにマナがある・・・気がする」「おい、オレの話を──」「待ってベラール」


 肩に手を乗せて制止したガジェットがゆっくりと彼女達の方へと歩み寄る。


「・・・何か分かったのかい?」


 出来るだけ優しくいつも通りに問いかける。

 その行く末を黙って見守るベラール含め村人達。


「何となくだけど・・・この豆、かなりのマナが含まれてるの」「(コクリ)私達が食べた時よりも、明らかに多い」「・・・それはどういう?」


 その言葉に確信は持てず、首を振ってしまうリエナだが・・・。それでも考えを変わらないのかゆっくりと振り返りガジェット達の目をハッキリと見て答えた。


「たぶんだけど・・・ここにはジン君が込めたマナがあるんだと思う」「(コクリ)」


 それは、以前マナについてレクチャーをしてもらった時。僅かにジンから漏れたマナを感じ取ったリエナとパミルだからこそ分かるほんのわずかな、その者が持つ専用の力。DNAのようなモノだった。


「・・・それを追えばいいんだね?」「「(コクリ)」」


 面倒な会話を省き、首肯する事で答えた。


「よし。ベラール」「おう?」「僕と君と騎士数名。後案内人に誰かを連れて2人に付いて行くぞ」「え?それはどういう・・・」「彼が残してくれた道標だ」「!、・・・分かった!」


 迅速な連携と対応で編成はすぐに組まれ、森の先・・・道標を追ってリエナ達はその先にいるであろうジンの下へと急ぎ向かうのだった。


 ・・・・・・


「(・・・で、何時までというのは・・・もういいか)」〔目的地は大体予想できてましたしね〕


 体を(わざと)支配されているジンは少しだけ普段とは違う不便さにむず痒くなってきた頃・・・それは姿を見せた。


「(・・・でっけー城・・・!)」


 それが小並だがジン(純)の嘘偽らざる感想だった。


 目の前には昼間に訪れた湖。

 その湖の上には、子供達が言うようなガラスとも宝石とも言えそうな薄く水色に反射するお城があった。

 湖に入る縁から職人が作った様な石作りでもしたかのような階段と足場の道が城へと向かって伸びていた。


〔・・・分かり易いくらいの幻想的な景色ですね〕


 ジンの心はその景色に魅入られキラキラしてしまいそうな程、感動していた。

 しかし、今は操られている身。その為、表面上は目に正気がない感じを貫いている。


「(・・・。誰が招いているのやら・・・)」


 独りでに開いた大きな両扉の門。しかしそこから誰かが出てくるような気配はない。


「「「・・・」「「・・・」」」


 先頭の子供が迷うことなく湖の上に出来た階段を上り城へと向かいゆっくりと歩き出す。続く様に後続の子供達も続いていた。もちろんジン達もその後に続く。



 ペタペタ、ペタペタ・・・。


 子供達の足音だけが誰もいない空間に響く。


「(・・・気配が少ないな・・・。う~ん、ゼックンの話からもっと多いと思ったんだけど・・・)」〔可能性として挙げられるのは・・・精霊系でしょう。私達は幽霊やマナの存在をある程度、知覚、対処出来るようにはなりましたが・・・。それでも、微弱な存在や小さなモノ達にまで細かく認識できるほど、まだまだ能力が育っているわけではありませんからね〕


 サポートの説明にフはジンが意外に感じた。


「(へ~・・・その口ぶりだと・・・)」〔む・・・。あくまで今だけです。そう・・・現在(いま)だけです〕


 強調する様に言う相棒。ジンの発言に悔しさが滲み出ているが・・・敢えて追及はしない。


 周囲を観察しつつ、そんな他愛のない話をしていると徐々に物々しい鎧の置物が見え始めてきた。


「(・・・中身は?)」〔今の所は感じません・・・が、微力なマナと・・・魔術。魔法陣でしょうか?が組み込まれているようですね〕「(動き出すって事ね)」〔でしょうね。・・・今は周囲を観察しつつ、機会を待ちましょう〕


 目的地に向かってゾロゾロと歩く子供達。その先へは間隔を狭めてモンスターの石像や鎧が置かれていた。


 ・・・そして。


 ガコッ・・・!ギギギギギギギギギギ・・・・・・。


 またしてもゆっくりと開く大きな両扉。その室内から僅かに冷気が漏れてくる。


〔数は小さいのは複数・・・大きいの数はわずか3。・・・ですが・・・〕「(うん。ちょっと事情があるね)」


 ジンにも、何かイヤらしく負に満ちた様な気配と何か不安定に揺れるマナの気配を感じ取っていた。

 大きい存在だからこそ、その揺れはとてもジン達には分かり易かった。


 パチパチパチパチ・・・。


 子供達が入ってくると2つの拍手する音が、招かれた大きな部屋に響く。


「ようこそいらっしゃいました・・・♪」「あなた方の来訪。心よりお持ちしておりましたよ?」


 そう言って歓迎したのは貴族服を来た・・・悪魔(・・)と言えるような存在だった。


 角は生えていないが、その紫と赤い目。また人よりも大きく裂けた口と翼や尻尾がとても分かり易かった。片方は尻尾をもう片方が翼を持っていた。


〔種は違うのでしょうがおそらく同じ存在です・・・〕


 サポートの声を聞きつつ、目の前の青い挑発の女性を見た。少し長めの耳に同じく綺麗に輝くサファイヤの瞳が特徴的。また僅かに、人間の大人よりもほんの少し背が高そうな印象を受けた。

 玉座のような少し豪華な椅子に座っている為に正確な所は不明だが・・・。


 その女性の子供達を見る目は憂いと後悔があるようにジンには感じられた。


 そして女性が何かを口に出そうとするよりも早く、両脇に立つ翼の悪魔が言葉を発した。


「さあさあ。ここに集まって来た・・・」


 といって少しだけ声を高く表向き明るくしていた翼持ちの悪魔は、仰々しく掲げていた両手をだらりと下げる。


「と言っても・・・。お前達には聞こえてないんだったな。だったら能書きはもういいや」


 さっきまでのテンションが打って変わり低く、そして腹の底から来るような暗い嗤いを発しそうな声で女性の方へと視線を向けて、声を掛けた。


「さあ~、女王・・・分かってるよな?」「っ・・・!」


 綺麗な顔が明らかに悲痛な面持ちになるが、悪魔たちは気にしない。

 と、そこへ下から覗き込むように近づいた尻尾持ち悪魔が近づいた。


「女王・・・早くしてください?さもないと・・・子爵も」「・・・わ・・・わかって・・・ます」


 震える唇。気丈に振る舞う事が出来ず弱弱しく悪魔達に従う女王と呼ばれた女性。


「女王」「女王・・・」


 いつの間にか、周囲には小さな光の玉がいくつも浮遊していた。

 よく見ると可愛いワンピースやタンクトップに羽を生やした者もいる青い髪の小さな存在がいた。


〔気配からしてアレは妖精・・・。精霊の一種ですね〕「(その女王は脅迫されている。・・・でも何に?)」〔・・・見つけました。遠く微弱ではありますが城の各所の部屋・・・。隠し扉でしょうか。そこに妖精と先に攫われた子供達がいるようです〕「(すぐに動いても大丈夫か?)」〔・・・いくら魔法などによって早く撃破したとしても。あの通路にあった鎧達は・・・〕


 その為に身動きが出来ないのかと納得したジン。一瞬、目に生気を宿しそうになり、慌てて力を抜いた。

 その一瞬に反応した翼持ちが子供達の方を勢いよく振り返る。


「子爵様・・・?」「・・・いや、何でもない。それより」「はは。女王・・・!」


 脅し浸ける様に大きめの声で尻尾持ちの悪魔が発すると、ビクッと反応しながらもゆっくりと手を前に翳した。


「女王・・・」「女王様・・・」


 悲しい表情を見せる妖精達。そんな自分の大切な子供達や目の前の子供達に柔らかく・・・そして細い声で声を発した。


「ごめんね・・・。大丈夫・・・。っ・・・すぐ、終わるから」


 震える唇から精一杯の懺悔とも言える声が聞こえた。


 そして女王が手を翳すと同時に子供達ジンもがその場に跪き、手を組んでお祈りのポーズを取った。

 それと同時に四角とひし形の二重の簡易とも言える魔法陣が展開した。また魔法陣の中から、独りでに魔力の一部が次々に上昇し、弧を描いて落下。そのまま床に組まれた魔法陣の中へと入っていた。

 キラキラと湧き上がる魔力も次々と、同じく床の中へと吸い込まれていった。


「(・・・何処へ行く?)」〔これは・・・。我々の体内に宿ったマナが次々に地下深くに送られています〕「(場所は?それに・・・このままでは)」〔分かってます。・・・深い・・・特殊な空間ですね。・・・見つけました。ここより数百メートルほど下に、別の魔法陣が組まれています。何かを召喚というよりもこれは・・・〕「(そんな事言ってる場合じゃないぞ・・・!)」


 ジンが僅かに焦りだす。それは、体の小さかった女の子と男の子の生気がどんどんと失われ、今にも死にそうな状態に見えたからだった。


「(これ以上は・・・!)」


 そう言ってジンがお祈りのポーズを解こうとした瞬間。


「もういいでしょう・・・!」


 先ほどよりも気丈に振る舞いつつ、女王が魔法を解いた。

 消えゆく魔法陣、バタバタと一部の倒れる子供達。


「・・・女王。何をやっているのです?まだ子供は起きてるじゃありませんか?」「・・・」「そうです。死なない程度まで搾り取る。それが条件だと何度言えば──」「分かっています・・・!・・・それでも・・・これ以上は・・・」


 みるみると力が抜かれ、土気色になっていく子供達に女王は耐えきれなかった。


「「・・・」」


 そんな女王を冷めた目で見る悪魔達。


「(ボソ)そうですか」


 小さな独り言だが思った以上に静かな空間に、その声は響いた。

 女王から視線を外した子爵と呼ばれた翼持ちの悪魔。ゆっくりと1人の跪いた子供の傍へと歩み寄っていく。

 その手には魔力で作り出したのだろう1本の太い剣を携えて。


「な、何をするのですっ・・・!」「私の契約を先に反故したのはアナタです女王。・・・だったらその肉体も魂も我々の為の供物に」「十分なマナは支払ったはずです!それを・・・!先に子供達を攫って来たのはそちらでしょう・・・!」「足らないんですよ、女王・・・。ガキの一部を咲いた花から僅かに吸収するのでは・・・」


 舌なめずりでもしそうな程、顔を近付け舐めまわす様に見る尻尾持ちの悪魔。


「もともとそれでは少なかった。だからそこに居る羽虫共を──」「約束さえ守れば、村も子供達をあの子達にも手を出さないと言ったのは貴方達でしょう!大体──」「だったらどうします?」「!」


 子爵悪魔が剣を子供の首に沿わす。その瞬間、息が詰まった女王。


「・・・あなたが犠牲になってくれますか?」「っ・・・!」


 目の端に涙を浮かべながら悪魔を睨みつける女王。


 ・・・怒りに震えていた体から力を抜き、イスに預ける。

 そして・・・小さな声で返事を返す。


「・・・ええ。良いでしょう・・・。それで全員が助かるのなら・・・」


 女王が諦めて、その言葉を発した瞬間。今まで隠していたマナを解放する様に、濁った魔力を迸らせとても嬉しそうな顔をしていた。


「・・・あなたがそれで良いというなら・・・」「イッヒヒヒヒヒ」


 建前上、嬉しさを隠しているつもりの子爵悪魔と、音程が上下無茶苦茶で揺れながら隠す気もなく笑う尻尾持ち。


「(・・・ああ。ここまで・・・。ごめんなさい。結局私は誰も・・・)」


 ゆるゆると弱弱しく手を伸ばし、近くまで寄って来た妖精を慈しむ女王。涙で滲む目でお別れをしようとする。そしてその視線は目の前の子供達にも向かう。


「(私のせいで・・・。どうかあの子達をお救いください・・・。・・・神様・・・)」


 本当に諦めたと分かった尻尾持ちが、子爵悪魔と同じように槍を生成する。


「イヒヒ♪」


 そして引き絞り、女王の胸目掛けて的を絞った。


「さあ・・・。・・・殺せ!」


 ドガアアアアアアンンン・・・・・・!!


「「っ!」」「え?」


 子爵が命令を下した瞬間にどこかで大きな爆発と衝撃音がした。


「何処からだ!」「え?あ・・・わか、わかりません・・・!」


 突然の出来事に、急速に不機嫌になり始める子爵。尻尾持ちの悪魔はどうすればいいのかすぐに反応が出来ず混乱している。


「ええい!お前も行って──」


 言葉を発し始めた違和感が、体を動かそうとした時、確信に変わった。一部が全く動けないと気付くとすぐさまそちらへと顔を向ける。

 子供に沿わせていた剣が全く動けなかったのだ。


「・・・よかった。これで戦えるな」「!」


 ゆっくりと顔を向け、言葉をハッキリと発した少年の顔に驚き、立ち退くよりも先に顔面を殴られて壁の向こうへと吹き飛ばされる子爵悪魔。


「な、ななな・・・」「そっちもだ」「がべぇっ!」


 膠着していた尻尾持ちもガラ空きだったお腹を蹴り付けられ壁の向こうへと吹き飛び、叩きつけられる。

 驚いていたのは女王も同じだった。


「あ・・・あなた・・・」「いや~・・・思った以上にしんどかった~」


 女王の声が聞こえてないのか体を回し、肩を慣らそうとする子供。


「さ、反撃と行こうか」






 【ジン・フォーブライト(純、クリス)】8才 (真化体)


 身体値 50

 魔法値 50

 潜在値 50


 総合存在値 100


 スキル(魔法):干渉、棒術 1、マナ零子 1

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