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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
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287 荒れた天気模様・・・?

「おっす~・・・。昨日は楽しかったか?♪」「・・・んあ?」「やけに、眠そうだな。あんまり眠れなかったのか?」


 起きて、そうそう洗面台としてテント内に設置された場所でベラールが話しかけてくるが・・・ジンのはまだ寝足りないと分かるほどしょぼしょぼとしていた。

 洗面台のすぐ後ろに土魔法で巨大なタンクと管を作り。そこに水を生成し、一部を外へ流す事で循環。管の一部を等間隔で設置し、蛇口を作っている。後は栓を捻るだけで水は出てくるという仕組みだ。


 じゃぶじゃぶと魔法で用意された水で洗い、近くに掛けてあったタオルで顔を拭く。


「ん~・・・。なんか最近、寝ても寝ても寝足りない感じで・・・」「アイツ等に起こされたんじゃないのか?」「・・・起きたら抱き付かれてはいたよ?とりあえず抜け出してきた」「・・・慣れてるんだな」「朝に、いきなり反応は出来ない」「・・・なるほど」


 微かに笑ったベラールも歯を磨くためにジンの横へ。

 歯磨き粉を付けてガシガシと少し乱暴に磨き始めた。


「ふぉれで・・・みんなふぁ?」「まだ寝てるよ。たぶん遅くまで話し合ってたんじゃない?」「ああ~・・・」


 ベラールもこれに関しては分かっているらしい。


「ガジェットは?」「さっき、ふぇんふぇんのほうふを見てふるって・・・」「・・・やっぱり。昨日、ユティ先輩達が言ってた様に、数が増えちゃったりするのかな~?」「・・・ペッ。そうなんじゃないか?まだ朝も早えっつうのになんかピリピリした雰囲気だったからな。・・・ガラガラガラガラ・・・」

「(本格的なスタンピードが始まるのか・・・)」〔今の所は、遠くの方でモンスター達のマナを微かに感じ取れるくらいですが・・・動きは無いようですね。てっきり夜襲をしてくるかと思っていたのですが・・・〕「(生活リズム?それとも何かを待ってとか?)」〔何とも言えませんね。まだ十分な数が集まっていない為とも言えます。しかしその場合、モンスター達には数という事を認識できる知性があると考えられますが・・・)」


 顔と若干、髪や服に付いてしまった水を拭うと首に掛けて、テントの外・・・僅かに見える入口の隙間から遠くを見る。


「・・・(な~んか面倒な事が起こりそうな感じだな)」〔ええ。雲行きが怪しくなってきそうです〕


 ただの直感だが、ジンとサポートは黒い暗雲が増えていく外の天気模様から嫌な予感を感じていた。


 ・・・・・・


「・・・一雨来そうね」「ええ~・・・。濡れるの嫌なんですけど~・・・」「じゃあ、お前だけテントに戻るか?」「ヤダ」


 嫌がるリエナにからかって笑うベラール。


「・・・仕方ない。念のため傘かレインコートでも用意するか」「お願~い」


 ナルシャが、日用品等の用意されたテントへと向かっていく。


「(どの世界でも、似た様な雨具ってあるんだな)」〔馬車などもそうですが・・・。雨の中でも動かなければならない以上、自然と発明されたのでしょうね〕「(用語自体は?これは俺の脳が勝手にそう解釈しているのか?)」〔専門用語としてあるのかもしれませんが・・・調べる必要はないでしょう。用途は同じなのでしょうから、どちらでもいいのでは〕「(そんなもんか・・・)」


 ジン(純)がこの世界に来て約3ヶ月。

 日用品として使われている物が地球と似た様な物ばかりのこの世界に、やはり同じ考えを持つ人がいるんだなぁと何度も実感していた。おかげで生活としては、快適な方ではある。

 魔法と言う便利な力もある事で、本来のアウトドアよりもかなり楽なのでは?と思っているからだ。


「・・・こんな中で前線って・・・まあ湿地帯だから汚れるのは一緒か・・・」「(コクリ)・・・。たぶん後で、魔法で落とすんだと思う」「かぁ~・・・色んな魔法が使える奴らは羨ましいぜ」「?、ベラール君は出来ないの?」「いや、出来なくはないが・・・そう言った細かな作業にはあまり向いてないんだよ」「ぷふ・・・ベラール。何を赤くしてるの?」「うるさい。お前も似た様なくせに」「はあ~っ?!私はちょっと魔法が攻撃に寄ってるだけよ。別に問題なく使えるんですけどぉ?」「はっ、どうだが・・・」


 ベラールの反応にますます噛み付く様に怒っているリエナをパミルとガジェットが抑えていた。


「・・・あなた達は、とても仲が良いのね」「冗談じゃないわぁ!こんな単細胞・・・!」「はあ~っ?!それはお前だろうが。いつもいつもフォローしている身にもなりやがれ」「まあまあ2人共・・・。(そもそも、そのフォローをしているのは僕なんだけど・・・)」「リエナ。ベラールとケンカしても疲れるだけ・・・」「・・・はぁ。そうだったわね」「ちょっ・・・。(俺が悪いのか?)」「うっふふふふふ・・・。(本当に仲が良いのね)」〔・・・こうやって学園でも生活を送っていたのでしょうね〕


 サポートの言葉にジンはその光景が容易に想像できたのだった。


 ・・・・・・


 案の定。ユティの予想通り、雨が降り始めた。

 それはジンも雲の精霊にあたるゼックンからの報せでも分かっていた。

 ジンは少し雨合羽を着るのも面倒だと魔法で上空に少し大きめのシャボン玉を生み出す。柔軟性を活かした巨大な傘だ。


「すみません。持って来てくれたのに」「構わんさ。戦闘になれば嫌でも着るか、濡れるのを覚悟で戦うしかないだろうからな」「・・・お前って便利だな」「ちょっとジン君にそんな言い方しないでよ。ジン君、ベラールの所だけ濡らして」「え?ん」「ちょっ、悪かったって。っていうかホント器用だな」


 コントロールしてベラールの所だけ穴を開けると、謝りつつ急いで塞いでいるシャボン玉の中へと避難する。


「でも大丈夫?こんなに大きな魔法を維持して・・・」「遠くに行かなければ問題はないですよ?(正直、あまり魔法を使っている感覚が無いし・・・)」〔私が極少量で使用していますからね。持続も問題なく。攻撃とは違い、一定の空間に保持するだけなら魔法は周囲のマナでいくらでもカバーできたりしますからね〕「(ソーラーパネルみたいなもんか)」〔充電しながらですから。ある意味そうですね。何なら範囲を少し伸ばしてみますか?〕(うわああ~~・・・テントの中みたい・・・)


 薄くシャボン玉を伸ばし、器用にジンを中心に近くのテントまで疑似建物の様な見えない空間を作っていくサポート。その光景を外で見ていた者達。たまたまその範囲内に入った者達が不思議そうに半透明な屋根を見ていた。


「とまあ、こんな感じなんですが・・・。この周囲だけに絞っておきますね」「ふ・・・その方が良さそうだな」「・・・せっかく綺麗だったのに~・・・」「残念・・・」「ジン。コイツ等だけ。俺の様に濡らしてくれ」


 その言葉に噛みつく様に睨むリエナとパミル。それを少しだけ笑いながら止めるガジェット。


「でも、コレがあるだけでも助かるわ・・・。この魔法、雨を弾いてくれてるけど・・・遮るわけじゃないのね」「落ちてくる水で、完全に視界まで隠されてたら意味がありませんしね」「ふふ。それもそっか・・・」


 一部に集まった水が誰もいない空間へと落ちていくようにサポートが操作しているので問題なし。

 という事で、ジン達は少しだけ向こうで始まった何回目かの戦闘音を聞きながら、後方の仕事が来るのを待っていたのだった。


 ・・・・・・


「ん~・・・今日も順調そうね~・・・」「の様だな。・・・初めてなんじゃないか?」「私達が参加した時は毎回1日に1,2回はあったからね~。・・・今日の参加者は優秀な生徒と指揮官が多いのかしら?」「一応、湿地帯のマナに合わせたメンバーは揃えているだろうしな。後は個人の実力だな」「相性が悪くても、その人の実力と戦い方次第ですね」「そうだな。まあ・・・どこかの誰かさんはそれを無視しても色々とやりそうだが・・・」「「ああ~、確かに・・・」」「「む、どういう意味?」」


 ナルシャとパミルが合わさった言葉に、分かり易く反応を返すユティとリエナ。

 昨日の今日ですっかり仲良くなっていた。そんな4人に苦笑で返すジンとガジェット。


「まあまあ・・・。ベラール、変な言い方をするなよ。僕達は仲間同士なんだから」「だけどよガジェ(にぃ)・・・。そもそもコイツが協調という事をしていたか?」「ちゃんとしてたわよ。学園でだって問題なくやれていたじゃない」「いや、運動はお前達と一緒じゃないから知らねえけど。それ以外だと、色々とお前が進んで突っ走っている記憶しかねえぞ」「どこがよ?」「町での暴動鎮圧。学生クエスト。イベント企画の立案。学力テストに問題ないからと学園長も容認しているからって、目立ちすぎじゃねえか?」「し、仕方ないじゃない。貴族学園って色々と体裁とかは気にするのに、肝心の事に関してはほとんど動かないのよ」「(コクリ)。つまらない」「だよね?」


 パミルは再度、頷いてリエナの考えに同意する。


「まあ、その手の企画って学園にある伝統か、貴族の中の風習以外じゃ、あまり行わないのよね~。元々、普段からお茶会やパーティーなんかをしていると、それが当たり前って考えている人もいたりで感覚が狂うし、誰かが開けるだろうと思っているんでしょうね。開いて呼ばなかったら、それはそれで面倒な事になるし。呼んでいなくても堂々と来る人もいるし・・・。ホントに大変なのよ」「お?ユティもやはりその手の?」「あるわよ?大抵が・・・``どうして来てくださらなかったのですか``だけど」


 本当にうんざりしているのだろう、その顔には貴族ならではのお付き合いも大事だと分かっていても耐えがたいモノがあるようだ。


「それは男の意見だろ?」


 ユティの発言に瞬時に気付いたナルシャがいたずらっぽい笑みと共にさらに掘り下げようとする。


「まあ、ね・・・」


 チラッと少しだけジンの方へとその視線を走らせて、再び前を向く。


「ま、流石にここでは・・・ね」「・・・そうね」「(コクリ)醜い話・・・」


 ユティ同様、有名貴族のリエナ。そしてその家族として一緒にいるパミルはすぐにどんな内容が繰り広げられたのか容易に想像できたようだった。


「ど、どんな話なんだ?」「・・・いいの?・・・本当に、それを知りたいの?」「女は魔物。例え誰であろうと・・・容赦ない」「・・・・・・(ゴクリ)。やっぱ止めとく」


 好奇心で聞いてみたいと思っていたベラールは従妹達の反応に、何かは分からなくても本能で恐怖を覚え、身を引いたのだった。


「ま。貴族の位の高さは、未だに健在だからそこまで無茶な事をする人は稀よ。ただ・・・本当に、あの手この手で、周りを掻きまわすから気を付けないといけないけどね」「(はぁ~・・・聞きたくない)」〔アナタが参加したら絶対にややこしい事になりますからね〕「(何で楽しそうなんだよ)」〔気のせいです〕


 少しだけ声に弾みが混ざっているのを相棒から感じたジン。明らかに何かを期待している感じも見受けられたのだった。


「(ヒマなのか?)」〔それも(・・・)、あります〕


 何だかんだで戦闘は順調なようで、ジン達後方支援組まで仕事が回ってくることは無い。そのおかげでサポートは若干ヒマを持て余していた。

 ゼクはサッサと飽きて色々と見て回るとどこかへ飛んで行ってしまっていたのだった。


「ふあ~・・・ああぁ。暇だな」


 どうやらベラールも同じ様子だった。


「こういう時に、なんか起こってくれるとこっちとしては退屈しなくて済むんだが」「おいおい。滅多な事を言うもんじゃない。何事もなく遠征が終わった方が良いだろう?」「そりゃあ、そうなんだが・・・」「会長~っ・・・!!」


 その時、1人のガタイの大きい、角刈りの様な髪型の男性がユティに手を振って走ってきた。


「誰アレ?」


 リエナの一言は知らないジン達も同じ思い。


「ああ~・・・彼は、ウチの副会長」「うむ。優秀なアシだ」「(・・・気のせいか。2人のニュアンスから・・・)」〔ええ。・・・都合が良いんでしょうね~〕


 瞬時にジンとサポートは、自分が通う学園の中等部の副会長を可哀相な目で見てしまう。

 一瞬だけジンの表情に疑問に思いつつも、笑顔になってユティに話しかける副会長。


「ようやく着きました。1日遅れでの参戦となりますが・・・副会長ドルゴ、ここに遠征チームの馳せ参じました」「うむ、ご苦労」「ありがとう~、ドーマ君」


 ナルシャとユティの言葉に何故か敬礼してしる副会長ドルゴ。


「いえ、少しばかり雑務に追われてしまい、誠に申し訳ございません」「そんな事ないわ~。他の生徒会の皆は?」「ここに参加した者は私を含めて3名になります。他の者達は残った仕事の後始末に・・・」「ふむ・・・。という事は大体の仕事は完了したという事だな?」「そういう事です、レンロッドさん。ボクも及ばずながら多少、先輩方のお力にと思い急いで来たのです」「〔・・・〕」


 何とも気さくで良い人に見える。それだけにユティとナルシャの扱い方には何とも彼の不憫さが伝わるようで思わず泣けてきそうになるジンとサポートだった。


 彼の名はドルゴ・エルマニアム。ユティ達、親しい者達からはドーマと呼ばれているそうだ。

 年齢は彼女達の1つ上だそうだが、年功序列は特に気にしていないそうで。一応の立場と状況に合わせて場合のみ言葉を選ぶくらいの良い人だった。

 気さくで常識的な人だそうだ。(ナルシャ曰く)


 ただ、難点が1つ・・・。


「う~ん・・・ドーマ君。私達・・・ここに来てからずっとここに待機しているだけなんだけど・・・。雨の中、居続けるだけでいいのかしら?」「と、言いますと?」「もちろん、これは高等部が中心の仕事だし。私達は・・・部外者ではないけど一応、後学の為に来ているじゃない?戦術や長期戦も視野に入れて緊張感を持たせるのも警戒をさせるのも納得なんだけど~・・・」


 困った顔になるユティ。それに対してドルゴは何かを得心する。


「分かりました。警戒も確かに重要ですが、体力、精神共に万全に期す必要もありますね。至急指令室に話を付けてきます」「お願いね~・・・♪」


 言うなり、走って行くドルゴを手を振って見送るユティ。


「(ボソ)・・・なあ。アレって俺達は助かるけどよ~」「(ボソ)うん。僕達は、ああならない様に気を付けよう」「(ボソ)体のいいパシリは勘弁だな」「「??」」


 ベラールとガジェットは、立場上、仕えているリエナとパミルを見てそんな事を話し合っていたのだった。


(ジ~ン~~っ・・・)「(?)」「どうかしたの?」「あ、いえ」


 突然、上空を見上げたジンを不思議に思うユティ。

 彼女達には手を振って飛んで帰ってきているゼクは見えない。


〔どうかしましたか?〕(うん。あのね・・・!)〔!〕


 少し興奮気味な感じのゼクが話すよりも先に、何かを察知したサポート。少し遅れてジンも感じ取った。そして、突然膨れ上がった鋭いマナの乱れた先を方を見つめる。


「(ボソ)・・・ボス・・・か?」〔分かりません。ですが、先ほどから感じているモンスター達とは明らかに格も質も違いますね。ゼク・・・〕(うん(コクリ)。ボクが感じて知らせに来たのはアレなんだよ)「(ゼックン。姿は?)」(う~ん・・・。なんかウネウネ?ノロノロしてた)


 腕を組んで、見た感じの第一印象を述べるゼク。


〔あの画用紙でしょうか?〕「(・・・。ゼックン。マナの・・・色か何か濁った感じしなかった?こう~・・・別の色みたいなモノが混ざった様な・・・)」「「???」」(ああ。そんな感じの色を纏ってたよ・・・!)


 ジンがずっと虚空を見ているのを不思議そうに見ているガジェットとドルゴ。しかし、ジンと少しでも一緒に戦った経験のあるリエナ達はちょっと様子が違う。何かを感じ取ったジンが振り返ってくるまで待つ様子だった。


「(ボソ)私達では分からない何かに気付いたか?」「(ボソ)・・・(コクリ)。おそらく」


 ナルシャとユティも静かに戦闘への意識を高める。


〔やはりですか・・・。アナタの来た方角からして・・・。あの森の奥ですね〕(うん。・・・なんか凄いビリビリしてた。雷かな?)「(雷系のモンスター?そんな奴もいるのか?)ユティ先輩達。この辺りのモンスターで雷の属性を持った種類何ているんですか?」「・・・魔法として放つやつはいるかもしれんが・・・。ここは湿地帯だ。下手に撃って外せば、味方にも被害が及ぶだろう」「そういう意味では、使うモンスターはいないと思うわよ?」「(ボソ)て事は、特殊モンスターか・・・」


 1人、顎に手を当てて考え込むジン。


「ねえ、ジン君?何を見つけたの?」


 気になったリエナが話しかける。それにどう答えたらいいのか苦笑を浮かべるジン。


「う~ん・・・。何て言えばいいのか・・・。ただ面倒なモンスターか何かがあそこにいそうで・・・」


 そう言って指し示した方角を見つめるリエナ達。そこは今なおモンスター達と激しい戦闘を繰り広げる戦場から外れた脇の森だった。

 モンスター達がどこから襲撃するか分からないため、警戒して少数だけ見張りとして立たせている場所。そこをジンは指していた。

 その上空には他よりも黒い暗雲が多く立ち込めている。


「・・・どうされますか、会長?」


 委員会でそこそこな付き合いになるドルゴ。ユティとナルシャの表情から察知して、真剣に話を振った。


「う~ん・・・。行きたいけど・・・私はダメね。高等部の先輩達のための遠征とはいえ、私がここを離れるのは困るでしょうね。それに・・・。たぶん、ジン君の話からするとナッちゃんも厳しいかもしれない」「だろうな(コクリ)。雷系だと私ではあまりダメージが通りにくい可能性がある」「ドーマ君。彼に付いて行ってもらえる?」「分かりました」


 ユティ達は情報を基に、すぐにメンバーを選出する。


「ねえ私は?」「ダメに決まってるだろうが。お前は貴族様で、それに今回は、後衛としてこの遠征がどんなモノかを学ぶためも兼ねて来ているんだ」「そうだね(コクリ)。リエナにもしもの事があったら、学園にとって・・・いや延いては国にとって大きな影響が出そうだし、それはミゲイラおじさんもたぶん困るかな?・・・もちろんパミルもだよ?」「ぶ~・・・残念」


 少しだけムスッと膨れたパミル。ガジェットに釘を刺され断念した。


「こいつ等はオレが見張っておくからガジェ兄はジンに付いて行ってくれ」「「ええ~・・・!」」「いいのか?」「(コクリ)。一度、ジンの力を知りたいって言ってただろ?この機会に、補助として付いて行ってくれ」「・・・分かった。じゃあ、ここは任せるね」「ああ」「「ええ~・・・」」「うるさいぞ。お前等」


 リエナとパミルの不満をベラールが一蹴・・・こちらはこちらで話を済ませたようだ。


「ふむ・・・」「?どうしたの?」


 何かを考え込んでいたナルシャがつい声を発したことにユティが気になった。そんな親友に少しだけ笑い、首を振った後・・・。


「いや、やはり私も念のために行こう。例え相性が悪くとも戦い方はあるさ」「「ええ~っ・・・」」「お前等・・・しつこいぞ」


 不満をこれ見よがしに漏らすリエナとパミル。

 しかし、ユティの反応は違った。


「・・・危険?」「いや、ここまでは流石に来させはしないさ。彼もいるんだ。そうそうないと私は信じているよ」


 そう言ってジンの方を振り向くナルシャ。


〔無駄にプレッシャーを掛けられましたね〕「(う・・・勘弁してほしい)」


 あまり人に頼られるという事に慣れていないジンにとっては、妙に汗を掻く話の振られ方だった。

 そんな今のジンの気持ちなど分からないユティは親友と彼を交互に見て、笑顔になる。


「うん。お願い」


 こうして、ジン+(サポート、ゼク)とガジェット、ドルゴ、ナルシャの4人による湿地帯脇の森の奥に潜む謎のモンスター退治に向かう事となった。


 それぞれが自分の調子等を確かめて、真剣になる中・・・。


(よ~~~し・・・・やるぞ~~~っ・・・!!)


 精一杯、自分なりに頑張ろうとやる気を見せているゼクだけが・・・両手を突き上げて元気に声を出していたのだった。






 【ジン・フォーブライト(純、クリス)】8才 (真化体)


 身体値 50

 魔法値 50

 潜在値 50


 総合存在値 100


 スキル(魔法):干渉、棒術 1、マナ零子 1

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