285 遠征は・・・修羅場?
ガラガラガラガラガラ・・・ガタンッ・・・ガタン、ガタ・・・。
何十にも並んで走る馬車の列。
ゴロゴロゴロ・・・グシャ・・・ビシャン・・・。
歩道は湿気を含み、濃い茶色となっている。
時折、ぬかるんだ地面に溜まった水を外へと弾き飛ばしながら馬車はある目的地に向かって走り続けていた。
「っ・・・!ん~・・・やっぱりここを高速で移動するのはちょっとね~・・・」「仕方あるまい。例年とは言え今年は多いそうだ」
腰を少し痛めたのか、擦りながら眉を寄せる中等部生徒会長ユティ。それに対し、腕を組んで堂々と座っているナルシャ。
「はあ・・・。ここってほとんど曇っているから何て言うか辛気臭いって言うか・・・」「今の季節は仕方ないだろう。雨が多い時期だ。濡れるための服の予備と用意は出来てるんだろ?」「もちろんよ。っていっても私達はほとんど補助だし、そんなに濡れることは無いんじゃないかしら?」「どうだろうな。去年は問題なかったと言っていたが・・・。先輩方の話では私達も後衛とはいえ駆り出される可能性は十分にあるらしい」「うへ~・・・。あまり、濡れたくないんだけど・・・」「我が儘言うな。お前の性質だったら、結局濡らす結果になるだろう・・・」「そんな事ないわよ。その前に凍らせちゃうから。・・・あ、でも私が濡れた方が良いのかな~・・・?」「・・・?」「止めろ。分かっていない子供に変な事を吹き込むな」
注意されても、特に気にせずユティはすぐ隣に座るジンを楽しそうに見ている。
「(・・・何か話してたの?)」〔気にしなくても構いません。戯言です〕「(・・・そう?)」
そう言うとジンはまたゆっくりと目を閉じて、再び体内に流れるマナを確認する。
そんなジンの横でぷかぷかと浮いているゼクは気持ちよさそうに眠っていたのだった。
〔・・・どうやら、ステータスが変わりゼクも入った事で流れ方に変化が起こっているようですね〕「(微細なんだが・・・塵積もとは本当にこの事なんだな・・・)」
現在サポートの協力の下、少しずつ自分の中に流れる体内マナの性質の変化を熟知しようとジン。内包しているマナ量が多く、思った以上に感覚と顕在にズレがある様な気がして、その確認に勤しんでいるのだ。
〔シャボン玉は、性質的に向上した事でもっと硬質にも変化できるようになりましたが・・・〕「(ゼックンの使い方だと霧状に変化しやすかったな)」〔おそらく彼の持っている能力の問題でしょう。いずれはもう少し細かく使いこなしてもらいたいですが・・・。今はこの世界に留まり、魔法を顕現させる力の扱いを知ってもらう方が一番ですね〕「(何事も手順を踏んで、か・・・)」
疑似精神世界の様な中でサポートと会話しつつ、体内に散り散りになっているマナの性質を確かめ修正。方向性を定めて安定させるという工程を繰り返すジン。
改めて、自分の中に流れている魂のエネルギーの情報量が増えてきていた事を実感するのだった。
「んん~♪・・・ちょっと~、もう少しお姉さんとお話ししましょうよ~・・・」「止めてやれ。集中している様だ。邪魔をしてやるな」「・・・(こうしちゃえっ♪)」「あっ、おい・・・」
それでも我慢が出来なかったユティはジンが気付いていないのを良い事に、抱き枕の様に自分の膝へと乗せて後ろから抱き着いて密着させる。気付かれない様に華麗に、そして軽やかに自分の下へと運ぶユティの無駄な能力の1つが発揮されたのだった。
「ふふん~・・・(いい匂い~♪)」
ご満悦のユティ。それにはやれやれと思いつつも諦めて、馬車の外を見るナルシャだった。
・・・・・・
ジン達が向かっている場所はジルベガンでも湿地帯と言われるエリアだ。
バッツとロロナが初めて教師に勝った次の日。学園長に呼び出され、毎年恒例の合同演習に参加するよう頼まれた。
ジルベガンの各学園の生徒達と一緒に増殖、繁殖期に入ったモンスター達を討伐する為の遠征に参加しているのだ。
本来は高等部が中心。中等部からは少数が援護と高等部になった時の後学の為に参加という流れなのだが・・・。
何故か学園長からの依頼によりジンは参加する様に望まれた。理由としては・・・。
「何かあってもキミがいればある程度は解決できるだろう」
という意見からだった。それに対して同行していたユティとナルシャも首を縦に振って同意。
かくして。(コレも一応学園の一環だが)ジンは急遽、学園を休み。その遠征に参加するためにユティ達と共に高等部達の乗る馬車の列の1つに乗って湿地帯を目指していたのだった。
・・・・・・
曇天とはこのことを言うのだろうと分かるほどの、分厚い雲に覆われた空。
そこへ次々と馬車から降りてくる学園の生徒達。
グチャ・・・。
「とと・・・。思ったよりも滑りやすくなってるわね」「少し、奥の方に入り込んで停まったからな。この辺りの地面は柔らかいんだろ」
足首まで隠すほどに伸びた草を踏みしめ、地面に降り立ったユティ達。
「・・・」「ジン君・・・」「いえ、大丈夫です」「・・・」
分かり易く、手を伸ばしたまま悲しそうな顔をするユティ。そんな彼女を置いてゆっくりとジンもぬかるんだ地面に降り立った。
「・・・ありがと」「・・・ぶるるる・・・♪」
カバみたいな見た目に愛嬌のあるつぶらな瞳をしている動物に感謝と共に頬を撫でるジン。ここまで馬車を引いてくれたに礼を告げただけなのに、その動物は嬉しそうに鳴いて返事を返していた。
(んん゛っ~・・・ああぁ・・・。ようやく着いたんだね)〔随分と気持ちよさそうに寝てましたね〕(えへへへへ・・・。なんかこんなにのんびりできるのって、久しぶりな気がして・・・)
照れくさそうに頭を掻きつつ答えるゼク。
ジンの精神世界ではずっと寂しい思いをしていたのだろう、サポートも強く言うつもりは無かった。
〔そうですか。でも、ここからはアナタにも仕事をしてもらうかもしれませんので、少しだけ気を引き締めてください・・・ゼク〕(うん。分かったよ)
小さな拳を握り締めやる気を見せる。
「それで・・・先輩?俺達が何処に・・・?」「こっちだ。付いてきてくれ。・・・ほらユティ」「分かってるわよ」
ジンが動物と戯れている?光景を微笑ましそうに見ていたユティは親友の言葉に、急いで後を追うのだった。
・・・・・・
先ほどのぬかるんだ場所よりは幾分か地面が硬い場所へと来た。
そこには大きめのテントと小さなテントがそこかしこに建てられ、中を行き来する生徒達で溢れかえっていた。所々には、地元かあるいはどこかの領地の警備をしているのだろう服装と鎧の違う騎士達がチラホラといた。
もちろん服装が違うのは学生も同じだ。全体的に白や黒を基調とした制服の学生達が多いが、中には赤や青の目立つ服装の生徒達もいた。
「・・・これが全部、遠征に参加する学生・・・」
とんでもない数に思わず感嘆の息を漏らしてしまう。
「そうよ?去年もこんな感じだったの」「数が少なく、早く終われば3日。長ければ1週間以上は掛かるからな。出来るだけ最初の内に叩いておきたいのさ」「それだったら学生ばかり・・・」
ジンが言葉にするよりも先に指し示すユティ。
「一応、冒険者も集まってくれているんだけど・・・。ここのモンスター達って繁殖期もあってか、時期的にマナをたくさん体内に溜めちゃうから強いのよ」「下手に低ランクの冒険者を連れてきても怪我人を増やすだけだからな。向こうは対応できる者達の数とランクを絞らざるを得ん」「なるほど・・・」
高ランクをこの湿地帯にばかり集めることも出来ない。どこかで困っている人達を助け、問題を起こす者達を抑制、防止する為にも、そこまで割けないという話だった。
「・・・今年は多そうだな」「ナルシャ先輩達は何回も参加を?」「ん?ああ。私とユティは君と同じく初等部の時に学園長に参加させられてな」「中等部からが普通なのにね。あの時は遠くから援護しているだけだったけど・・・。ホント、いつ終わるのか聞きたいくらいだったわ」
ユティの顔には当時を思い出し、うんざりした声が返ってくる。
「3年前、だったか。モンスターも粗方倒して、いくつかの学園の生徒達が帰った後にな。近くにダンジョンでもあったのか急にスタンピードが起きてな。おかげで半日ほど戦い続けなければならなかったのだ。アレは辛かった・・・」「(2人でも・・・!)」「当時はマナの解放をコントロール出来るようになってきたばかりだったの。今とは魔力の扱い方も技術力も全く違うから必死だったわ」
少し意外だと驚くジンに補足説明するユティ。
「・・・今年はかなり多そうだが・・・。これだけの数を集めたという事は・・・整っているという事かな?」「?」「遠征ももちろん重要だけど・・・私達、学生としては他にもあるでしょ?」「・・・あ、大会」「(コクリ)そういう事だ」
今はどこの学園でも大会に向けて、魔力を鍛えたり、特訓、練習にと日々明け暮れていたりする。そんな中で高等部が中心とはいえ、これだけたくさんの学生を集められるという事は、大会に出場できるメンバーがある程度決まって来たという事だ。
だからこそ、遠征に回せるメンバーも決まってくる。
それがどういう采配なのかジン達には分からないが、きっともう準備は整いつつあるとナルシャは判断したようだった。
「・・・2人は出場するんですか?」「もちろん。一応参加するつもりよ?」「お前は難しいが・・・。私は挑戦するつもりだ」「?」
ナルシャの言葉に少し引っ掛かってしまう。
そんなジンに気付き補足が加えられる。
「コイツは特別でな。参加するとしても、ある意味キミの様に特別枠として別の競技に参加させられるだろう」「む~・・・私としては、もっとみんなと一緒に・・・」「無理無理。今のお前じゃ、そんな事をすれば将来の芽を摘ませることになるぞ」「・・・分かってるけど・・・。ちょっと思っただけよ」
自分でも理解はしているのか、大会に参加できる競技が絞られるのを承知の上の発言だったユティ。
〔おそらく、彼女の持つ魔力量と性質・・・スキルでしょうね。ベラールが言っていた申し子の1人ではないかと・・・〕「(才能や素質が高すぎで、勝負としては公平に出来ない・・・か。色々と不満が溜まってしまいそうだな)」(どうしてダメなの?)〔実力が違い過ぎるのです。最悪の場合、彼女のせいで学園を止めてしまう生徒が出てしまう恐れがある。それは彼女の本意ではないでしょう。競技と言うのはある程度の公平性を持って、お互いの能力、技量をぶつけ合うモノですから・・・〕(・・・そんなにユティって凄いんだ・・・)
サポートの言葉に改めて、彼女の凄さを知るゼク。
「(あー・・・まあゼックンが来ているというか、その前から・・・先輩はあんな感じだしな~)」
少しほんわかと言うか、どこかバッツの様に素直な部分がありつつも、掴み所が難しい先輩。・・・それがユティだからだ。基本的には優しく、しっかりとした雰囲気もあるお姉さんだが・・・。
「ジンく~ん・・・。今日は一緒に寝ましょうね~・・・♪」「何を言ってるんだ。彼にはちゃんと男達が寝る場所が・・・」「い~や~・・・。この子なら大丈夫よ」「無茶言うな・・・」
ジンの前では、何処までも構ってきて時折、甘えてくる人物にしか映らないのだから、ゼクも意外そうに感じても仕方なかったのだった。
「ほら・・・離れんか」「むう。本当はナッちゃんも抱き着きたいと思ってるくせに・・・」「何を言っている」「トルースサンド・・・。帰りの馬車。ここに来るまでの馬車・・・」「っ・・・」
少しだけ目を大きく開けたナルシャは、スッと親友の方を真剣な目で振り向いた。
「・・・随分と周りを見ている様じゃないか・・・」「まあね~。でも、あの子はダメだからね」「それはお前の勝手な言い分だな」「それでも私にも負けられない戦いというモノがあるのです」「・・・確か貴族と言うのは何人かの妻を娶ると──」「そ、その時は絶対に私が第1──」
お互いの顔がくっ付くほどに近い距離で何やら大事な話し合いをしていた。
結果解放されたジンは改めて周囲を見回す。
「(コレが全員遠征の参加者って、モンスターの繁殖期ってどうなんだ?)」〔ローテーションを組んで戦うのでしょう。戦術なども兼ねて実戦経験を積ませるためなのかもしれません。・・・それでも先ほどのナルシャ達の会話から考えますと・・・10万ほどは現れてもおかしくなさそうですね〕「(10っ・・・。規模がオカシイ。それってもう戦争レベルだろ)」〔元々、この世界で生み出された生物でもありますからね~。マナを体内に多く含まれて構築された時、一気に増えてしまうのかもしれませんね。おそらく似た様な事は各国でも起きているのでしょうね。もはや恒例となって討伐にあたっている為、気にしても無駄と判断したのかもしれません〕「(先ずは目の前の脅威に当たれ・・・か?)」〔でしょうね。それで今まで何とかなっているのですから、ヒトと言う生物もまた凄まじいモノですね〕(ふあ~・・・なんかあの武器カッコいい~・・・♪)
途中から興味を無くしたゼクは周囲を行きかう人々の武具に目が移り、あっちこっちと移動をしていた。
その時だった。
「だ~れだ♪」「フフフフフ・・・捕まえた♪」
そう言ってジンの目を隠し、体に抱き着いた人物が2人ほど現れた。
「・・・え?どうして2人が?」
一瞬、素で思考が止まり。どうしているのかの疑問が浮かぶ。
「もう~。せっかくの再会なんだから名前で行って」「じゃなきゃ、抱き着いたままでいる」
何やら今までとあまり変わらない感覚にデジャヴを覚えてしまうが、ここは素直に声を掛けてきた女の子達に従う事にした。
「リエナ、パミル、久しぶり」「うん。久しぶり♪」「会いたかった♪」
目隠しは解放されたが、結局変わらずにというかそれ以上に両腕にしがみ付かれて密着されるジン。
以前フォートレーヌという町で一緒に暮らしていた少女達。
リエナ・コン・フォラウストとパミル・フェスカトーナの2人がそこにはいたのだった。
「?・・・あーーーっ・・・!!」「?一体なんだ?」
少し目を離した隙にジンに抱き着いている少女2人にユティとナルシャが気付いた。
「ああ、紹介します。ホローグに住む前にフォートレーヌと言う街でお世話になっていた屋敷の友達で・・・」「リエナよ」「パミル・・・」「・・・です。で、2人は・・・今、俺が通っている学園の、中等部の先輩のユティさんとナルシャさん」「・・・よろしく」「(コク)・・・」「・・・」
リエナとパミルの2人はジンにしがみ付いたまま簡単に名前だけを言う。ナルシャには少し見ているだけだったが。何故かユティにはジト目になって睨み合う様な視線を送っていた。
それはユティもそうなのか、少しずつ自分の方が大人という事で余裕を見せて柔らかな笑顔へと変わるが・・・。
「(なんか・・・目が笑ってない・・・?)」〔・・・はぁ。厄介な・・・〕(な・・・なんか怖いよ~)
本能的に察知したゼクは1人、その場からどこかへと去って行く。
まあすぐに帰って来るだろうが一時的に避難したのだった。
「お~い。・・・ったくいきなり走るな・・・って、ジンじゃねえか久しぶりだな」「こんな所で会うとは奇遇だね」「あ、ベラール、ガジェット・・・」
人混みを掻き分け、走ってきた知り合いの人物の再会に喜ぶジン。
「リエナとパミルがいるから、当然なんだろうけど・・・。2人共、元気だった?」「ははは、何言ってんだ。それを聞くのはオレ等だっつの」「少し心配していたんだ。僕達とは違って君は1人だったからね」「・・・ジン君。彼等は・・・?」
ナルシャが少し遠慮がちに聞いてきた事で、2人の事も含めて改めて紹介するジンだった。
・・・・・・
「なるほど・・・。あなた方は貴族・・・。しかもフォラウストと言えばフォーランのみならず各国でも有名な・・・。そんな大貴族の女の子と知り合いとはね」「ふふん♪」「エッヘン」
どうしてだかリエナだけでなくパミルまで、胸を反らし少しだけ偉そうな態度を取って見たり・・・。ちなみにジンの両隣は2人が頑なに譲ろうとせず。ユティは内心本気で悔しい思いもしつつも、表向き余裕のある態度を貫き通していた。
現在、1つのテントの中でジン達は長テーブルを囲んで座り、お互いの紹介を済ませた所だった。
「それは僕達もです。キュース家の者と会うとは思いませんでした」「ジルベガンへは留学で?」「ええ。まあ・・・理由としてはそちらと似た様なモノですね。異文化交流の一環だとお考え下さい」
見えない所でバチバチと戦っていたユティだがガジェットに話を振られた事で、生徒会長としての立ち振る舞いで応答する。
〔何とも器用な・・・〕
瞬時に切り替わるその様にはサポートも舌を巻いた。
「・・・でも、どうしてリエナ達が?初等部がこの遠征に参加するのって、あんまりないんですよね?」「そのはずだが・・・」
ナルシャもその辺りは詳しくないため。自然と向かう視線の先はリエナ達に向いた。
「オレ等は・・・まあ、コイツ等の実力もあるけど・・・。おそらくは学園側の建前だな」「お膳立てとも言えちゃうのがちょっと・・・悲しいかな?」「ああ~・・・」「なるほど・・・」(?どういうこと?)〔リエナ達は他国の大貴族のお嬢様。学園側としてはちゃんと彼女達を立てて・・・つまり活躍させておかないと国としての立場に影響するのではと考えたんですよ〕
サポートの説明に一生懸命、理解しようとするゼク。それでもまだ分からないのか雲の身体が斜めに傾いたままだった。
(活躍させないと、国が危ないの?)〔余程の事が無い限り、ミゲイラはその様な事はしないでしょう。そもそもリエナとパミルの向かった貴族学園も、知り合いが務めている場所だと言っておりました。彼女達を気にしたのは、おそらくあまり関係のなかった者達でしょう。下手に関係を悪くさせて国通しの交流にまで亀裂が入らない様にと注意を払った結果でしょうね〕(へ~・・・そんなに凄いんだ~・・・。ジンみたいだね?)「(?という事は、それだけ大きな貴族だったって事?)」(うん。そうだよ?確か、そんな気がする)〔・・・なるほど。ファミリーネームは避けた方がいいと言っていた事も含めて、なかなか厄介な立場にあったようですね〕「・・・」「?どうしたの?」「ううん。何でもない」
改めて、自分(肉体)の出生に付いては要注意して調べる必要が出てきたと感じるジン達だった。
「それじゃあ。皆も遠征に参加するって事なんだ」「ええ、そうよ?だから一緒にいられるね」「今日は、一緒に寝よう」「(あれ・・・デジャヴ)」「ちょっと待って欲しいのだけど・・・。お2人は一応、他の学園の・・・しかもお貴族様の学生ですよね?」
妙に回りくどい言い方をして間に入る、我が生徒会長。
「それがどうしたの?それを言ったら、あなたもその貴族じゃない」「前は一緒に住んでた。だから別に問題ない」「いいえ。大アリです。ジン君は・・・ウチの生徒です。例え一時的に同居していたからと、他の学園の生徒があまり軽率な行動をとれば、それは学園の規律にも問題が出てしまいますわよ?」「(それをお前が言うかぁ・・・?)」
少しだけ誰にも気付かれない様にため息を漏らし、親友を見てしまうナルシャ。
それは呆れているとも、その堂々とした発言に感心しているとも思えた。
「?コレぐらいなら先生方も許してくれるわよ?」「家族水入らず・・・」「た・に・ん、でしょ?」
少しずつ生徒会長としてのメッキが剥がれ始めるユティ。
「ベラール、問題ないわよね?」「え?そこでオレに振る?」「ま、まあ・・・。一応、僕達も見ていますし。中等部、高等部には、ある程度の行動の自由をいただいておりますので・・・。ここは大目に・・・」
やんわりと間に入ったガジェットに、ユティも頭ごなし強くは言えない。
「そ・・・それじゃあ。もしもの為に私も一緒のテントで寝ます。彼を連れてきた監督責任というモノがありますので」「「(そうきたか・・・)」」
この瞬間、ナルシャとジンの思考は重なった。
ただでは引き下がれない。それらしい理由を突き付け、自分の言い分を通すつもりのようだと気付いた。ならばとそこへ、ややこしくなる前に便乗するナルシャ。
「オホン・・・。まあ、私も一応、彼の監督と言う立場ですので。申し訳ありませんが・・・」「分かりました。という事だよリエナ、パミル?」「む~・・・」「仕方ない・・・」
ガジェットにここが落としどころだと、諦めろと言われては従う他無かったリエナとパミル。
そんな従妹達を見たベラールの視線がジンの方へと移動する。
「・・・(お前、大変だな)」「・・・はぁ」
何を言わんとしているのか、言葉にしなくても分かったジンは小さくため息を吐いて肩を落とすのだった。
【ジン・フォーブライト(純、クリス)】8才 (真化体)
身体値 50
魔法値 50
潜在値 50
総合存在値 100
スキル(魔法):干渉、棒術 1、マナ零子 1




