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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
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270 一朝一夕と一長一短

「ふむ・・・借りてきた携帯ランプじゃ。これ以上は使えないわね。ナッちゃん、お願~い」「はいはい」


 そう言うとナルシャは魔力を練って小さな紫の玉をいくつも宙に作り出した。


「おお~♪明る~い♪」


 携帯用の簡易魔法ランプでは見えなかった全体、100以上メートルを明るく照らしてくれたナルシャの魔法。


「・・・本当に効力が弱くなるんですね」「うん、そうね~。どうしてかしら?鉱物にその性質が強く含まれてるのかしら?」「その対策はしているだろう。それでこの効力というのは異常だぞ。ますます彼の言葉が真実味を帯びて来たぞ」「という事は遺跡がこの地下に?」「分からないわよ~♪もしかしたら、ここで死んでいった者達の怨霊かも~♪?」「お、脅かさないでください」「・・・(やっぱり遠足だよな)」〔・・・〕


 鉱山に入って30分ほどが経った。

 作業員達に外での事情を説明し、他の鉱山で仕事をしている者達にも報せる様に頼んで避難させた為、現在鉱山は貸し切り状態になっている。

 これ幸いと、さっそくユティ達はモンスターパレードを引き起こした冒険者達が出てきた穴へと入って行った。


 緩やかな下りでゆっくりと下りて行ったが、途中で簡易ランプが急に光力を弱まってしまい今に至る。


「・・・ホント、ナッちゃんの魔法って便利よね~」「周囲が少々、紫に見えるから私としては困りものだがね」「そんな事ないわよ~。これくらいなら問題ないわよ。それに・・・こんなに遠くまでハッキリと見えるんじゃあ、モンスターも不意打ちのしようがないわね」


 ジン、ユティ、ナルシャ、バッツ、ロロナ。5人が横並びになってもまだ余るほどに大きな横幅と5メートルはあるんじゃないかという高さ。ドワーフ達、作業員がここまで長い年月で掘ってきたのだろう穴はほとんど同じ幅でずっと先まで続いていた。


「・・・ここまで掘ったって事か・・・」「モンスターが荒らした感じが無いからそうだろう」


 思わずバッツが口をあんぐりと開けて天井を見上げる。それにナルシャが同意しながら周囲を見回す。


「警戒はしておけよバッツ。ここはドワーフ達が掘ったとはいえモンスター達の巣の中でもある」「あ、は、はい・・・!」「(ボソ)こういう時は素直なんだから・・・」「ん?」「何でもない」


 口を尖らせ呟くロロナにバッツが反応するが、素っ気なく返すのだった。


「は~い、ストップ~」


 軽い口調で全員に停止を告げるユティ。


「どうしたんですかユティ先輩」「前に何か?」


 不思議に思いつつ、ユティの向ける先を見るバッツ達。それに対し顎に人差し指を当てて、何かを考えていた彼女は1つ頷いて2人に告げた。


「あなた達の覚悟を少し試させてもらいましょうか?」「「?」」「あれくらいなら・・・あなた達でも倒せるんじゃない?」「「・・・!」」


 ユティが指し示す先では、少しずつこちらに向かって小走りで近づいて来るウリの様な動物が2匹いた。

 モンスターだからなのか、その目つきは鋭くギザギザとしている。


「レスアボアか・・・」「・・・ちょっと久しぶり・・・」「だな。あの時は俺の方が多く狩ってたっけ?」「それはバッツが倒したいって言うから。見つけて誘導して上げてるのは私」「はは」「ふふ」


 少し故郷の事を思い出したバッツとロロナは、作戦というモノを立てずに歩き出した。


「・・・おいおい。大丈夫なのか?」「問題ないでしょ。どうやら地元でも戦ったことがあるようだし。受験ではもっと危険なモノから上手く逃げ回って、生き延びていたのよ?」「ああー、あの話か・・・。よく全員無事だったもんだ」「私と・・・あの子のおかげ」「・・・なるほど。では、お手並み拝見だな」


 腕を組んだナルシャ。ユティ同様、バッツ達の実力を測るつもりのようだ。



「どっちがいい?」「・・・俺は大きい方」「じゃあ、私は小さいほう」


 徐々に加速、走り始めたレスアボア。その大きさを認識したバッツ達は、こちらも走りながら立ち位置をチェンジ。交差して駆け出して行った。


「であああ~っ!」「んんっ!」


 擦れ違いざまにバッツはサイドステップからの剣の振り下ろし。ロロナは低姿勢からのすり抜けと振り向きざまのダガーによる2連で首を斬り付けた。


 ズザー、ズザー・・・。


 ほとんど悲鳴を上げさせる事無く絶命させ、勢いで滑るように前のめりに転がるレスアボア。


「お見事」「うむ」


 ユティとナルシャに認められた事で、喜んだ2人はお互いの手を軽くぶつけ合った。



「モンスターを放置するのは問題だが・・・。この場合は仕方ないだろう」「後方には居なかったし、現れるとしたら前方だから、気にせず進みましょ?」「・・・俺達にとっちゃ、ちょっとした豪華な食事になるのに・・・」「ふふ。まあ、もし残っていたら誰かが来た時にでも回収してもらいなさい?」「は~い」


 残念に思うバッツだが、今は目的の為に剣を鞘に収めて進むことにした。


「バッツは、まさに戦士タイプだな。ロロナは・・・狩猟やシーフか?」「はい。お父さんの手伝いで、山に入ったりしていたので・・・」「じゃあ、弓も使えるのか・・・」「一応って言う程度です。どうしてもお父さんほどじゃあ・・・。それに矢もたくさん持てるわけじゃないので」「なるほどね~。だからダガーにしたんだ」「はい」「それなら魔法の矢を作ればいい」「それって専用のって事ですか?」


 バッツが先頭を歩きながら、ユティ達の会話に加わった。


「いや、魔法の矢と言っても専用の特殊な矢ではないよ」「バッツ君が言ってるのは火の矢とか氷の矢とかでしょ?」「はい。何て言うか本に出てくる人ってそういうのを撃ち出してたような・・・」「あれは自分の性質を利用したり熟練の魔法使いがカバーしたりと色々とあるからね。そういうのではないんだ」「?」


 ロロナと同じくバッツも分からないためか首を傾げてしまった。


「魔力そのものを形にする?」「正解。んんっ、100点あげちゃう!」


 ジンに抱き着くユティ。そして、そのまますりすりと頬擦りしている。

 そんな彼女の代わりに分かっていない2人に説明するナルシャ。


「ジン君が言ったように自分の性質・・・。つまり火や氷と言った力・・・スキルを使わなくても、自分の魔力をイメージして矢の形に作り出せば、魔力がある限り何度でも生成することが出来る」「ええっ!?それって無限に生み出せるって事じゃあ・・・!」


 ロロナ以上にバッツが驚き、ナルシャを見ていた。しかし、彼女は首を振った。


「それがそうとも言えない」「魔力を矢の形に固定、それを相手にダメージを与える道具にする。そのためには武器に慣れ親しんだ者や、魔力の扱いに長けた者じゃないと生成は難しいの♪」


 嬉しそうにすりすりとジンを抱き着いたまま説明するユティ。少々、困っていたジンを見かねたナルシャが彼女の襟首を掴んで引きはがした。


「矢などの武器、道具を生成するには体に馴染んだ記憶が関係するという話だそうだ。その辺りはまだ分かっていないようだが、私の様に少々、知識を齧った程度ではほとんど意味がない。形を整える事は出来ても威力は小石を直接ぶつけた方がマシなくらいだ」「そ、そんなに難しいんですか・・・!」


 ロロナは予想以上の難易度だと思い、戸惑ってしまう。


「ああ、勘違いしないで。私やナッちゃんはそもそも理解は出来ていても、そもそもそういういった武具の生成があまり得意な方じゃないの。何て言うか偏ってしまうのよ」「性質というのも・・・見方によっては弱点だからね」「ああ、そういう・・・」「なるほど・・・」「ん?ん?どういう意味だ?」


 分からないのはバッツのみ。だからか理解したロロナとジンを交互に見る。


「良い意味ではスキルは強い。だけど・・・それに偏った力しか使えない。あるいはそれに近い能力が付随してしまう」「?」「つまり。望んでなくても属性が付いちゃうって事よ。そうなるとモンスターによっては全く効果がない可能性も出ちゃうって事」「ん?あ?ん?んん?あ、ああ。そういう事」


 ロロナが嚙み砕いてくれた説明でようやく理解できたようだ。


「彼等の言う通り。私やユティでは性質を入れないよう頑張っても少なからずは入ってしまう。おまけに得意ではない生成だと・・・本当にそこらに転がる石を投げた方が効果が高いと言わざるを得んな」


 ナルシャは苦笑して首を振ってしまう。


「そういう意味では、元々ロロナちゃんは魔法の生成も少なからず出来そうだし、地元では狩りをしていた。これは生み出すのに苦労はそう掛からないって事かな?」「・・・知らなかった」「仕方ないさ。向き不向き、長所と短所が強いからな」「だから、大抵の魔法使いじゃない遠距離タイプの人では本物と魔法の使うタイミングを決めている事がほとんどなのよ。牽制の為の攻撃か、あるいは隠し玉の一撃必殺に残しておくか・・・」


 ロロナもその状況を考えたのか、頭を右へ左へと揺らしながら考えていた。


「そもそも魔力の塊だから一定時間が経つと世界へ帰ってしまう。その為、威力とタイミングを考えなきゃいけない。だからあまり使われている場面もそれを自分の武器として売り出している人も少ないの」「まあ多く保有している魔力があれば、普通は魔法使いとして起用した方が成果も出やすいし、その者にとっても良いって話だからな。進んで茨の道に飛び込もうとする奇特な奴はそうそう現れんもんさ」「でも私はそれを・・・?」


 ロロナが理解できないと言った表情を見せる。


「可能性を拡げるための方法として提案しただけよ?そこまで思いつめなくても大丈夫」「とりあえず、弓を使ったことがあるなら矢を生み出してみてくれ。イメージを形にする様に魔力を手元に流し込む」「・・・こう、ですか?」「そうそう・・・!やっぱり上手いわね。もう少し形にしようと魔力を流し込んで」「んっ・・・!」


 目を瞑ったロロナは更に魔力を手の平に流し込んだ。すると一本の白い矢が出来上がった。手に伝わる感触から目を開けたロロナ。


「・・・出来た・・・!」


 自分でもこんなあっさりと作り出せるとは思っていなかったのだろう。その頬が心なしか赤くなっていた。


「うん。成功だ。案外筋がいいのかもしれないな」「自分の戦闘スタイルを固定するにはまだ早いわよ?バッツ君、ロロナちゃん・・・ジン君も」「可能性を拡げる、ですね」「ふふふ・・・♪」


 まだまだ自分に合ったスタイルがどんなものなのか模索し始めたばかりの彼等には、もっと色んな視野を広げて欲しいと思うユティだった。


〔確かに・・・私達の可能性は拡がり始めたばかりかもしれませんね〕「(どこに向かってるのか分からないけどね)」〔それはジン次第でしょう〕「(それが分かんないんだけど・・・)」


 ただ生き延びる。守る。抗う。その為にこの異世界を渡る事を繰り返しているジン(純)。

 だからか、その先にどんな変化があるのかどこにゴールがあるのか全く自分でも分からないのだった。



「それで?コレをどうすれば・・・?」「そうだなぁ・・・。本来は弓もセットなんだが。今回は思念で飛ばそうか。ロロナさっき生み出したやり方と同じで、壁に向かって射ってくれ」「・・・はい」


 少しだけ緊張したロロナは深呼吸。そして、近くの壁に向かって矢を射る様に念じる。すると彼女の手から独りでに飛んで行った。


 ガン・・・!


「これは・・・」「思ったよりも、本当に向いているのかも・・・」


 壁に深々と刺さった矢。僅かにその周囲にうっすらと罅割れが起こっていた。それだけ彼女が射った矢は威力が高い事を示しているのだろう。


「あ、壊れた」


 バッツが壁に刺さっていた矢が砕けた事を呟く。


「こんな風に、弓が無くとも多少の威力は出せる場合がある」「ロロナちゃんの場合はかなり適性が合ったようね。慣れてないと普通は刺さらないか、届く前に消えちゃったりしてしまう事もあるのよ?」「でも、コレ結構魔力を持っていくんですね・・・」


 少しだけ脱力気味のロロナ。戦えないほどではないがそう何発も撃てないだろうと彼女も理解したようだった。


「コレも運用と練習ね。何度も使っている内にやがて生成の自分なりのコツというのを掴めていくはずよ」「弓が有るか無いかで威力も変わる。今回は生成と射出だが、一部は短縮して何に魔力を使うかを考えてみるといい」「はい。ありがとうございます」「ちぇっ。いいな~ロロナばっかり、色々と増えて・・・」「そうむくれないの。それもこれもずっと決めた事の為の力でもあるんだから♪」「ユティ先輩・・・!」「おや?やはりそうなのか?」「・・・」「?どうしたロロナ、って痛ぇ~っ!!何すんだよ!」「・・・知らないっ・・・!」


 脛を蹴られたバッツは涙目になりながら、怒りだした幼馴染を不思議に思うのだった。それを見た2人の先輩はおアツいことでとか言って、ニヤニヤと楽しそうにしていたのだった。


 ・・・・・・


「ちょっとした長話になってしまったが・・・ここが大穴か・・・」


 ようやくたどり着いた、縦に深く開いた大穴の前に辿り着いたジン達。


「ナッちゃん・・・」「・・・無理だ。これ以上は魔力が阻害される」


 ユティに呼ばれたナルシャが紫に照らす魔法の明かりを大穴に向けて、落としていくがほんの十数メートルほどで急速に明かりが萎み霧散してしまった。


「ナッちゃんの明かりでもダメか~・・・」「ランプ以上に阻害が強いようだな。剥き出しの魔力というのが原因かもしれない」「内包された鉱石ならある程度は抵抗できるって事ね」「だな。これ以上は私の方でも・・・お前達、それ以上前に出るな」「うおおお~・・・っ!!怖えええ~っ・・・♪」「バッツ後ろに下がって、下から風が吹いてるから・・・」


 乗り出して覗き込もうとするバッツの服を引っ張ってロロナが下がらせる。


「「(下から風?)」」


 そこに疑問に思ったのはジンとユティだった。思わず2人も穴を覗き込む。そしてそのタイミングで髪を吹き上げるほどの風が上がって来た。


「?どうした?」「風が下から吹くって事はどこかに通じている穴があるって事」「・・・つまり、他にも通じていると・・・」「だとするとそれが遺跡なのか、はたまたどこか別の場所なのか・・・。これは時間が掛かりそうね」


 少しだけ悩むユティ。しかし、彼女に考えさせる余裕は与えてくれなかった。


〔ジン、来ます!〕「(どこだっ?)」〔下です!〕「下がって!」


 ジンは咄嗟に動き、近くに居たユティを無理矢理、穴から引きはがした。


「「え?」」「何っ・・・?」「は・・・?」


 理解できない4人が反応を返すよりも先に下から強風が吹き荒れる。


「(くっ!サポート!)」〔ダメです。魔力が乱されます!〕


 ジンと近くに居たユティ、ナルシャは無事だったが少し離れた場所にいたバッツ達は強風に煽られ宙を舞う。


「おわあああっ!!」「きゃあああっ!!」


 錐揉み状態でそれぞれが2人が散り散りに分かれる。


「くっ!バッツ!」「せ、先輩!」


 ナルシャが伸ばした鞭の様な武器に腕が絡みつき、バッツは無事にユティ達の下へ。


「ロロナちゃん!」


 ユティも急いで氷の出現させ、ロロナの足下まで滑り台の様に作り出そうと伸ばす。しかし・・・。


「(ここでもっ・・・!!)」


 大穴を通過する様に伸ばしていた氷の進み具合が思った以上に遅い。そして作り出した先からバラバラと欠片が穴の中に落ちていく。

 それでも何とか伸ばそうと魔力を注ぎ込むが・・・時間切れだった。


「え?」「ロロナッ!!」


 突如、風が止んだ瞬間、ロロナは大穴のど真ん中に投げ出され、何も捕まる事が出来なくなってしまった。


〔ジン!〕「(頼むぞ!)」


 ジンは急いでロロナと大穴に無数のシャボン玉を形成しようとするがほとんど焼け石に水だった。ロロナに多少の抵抗を示すがすぐに割れてどんどんと落下する速度を上げていく。


「(え?・・・いや・・・。バッツ・・・)」「ロロナーッ・・・!!」「ナッちゃん!」「ダメだ!」


 飛び出そうとするバッツを抑えて答えるナルシャ。

 ユティの氷は、風が止み幾分か生成速度を上げていくが、それでも崩壊していくスピードも同じでとてもではないが間に合わなかった。


「(どうするこのままじゃっ・・・!)」


 責任者の立場として必死に僅かな時間のなか考える。


「(だめ・・・。どうすれば・・・)」


 焦るユティ。その視界に微かに何かが向かって行ったのを目の端で捉えた。


「「「ジン」君っ!」」


 飛び出したジンは体内マナで一直線にロロナの方へ。そのままキャッチ。向こう側へと飛び越えるつもりだった。


 しかし、またしても異常が起きてしまう。


「っ(引っ張られる!)」〔ジン!〕「バッツ!」「っ!」


 名を呼ばれたバッツが落ちていくジン達の方へ駆け出す。そして落ちていく中、ジンはロロナを投げ飛ばした。


「先輩、皆を頼んだーっ!」「っ!ジンく~ん・・・!!」


 ユティに皆を頼みジンは大穴の奥の暗闇へと消えて行くのだった。


 そして、ジンと入れ替わるように勢いが少々乗ったロロナが宙からバッツの所へと放物線を描いて落下する。


「ロロナッ」「バッツ!・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・!」


 バッツにキャッチされ抱き留められたロロナは、必死に彼にしがみつき荒い呼吸を整えようとしていた。


「ユティ!」「ナッちゃん、私、どうしよう・・・!え?でも・・・。私・・・!」


 パニックになっている親友を抱きしめて、落ち着かせるナルシャ。


「大丈夫だ!彼が頼んだんだ・・・!彼はきっと無事だ・・・!」


 根拠なんてものは無い。それでも今は親友を落ち着かせるのが重要だと思い言葉を掛ける。


「先ずは冷静になれ。落ち着いて・・・深呼吸だ」


 こんなに焦って取り乱す友人をこれまで見た事が無かった。内心、ナルシャも本当は動揺して気が気ではない。それでもどこかで落ち着けという声が頭の中で囁き続けている気がした。


「・・・っ」


 深呼吸する声が聞こえる。それは自分が発している音なのか、それとも親友が出している音なのか分からない。

 それを数回ほど繰り返し・・・頭の中をクリアにしていく。


「・・・ありがとう。ナッちゃん」


 抱き着かれていたユティはそっとナルシャから離れる。その目は先ほどの取り乱していた表情ではなく普段、学園で見ている生徒会長の表情をしていた。


「うん・・・。あの子は大丈夫。きっと・・・」「ああ。バッツ達を頼んだって事は、おそらく助かる手立てでもあるんだろう」「・・・」「お前が自信を無くしてどうする?私よりも彼の実力はユティの方が知っているんだろう?」「・・・ええ・・・!」


 もう一度、ゆっくりと落ち着いて深呼吸した時に見せたユティの表情は、これまで以上に強い意志を感じさせるものへと変わっていた。


「計画は変更。遺跡探索は無し・・・!バッツ君、ロロナちゃんを連れて私達は一度後退・・・」「ダメだ先輩!ここでアイツを1人にしちゃあ」「これは決定事項よ。異論は認めません」


 顔だけを振り向かせ抗議するバッツを切り捨てるユティ。


「それに・・・彼女をどうするつもり?」「っ・・・!」


 バッツは掴む力が増したような気がした幼馴染を置いて行くことは出来ずに沈黙してしまう。


「・・・行く」「ロロナ・・・?」


 バッと彼から離れたロロナの目には怒りにも見える闘志が宿っていた。


「・・・いいの?」


 バッツの我が儘なら、流石に強行するつもりだったユティ。しかしロロナのその表情には自分も同じ気持ちがある様な気がして、つい聞き返してしまう。


「(コクリ)このままじゃ、私はただの足手纏い・・・!そんなのイヤ・・・!」


 あまり見せない幼馴染の表情に驚くバッツ。それだけ彼女が真剣なんだという間近で感じ取っていた。


「ユティ先輩・・・!」「・・・」


 少しだけ目を瞑って考える。

 これからの事、次にどうすれば良いのか、何を優先させるべきか・・・。そんな事をあれこれを頭の中で整理しようとする。


「ユティ・・・。お前はどうしたい?」「・・・ナルシャ・・・」


 優しい友達の言葉と表情に、現実に引き戻されたユティ。

 そして1つの決断を下した。


「ゴメン・・・!皆、手伝って・・・!」「はい・・・!」「ああ、やってやる!」「・・・」


 やる気を見せる2人と声には出さないが同意する親友。


「ありがと・・・」「何の事だか・・・」「ふふ・・・」「はは・・・」


 自然と2人の間に笑いが出てくるのだった。






 【ジン・フォーブライト(純、クリス)】8才 (真化体)


 身体値 21

 魔法値 17

 潜在値 16


 総合存在値 23


 スキル(魔法): 硬軟緩衝、棒術 0、マナ精緻

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