266 なりふり構っていられないのはわかりますが、巻き込まれた方はもっとたまったもんじゃありません
「んも゛う゛~・・・限界・・・!」「だから止めようって言ったのに・・・」
調子に乗って魔力を解放してツルハシを振り続けたバッツは大の字になって倒れ込んだ。
「お疲れ様~♪・・・うん、多分、予定の数以上の鉱石を掘れたんじゃないかしら?」「だろうね・・・こんだけ頑張れば・・・」
バッツとロロナ・・・。特にバッツの所には彼の体を半分くらいの高さになるくらいの直径数十センチはくだらない岩がいくつか転がっていた。
「・・・コレを運ぶのは大変かしら」「私達が運ぶかい?」「ん~・・・」
微笑んでいた彼女も、ナルシャの質問に改めて、現場の掘り起こした数々の岩を見て困った様な顔をする。
「どうしたものかしら?」「お~い?調子の方はどうだ~・・・って、すげぇ掘ったじゃねえかお前達・・・!」
グットタイミングでガイタスが様子を見に来てくれたのだった。
「ガイタスさん。スミマセンがこれを運ぶ──」「ああ、気にしなくていい。お~い誰か来てくれー・・・!」
ガイタスは大声で後方へ呼びかける。それに何人かが聞きつけ、事情を知った作業員がバッツ達に変わり手伝ってくれたのだった。
「ありがとうございます」「ああ、いいって事よ。それにしてもやっぱり魔力を持っている奴らは違うな・・・。学生でもこれだけ掘れちまうなんて」「まあ。おかげであの様ですけど・・・」「お・・・おぉぉ~・・・」
ガイタスに反応して手を上げるバッツだがその声と手は震えて弱弱しかった。ロロナはそんな幼馴染を呆れつつも、自分も力尽きているのか女の子座りで休憩していたのだった。
「全く・・・バカなんだから」「へ・・・へへへ・・・」「褒めてないからね」
そんな2人置いて、ユティはジンの所へと向かう。
「ジン君。君のもガイタスさん達に運んでもらいましょ?荷車を持って来てくれるそうだし」「ん?ああ、じゃあ・・・お願いします」「(これくらいじゃあ、息も切らしてないか・・・)」
ジンはツルハシを回収に来てくれた作業員に頭を下げて礼を言いつつ、集めやすい様にバッツ達の傍にまで掘った鉱物を移動させていた。
そんな現場を見たガイタスは顎を擦りながら呟く。
「しかし、これだと報酬をたくさん用意しないとだな」「予定以上を掘ったのは彼等の判断ですので、あまり気になさらないでください」「ん?しかし」「私達の本分は学生ですので・・・あまり・・・」「そうか・・・経験を積ませるって話だったな。分かった・・・。まあ、これだけやってくれたんだ多少の色くらいは付けさせてもらうが構わないか」「ありがとうございます」
ジン達に変わって、ナルシャがガイタスと話をまとめたのだった。
・・・・・・
「うう゛う゛う゛ぅ・・・。か、体が・・・」「解放しすぎたせいだ。魔力が残っていないのだろう」
ガクガクと体を震わせ、腰を落としてヨロヨロと歩くバッツ。
「もう・・・ほら、肩を貸してあげるから」「で、出来れば・・・」「ん゛・・・!?」「な、何でもありません。ありがとう・・・ございます」「よろしい」「「?」」
一瞬振り向いたバッツに疑問に思ったユティとナルシャだった。
〔欲張り過ぎですね。まあ、あれくらいの事はジンもあった方が・・・〕「(何で俺に振る)」〔いえ、もう少し思春期少年らしくと思いまして・・・〕「(余計なお世話だ)」
バッツ達の後に続き、ジンは相棒の言葉に呆れつつ、鉱山の開けた場所まで移動するのだった。
「・・・ふむ。これくらいありゃあ十分だな」
数と中に入っている鉱物の測量をザッと計算したガイタスは1つ頷くと、依頼書にサインを書いた。
「これで俺の依頼は達成したわけだが・・・。お前さん達はどうするんだ?」「それは・・・」「明日も掘ってみたいんですけど・・・いいですか?出来れば鉄鉱石以外も見てみたいんですけど」
チラッとバッツ達がジンの方を振り向く。それに対して少し期待した眼差しを込めてジンはガイタスにお願いする。
「・・・ははは。変わった坊主だな・・・。分かった、明日も来てくれ。今回掘ってくれた場所よりも少し深い場所を頼もう・・・。構わないか?」「ええ。この子達が望むのなら、私の方は」「私も同じく。勝手を言って申し訳ない」「いいさ、いいさ。こっちとしちゃあ、鉱物はいくら有っても困りゃあしねえからな」「ありがとうございます」「ありがとうございます」
ジンに続きユティも礼を述べた。それに続く様に頭を下げたバッツ達だった。
しかし、そこでふと思い出したようにガイタスは神妙な顔つきへと変わった。
「っとそうだ・・・。念のために言っておくが、あまり奥には入らねえでくれると助かる」「それは、まあそのつもりですが・・・」「何か?」「ああ・・・。ちょっとした噂があってな」「うわ、さ・・・」
ようやく回復してきたのか1人で歩いてきたバッツがガイタスの傍へと寄った。
「ああ。ここはよう。あのように魔法のランプで周囲に明かりを点けて、周囲を明るくしてから掘ってるんだがよ・・・。奥・・・ここよりも更に下の深い階層になるとほとんど明かり点かないんだ」
ガイタスは等間隔に取り付けられた魔法のランプを指して説明してくれた。
下宿先モンダールでも見たモノと似ている。しかし、ここのはもう少し実用的で大きく作られたモノだった。
その中には、ここで掘ったのだろう魔力を宿した鉱石が入っており、それを使用する事で周囲を明るく照らしていた。
「何かの魔法、ですか?」「いや、それが分からねえ。この鉱山の中にも魔法などを吸収しちまう鉱石が壁には含まれているが・・・それにしては強力過ぎる。純度の高い鉱石系のランプでも半径数メートルしか明かりが点らないのは異様だ。ちょっと前に、冒険者ギルドに頼んで調べてもらったんだが・・・よく分からないらしい」「へ~・・・何ででしょう・・・?」
頬に手を当てて考えるユティ。ナルシャも口元を隠す様に握り拳を作って考える。
「理由は分からないがここには遺跡が眠っているって噂が昔からあってな・・・」「え、遺跡・・・!」
飛びついたバッツ。それに乗っかって楽しそうに顔をニヤつかせるガイタス。
「ああ。昔から伝わる話でな。ここには縦に大きく開いた大穴があるんだがとても深くて誰も降りた事がねえんだ。降りようにもどこまでも続いているのか分からない上に、魔力を吸収する鉱石が埋まっているせいで、魔法を使って降下する事も出来ない。更に、ランプの光も射せねえから視界は真っ暗だ。そんな状態で下りていく。無鉄砲な奴はそう現れねえ」「・・・って事はいたって事?」
こういう時は頭が冴えているのかすぐに、過去に誰かが挑戦した事に気付くバッツ。それに更に口角を吊り上げたガイタス。その顔をバッツの方に少しずつ近付けて、声のトーンを落とし脅すように喋る。
「ああ。居たさ・・・ここは俺達、鉱山チームだけじゃなくて冒険者達も来る。モンスターが出るしな。だから深い階層に入れば入るほど、どこからかモンスターが這い出てくるんだよ・・・。そんなモンスターを物ともせずに、力に自信があった奴らが挑んで向かって行った。穴にも飛び込んで者もいたらしい・・・」「・・・(ゴクリ)。そ、それで・・・どうなったの?」
心なしか声が上擦り始めたバッツ。ジン達からは見えないが、更に顔や体を近づけバッツに影を濃くしていくガイタス。その顔はとても楽しそうだった。
周囲の作業員たちもやれやれと肩を竦めて笑っていた。
「あくまでもウワサだ。俺は知らねえが過去にそんな奴らがいたって話だ・・・。もし、本当にその遺跡が真実で誰かが見つけたのなら・・・コレがウワサで終わるはずがねえ」「つ、つつ・・・つまり・・・?!」
仰け反って後退りしようとするバッツ。しかし、ガイタスの凄みに動けずにいた。
その時だった。
「・・・ァァァァ~~・・・ッ!!」「ヒッ!」
遠くの方から何かが聞こえ飛び跳ねる。
「ん?」
覗き込むように見下ろしていた姿勢から戻ったガイタスは、声がしたであろう方角を見る。
ジン達、他のメンバーも同じ方角を見る。すると、徐々に微かな、何かを叫んでいるような声と足音・・・。そして、それに続く様に少し遅れて、床を微かに振動させる様な足音が続いてきた。
「これは・・・」「おい、武器を持て。お前達、疲れてる奴らは下がらせ、出てきた所を叩け」「了解でーす」
ガイタスは腕を組んだまま、作業員達に指示を与える。受けた者達は移動を開始、壁に立てかけてあったツルハシやハンマー、斧なんかを持ち出して、向かってくる足音の先を見据えて構えた。
「はあ、はあ、はあ゛っ・・・!!」
なりふり構わずジン達がいる広間に飛び出してきたのは数人の冒険者パーティだった。そして、そのまま彼等は魔法のランプ射す明かりに沿って駆け抜けていった。
「アイツ等・・・。はぁ」
微かな舌打ちをして、走り去って行った冒険者達を見ていたガイタスは頭を掻いて、作業員達に号令を告げる。
「戦闘準備!・・・散らかる前に刈り取れ!」「「「おう!」」」
腰を落とし武器を持ち直す鉱山作業員達。
「い・・・いったい何が・・・?」「モンスターだよ」「え?」「分かるの?」「数までは・・・いや、小さいのは54。大きいのが・・・多分37体くらいかな?」「ここから気付くって・・・。君は支援系に向いているのかな?」「あの・・・?」「あなた達は疲れてるでしょ?ここは下がって」「やれやれ飛んだ面倒を起こしてくれたな」
状況が分からないバッツとロロナの前に、腰に差していた剣を抜いて構えるユティとナルシャ。
「加勢します」「ありがてえ・・・。さっき、そこの坊主が言ってた数は・・・?」「全部ではないでしょうけど。おそらく、それくらいはいると考えてください」「半分ほどは我々の方で受けましょう。先に始末で来た方から、加勢するという形で・・・」「あ、ああ。よろしく頼む」
少し意表を突かれつつも気を取り直すガイタスは、仲間が持って来てくれた大きめの斧の柄を両手で持った。そしてこれから来るであろうモンスター達に備えて力を溜めるのだった。
ドスンドスンドスンドスン・・・!!
徐々に振動が大きくなっていく。それによって天井から石の欠片と砂が落ちてくる。
「・・・私達が先行します」
ユティとナルシャが作業員達の間を掻き分け先頭へと歩く。
そして、ほんの少しの間の後、急に1メートル位のハリネズミやモグラから、大きな蝙蝠。そして体中が岩や石で出来た巨大な彫刻のモンスターゴーレム達が飛び出してきた。
モンスターパレードである。
大量のモンスターを押し寄せ、対処できず。冒険者達はそれをジン達になすり付けたのだった。
「・・・ふ」
細剣に魔力が瞬時に宿る。急速にユティの剣の周囲に渦巻く様な霜が現れ、そのままモンスター集団に向かって水平に切り払った。
サアアアー-・・・バキバキバキバキ・・・!!
地を這うようにして彼女が放った魔力が放射状に白い線が伸ばし凍り付いて行く。
「「「・・・ぎゃああ・・ア・・・・!」」」
飛び出してきた最初のモンスター達は彼女の攻撃をモロに当たってしまい、叫び声が途中で止まってしまった。
氷モンスターの彫刻の出来上がりである。
しかし、それもすぐ後続にやってきたモンスター達によって粉々にされてしまった。
「・・・しっ!」
ユティが切り払った後。彼女の頭を飛び越えた、前に飛び出したナルシャが、飛び出してきた後続達に向かって鞭のように伸びた剣を横薙ぎに切り裂いていく。
「ギャアアア・・・!!」
彼女の攻撃で倒されたモンスター達が数匹。しかし先ほどのユティに比べると破壊力は無く、一番前に飛び出してきたモンスターのみだった。だが、彼女の攻撃を掠めてしまったモンスターは剣が纏う紫色の魔法同様、突然スパークを起こし痙攣していたのだった。
〔雷系ですか・・・〕「(掠めても耐性や対策がないと動きを止められるな)」〔ジン・・・〕「(分かってる)更に追加が来ます。その数、51・・・!」「「!」」
戦闘で立ち回り戦っていたユティ達も聞こえたのかジンの声に反応して、ある程度の数を倒すと同時に一度、飛び退く。その時に数と向かってくる方角を誘導して、乱戦にならない様に調整する。
「よっしゃ!お前等!少ねえほうを叩け!姉ちゃん達の邪魔は済んじゃねえぞ?」「「「おうっ!」」」
ガイタスの合図で、孤立してしまったり少数になってしまった方を叩いて行く作業員達。動きそのものは戦闘技術がある者と比べるとお粗末なモノだが、仲間同士の阿吽の呼吸の様なモノで誰にも被害を出すことなく倒していく。
「ユティ!」「わかった!」
ナルシャの掛け声で、大型が集まるモンスター集団をガイタス達に向かわせないように氷の円形の檻にて包囲する。その上をナルシャが攻撃して次々とモンスターの数を減らしていく。
当然、ユティも大型を狙って巨大な腕や胴体を切り裂き、被害を最小限に抑える様に留める。
「っ・・・。思ったよりも硬いわね」「下の階層からのモンスターだからだろう。体内に含まれているマナが多く、純粋に強化されている様だ」「生まれた場所の性質も受けている様ね」「小さい方は私が倒す」「分かった、その間、足止めしとく」
倒しながら、戦闘中に合流するタイミングで作戦を決めて2人はすぐに自分達の役割を分担して行動に移していく。
〔実にスムーズな連携と対応力ですね〕「(ああ。流石にコレを初等部にいきなり求めるのは無理だろうな)」
長年の研鑽と努力の賜物だろうと感心して見ているジン達だった。
「・・・すげぇ・・・」「カッコいい・・・」
バッツとロロナも、ユティとナルシャの戦い方や連携に見惚れているようだった。
「(ボソ)おっと・・・危ない」「え?」「なに?」
ユティとナルシャにもほとんど見えない何かが突然、モンスター達が来ていた穴の奥に向かって飛んで行った気がして2人は止まってしまった。しかし、それもほんの一瞬の事。すぐに戦闘を続行したのだった。
「(今、何かあった?)」「(いや、私には・・・)」
一瞬のアイコンタクトでお互いに何が聞きたいのかを理解した彼女達。
しかしナルシャが微かに首を振って答えた事で分からなかった。だが、お互いに何かを感じたという事は気のせいというワケではないと思い、チラッと視線だけを遥か後方に居る幼い少年へ向ける。
「(何かしたの?)」「(私やユティが見えない何かを彼は・・・)」
彼女達が見えなかったモノは、風による衝撃波を最小限にしたジンがそこらに転がっていた小石を投げたモノだった。
穴の奥で巨大ハリネズミが彼女達やガイタス達に目掛けて針を飛ばそうとする殺意を感じ、対策を取った結果だった。
「「?」」
突然の風に不思議に思うバッツとロロナ。彼等には何が起きたのか全く分かっていなかった。
〔ハリネズミとその奥にいたモンスターの数匹は死んだようですね〕「(弾丸のように横回転させるって・・・。そりゃあ貫通力ますよな)」〔ええ。思った以上にジンが強くなっていて私も驚きです。彼女達が掠めていたら、当たった部位が綺麗に抉り取ってしまっていた可能性がありますね〕「(怖いコト言うなよ。まあ、外すわけないよな?)」〔当然〕
お互い分かりきっていた事を敢えて確認しあうジン達だった。
・・・・・・
「どっこら・・・せっ!」
ガイタスの斧の振り下ろしを喰らい、大きく血を撒き散らし、絶命するモンスター。
「お~っし、これで終わりだ・・・!ご苦労だったお前達」
斧の先を地面に付いて、戦闘の終わりを告げるガイタス。それを聞いた瞬間、一気に疲労が出てきたのか座り込む作業員達が多く出た。
「おいおい。体力がねえな」「アンタが化け物なんだよ」「がっはっはっは。そう褒めるな」
実に愉快そうなガイタス。誰にも負傷者がいない事でその表情はとても明るかった。
「お疲れ~ナッちゃん」「ああ。ユティもな」
それぞれ武器を戻し、ゆっくりとジン達の方まで戻ってくる。だがそれも途中で止まった。
「す・・・すごいです、ユティ先輩!!」「カッコ良かったですナルシャ先輩」
目をキラキラと輝かせた2人がズイッと前に乗り出してきたからだった。
「え、ええ。ありがとう」「2人は無事だったか?」「「はい!」」
素直に返事を返すバッツ達に思わずユティ達もお互いを見て微笑んでしまった。
「・・・あ、ジン君。君も大丈夫だった?」「ええ。ありがとうございます。ユティ先輩達のおかげで何ともありませんでした」「そ、そう?・・・そう♪?」
思った以上にジンにお礼を言われた事が嬉しいのか気を良くするユティ。その場で少しだけ踊ってしまうほどだった。そんな彼女を置いてジンに近づくナルシャ。
「・・・君は何か・・・」「?」「あ、いや、何でもない。無事でよかったよ」
首を振ったナルシャはジンの肩を置いて微笑んだのだった。
【ジン・フォーブライト(純、クリス)】8才 (真化体)
身体値 21
魔法値 17
潜在値 16
総合存在値 23
スキル(魔法): 硬軟緩衝、棒術 0、マナ精緻




