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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
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247 枷と・・・むっつり?(違う・・・!)

〔ジン・・・〕「(何?)」〔・・・遅すぎです〕「(何が?)」


 フォラウスト家の地下室にある訓練場から退出して歩き出した頃。誰もいない事を気配で察知していたサポートが突然、ジンに話し始めた。


 ジン達はこの屋敷での最後の朝という事で、訓練で掻いた汗を流しに浴場へと向かっていた。フォラウスト家のお風呂場はとても大きく。数十人は余裕で浸かれてしまうほどの大浴場といっても問題ない大きさだ。そこでのんびりまったり出来るのはジンにとって、かなりの精神的癒しになっていた。

 だからか、その足取りはとても軽やかだった。


 そんな中での、突然のサポートからの言葉である。


〔何がじゃありません。棒術のスキルを習得するのにどれだけ掛かっているのですか。こんなの私なら初日に掴んでいます・・・!!〕


 どうやら思った以上に相棒はご立腹なんだと、ジンは悟る。


「(あ、スキル覚えたんだ)」


 しかし怒られている当の本人は思わぬ成果に少し喜んでいた。


〔あ、じゃありません。出発の直前って・・・いったい何回死ねば済むのですか・・・!気は確かですか・・・?!〕


 ひどい言われようだと思ったが声には出さなかった。


「(いや、そもそも死んでないし。実際、習得できたんだから問題ないだろ。・・・それに、最後の方は体捌きもそれなりに良くなってただろ?)」〔・・・・・・及第点といっておきましょう〕


 少し長めの間があったが、サポートもジンの成長自体は喜ばしいようで、褒めと不満が半々といった所だった。認めるが、それだけに慢心もしてほしくないという心境があったのだ。


「(な?だったら──)」〔しかし、そのために何度も死んでいたら勝負どころの話ではありませんよ。今回の訓練・・・。ジンが棒術と体捌き、戦闘技術を習得するためにいったい何百・・・いえ、何万回死んだと思ってるんですか!〕「(万は言い過ぎだろ──)」〔シャーラ―ーップッ・・・!!〕


 反論を言おうとした瞬間、まさかの英語で返された。


「(何故に・・・?)」


 どう反応、突っ込むのが正しいのか対応に困るジン。とりあえずサポートの話を聞こうとスキップ気味だった足取りを普通に戻す。


〔あれでは・・・。いくら何でも遅すぎて話にならないのです。・・・まあ、ジンにこの手の才能がほぼほぼ皆無なのではという可能性があったのを見落としていた私にも責任はあるでしょう〕「(ひどい言われようだ・・・)」


 見えないが、頭を抱えて首を振られている姿が想像出来てしまったジン。


「(あ、いや、うんまあ・・・。今までお前の助けがあってここまで来ていたんだ。本来の俺の実力なんてこんなモンだよ?それをいきなり過度に期待されても・・・)」〔その点に関しては私も反省しております。ですから・・・ここからは、私の方でもジンに修行というかちょっとした練習を課します〕「え?・・・うおおおっと・・・!!」


 思わず前のめりに倒れそうになり慌てて体を起こして、無理矢理元の姿勢に戻した。


〔私の方でも気配探知やマナコントロールの修練を積んでいくつもりです。その間ジンは、私が定期的に送る、その不安定なマナを自身の力だけでコントロールしてください〕「いや・・・これ・・・」


 ジンは先ほどまで普通に歩いていたが今は一歩一歩がとても大地を踏みしめていくような重い足取りだった。


〔ついでに、ジンが無意識に放出または纏っていたマナも私の方で強制的に遮断してとても濃度を薄めております。更に、この星が持つ重力を利用してジンの足元にだけ多少重くなるように仕組んでおきました。もし、先ほどまでの通常状態にまで戻したいのであれば、常時一定以上のマナを纏うよう密度を繊細に上げて、行き渡らせなくてはいけません〕「(ま・・マジかよ)」


 まともに動けるようになるため、体内を巡るマナを急ピッチで循環させていくジン。しかし、その度にサポートが強制的にそのマナを吸い上げる様にしてジンの中に感じるマナをどこかへと奪い取っていく。


「(ちょっ・・・!それは取り過ぎ・・・!)」〔おや、失礼〕


 90%以上も取り上げられてはまともに動けるはずもなく、流石に抗議したくなった。サポートもそれには気付いたようでほんの数%ほどジンに返す。


「ん・・・んんん~、んん・・・・!」


 誰もいない場所だからこそ、ジンは最大限の体内マナを無理矢理引き上げていく。


〔まだ荒いですよ。そこから一本一本を細い糸を・・・。小さな部品に電気信号を送るように精密に・・・〕「(む・・・無茶苦茶な・・・)」


 必死に何とかそのイメージをして流そうとするジン。


「(部品・・・部品・・・。荒いって事は・・・流す強さ・・・)」


 ジンは目を閉じてゆっくりと流れていくマナのパイプを細く・・・精密な機械の様にする様に変化させていく。イメージは漠然とだが、テレビで見た様な細かなチップの1つ1つに連鎖しつつ綺麗に流し、伝達するイメージを持って・・・。


〔そうです・・・。やれば出来るじゃないですか。(やはりジンには命がけでの方が火事場の何とやらで一気に成長しそうですね)〕「(変な、悪巧みしている所申し訳ないけど・・・。ちょっと黙っててくれるっ?)」〔あら。(マナを細かくしたことで私の思考にまで感じ取れるように・・・?)〕


 ジンは少しの間、地下室の壁に手を付いて目を閉じていたが・・・。やがて、その目がゆっくりと開いて行く。


「・・・っふう~・・・」


 戦闘訓練以上に余計な汗を掻いた気がしながらジンは再び歩き出した。再開したすぐ目の前には階段が現れ、それを上っていく。


〔お疲れ様です。まあ、ここから私の方でどんどんあなたを外だけでなく内側から鍛えていこうと思います〕「(加減ってモノを持ってくれよ。これじゃあ敵が現れた時、すぐに反応できないぞ)」〔そのために私自身も鍛えると言ったのです〕「・・・」


 ジンもサポートが自分を思ってやってくれている事だからあまり強く言うつもりはない。しかし、元がジンの魂の一部。更に、色々と楽しみが増えると制御が利かなくなる節がある。それが最悪な結果にならない事だけは、どうしても祈りたいジンだった。


「・・・(それで?どうしてこんな事を)」〔以前、純の家にあった漫画等を参考に。修行といえば枷を付けられたり。または無効化状態の中を自分の力を制御されないくらい濃密にさせるといった内容があったので・・・〕「(それ、漫画の世界の話だからね・・・!)」


 現実に、それをされてる身としては堪ったもんではない。


〔しかし、効果は絶大ですね。スキル(棒術)なんかよりもさっそく出ているではありませんか〕「(そりゃあねっ!そうしないと動けないからねっ!)」


 時折、この天然の様な発言をする相棒に思わず突っ込みを入れたくなるジンだった。




「・・・ぁぁああああ~~っ・・・。気持ちいい~・・・♪」〔ジジ臭い・・・〕


 頭を台座の縁に乗せ、体を浮かせて流れてくる湯船のお湯の波に揺られる。1人だけの広々とした空間でジンはゆったりとお風呂を満喫していた。そのまったりしている顔を見たサポートの感想がソレであった。

 フォラウスト家の従者達が、定期的にチェックし。また専用の魔法道具も使っている為に1日中。お風呂に入れる状態になっていた。


「ふん~~・・・♪こういうのって、流石に日本ではあまり味わったこと無いから・・・。はぁ~・・・こんなに開放的なのも悪くないな~・・・♪」


 波に揺られてながら天井を見る。細部にまで拘りがあり、天井や壁には自然な森と何かの絵が描かれている。よくは知らないジンだが、自然と目がいってしまう事もある。何とも魅力的な何かがその絵にはあった。


「・・・(さてと)」


 湯船に使ったが、もう一度体をサッと流すためにシャワーの付いた洗面台へと向かって体にお湯を掛ける・・・すると。


「ああーっ!ジン君・・・♪」「また1人で、入ってた・・・」「(やばっ!)」


 突然、大浴場の入り口から入って来たリエナとパミルがジンを発見して向かって来ようとする。ジンは焦りつつも丁度、頭にシャワーのお湯を掛けている最中だった。コレを利用して聞こえなかったフリをしようとする。そしてそのまま、後ろを向いたまま退出しようと考える。・・・とそこへ。


「あらあら1人で入れて偉いわね~ジン君は・・・♪」「ほらリエナ、走らない。転ぶでしょ?」


 さらにパミルの母、リレーネと。リエナの母、カルローラが入って来た。


「ねえねえ?どうして一緒に入ってくれないの?」「私達は気にしない」「・・・え?な、何?」


 そう言って聞こえないフリを決め込もうとするが。その時、接近する気配を感じ取った。


「ねえ。もう体洗ったの?じゃあ、一緒にお風呂入ろ」「待ってリエナ。体洗うのが先」「(っぐ・・・。気のせいだ・・・!)」


 繊細にマナを感じ取る訓練が幸なのか仇なのか・・・。ジンの背中に寄りかかるようにしてリエナ、パミルが乗っかって来た。相棒がついさっき、修行として課した枷のせいで2人の柔らかい肌をしっかりと鋭敏に感じ取ってしまう。そこへさらに、もっと柔らかい別の何かが押しつぶされている感触を意識した瞬間、ジンは即座に立ち上がった。


「えっ!・・・へエッ!!その声、リエナとパミルっ!じゃ、じゃあ俺はこれで」


 わざと大声で驚いたフリとしつつ、そそくさとお風呂場を出て行くジン。


「あらあら♪」「危ないから、走らないようにね?」「は、はいーっ!!」


 湯気で大事な部分は上手く隠れていた。が、それでも一瞬・・・。ギリギリラインを責める様に、湯気に切れ間が出来て、入口に立っていたリレーネのカルローラの裸体がハッキリと見えそうになった。ジンは急いで下を向いて走り去るのだった。


「ええ~~・・・!最後だから一緒に入りたかったのに」「・・・いずれは一緒に・・・」


 仁王立ちの様にして残念そうな顔をするリエナと、小さく拳を握り締め、何かを決意するパミルは走り去っていくジンの方を見ていた。


「・・・コレはどちらが先かしら♪?」「・・・まだ先の話よ」「あらあら♪そうかしら~?」「・・・」


 ジンの去って行く後ろ姿と娘の姿を交互に見ながら何かある含み笑いと、どうしようか考えているカルローラだった。


 荒い息を吐きながら急いで自分の服を着て、浴場を去ろうとするジン。その時、頭の中に向かって睨む感じも忘れていない。


〔おや?これは私としたことがいやーうっかりうっかりー・・・〕「・・・」


 ジンは無言でまだ途中だった服を着ていく。


〔あ、あれ?ジンー・・・。い、いや~本当にちょっとした冗談ですよ。それにこういうサプライズがあっても良いと私は──〕「(狙い過ぎ。俺はこういうのは──)」〔でも・・・、しっかりと感じ取ったのでしょ?2人の・・・?いえ、見たという意味では4人?〕


 からかうその声に否定したいが、事実は変わらない。その為ジンは無言を貫くしかない。しかし・・・。


〔このムッツリ〕「(う、ううるさい・・・!)」


 慣れていない事や動揺もあってサポートに対して返した声はヨレヨレだった。




「・・・っっ!!ジン君っ!リエナちゃん達と風呂に入ったんだって?!ぶぼごっ!!」


 出立の為、準備を整え屋敷の外へと集まっているジン達。そこへジンの両肩を掴みものすごい勢いで詰め寄って問いかけた言葉。それを聞いた瞬間にカルローラから盛大な右ストレートが繰り出された。見事な空中錐揉みで飛んで行き、屋敷の扉近くまで飛んで行く。


「ちょっと、お父さん声が大きい!」


 流石にちょっと恥ずかしいのか頬を赤らめるリエナ。


〔ジンとは平気でも、周囲に知らされるのは恥ずかしいのですか・・・〕


 他人事のサポートはただただリエナの反応を客観的に分析する。


「だ・・・だって・・・。リエ、ナ・・・ちゃん、パパとは・・・」「もう!一緒に入らなくてもいいでしょっ!」


 血をダラダラと流しながらゾンビの様に這い上がってこようとしたミゲイラは、怒ったリエナの一言で灰へと変わる。


〔器用なヒトですね・・・。いえ、それに周囲のマナが合わせようとしていると?〕


 よく分からない発言をする相棒は無視して、ジンはとりあえずはと挨拶をする。


「色々とお世話になりました。ありがとうございます」「へ?あ、ああいや・・・。オホン。うん・・・。君には私の方も色々と助けてもらったからね」


 突然ジンが真面目に話しかけたので領主モードへと切り替えるミゲイラ。その切り替わりにカルローラはため息を、リレーネは笑って流していた。


「(そうだったか?)」


 ジンはただ自分の我が儘を終始通してくれていただけに感じている。だがミゲイラにとっては、かなり町全体の利益、運営にジンが役立ってくれたことに感謝していた。


「それと・・・前にも言ったが。無理をする必要はない。もし学園生活が無理だと思ったら。いつでもここに帰って来なさい。ここは、君の第2の家だと思ってくれて構わないからね」「・・・ありがとうございます」


 ミゲイラの優しい笑顔にジンは頭を下げて礼を言う。そんなミゲイラの言葉にカルローラもリレーネだけでなく・・・この屋敷で働く者達、皆がジンを優しく受け入れてくれていた。


〔・・・大変ありがたい事です。見ず知らずの私達なのに・・・〕「(うん・・・)」


 サポートの言葉に同意しつつもジンの顔はミゲイラ達に釣られて自然と笑顔になっていた。


「それと・・・。一応今日の行程の話だが・・・。私が許可を出した紙を、そこの者に預けているから、ワープポイントを使えば2,3日でおそらくリエナ達が通う街には予定になっている。今日はその中継地点の森の町へと向かってくれ」


 ジンが振り返ると預かっている筒を持ち上げて1人の騎士がアピールしてくれた。


「森の町?」


 リエナやパミルは知らないのかお互いを見て、ミゲイラの方へ振り返る。


「ああ、森の町ってのは通称さ。正確にはちょっと長かったから忘れちゃってね。そこに住んでいる者達もその呼び名がしっくりきているから、皆、そう呼んでいるんだよ?」「ふ~ん・・・」「・・・森の町・・・」


 リエナもパミルも興味はあるようだけどいまいちイメージが定まらないのか首を捻っていた。それを見たカルローラ、リレーネが教えてくれた。


「森といっても正確には大きな森の木の中をくり抜いて住んでいるエルフ族の多い町よ?」「ここよりは自然の中で生きているって感じだけどー。その木と木を橋で渡ったりと、町というくらいで割と大きな町なのよ~」「へ~・・・」


 ジンがイメージしたのは、少しこじんまりとした場所に木と自然の調和を重んじ。そこで家を建て、住み付いた者達をベースに考えていた。だからもう少しザ・ファンタジー要素を多くイメージしていたのだが・・・少し違うようだ。


「まあ・・・列車が走っているわけじゃなしけどね~」


 少し眉を下げて困った顔をするリレーネ。そこへカルローラが口を挟む。


「仕方ないわよ。あそこに鉄道とかは敷けないもの」「でも~・・・。あんなにたくさん橋を作っているし~・・・。あの町って端っこまで行くのに以外に疲れるじゃない?」「この町に比べたら数区画程度でしょ」「う~ん・・・」「呆れた・・・。あ、最近、運動したくないから・・・」「そ、それとこれとは違うでしょ~・・・!」


 チラッとカルローラの視線が下・・・。リレーネのお腹へ移っている気付いた彼女は手でガード。ほっそりとしながらも出る所はかなり出ているリレーネ。しかし、長い付き合いのカルローラは何かわかるらしい。


 若い騎士達はリレーネの艶めかしい動きに顔を赤らめていく。そこへ話が進まないと咳ばらいをミゲイラが1つ。すぐにピシっと姿勢を正す騎士達。


「ま、とりあえずは森の町へ向かいなさい。他に何か入用だったら、騎士達に言いなさい。少し時間は掛かるが手配しよう。安心して行ってきなさい」「・・・はい」


 ミゲイラはジンの返事に軽く頷いた後、娘達の方を見た。


「リエナ、パミル。君達もあまり無茶をしてはダメだよ?これはパパとしてのお願いだ」「分かってる」「うん。大丈夫・・・」


 元気に答える娘達に少しだけ不安がないことも無いミゲイラだが、とりあえず納得した様子。


「それと・・・」「なに?」「?」「ベラールとガジェットにも、仲良くな?」「・・・はーい」「・・・大丈夫」


 リエナは渋々。パミルは謎の間の後、納得?を示していた。


「(不安だ・・・)まあ、お前達も立派な女の子として、これから学園生活をしながら学んで行くといい・・・。それに・・・(ボソ)認めないが・・・」「「?」」


 ミゲイラは2人にだけ聞こえる様にしゃがみ込んだ。リエナとパミルも耳を寄せる。


「(ボソ)お前達も、いずれはとても綺麗な女性になる。その時、もし乱暴な振る舞いばかりしているといずれお母さ──」「あなた・・・?どうかしたの?」「何かあったのかしら~?」「い・・・いや、何も・・・。ただ娘達に変な虫が付かないための伝授を」


 すぐ後ろに佇む母親達からのプレッシャーに負けたミゲイラはダラダラと冷や汗を流しながら誤魔化そうとした。それに対し、カルローラとリレーネは無言の笑顔。親指で屋敷の方を指したのだった。ガックリと項垂れるミゲイラ。


「そ、それでは・・・お嬢様。行ってらっしゃいませ」


 気を利かした騎士隊隊長が声を掛け、周りもテキパキと動き出した。


「お世話になりました」「いや。君のおかげで私の方も色々と学ぶモノがあった。ありがとう・・・。向こうでも元気で」「はいっ」


 ジンは隊長に改めて礼を言って、リエナ達が乗る馬車へと乗った。


「行ってきま~す」「行ってきます・・・」


 元気よく手を振ったリエナとパミル。そして、ジンの乗った馬車が隣国ジルベガンの学園を目指して出発したのだった。



「・・・寂しくなるね~」「はい・・・」


 少しだけ叩かれて倒れていたミゲイラは自然な雰囲気で隊長の隣に立つ。小さくなっていく馬車をカルローラとリレーネは見えなくなるまで見送っていた。


「っで?どうだった?」「はっ。フォーブライト・・・。どこかで聞いた名でありましたので調べるのは簡単でした」「という事は例の?」「はい・・・」


 隊長は小粒になっていく馬車を眺める。その顔には悲しみと怒りが混じっていた。


「どこまでが本当かは知りません。ですが・・・彼の置かれた境遇。その時の話が本当であるなら・・・彼らを罰した者達を許せるのか・・・」


 隊長は・・・いや、ミゲイラもジンという人物を気に入っている。だからこそだろう、隊長は自然をジンに肩入れしてしまっていた。


「という事はやはりデマ?」「そうとも言えないのが厄介な所でして・・・。どうも、その辺りの話を詳しく知っている者が誰もいないようなのです」「裏工作か・・・。アレほどの大きい町の住民をどうやって・・・?」「ひた隠しにしているとの噂も。悪い話が流布されているようで。地元の者も・・・」「悪い噂に振り回される・・・か」


 もはや見えなくなったジン達の馬車。しかし、ミゲイラは未だに視線を離さず会話を続ける。


「裏切者、フォーブライト家の謀反。オーラルとの共謀・・・」「今、わかっているのはそこまでですが・・・どうしますか?諜報の専門にさらに集めさせますか?」「・・・いや、いいだろう。あの大規模を隠蔽したって事は、厄介な者達が裏に居そうだ。こちらに死者が出る前に撤退しろ」「・・・分かりました」


 ミゲイラは言い終え、ゆっくりと屋敷へと戻っていく。


「私は約束した・・・。だからこそ、この場所も、彼も守る責任がある・・・」


 ミゲイラの目は何かを見ていた。しかしそれが隊長には、分からない。それでも分からなくていいとも考えていた。

 何故なら、これこそがミゲイラ・コン・フォラウストのもう1つ顔だからであった。


「(我が街を・・・家族を・・・。国に敵対する者には容赦せん・・・)」






 【ジン・フォーブライト(純、クリス)】8才 (真化体)


 身体値 18

 魔法値 15

 潜在値 12


 総合存在値 21


 スキル(魔法): 硬軟緩衝、棒術 0

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