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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
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24 初の魔族は意外と普通だった?

「それでクリスあなたは何しに来たの?」


 ラーナはクリスに興味を持ち聞いてきた。


「え?・・・観光、かな?」

「へ~観光なんだ~。

 何か面白いものあった?」

「面白いもの・・・。

 特に何かアイテムみたいなものはなかったよ」

「ふーん」

「あ、でも、ここの絵とか、この祭壇ってなんかすごいね。

 こういうの見てるのちょっと面白いよ」

「そーなんだ」


 クリスとの話にラーナは少しずつ気持ち的に距離を詰めて親しくなっていく。


「そういえば君は・・・ラーナだっけ?」

「うん!そう。

 私はラーナで、こっちがサーニャ、こっちがダルトだよ?」

「・・・こんにちはクリス君」

「・・・」


 サーニャとダルトは軽く会釈をしクリスも返す。


「それで、ラーナはどうしてここに?」

「私はね、目的があってきたの」

「目的?」

「ラーナ!」

「姫様!」

「「?」」


 二人の反応に不思議に思うラーナと、戸惑うクリス。


「クリス君、ごめんなさい。

 これは私たちの問題だから・・・」

「我らの問題だ。

 ・・・すまぬ」


 サーニャとダルトは言葉に出せないのかただ謝りこの話を避けようとした。


「あ、はい」


 クリスにも心当たりがあった。


 過去、地球にいた時、いじめられていて、でも周りに助けてくれる親身になってくれる人がいなくなって、親に言おうとしても、そこに親に知られたくない、恥ずかしいという小さなプライドが邪魔していつの間にか何も言わなくなった頃のことが思い出された。


 最初こそ言ったが、結局はその場で何もできない、助けてもらえない状況があった事で、誰かに頼ることを捨てようとしていた自分、そんな暗い気持ちが思い出してしまった。


(言えないことは誰にもあるよね。

 仕方ない・・・)


 少し哀愁が漂いそうな何とも言えない笑みが出てくるクリスだった。


 そんな3人の考えとは別に。


「いいじゃない、クリスに話したって。

 別にいいよ」


 あっけらかんとラーナは言った。


「あのね、クリス。

 私たち魔族のしるしを探してきたの」

「魔族の印?」

「うん!」

「ちょっとラーナ!」

「姫様!」


 ラーナの話に、制止しようと強く呼ぶサーニャ達。


 しかし、ラーナの行動に飽きられたのかサーニャも話し出す。


「・・・んもう、ラーナは・・・」

「えへへへっ」

「・・・クリス君。

 私たちは魔族です、それはわかりますか?」

「魔族?」


 クリスはサーニャの言葉に改めて3人を見た。


 ダルトは目が黄色く、少し鋭い感じ、髪は紺色で獣人っぽく、耳としっぽがある犬系な感じだった。

 明確に人と違うのは肌が青く、水色になっていること。


 サーニャは髪はピンクで、目は深い青。

 そして、頭の左右から角が小さいが生えていて、おしりから小さく細いしっぽが生えている。

 牛系統だと思われる。


 ラーナは目と髪が深紅で、アーシュより深い赤色をしている、さらに髪のふち部分には青色の髪がグラデーションのようになっていてきれいだった。


 しかし、ラーナとサーニャを見ても魔族というのがいまいちわからなかった。

 特にラーナは、魔族の違いなんてないように思えた。


「・・・あの、ダルトさんは何となくわかるんですが。

 ・・・2人は・・・」

「・・・クリス君は知らないのか。

 あのね、魔族ってのはダルトみたいに見た目で分かる人もいるけど、大抵は人と変わらないの。

 どっちかというと魔物の方が魔族っぽいって言う人もいるくらいだから」

「・・・はあ」

「魔族ってのはマナの性質の違いだな」

「性質の違い?」

「魔族のマナは、というより魔のものはマナとの自然な結びつきが強く、使う魔法が強くなりやすいんだ。

 ただし、使えるかどうかはその者次第」

「・・・うっ、うん」


 必死にクリスはサーニャとダルトの説明を理解しようと努める。


「魔族は、人間たちが使う身体強化のようなものを自然と使えるのです。

 人種族は意識して扱えるようになって初めて行使できます。

 これは魔法も同じなんです。

 魔族は、自然発生するマナに近い性質を持って生まれることが多く、その内包する魔力量そのものは魔法に対して扱いが上手いとされるエルフより少なく、人と変わらない方もおりますが・・・なんというか、生まれた時から自然と備わって生まれてくるそうなんです」

「・・・はあ」

「だからか、人と違って魔法にしても強化にしてもそこまで、複雑に工程を作ったり固めなくてもできてしまうことが多いのです」

「・・・ということは、自然との同化に近い性質で、工程を踏まなくても扱える、そんな人たちが魔族ってことですか?」

「ザックリといえばそんな感じになる」


 サーニャの説明にクリスなりに理解して答えた回答にダルトが肯定した。


「まあ、正直。

 私たち魔族も出生とかについては、なぜマナに近いかわかってないところが多いのですが。

 概ね人とあまり変わらないので性質に少し違いがあるくらいの認識で構わないと思います」

「実際問題、私のように肌が違えばわかりやすいが、それ以外だとマナを感知できないものには人と区別がつかないだろう」

「・・・確かに。

 それじゃあ、サーニャさんが言ってた魔族かわかるかってのは・・・」

「クリス君ならなんとなく判るんじゃないかって聞いてみたのです」

「・・・なんだ、そういうことか。

 いや正直、ダルトさん以外、マナの流れが・・・少し``流れるリズム``って言えばいいのかちょっと独特だなって気がするくらいですよ?」

「・・・すごいね。

 マナの感覚がいいのかな?

 私たちの性質を感じてるようだね」


 クリスの独自の感知練習がレベルアップとともに成長していたようだった。

 その結果、サーニャが驚きクリスをほめる。


「それで魔物ってのは?」

「魔物はねー。

 見た目がそのまんまでいる人だよ?」


 ローナが会話に入ってきて説明する。

 しかし、クリスは解っていなかった。

 今まで、ラーナ達以外に魔族すら見たことないため、その違いが解らなかった。

 魔物も例外なく。


「魔物は・・・ダルトが犬系統なんだけどそれがそのまんま2足歩行のしゃべる犬みたいになった感じです」

「・・・おい、サーニャ」


 説明の仕方が大雑把すぎてるため、またその対象にダルトで説明した結果がいい加減だったのか、ダルトはサーニャをたしなめた。


「ふふふ、ごめんなさい」


 サーニャは笑いながら謝る。

 その横でラーナも笑っていた。

 ダルトは難しい顔をしてムスッとした。


「・・・クリス君は冒険者なのよね?」

「はい」

「だったら、こういえば解るかな。

 ・・・モンスターと魔物は違うのよ」

「・・・あっ、ああ!なるほど」


 サーニャの説明に納得するクリス。


 見た目が似てても、しゃべる言語を介さず、また、あくまで可愛らしいモンスターはいるが決して愛嬌はあっても戦わないような生き物ではない感じ。


(妄想だが、もし漫画やアニメであったように、そのモンスター個体ならとか、そのモンスター種族の性質なら・・・もしかしたら、分かり合えるなんてことも起きたりするかもしれないが・・・。

 それ以外はなんていうのか、まるでこちらに対して敵対以外に考えがないような、まるで作られた生物のような感じがするんだよな。

 倒して触れると素材となって勝手に分解されることも含んで・・・)


 クリスはこの世界が、とてもゲームチックでご都合的な部分に地球にいた人間として違和感があったためにサーニャの説明が腑に落ちる言葉だった。



 ぐ~~~~っ。


 突然おなかの減った音が響いてきた。


「・・・///」


 恥ずかしそうにラーナがおなかを押さえた。


「・・・あ、ごめんなさい。

 私たちここに来るために必死だったからあまりご飯が食べれなくて・・・」


 サーニャが必死に弁解する。


「・・・・もしよかったらここで休憩してご飯食べませんか?」


「あ・・・いえ、その・・・私たちは・・」

「?」

「ここに来るまででほとんどの食べ物を使ってしまったんだ。

 だから、食べ物はこれだけになる」


 そう言って、ダルトがブドウみたいな果物を一粒見せた。

 サーニャも小さな荷物、もとは結構入っていたのだろうリュックの中身からパン二切れとフルーツ2個を見せた。


(ホントに食料を使い果たしたんだな・・・。

 仕方ない)


 必要な布とかしか残ってないサーニャのリュックを見て、クリスは提案した。


「あの、火は使えますか?」

「ん?ああ、大丈夫だ。

 野宿には慣れていてな、そのための過ごし方は心得ているつもりだ」

「分かりました。

 でしたら、俺の食料を分けますのでここで食事にしましょう」

「え!?いいの!」

「ラーナ!

 ・・・しかし、そんなことしたらクリス君の・・・」

「大丈夫ですよ。

 食料はちょっと多めに持っているので。

 それに、この遺跡で狩ったモンスターの肉を早く使ってしまおうかなって思うから」

「やったー!」

「?モンスターだと?」

「・・・?。

 はい、たまたま出くわしてしまって。

 危なかったです」

「・・・おかしい、この場所はそもそもモンスターが現れたりしない神聖な場所だ」

「でも、私たちもここに来るまでに襲われましたよ?」

「・・・・だから、おかしい」

「クリス、サーニャ、ダルトおなかすいた~」

「ああ、はいはい。

 クリス君すいません食料を分けてもらえないかな?」

「はい、どうぞ」


 クリスはリュックを下ろし、サーニャやダルトに中身を確認してもらい料理内容を考えたサーニャがうなずき、ダルトも納得した後、祭壇を下り、隅の方に行きそこで夕食を取った。


 気づけば部屋の中の灯りが強くなり、部屋自体の灯りが薄暗くなっていること水の中の光が強くなったことで現在は夜なんだと気づいた。



「ごちそうさま~」

「こーら、ラーナお行儀が悪い」


 何日かぶりにたくさん食べられたのか、二人は笑顔だった。

 ラーナは食べ終わるとすぐに寝ころび、サーニャに叱られていた。


「クリス、ありがとう。

 こんなに食事を分けてもらって」

「いえ、丁度良かったです。

 荷物の中のものもある程度消化できたので」

「うん、あのお肉上手かった~」

「ええ、とてもおいしかったです」

「あれは何?」

「え?、この遺跡で戦ったライウルフの肉だけど・・・」

「・・・は?なんだと?

 ライウルフの肉?」


 急にダルトが険しくなる。


「ダルトどうしたの?」

「何かマズかったのですか?」


 ラーナとサーニャはダルトの反応から、気にしだす。


「え?・・・何かマズかったんですか?

 これは」

「いや、毒とか害のあるものではなくてだな。

 ・・・・先ほどのライウルフの肉はそんなに大量に採取できないものなんだ。

 それこそ、ひとり当たりがかなり少量で、それを何キロも手に入ったものを聞いたことがない。

 なかなか取れないもので一部からは高額で取引なんてのも噂にあるくらい希少なんだ」

「「へ~、そうなんだ」」


 クリスとラーナは似た反応を示す。


「それを・・・私たちに・・・クリス君ごめんね」

「え?ああ、別にいいですよ。

 結局たまたまなんで。

 むしろ、今は進んで戦いたい相手ではないので」


 サーニャの謝罪をあっさりと受けて、流すクリス。


「そういえばさっきも、言っていたが戦ったんだよなクリス。

 ライウルフと・・・」

「はい、まあ。

 アスーティの町に行く手前で傷を負って気性が荒くなっているライウルフと、この遺跡でたまたま出くわして戦ったライウルフですね」

「・・・よく無事に倒せたな」


 クリスの発言にダルトは疑うことなく信じた。


(クリスは、ひとりでここまで来る子だ。

 ここがモンスターが本来現れない場所だとしても、ひとりで旅をしてるということはモンスターに襲われたことは1度や2度ではないかもしれない。

 それだけ戦闘経験があるということだ。

 まだ幼いながらも末恐ろしい子供だ)


 ダルトはクリスの異常性に少しだけ感じていた。


 本来の子供の行動力を明らかに超えていることに。

 しかし、当の本人は気づていない。

 誰かの補助もサポートもなく生きていられる現状にちょっとした恐怖を覚えていた。


「・・・すー、・・・すー」

「?ラーナ?どうした・・・」


 ラーナはおなか一杯食べて、ここまで必死に頑張った疲れから安心したのか眠ってしまっていた。

 それに気づいたサーニャが荷物から布を取り出し掛け布団としてラーナに掛けてあげた。


 それに気づき、クリスとダルトも声のボリュームを落として話す。


「そういえばここは神聖な場所って言ってましたね。

 それにモンスターは現れないと」

「ああ。

 どうやら、何かがあるらしい」

「それはいったい」

「・・・わからない」


 何か思い耽るように考え込むダルト。


 そこで、サーニャもあくびをする。


「・・・そろそろ、寝る時間だな。

 私が警戒しながら休息をとるから、サーニャもクリスも休むといい」

「え?でもそれだとダルトさんが・・・」

「大丈夫だ。

 この辺りは特に神聖な場所として重要視されていた場所。

 古くなったことで、少し、物が散ってしまっているが荒らされていた形跡はない。

 本来モンスターが現れない場所の上に、水も清潔を保っている。

 おそらく、ココは安全だろう。

 万が一に備えて、武器を持ちながら寝るだけだ。

 お前たちもしっかり休んでおけ」


 そう言ってダルトは入口寄りの壁に背中を付け目を閉じた。


「クリス君、私たちも寝ましょ?」

「・・・そう、ですね」


 サーニャはラーナの側で、クリスは少し離れて眠ることにした。






【クリス】3才

 レベル 30

 HP 305 MP 278

 STR 116

 VIT 103

 INT 111

 RES 98

 DEX 145

 AGI 124

 LUK 87

『身体強化:レベル1』『マナ:レベル1』『マナコントロール:レベル1』

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