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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
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211 旅立とう、世界へ・・・。

〔ボーナス・・・。今度はいったい何がいただけるのでしょうか?〕「それは調べてみないと」


 純はクエストボードの欄からイエスをタップした。ポンと頭の中で電子音が鳴り、表示される文字が切り替わる。



【クリア報酬】


 魂の変革(自己回復の向上)

 世界へのきっぷ



「・・・思ったよりも少ない・・・」〔また武器などが入手できるとか考えていたのですか?〕「そ、そんなことないけど」


 本当は若干期待していた純。


「そ、それよりも」〔・・・〕


 慌てる純。見えないが白い視線が刺さる様な気がしてクエストボードの欄を指差す。


「魂の変革って?」〔・・・おそらく純がまた1つ、器を昇華させたのでしょう〕「・・・ああ、そういえば。いつも昇華って世界を渡った時に変化してたっけ・・・。転移?転生?している時だから、あまりその時の意識が無くて分からなかったな~」〔いつもはステータスボードを確認してからですしね〕


 改めて目の前の半透明のボードに表示された文字から、しみじみと自分の成長を実感している純。


「ま、意識無いからいつの間にかだしね。少しでも強くなってくれてるなら、まあそれもいいか」〔おや?意外ですね〕「何が?」〔いえ。以前はあんなに人間を止めることに抵抗なさっていたのに〕「・・・あ」


 腕を組み。感慨に浸っていた頭に一気に冷や水を浴びせられた純。その場で固まって動かなくなる。


〔・・・忘れてたのですね〕


 呆れ返り哀れむサポート。


「・・・(コクン)。いや、良いんだ・・・」


 純は椅子に腰かけてクエストボードを見る。サポートは少し意外な反応に驚く。それに気付いてなのかは不明だが言葉を続ける純。


「今回は何とか勝てた。・・・今後もこんな戦い方ばかりになるんだろうと思う。その時、義姉さん達の様に危険が目の前に迫った時。何も出来ないまま失うのだけは・・・絶対に嫌だ」〔・・・そうですね〕


 今回、影の世界を攻略するにあたり。一時とはいえ別の次元に渡るという事をしていた純達。幸い、サポートの警報と(本人が言うには)特殊な守護?による安全策が功を奏し。命の危険に晒されつつも何とか純が間に合うまでの時間を稼ぐだけの事は出来ていた。


 しかし、次もまたこう上手く運ぶとは限らない。


〔・・・念のために、私の方で家族にはより強めの策として、マナによる周囲の警報とは別に加護を付けてありますが・・・。それもあの時の子供の様に一定以上の実力者が現れては心許ないのは否めません〕

「うん・・・。だから、本当は普通の人間のままでいたいけど・・・。それを諦めてでも義姉さん達。仲良くなった友達やお世話になった人達を助けられるだけの力は身に付けた方が良いって決めたんだ。・・・それで嫌われたり、怖がれられるのは、ちょっと嫌だけど・・・」


 もしかしたらという可能性を考えて少しだけ暗い気分になる純。しかし、だからと言って決めた決断を覆すことはなかった。


〔・・・安心してください。少なくとも、私は・・・いえ。美月や紅百葉の2人は私と同様、どんな純でも受け入れてくれますよ〕「・・・うん」


 軽く笑って頷いた純。ただの気休めでも心が軽くなる思いだった。


「それじゃあこれは?」


 気を取り直し、クエストボードに映し出された文字に触れる純。その拍子にボードがタップされたと判断。触れた文字の下に別の文字が更に表示された。



【世界へのきっぷ】


 特定条件に限り、時間、時代などに関係なく世界を渡ることが可能。

 また、発動時と後には時差も調整される。



「・・・おおぉ・・・お?」


 突然の事に驚き。更には目の前に現れた文字とのダブルパンチで理解が追い付かず首を傾げてしまう純。


〔ふむ・・・〕「な、何か解った?」


 純とは違い、冷静に見ていたサポートは新たに表示された文字を読み解いていく。純も冷静なサポートのおかげで少しずつ落ち着いてきた。


〔これは・・・確かに、私達にとってはとてもありがたい報酬ですね。特定の条件ってものが何なのかは不明ですが。これを使えば、例え異世界に渡っていたとしても、この世界・・・地球の決められた時間に帰って来ることが可能という事ですね〕「?・・・それって結局、クエストボードのミッションとあまり変わらないんじゃ・・・?」〔いえ。これはもう少し融通が利きます。以前までの様に、クエストをクリアしないと元の世界に帰られないという条件からは解放されたかもしれません。場合によっては途中、任意で帰還する事も可能になったという事です〕「おお~・・・!」〔まあ、条件っていうが何か解らないと始まりませんが・・・〕


 どこまで行っても重要な部分が不透明なために、結局分からずじまいになってしまった。


「・・・どういう時なんだろう?」〔・・・。可能性の話でよろしいでしょうか?〕


 再び悩み始めた所へ、サポートから話が持ち上がった。純は組みかけた腕を解く。


〔元々報酬は次の何かに役立つため。延いては純の為とも言えるわけですよね?〕「んー・・・まあ、結果的には?」


 いまいち自信を持って言えない純。


 クエストは、その都度、純に取って必要な課題をあてがって来た。その印象が強く、どうしても素直に自分の為とは言えない所があったからだ。


〔私同様、純をサポートして成長を助ける役割があるはずです。ですから、そのために必要だと思われる能力を多少なりとも身に付けようとしているのではないかと思われます〕「・・・クエストボードが?」〔はい〕


 目の前に浮かぶ半透明なボードを睨み、いまいち納得しかねる純。


〔純の為に、試練という形を取っていた所はあるかもしれませんが、少なくとも最悪のケースからは未然に防ぐ手立てを何度も提供してきたのではないかと・・・〕「・・・確かに・・・」


 これまでの経験から、その部分は否定しようもない事実であると感じる純とサポート。


〔であるからして、今回のこの報酬も純にとって・・・。いえ、純自身の為に必要な力だとクエストボードなりに判断したのではないでしょうか?〕「俺の為に・・・」〔前振りが少々長くなりましたが、その上でお話しすると──〕


 本題に入るという期待から、純は自然と背凭れから乗り出して前のめりになる。


〔今回の力は・・・。``純の家族、あるいは友人なりの身に危険が迫った時に限り、すぐさま駆けつけるための力``ではないかと思われます〕

 「そんなご都合主義な」


 半笑いになり流そうとする純。しかし、サポートは真面目に話を続けた。


〔考えても見てください。私同様、クエストボードもまた、純と常に一緒にいる存在なのですよ?そのクエストボードが純の為に選んだ能力なら・・・〕「俺が何を大事にしているのか汲みとってくれたと・・・」〔可能性の話ですが・・・。それが必要な状態が今後は続くと思われたのでしょう〕「・・・」


 純もサポートも、ステータスボードやクエストボードと意思疎通出来ないのが何とももどかしかった。


「・・・うん。それを信じよう。

 これまでの事も含めて、俺達を思って出してくれていたクエストだ。とりあえずはさっきの・・・義姉さん達がピンチの時に助けに向かえるモノだと思おう」〔はい〕


 サポートも明るく同意した。


 その時、何となくだが頭の中で電子音が鳴った様な気がした。が、微かな音だったために純が気付く事は無かった。



「さって次はー?」〔自己回復の向上ですね〕


 純は``世界のきっぷ``同様に``魂の変革``にもタップしてみた。案の定、下に新しい文字が表示された。



 【魂の変革】


 一定以上の世界のエネルギーを取得。

 自分のモノにした事により魂がより上位のモノへと変化します。それに伴い肉体も改変され、新たな器となります。


 また副次的効果として躰の変化に合わせ、自己修復機能が追加。

 部位の欠損などによる負傷も時間を掛け、元の形へと修復されます。



「おお~・・・!

 あっ、いや確かにそうか」


 思わず喜んでしまった純。だが、改めて自分の今いる状況を思い返してみると、そう楽観的な話でも無かった。


〔確かに、この能力はありがたいですね~。今まで、何処にも傷痕が残る様な大怪我をせず。無事に済んでいたのが奇跡という戦い方ばかりでしたから〕「そう・・・だった」


 つくづく、行き当たりも良い所の戦い方ばかりだった自分に頭がガクッと落ちてしまう純。何とか出来ていたのは本当に運が良かったのだと気付かされた瞬間だった。


「・・・」


 チラッとステータスボードに目が移る。純はLUKという文字の偉大さを実感したのだった。


〔それだけステータスの上りが低いように見えていましたが・・・実はかなりの上昇率だったのでしょう〕


 サポートも純の視線から気付き、改めて数値の恩恵を理解した。


「コレってどれくらい凄いんだろう?」〔ふむ・・・。本来、人が持っている運というのには波がある、と言われているそうですね。確かに、世界に流れるマナのエネルギーから、それらしい変化を感知する事は出来ます。この地球では意図的にコントロールするなど、そうそう出来るものではありません。ましてや``運``という不確かなモノ・・・。人によってはバカバカしいと思われて当然でしょう〕


 サポートの言葉に純は納得してしまう所があった。


 かつてのイジメられていた中学時代。純は何度その運命を呪った事か・・・。救われたいと思うがどうしようもない現実。逃避したい気持ちと、それが幻想であると判っている事実の狭間に何度も行き来して揺れ動いていたか・・・。


〔あまりにもあやふやなモノ。・・・しかし、人は藁にもすがる思いで掴もうと手を伸ばします。マナの中の1つに流れている、その()という性質に・・・。その力を一時的にではなく。波とは別に、ほぼ恒久的に一定以上の数値で固定されているのは・・・。傍から見れば羨ましいとしか言えないでしょうね〕「・・・まあ、実際にはどこまでそれが頼れるか、だけどね」


 これまでの経験からその恩恵をどれだけ受けられたのかを知る術がない。

 そのため純は、あったら助かるな~くらいしか認識していなかった。


〔タラレバの話はどこまで行っても平行なのでどうしようもありませんが・・・。仮にもし純が今の数値よりも低いモノだった場合・・・。今回ですと美月、紅百葉は確実に攫われていた可能性が高いですね〕「!」〔最悪、殺されていた未来もあったかもしれません〕「!!」


 いきなりの言葉に固まってしまった純。


〔我々も世界を渡り。器を昇華させ、レベルも上げました。その上で彼女達を守るため、私独自のセンサーを作ることが出来たのです。もしそれが出来なければ、影の世界から緊急警報何て・・・〕「・・・かなり危険な綱渡りをしていたんだな・・・」〔今までが良かった。それこそ〕「運・・・か」〔彼女達の元々持っている力というのも当然あるでしょう・・・。しかし〕「・・・このLUK・・・。本当に色々と助けてくれてたんだな」


 他の能力値に比べて低いため、軽く見てしまう数値。しかし、その恩恵がある有難さを大切な人で実感した身としては・・・。とても馬鹿に出来るものではなかった。


「最初はちょっとした疑問だったんだけど・・・」〔純。先ほどの話はタラレバですよ?確かに馬鹿にしたものではありませんが、そこの部分を忘れない様に〕「うん分かった・・・。それでも``世界へのきっぷ``が手に入ったという事は」〔少なからず、もっと危険な事が待ち受けていて、その為に必要なモノだと判断した結果でしょうね〕「・・・ああー、もっと運とか、他に何かくれないかなー?」


 欲張ってはいけないと判ってはいても、どうしても予防の為の何かを欲しくなってしまう純。

 そんな純の気持ちを理解しているサポートは苦笑を漏らす。


〔フフ・・・。今回は2つ。それも、何かあった時や外傷といった、致命的なものからカバーするためですよ?これ以上贅沢を言うのは・・・〕「うん・・・分かってはいるんだけどね?」


 クエストボードがどこまで純の気持ちを汲んでいるのかは分からない。だが、今渡せるモノの中ではこれほど重要なモノがない、あるいは持たせることが出来なかったのかもしれない・・・。と、純は勝手ながら思う事にした。


「・・・。いや、これはありがとう、かな?いつも俺の事を思ってだろうし」〔はい〕


 自分もまた、一部は純自身であり、純を守り支えるための存在であるサポートは、クエストボード達の事を同じく純を支える仲間だと感じていた。導く方向は違えど、その先にあるのは偏に純の為だと信じて。


 少し緩やかな時間が流れ始めたその時だった。頭の中で電子音が鳴った。


「・・・」〔やはり来ましたか・・・〕


 報酬を受け取り、空白になっていたクエストボード欄に新たな文字が表示された。



【次の転移まで】


 残り・・・3時間28分35秒・・・。



 34・・・33・・・。


 カウントダウンが始まった。



「きっぷ・・・。ちゃんと機能してくれるといいな」〔大丈夫でしょう。・・・それで、どうします?〕「・・・たぶん持ち物は無くなるだろうな。向こうに行く時に持ってきていた財布やスマホもいつの間にか消えていたし・・・。あれ、ドコに行ってんだろ?」〔考えられるとすれば、純の存在エネルギーの一部になって混ざる様にして入っているんだと思いますよ?〕「え?それって体に入っているの?!」〔いえ。物理的に、というよりは・・・ゲームで言う所のデータの一部ですね。ホンの欠片の一部が純の魂に連結する形でくっ付いているようなモノではないかと〕「う~ん・・・。それってどうかと・・・」


 目の前にあるスマホを見る。物体として見えている為に、どうしても物理的な捉え方をしてしまい、何とも言えない表情になってしまう。


〔言ってしまえばどんなモノもエネルギーの一部。マナです。難しいかもしれませんがどこかで、区切りをつけてみては・・・?〕「・・・そうだな」


 その度に毎回毎回、慌てる事になる自分をイメージした純は踏ん切りをつける。

 椅子から立ち上がり、部屋の外へ・・・。


〔どちらに?〕「義姉さん達の所。今日は俺が久々に料理当番だし、作って用意しておこうかと。あとゆっくりと話をしようかと」〔・・・また戻ってきましょう〕「当然」


 階段を下りて、キッチンへ。料理を作り始めてしばらくすると、美月と紅百葉の声が玄関から聞こえてきた。


 家族団らんのささやかなひと時を満喫する純達。


 3人仲良く一緒にご飯を食べ、テレビを見てのんびりと今日あった事の話をする。


 そしてそれぞれが自室へと戻っていく。


 純は美月と紅百葉が自分の部屋の中へと入って行くのを見送った後。自分の部屋のドアをゆっくりと閉じた。


 そして、静かに目を閉じ、その時を待った。


「(・・・行こう、もっと強くなるために)」〔はい〕


 カチ。


 どこかでしっかりと時を刻んだ音がした瞬間、純の周囲に白く淡い光が下から立ち昇った。

 その光に中にいる純は、足元から透明になって消えていく。


 しかし、今回はその光景を見ても落ち着き、口元には笑顔があった。


 固い意志と目的を持って。


 純はこの世から消えていく体を受け入れていた。








【十時影 純 (クリス)】15才 人間・・・かな~?(進化)


 レベル 33 → 56 → ?

 HP 586 → 824 → ? MP 742 → 1016 → ?

 STR 293 → 552 → ?

 VIT 265 → 513 → ?

 INT 321 → 633 → ?

 RES 303 → 525 → ?

 DEX 425 → 810 → ?

 AGI 389 → 739 → ?

 LUK 65 → 115 → ?

『マナ(情報体):レベル 8 → 12 』 → ?『波鋼:レベル 7 → 13』 → ? 『質量拡充:レベル 4 → 10(MAX)』 → ?

『魔法:水、風 』

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