210 幸多からんことを・・・
声に成らない悲しい声を上げる様にして倒れる狐。しかし、その質量からくるはずの大きな振動は無く。音もなく横たわりながらサラサラと粒子になっていく。
「・・・はぁ~~~~・・・」
ガチャンと持っていた双剣を落としながら倒れ込む純。今までの緊張と疲労がピークに達したのだ。
〔お疲れ様です〕
優しく労わる様な声が脳内に響く。
「はぁ・・・あぁ・・・あぁ・・・。もう・・・。ぜぇ・・・これで・・・ぜぇ・・・。終わりなんだよな?」
声が若干裏返る純。力が抜けて息をするのも少し苦しい状態だった。
〔はい。よくここまで持ち堪えましたね〕「(なんか・・・一気に・・・。疲れが・・・)」
脳内で喋っているはずなのに、実際の呼吸に釣られて言葉が途切れ途切れになってしまう純。
〔・・・。現在、周囲のマナを観測してみたのですが。どうやらほとんどの執念の塊をあの狐が集めていましたので、大半の負のマナが強制的に消え失せたようです。留まっていたマナの堆積物は世界に循環されている最中でしょう〕「・・・そうか。・・・よかった」
【レベルが上がりました】
久しぶりに感じる様な脳内の電子音に、少しだけホッとする自分がいる純。
〔・・・私の言葉を信じていなかったのですか?〕「(いや、一応念のために・・・ね?)」〔・・・〕「(あ、ほら。一応、お前って俺の魂の一部じゃん?こういう時にもしかして油断何て──)」〔私がそんなことするわけないじゃありませんか〕「(・・・ホントに?)」
ゆっくりと起き上がり、双剣を異空間に収納して立ち上がる純は一応の確認を聞いてみた。
〔・・・・・・もちろん〕「随分間があった──」〔そんなことありません〕「・・・」〔・・・〕
素早く返したサポートに純は黙った。・・・妙な間が空いた。
しかし、それもすぐに終わった。
「!・・・これ」〔どうやらこの世界も限界の様ですね〕
建物ではなく、影の世界全体が大きな地震の様な振動を発生していた。戦闘で抜けて大きく開けた天井からヒラヒラと大量に桜の花びらが舞い落ちる。
逆に狐や周囲に建物はキラキラと砂の様に上昇していく。
〔撤退しましょう〕「う、うん」
善は急げと純はサッサと歪み出した空間の部屋から外へと走り出す。
「っ・・・。そういえば、いつの間に・・・」
気付けば屋敷の外にはキラキラと光が射し込んでいた。
〔見惚れている暇はありませんよ〕「ああっ、そうだった」
そうして再び駆けだしていたのだが、またしても立ち止まってしまう。
〔純?・・・〕「・・・」
純は上空を・・・。大きな桜の木の開け、覗き込んだ空を見た。
そこには先ほどまで協力して戦っていた武者(男)と花嫁衣裳の女性。更にその周囲に何人もの人型をした白いモノが浮かんでいた。
「・・・これであの人達も・・・」〔・・・ええ〕
優しく微笑んでいるような白いシルエットをした人達は純にゆっくりと頭を下げ。・・・そして順々に空へと舞い上がる様に消えていった。
純は何故かその時、異空間から発する何かを感じ取り。再び双剣を腰から取り出した。
「(・・・うん(コクン)。ありがとう)」
双剣から来る何か意志のような願いを感じ取り、そっと双剣を手放すと。双剣は淡い水色と桜色の輝きを放ち、独りでに宙へと吸い込まれる様に消えていった。
ポツ・・・ポツ・・・ポツ・・・。
光りの雨がゆっくりと優しく世界に降り注いだ。
「「・・・」」
そして、最後に残っていた武者と女性は純に向かって深く頭を下げた後、手を繋いで空へと消えていった。
〔・・・・・・ジューンブライト、ですか・・・〕「・・・ちょっと早いけどね」
純達はその背中を最後まで見送った。そして今度こそ影の世界を脱出するべく急いでお城と飛び出し、地球と繋がっている異空間の中へと入って行くのだった。
純は世界から消えた後。更に大きな振動が発生。・・・世界は優しい光の雨に包まれながら消えていくのだった。
翌日、無事地球に帰還した純はゆっくりとテレビを見ていた。
「・・・」〔まだ寝ぼけているのですか?〕「う~ん・・・」
ゆっくりと飲み物を飲んでいるが、その目は半開きの状態だった。
「なんか頭が上手く働かない」〔粒子化の影響かも知れませんね。あの力はある種の・・・、スポーツ選手が言う所の・・・ゾーンでしたっけ?あの様な本来の力以上のパフォーマンスを引き出しているのかもしれませんね〕「あの時も反動があったし。今回もたまたま発動したって感じだったし・・・。ホント・・・生きてるのは運が良かったんだな」〔・・・。しかし以前よりも更に粒子化による力を引き出せたような気がしましたけどね~。私も能力が向上したのを感じましたが・・・〕「今はどうなの?」〔・・・。一時的ですね〕「・・・やっぱり」
オーバーアクションで大きく肩を落とし、テーブルにカップを置く。
「(でも・・・。確かに前よりも感覚的に掴んだような気が・・・)」
テレビから流れているCMを聞き流しながら自分の掌。更にそこに集まり循環して流れていく体内マナの流れを見ている純は不思議な感覚を思い出していた。
「・・・あれは、何だったんだろうな~・・・」
ソファーの背もたれに寄りかかり大きく伸びをした純はジッと始まった様々なゴシップを集めている情報番組を見ていた。
その中にはハリウッドスターの放送中に起きたちょっとした騒ぎや、どこかの政治家が参加したセレモニーに関してを取り上げて話し合っていた。
〔・・・分かりませんが。とりあえず分かった事は、純の力・・・。正確には純のマナに対して体が対応しきれていないという事ですね〕「?」〔純が持っているマナと潜在して引き出せる力に対して生身の肉体が圧倒的に後れを取っているという事です〕
サポートは特に目の前の番組にそれほど興味が無いのか、先ほどの会話を再開した。
「これでも結構強くなった方じゃない?」〔足りませんね。・・・純の魂、延いてはそこから派生して積み上げられていく経験値と能力に対して肉体がどうしても2歩も3歩も遅れているのが現状でしょう。確かに急成長をしておりますが・・・。それは魂も同じです〕「・・・このままでは、いつまでたっても平行線・・・と?」〔その通りです。今回の影の世界で純の力を調整し出力を上げていたのですが・・・。どうしても一定の所でリミッターが掛かってしまいます〕「・・・普通はそうなんじゃないの?寧ろ、100%出し切ると体がボロボロに──」〔そこを含めて補い、純の意志に従って全力を引き出せるように支援するのが私やあなたの体内に宿っているマナの仕事のはずなんですよ〕
思った以上に力説してくるサポートに若干気圧される純。
「お、おお。・・・それで?」〔私の方でも最大限サポートはさせて頂きますが・・・。それでも今のままでは50%・・・。それが限界です〕「十分──。〔・・・〕じゃないんだよね~?はい分かってます」
見えないが何か睨まれたような気配を感じ、急いで訂正した。
〔・・・はぁ。分かってますよ?・・・これでも純は自分の持てる力で頑張っているのは・・・。それでも〕「あまり、無い物強請りをしてもどうしようもないよ」〔・・・ですっ、いえ・・・そうですね〕
少し感情的になり過ぎたと反省するサポート。
「50パーって言ってたけど・・・。それでも大体どのくらいなの?」〔・・・昨日、狐を倒してレベルが上がる前ですと・・・。最初に現れた狐には・・・まあ、何とか素手でも・・・〕「十分じゃん」〔しかし・・・。進化、変形に次ぐ進化を繰り返された後ですと。武器もなしでは到底・・・〕「ああ~、あれはあの双剣がパワーアップしてくれて本当に助かったな。今まで一つ一つ攻略と関係がありそうなモノを拾い集めていたおかげだよ」〔はい・・・。その点は良かったと思います〕「ああー。でもそうなると今は武器無し、か~・・・」
腰辺りに手を回す純。しかし返してしまった為に、もうそこに、当然武器がある感覚も、異空間があった感覚も無い。丸腰だった。
「(まあ~幸い、魔法は使えるんだけどね)」
何気なく少しだけイメージして指先に風の魔法を作り出す。微かにそよ風が純の髪を撫でた。
〔魔法も状況に応じてでしょう。必ずしも使えるとは限りません〕「確かに・・・。あ、そういえば」〔はい?〕
サポートと会話しながら立ち上がった純はカップを持ってキッチンへ。流し台において水を満たし浸けて置く。そして再びテレビの前に戻るとリモコンに手を伸ばし、電源を切って自分の部屋へと戻っていく。
「あの時・・・。狐が作り出した火の壁からあの2人を逃がす時。どうして、火がすぐに閉じようとはしなかったんだろう?すぐに閉じようとするならもう数発は打ち込もうかなと思ってたのに・・・」〔それは、おそらく純の魔法が上回っていたからでしょう〕「え?いや、でもあの熱量と勢いは・・・」〔ああ。それは``質``ですね。この場合は量よりも質が大事でしょう〕「???」
階段を上がり、ドアを開けて部屋に入る純。ベットに寝転んで二度寝の姿勢に入ろうとしていた。
〔地球、というよりは物質という事に重きを置く者達全てにもしかしたら考えられる事かもしれませんが・・・。そもそも世界にはマナが存在します。そこに物理的、常識がイコール全てとは考えない方が宜しいですよ?〕「・・・マナの力・・・。ザックリとゲーム的に言えばレベルの違いがそういった常識を、覆す・・・?」〔その考えで間違いないかと。もちろん物量が大きいのに対し少量ではカバーに限界はあるでしょうが・・・。狐が放つ大量の火の壁に水鉄砲だけであの2人を火から守れと言うのは現実的には難しい・・・〕「だよね?」〔ですがそれも、こちらがバケツだとしたら?またそれを純が自分の身で使っていた様に膜を覆う様に工夫し操作すればどうでしょうか?〕「・・・出来るの?」〔可能です〕
考えた末、確認を込めて質問した純に簡潔に答えたサポート。
〔要はそこに内包されたマナの質量の違いがそうさせるのです。・・・先ほどゲーム的に仰っていた話で言えば、初級と中級。覚えたてと使い始めて何年も経つ人ではその熟練度に差が生まれても仕方がないでしょう。更にそこに世界共有で使用されているマナでは・・・。文字通り、質の差が全てにおいて優先されてもおかしくはありませんからね。純が放つ魔法を使った斬撃には、流石の狐の能力でも上回り火の壁を再生させることが出来なかったのでしょう〕「・・・差か・・・」
いまいち実感が湧かない純。顔を枕に埋めてその肌触りの気持ちよさに再び、眠気が襲い始めて来た。自然と大きな欠伸が出てしまう。
〔まあ、あれぐらいなら純の少量の魔法でも薙ぎ払う事は出来るという証明でしたね〕「・・・うん・・・」〔・・・。ああ、このまま寝ても構いませんがもう少しすると美月と紅百葉が──〕「・・・すぅ・・・」〔・・・お疲れ様です。純・・・〕
流石にここまで疲労が溜まっている主を起こすほど無粋ではないサポートだった。
3時間後・・・。サポートの予想通り、帰宅した美月と紅百葉に起こされた純は強制的に3人で食事に出掛けるのだった。
後日・・・。世界中で戦争になりかけた騒動は、当然秘密裏に隠され、別の話題が汚職事件として各国のメディアの興味と話題を搔っ攫っっていった。
曰く、扇動した者はどこかの宗教に熱心であったとか・・・。どこかのタレントは誰かの差し金で動いた、または薬物依存による虚言壁を持っていた等々・・・。
世界にとって重要なのは見える話題であって、それ以外には結構、どうでもいいのが実情だった・・・。
「チッ・・・。とんだ災厄だぜ」「って言うか誰よ~。あんなの促したのは」「知らねえよ。勝手にやった事だろうが」「・・・しかし、落とし前は付けてくれないとな」「ええ、そうですね・・・。コッチは基地の1つ、人材の喪失がありましたからねぇ。・・・このまま、何も無いというのは流石にこちらの面子というモノが・・・」「落ち着け。そもそもアレをそのまま放置しすぎたのが失敗だったのだ。こちらのミスを向こうにすべて投げ出すのは些か勝手が良すぎる」「支配側って事を忘れないでよね~?」「分かっている。それ相応の報いは受けてもらうが。こちらも身辺を洗い直す必要がある」「っというと?」「我々もどれだけの者を使いとして飼い、手駒にしているのか正確に把握している者がこの中にいるのか?」「「「・・・」」」「どうやら、一部で管理者と破壊者がぶつかったという報告を受けている」「マジかよ!」「事実だそうだ。詳しい事は知らないが今回の騒動の鎮圧にあたった所、接触したのだろう」「・・・一度、全体的に見直す必要があるわけね」「ああ・・・。どこから、嗅ぎつけられてもおかしくはない。次の計画が実行されるまでの間は、お互いに連絡はなるべく避け、それぞれの身辺を洗う事を専念しておくように。以上だ」「・・・行っちゃった・・・。どうする?」「・・・俺達もそうしておこう。確かに今ここでアイツ等に出くわすのはメンドクセェ。・・・んじゃ、俺も行くぜ」「・・・皆も元気で」「ええ。・・・再会できた時には飲み明かしましょうね?」「・・・楽しみにしている」
「おっす~。元気か~純?」「・・・今日は何時にもまして元気だね要君・・・」「お前は、いつもよりも眠そうだな」
教室に入るや否や、スキップしそうな勢いで友達の笹本が話しかけてきた。その後を追って歩いてきて、純に軽く片手を上げて挨拶を交わす松本と大木。
「おはよ。ゴメンね?昨日見たニュースで要君、色々と調べてて・・・。それが楽しくて止まらなかったんだ」「夜中に起こされた時は辛かったよ」「いや~ゴメンゴメン。っていうか純。昨日か今日の朝のニュース見たかよ?ハリウッドスター達の突然の死亡と事故や失踪・・・。まあ、あんだけ次々に何人も出れば関連が無い方がオカシイって話なんだけどな」
どんどんと興奮していく要に対して純は、自分の机にカバンを置き、若干眠気混じりの顔で聞いていた。
「・・・ああ。なんかあった様な・・・?」「反応うっすいな~お前。別にこれは海外だけの話じゃねえんだぞ?日本だって似た様な話があったんだからよ」「・・・え?そうだっけ?」「ああ。有名俳優がいなくなったとか、色々とだよ」「へ~・・・」「他にも政治家とか大企業の専務とか、重要ポストにいた人達がいなくなったりして、融資した人達に謝罪会見を開いたりするそうなんだ」「人気俳優がいなくなったとかで・・・ほら」
大木 勤が視線で誘導した先。一部のクラスメイト達が落ち込んでいた。
「どうして急にいなくなったんだよ~」「あともうちょっとでセンターに慣れたのに・・・」「ウソだよね?!だって──」「本当なの。元カノがどうとか、友人関係者が話してたって噂が──」「イヤッ。聞きたくない」
嘆く者、耳を塞ぎ現実逃避する者がチラホラといた。
「ハッ・・・。のめり込み過ぎた追っかけの末路だな・・・」
何とも言えないその一部の空間を見た要が首を振って、嘆く者達を憐れんでいた。
「おはようございます」「あ、おはよう♪鏡花ちゃん、澪奈ちゃん」
しかし、教室に入って来た2人を見るまでだった。すぐに態度が切り替わりって、向かって行った。
「おはよ~。久しぶりの登校だね?」「はい・・・」「まあ・・・一週間ぶりくらいかしら」「なんか家の用事だとかって話だったけど・・・。澪奈ちゃんに鏡花ちゃん、その怪我は?」
2人の顔や腕に小さめだがガーゼが張られていた。心配になる要や勉、健介。もちろん純も気にはなってしまう。
「ああっ、これは・・・ちょっと私が・・・荷物を運んでいる最中にバランスを崩しまして・・・」「あたしもちゃんとフォローが出来なくてね。それでちょっと怪我しちゃったのよ」「大丈夫なの?」「はい。見た目ほどケガやアザにはなっていませんので・・・」
2人はガーゼを剥がした。そこには少しだけ赤くなった肌が浮かんでいるだけだった。
「ね。見た目ほどじゃないでしょ?」「ほ・・・ホントだね・・・」「ん?」
心配していた要に近づき、ケガの痕を見せる鏡花。しかし、彼女が急接近した事で要の声が少し上擦り、尻すぼみになってしまった。顔を反らすというほど動く事もなくただそこで石像の様に固まってしまう。
「どうしたの?」「う、ううん、何でもない(良い香り・・・」「ちょっと要君」「君ばかり・・・」「あっ・・・」
強引に後ろに居た健介と勉に肩を引っ張られ、引きはがされてしまう要。その顔はとても残念そうだった。
「(ボソ)何で引きはがすんだよ」「「・・・」」「お、俺はただ2人を心配してっ・・・」「「・・・」」「いや~。それに、たまたまだし。こういうのって何て言うか役得?みたいな?」「(ボソ)心配して近づいたのはワザと?」「(ボソ)2人がより向こうから接近してくるのを見越して・・・」「ち、違うぞっ。それは本当にっ・・・!」
要達が3人で話し合う姿に疑問に思いながら、鏡花と澪奈はクラスメイト達と挨拶を交わして自分の机にカバンを置いて席に着いた。
〔・・・微かに2人の体。主に怪我の所からマナの漏れを確認。おそらく治療の名残りではないかと・・・〕「(2人は2人でどこかで戦っていたって事か・・・。でも、無事だったんだね。良かった・・・)」
澪奈達の言葉通り、後遺症になるほどのモノではなかったことに安堵し、口元が緩んでしまう純。
「ん?どうしたの?」「えっ?あ、いや・・・」
見られていることに気付いた澪奈が話しかけてきて、思わず慌てて誤魔化そうとする純。しかし、すぐに気を取り直し・・・。
「2人共・・・大きなケガじゃ無くて良かったね」
純なりに自分が持てる最善の行動を取ったと思っていた。・・・・・・が。
「・・・」「?」
ジッと純を見た澪奈がおもむろに立ち上がると純の前へ。・・・そして。
「あの・・・イタひ・・・」
ムニッと純の頬を引っ張り出したのだった。
「・・・イテぇ~・・・」
すると鏡花もまた純の傍へと寄ってきて反対の頬をつねって伸ばしたのだ。
片や何かを言いたそうな半眼の目で。もう一方は笑顔だがこちらも何かを言う雰囲気を出しながらも何も言わず純の頬を引っ張っていた。
「純・・・。お前、2人に何かしたのか?」「いひゃ。とふに何も覚えが・・・」
要が話しかけてくるが純自身も特に分かっていないため、視線だけを戻し2人を見る。心なしか、怒っているように見えるのは気のせいだろうかと思う純。
「「・・・」」「・・・」
ムニムニと頬を引っ張られ弄ばれるが何かを言う事は無く。ホームルームが始まるまでの数分間。純はされるがままだった。
休み時間になるとあちらこちらで陰謀説が囁かれるが、学校はいつも通りだった。
そして。気付けば6月も目前に差し掛かる頃。久々に頭の中に聞き慣れた様な電子音が響く。
〔クエストからのお知らせですか・・・〕「そうみたいだね」
自分の部屋で久しぶりに?寛いでいた時だった。
「さてさて・・・」
少しだけ浮足立ってしまう気持ちを抑え、さっそく調べる。
【クエストクリア】
報酬とボーナスを受け取りますか?
はい いいえ
「っ・・・。キタ」
声と同時に小さくガッツポーズを取った。
【十時影 純 (クリス)】15才 人間・・・かな~?(進化)
レベル 33 → ?
HP 586 → ? MP 742 → ?
STR 293 → ?
VIT 265 → ?
INT 321 → ?
RES 303 → ?
DEX 425 → ?
AGI 389 → ?
LUK 65 → ?
『マナ(情報体):レベル 8 』 → ?『波鋼:レベル 7 』 → ?『質量拡充:レベル 4 』 → ?
『魔法:水、風 』




