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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
211/473

208 見えた光は・・・。

「「・・・・・・」」


 片方は集中し、向かってくるモノを切り裂かんばかりの気迫が周囲にまで伝わってくる。片やこれから起こるであろう蹂躙を楽しむような愉悦に似た笑みを浮かべてこれから始まるショーのタイミングを計っていた。


「・・・」


 遠くでは、不安を抱えつつも健気に愛する者の勝利を信じるものの姿があった。


 カチリ・・・。


 武者の男が刀を持ち直した音が響いた瞬間だった。


「!」


 周囲にあった無数の火の玉等が武者に向かって飛んでくる。男はすぐさま反応。火の玉を切り裂き、切断した。玉はマナの維持が出来なくなったのかその場で霧散していく者がほとんどだった。しかし中には見た目と違い中に内包されているマナの容量が違うモノを敵の狐は忍ばせて攻撃を仕掛けていた。


 ボン、ボガン、ドガア~ン・・・!!


 意図的に武者の近くの畳に落とし、わざと着弾による爆風と煙で視界を奪い、衝撃波と次々に来る玉の煙幕代わりにして追い打ちを掛けて来る狐の化け物。


「アッアッアッ・・・」


 笑いながら、武者の追い込まれて踊っている様を楽しんでいた。しかし、武者も諦めてはいない。斬る伏せ、切り上げ、斬り払い。移動しながら向かってくる方向と火の玉の順番を見計らい、一番近くのモノだけを狙って消滅させていった。そして、縦横無尽に駆け回り、狐が生み出した煙に紛れて、隠れていった。


 ギュイイイィィィ・・・ブシュン!!・・・ボガアアアアアアア~~~ン。


「っ!」


 当然、狐もそれを警戒しないわけでも無く、視界から完全に隠れたと判断した段階で尾に溜めていた火のレーザー砲を放った。口から溜めて出したモノや、尾を集めで出したモノよりは格段に威力は落ちるが、それでも十分だった。たった1発で、着弾した箇所の周辺に舞い上がっていた土煙が消し飛び、紛れ込んでいた武者が弾き飛ばされ、十数メートルと外へと弾き飛ばされてしまった。


「っ!」


 何度も畳の上を転がる武者。しかし、刀を床に突き刺し、無理やり停止させる。ガリガリと畳が1本の刀線を作る。武者は吹き飛ばされた勢いが完全に殺しきる前に再び駆けだした。その直後、男がいた場所に玉が数発、着弾。畳が大きく吹き飛ばされ再び、イ草や木片等が舞い上がる。


 チュウン、ボンボボボン。チュチュチュチュチュウン!!ボガアアアアアアンンン・・・・・・!!


 男は走る。マナの少ない火の玉でも当たれば、その分だけロスを生んでしまう。それが自分の・・・引いては愛する人、全てを失うと理解しているから止まるわけにはいかなかった。武者の意志に反応して刀は更に白く強い輝きを放つ。


「ウウウゥゥ・・・」


 忌々しそうにその光を睨みつける狐。体から赤い火の粉が舞い上がる。それはどんどんと黒く変化していった。火の玉の色も紅の色と赤黒い色の混合したモノへと変化していく。更に舞い上がっていた火の粉が集まりいくつもの黒い矢へと形を変えて先を男に向けた。


「!」


 男もその変化、矢の危険性に気付き、加速。体にもうっすらと纏っていた白い輝きが増して、白い光の線がジグザグに移動して狐に向かって走る。武者の動きが更に速くなったことで火の玉は追い付けなくなり。尾の光線も、捉え切れず畳を消し飛ばすだけであった。・・・しかし、矢は違った。


「アアアア゛ア゛ッ・・・!!」


 照準を正確に射抜く様な、それほどの正確さで武者の動きに常に微調整されていく。そうして放たれた矢は武者の予想をはるかに超えたスピードで飛んできた。


「ッ!!!」


 ガギュイイイイイイイイイイイイイイイイイ~~~~~~~~・・・!!!!


 高速で飛来したたった一矢に男は両手で持って刀を受け止めざるおえなかった。ぶつかり合うマナ同士の勝負。幸い、直撃はしていないが男は大きく後ろへと押し込まれて行った。そこへ2,3と紅と黒に染まった矢が飛んできた。足場をズリズリと滑りながらも震える腕と刀で何とか受け止めていた武者。一つ目の矢を逸らした瞬間だった為、次の矢は体を捻り直撃を避けるために対応するので限界だった。しかし、ホーミング性能があった。その矢は、ほんのわずか角度を変えたのだ。


「ッ!!」


 ガギン。ボゴン・・・。ボガガガ、ボガアアアア~~~ン・・・!!!!


 奇跡的に刀を前に向けていた事で1つは刀の腹に辺り強制的にあさっての方角へと飛んで行った。がもう1つの矢は武者の左肩を直撃。貫通こそしなかったが肩と胸の鎧の一部がはじけ飛び、またその威力で錐揉み状態で弾き飛ばされた武者。そこへ遅れて追いついた火の玉が武者目掛けて次々と着弾。大きな爆発音と煙が後から後から生み出されていく。その衝撃波は大きく、武者達を逃がさない様に囲っていた火の壁が煽られて揺れるほどだった。モクモクと浮かび上がるキノコ雲の様な煙。


「(ニイィィ)・・・」


 それを見た狐はとてもご満悦な顔をしていた。


「・・・」


 強く両手を握り締める着物(花嫁衣裳)の女性。気付かず感情が体にまで表れ、フルフルと震わせていた。


 そんな女性の方へとゆっくりと振り向く狐。狐の感情に反応していたのか火の粉も矢も玉も消えていた。尾の先に溜めていた熱エネルギーも解き、ゆらゆらと揺らしている。その目は次はお前だと言わんばかりの厭らしい顔の様に女性には見えた。


「っ・・・」


 その目の奥に秘める黒い部分に一瞬怯んでしまう女性。それでも一度、分離した事でお互いに違うモノへと変わった事で女性には強い意志が生まれていた。女性は改めて強い意志を持った目で狐の目を視た。


「・・・」


 その女性の行動が気に入らなかったのか狐は不快を露わに、数発だけ火の玉を生成。女性に向けて発射した。


「っ!」


 女性が顔を手で守る動作をした時だった。


 ズボン・・・。ザンザンザン・・・!


 巨大な煙の中から一直線に飛び出し、迫りくる火の玉を切り裂いて女性の前に立った武者。


「~・・・っ!!」「グゥゥウウウ・・・」


 女性を背に狐に向かい刀を振った武者。しかしその刀は折れ半分ほどに。鎧もボロボロで甲冑となっていた所のほとんどがその機能を失うほどになっていた。


「・・・っ!」


 毅然と立っていた男だが、限界だったのか片膝を突き、手も畳に突いてしまった。その衝撃で残っていた鎧もガシャンと崩れ落ちてしまった。駆け寄る女性。顔こそ狐の方を向いているが男は起き上がることが出来なかった。


「・・・」


 女性はそっと愛しい人を横から抱きしめた。男もそんな女性の背中を片手で抱きしめる。


「・・・」


 狐はそんな2人に向かってゆっくりと体をしゃがみ口の前に火のエネルギーを溜めていく。


「「・・・」」


 振り向いた男。その拍子に兜が落ちる。その表情は謝りつつも、どこか笑顔だった。女性もそんな男に笑顔で返す。高くなっていく音を遠くで聞きながら2人はその最期までお互いを見つめていた。


 ズオン。


「アアア゛ア゛ア゛ッ!!」


 突然、何かが高速で飛来、狐の尾が3本ほどが飛ばされてしまった。その痛みで、溜めていたエネルギーが逸れ、周囲へ複数の玉となって飛んで行く。遠くで着弾した玉が爆風となって男女の顔にまで届き、2人はお互いを支え合いながら狐の方を見た。狐は自分の舞い上がり、上空で消えていく尾を見た。そして飛んできた方角を睨みつける。


「・・・」


 爆風と途中で上がっている火の柱を切り裂き1人の少年がキラキラと体の周囲を輝かせながら静かに立っていた。その目の中にもキラキラと光の粒子が輝きを放っていた。


「・・・・・・っ!グウウウウウ~・・・。グワアアアアアアアアア!!」


 狐は本能でその子供の危険を感じ取った。いや、正確にはレーザー砲を直撃させたはずなのに、ボロボロになった服以外に全く外傷の無い子供の存在に恐怖したのだった。


 狐の感情に反応して、周囲の赤、朱、紅、黒の色をした火の粉が狐の口の前に急速に集まりだす。尾も無事な6本と半ば切断された3本の先から急速に火のエネルギーを溜めていく。


〔行きましょう・・・〕「うん・・・」


 純はサポートの言葉に静かに返し、ゆっくりと歩き出した。


 焦る狐。エネルギーがこれまでで一番速く、濃密にマナを溜めていくのに・・・、かつてない威力になっていくのに目の前にいる得体の知れない生物がほんの少しずつだが近づいて来ることがとてつもない恐怖だった。早く放ちたい。しかし、これで確実に倒せるという事が判らなかった。狐にとって目の前にいる生き物は果たして本当に人間なのか分からなかった。


 一瞬の内にとてつもなく強くなったのか・・・という事すら全く分からない。


 何かが来る、居る、こちらに向かってくる。それしか判らなかった。大量のマナで形成されている自身ですら何も分からない相手が目の前にいる。武者の様な凄味も強い敵意も無いように思えた。先ほどまでは危険ではあったがまだ強さ・・・。その脅威を認知出来た。が、今は全く分からない。狐はただ本能のままに恐怖していた。少しでも早く、着実に、排除しようと・・・。


 そんな狐の感情に応えた様に火の粉が急速に集まりそのエネルギーが練り上げられていく。混ざり合った熱エネルギーが赤く、特殊空間の狐の周囲の足場を溶解させ炎上させる。更に火ですらうねりエネルギーの中へと吸収されますますマナの濃度を上げていく。


 そして、狐自身でも耐えられないと本能で判断するくらい溜まった所で灼熱のレーザー砲は放たれた。


 ボン・・・ヒュゴ―――――――――――――――――――――――――――――!!!!


 音すらハッキリと置き去りにした光と熱のレーザー砲が純の向かって飛んで行った。


 純と狐との距離はたかだか200メートルもないほど。レーザー砲が届くのはほんの一瞬だった。


 一瞬生まれた狐の喜びは、すぐさま逆転。地に落ちた。



 不思議な感覚だった。目の前には余裕で自分を呑み込めるほどの巨大な赤い光の塊が飛んできていた。コンマ数秒あるか無いか、その一瞬で消し飛ばされてしまえるほどのとても強く濃度の濃いマナの奔流が迫って来ていた。・・・だが、純はその光景をスローモーションで客観的に見ている様な不思議感覚で捉えていた。


「(?・・・あれって・・・)」


 一塊になったエネルギーをゆっくりと流れる景色の中、見ている純。それは濃くて圧縮されたエネルギーのはずなのに、純には微かに光の粒子が雨の様に・・・。降った雨が窓ガラスの半ばで一部溜まって別の道に落ちる方向が変更されていく水滴の後の様に。所々が・・・舞い散った粒子が、そのレーザー砲の綻びを道標を示してくれているように視えていた。


「・・・!」


 純は熱エネルギーの塊が接触する瞬間、ただ何となく、粒子が指し示したその道をなぞる様に双剣を振るいながら、前へとエネルギーの周りを回る様に前へと動いた。真正面から斬り、そこから側面へと移動し、そのレーザーを切り上げながら、なぞりエネルギーの真上に。そこから更に双剣で斬り払って、またしてもそのエネルギーに沿って双剣を突き刺して滑る様に側面へとなぞり着地。そこから切り刻んでいく。それを繰り返して本来ならいくら特殊空間であろうと、その場にいる者達も下手をすれば衝撃波だけで致命傷に追い込まれかねない攻撃を、まるで細かく不格好なブロックへと斬り飛ばし、分解していく純。そして斬り飛ばされたブロック片のエネルギーは空中で爆発することなく自由落下。地面に接触したエネルギーはまるでゴムボールの様に軽く飛び跳ね・・・霧散していった。


「「「・・・・・・!」」」


 純が狐の傍へゆっくりと下り立って来た。その数瞬後。後から後から生み出され続けていくはずの狐の膨大なエネルギーが独りでに分解していき霧散していったのだった。


 理解せぬまま、次々と分解されレーザー砲が消されていく光景を追って行った狐、武者、女性。純の動きはまるで見えず、後から不思議な形で飛んで行き消えていくエネルギーを見て驚いていた。しかし、そんな中・・・。警戒態勢が一番高く、戦闘中の狐は他の2人より早く純が自分の近くに既に降り立った事に気付いた。驚く反応と開いた口、体が自分でもゆっくりとしたものだと感じるほどにスローになっている狐。目の端でようやく純が下りていることに気付き、急いで出していたエネルギーの方向を替え、無理やり吐き出そうとするが・・・。


「ギャアアンッッ!!」


 爆発。口元ではじけ飛んだエネルギーで上体が大きく仰け反り、後ろへと倒れてしまった。


 そしてその爆発と狐が倒れた事でようやく武者が・・・。少し遅れて女性も事態に気付いた。


「「・・・」」


 呆気にとられる武者と女性。そんな2人を置き去りに、震える体を無理矢理動かしたかと思うと大きく飛び跳ねて後退する狐。吹き飛んだ口元から煙を上げている。しかし、マナの塊であるためすぐに周囲のマナを吸収し、元の形へと修復した。そして唸り声を上げて純を睨みつけた。


「・・・」〔流石に、この一帯のマナを消し飛ばすまで戦う事は出来ませんよ?〕「分かってる・・・。短期決戦だ」




「っつう事でお待たせ3人共。俺達もこれから行くから、その結界の維持、お願い」「・・・(コクン)」「はい・・・」「お願い・・・します・・・」


 彰隆が澪奈、鏡花、茉莉に声を掛けるとすぐさま動き出した。それと同時に一斉に全員がそれぞれのポイントへと動き出した。


「って、言ってもあたし達は魔力を溜めるだけなんだよね~」「ここは我慢ですよ~、翼ちゃん~?」「分かってる。・・・ふ・・・。美味しいトコなんだし」「はい~♪」


 翼と來未は上手く異形モンスターの視界に入らない目立たない場所で魔力を溜める事に集中した。


「私と芳守君もいます。場合によってはこちらで注意を惹きつけるから、あなた達はしっかりと一撃に集中して頂戴」


 佳胡の言葉に、離れていく芳守も頷き。2人は澪奈達のフォローを最優先に移動を開始した。


「う~ん・・・」「・・・翼ちゃん?」


 腕を組んで悩む翼に気になった來未。


「ねえ、來未。・・・あたし達の魔力ってどうやって溜めるの?」「え?そりゃ~・・・えー・・っと・・・。あれ?」「多分、こう・・・湧き上がる魔力を留める様な事なんだと思うんだけど・・・。でもそれじゃあ、彰隆達がやった様な攻撃になるとは思えない気がするのよね~」「確かに~・・・。楓花さん達はなんていうか意図的に調整してた様な・・・」「・・・あたし、そういうコントロール・・・したことない」「私もです~」「ん~~ああ゛あ゛っ!新しい力の解放は出来たのにいぃぃ・・・!!」「・・・どうすれば良いんでしょうか?」


 頭をわしゃわしゃとしてしまう翼と悩み口元に指を付けて止まってしまう來未だった。


「う~う゛う゛っ・・・」「何?風邪?」「いや、なんかスゲー嫌な予感が・・・」「こんな時にそういうのはおよしなさい・・・なっ!」


 異形モンスターの周りを走りながら攻撃を仕掛ける彰隆と楓花、花蘭の3人。


「(〔あ亜ア゛?〕)」


 しかし、対して効いていないのか、虫を払う様に手で振り払う動作を取る異形モンスター。


「・・・いい加減。その耳障りな音を何とかしてほしいんやけどな」「同感ね。タブって聞こえるから気持ち悪い」「つう事だ。申し訳ないが・・・その口って言うか、頭を叩き潰させてもらうぞ?」


 残り少ない魔力を振り絞り勢いよく異形モンスターの足から腹、頭へと駆け上がる彰隆。モンスターもすぐさま反応。お腹周りを駆けあがってくる彰隆を手で払い落とそうとする。そして彰隆が体から離れた所へすかさず後ろへと下がり回転、体から生えた腕の大剣を斬りかかって来た。


「やろっ・・・!」


 大剣を受け止める事は避け、彰隆はぶつかった瞬間にその衝撃の下。大剣の下を潜り込むようにして逸らして回避した。しかしそこへ続けざまに回転の勢いで回って来た足のカカトがぶつかり叩き落されてしまう。


「ぐふっ・・・」


 口から空気と僅かに液体が外へと漏れる彰隆。怪我はしていないが叩きつけられた勢いで床に小さなクレーターと一文字の様に形が出来上がってしまった。そこへしなやかで強靭な鞭の様な爪が彰隆に向かって振り下ろされようとする。


「花蘭、お願い」


 楓花の言葉で花蘭はすぐさま軸足になっている異形モンスターの足に移動。魔力を練り上げて、自身が出せる限界出力で薙刀を振るった。


 ズガアン!!


「(〔亜ア゛?〕)」


 見えない死角から足を引っかけられ、一瞬だけ空中へと浮遊する異形モンスター。そこへ楓花も飛び上がり無防備になった片方の手の爪を手元の近くから切り裂いた。


「(ぐう~~っ・・・!!カッタ!)」


 一閃出来た事で刀の損耗は避けたつもりだが、その衝撃までは完全に殺せるわけもなく。若干涙目になった楓花は鞘に納めると空中で翻った。そして魔力(体内マナ)と独自の技法を使って空中で空気を蹴って高速で降りてくる。擦れ違いざまに体に生えた足を太ももから斬り飛ばした。着地した地面にヒビと破片が舞い上がる中、高速でその場を離脱した。


「案外、体の方に生えている部位は脆いのかもね」「・・・そういうのは手をヒラヒラさせながら言うもんちゃうんとちゃいます?」「えっへっへっへっへ・・・。ちょっと失敗。まあいいじゃん。再生するわけじゃないんだし戦力を削げたんだから」「その度に固い部位を担当する方の身にもなって欲しいわ」


 呆れる花蘭。そんな花蘭と楓花が会話をしている間に復活した彰隆が反撃とばかりに体に生えて持っていた剣を叩き折った。


「・・・っ痛う~っ!・・・何とか叩き折ってやったぜ」


 ガゴ―ンと重い音を立てて1本の大剣が床に落ちる。


「どうせなら腕を叩き折るか、破壊してよ」「確かに。そっちの方が動きやすいのに」「おいおい。これでも結構頑張ったんだぞ?」


 3人は動き回りながら、翼と來未が魔力を溜めた大きな一撃を叩き込みやすい様に翻弄と戦力を削ぐに努めていた。


「・・・。(ボソ)ふ・・・。敵いませんね」


 佳胡は未知の相手に普段通り、臨機応変に戦いながらも着実に力を削ぎ落している彰隆達を柔らかい笑みで見ていた。それは憧れでもあり、同時に尊敬でもあった。どんな時でも冷静に。自分の出せる力を出す。当たり前をただ当然の様に出せる難しさ。それを彰隆達の所で働き、イヤというほど実感してしまった佳胡。前から解ってはいても、本当の意味でその大変さの意味を理解していなかった。だからこそ自分もそんな人間であろうと努力している。いつかあんな風に自然と行動が取れるくらいに・・・。


「(ボソ)まあ、事務処理の方もあれくらい頑張ってくれたらとは思わなくもないですが」


 戦闘中なのにも関わらず盛大なくしゃみを上げる男を佳胡は笑いながら見ていた。



「・・・っ!(マズい?)・・・鏡花、茉莉先輩!」「「!」」


 澪奈はゲートの奥から微かに感じたナニかと赤い光の粒子に嫌な予感が高まり2人に声を飛ばした。2人も澪奈の声色から異変を感じ、出せる力も限界と分かっていて更に霊力を振り絞った。微かに強まった結界が赤い光の粒子とぶつかり合いバチバチと宙のいたる所で弾け飛ぶ。


「「「ぐぅぅっ・・・!」」」「どうしたのっ・・・!」


 澪奈の声に反応したのは佳胡達も一緒だった。そして3人がほとんど顔も上げられず目を閉じて何かに食いしばっている事で、周囲の者達の緊張感が高まった。


「社長!」「!、楓花!」「っ!」


 彰隆は楓花と一緒に魔力(体内マナ)を使い切るつもりで消費。高速で移動して体にある部位を最優先で破壊していた。頭も狙おうとするが、その前に3,4つとエネルギー弾が生成され妨害された。


「(魔法でもあれは出来るのかっ)」「彰隆、他を最優先!」「分かってる。花蘭ちゃん」「っ!」


 彰隆の声に、いち早く反応したのは異形モンスターだった。花蘭の払いのけを予想して飛び上がり回避行動を取っていたのだ。そして3つ頭の前に生成したエネルギー弾を打ち出そうとしていた。しかし、花蘭も予想していたのか上空へ飛び、腕に向かって上昇した。


「足下ばかりとは限らへんよ・・・はっ!!」「(〔亜アアアア゛~ッ!!〕)」


 避ける事を最優先に、更には高速で回転捻りと加えて体に生えた部位で攻撃するつもりであったのだろうがこの時にはすべて、彰隆と楓花が斬り飛ばし、叩き折り、使えなくしていたのだった。そしてそこからの花蘭により全力の攻撃で最大武器の1つの爪も斬り飛ばされてしまったのだった。


「っ!・・・ホンマ硬い・・・。・・・よう頑張りはりましたな・・・。ありがとう」


 花蘭は自由落下している最中、自分の愛武器の薙刀の刃がボロボロと欠けて崩れていくその最期を優しい目で見ていた。


「ナイス、花蘭」「礼ならこの子に言うてあげて。・・・ウチの相棒やったから・・・」「・・・そうね。ありがと」


 空中でキャッチした楓花は花蘭と一緒に異形モンスターの射程範囲の少し外へ避難した。優しく相棒の薙刀を抱きかかえた花蘭を連れて2人が離れたのと同時に投げ出された異形モンスターの顔の前にあったエネルギー弾があらぬ方向へと次々と飛んで行った。幸い着弾した箇所には誰もいなかったが、いたる所で大きなクレーターの後が作り出されてしまった。


「(ここらが限界か・・・)翼っ、來未っ」「オッケー・・・!」「任せてください~」


 戦闘に集中し、そこまで周りを見る余裕が無かった彰隆は、体を異様な魔力が迸り光の柱となっていた2人を見て驚いていた。いや、若干呆れ返っていた。


「(ボソ)一体何をやれば、あそこまで溜められんだよ」


 そんな彰隆も攻撃の為に異形モンスターのさらに上空まで飛び上がっていた事もあり、その光景を見た瞬間に方向を転換、急いでその場を離れたのだった。


「っしゃ~っ、行くわよ~?」「オーライ♪」


 迸っていた魔力が急速に体の内に集まっていくと、2人は走り出した。ドォン!踏みしめた足の力に土煙が舞い上がり、衝撃波で近くに居た佳胡が目を瞑り顔の前に手を持っていき守るほどだった。その速度と一直線に伸びる動きはまるで光の線が伸びて行っているように見えた。白い2本の線は異形モンスターのほぼ真下に到着した瞬間、真っすぐに急上昇。


 ズオン・・・!!


 白い線が異形モンスターの体の左右、下から迸って上へと大きく抜けて行った。


「(〔亜っ〕)」


 体を白く大きな波紋がすり抜けたと思った時には目の前の空でその光の線が左右を交差して、急速に落下してきた。


「〔亜アアアア・・〕(あア゛)~~~っ・・・!!」


 光りはモンスターの顔の横を通り抜けていった。切り裂かれた頭は声が断末魔を上げるがすぐに2人の魔力マナに当てられて消滅していくように煙を上げて崩れていった。


 ズザアア~~~~~・・・・・・。


 高速で下りて来た2人は武器を振り抜いた構えのまま滑り、止まった。遅れて巨大なモノが重力に引っ張られ重い音を上げて落下してきた。


「「「!・・・」」」


 限界だっだ澪奈、鏡花、茉莉はその場で倒れてしまった。そして3人の霊力が切れた事で狐、猫、鳥も空気に溶けるように掻き消えていった。


「よく頑張りました」「・・・は・・・い」


 佳胡に抱き起され、澪奈が何とか返事を返した。澪奈を安全な距離まで避難させるように支えて運んで行く。同じく、鏡花、茉莉も彰隆と芳守も抱えられて退避する事に。


「あ・・・アア・・・・・・亜アアアア゛?・・・」


 ゲートから湧きだした赤い光の粒子を周囲に纏っている異形モンスターがヨロヨロと手を動かして、何とか這い上がり立ち上がろうとしていた。


「はぁ・・・。意外としぶといわね」「ちょっと、粘り過ぎでは~?」


 振り返り肩に武器を乗せた翼と來未が呆れながらモンスターを見た。


「・・・なんか、サッサと死んでくれないと・・・こう、いたたまれなくなってしまうんだけど・・・」「私達も弱い者いじめに来たわけではありませんし~」


 激しく弱り、生まれたての小鹿の様に震えている様に少しだけ同情の様なモノが生まれてしまう2人。


「・・・サッサと倒してしまいなさい2人共。それがこのモンスターの為になるなら」


 近づいてきた楓花が神妙な顔で言葉を掛けた。


「そうやね。・・・モンスターの中には、コッチの都合で呼ばれて苦しい目に負うてるモンも居るって話も聞くし・・・。モンスターをどう捉えるかは2人次第やけど・・・。同情が生まれてしまってんのやったら、この場合はサッサと倒してしまった方が良いやろうな。時間を掛けると尾を引くやろうし」


 立ち上がろうとしては、膝を突き、また立ち上がろうとする異形モンスター。その鳴き声には先ほどまでの畏怖の様なモノは皆無だった。


「まあ、私もその方が良いと思ってたし」「こういうのはアッサリと・・・」


 2人は振り返り、モンスターに近づいて行く。



「ダメー!!逃げてっ!」「「「!」」」


 遠くからそんな声に反応し振り返った翼達。そこには佳胡に抱えられていた澪奈が地面に倒れながらも叫んでいたのだった。


「何を言って」「翼っ!」「えっ?」


 いち早く、異変に気付いた楓花が前に振り返った時。そこには目の前の異形モンスターの周囲に舞っていた赤い光の粒子が急速に体の中に入って行く瞬間だった。そして声を掛け、翼達もモンスターの方へ振り返った瞬間、大爆発が起きた。


「「「っっ~~~・・・・・・!!!!」」」


 あまりの大爆発で近くに居た澪奈達は大きく外へと弾き飛ばされてしまった。


「がはっ・・・」「あはっ・・・」「「ううぅぅっ・・・」」


 尤も近くに居た翼達は澪奈達の遥か後方へと投げ飛ばされていた。幸い翼と來未の溜めた魔力(体内マナ)が2人だけでなく、後ろにいた楓花と花蘭の壁になり致命傷は避けられた。が、目立った外傷は避けられたが大きく負傷してしまい立ち上がる事が出来ず、うめき声だけが漏れていた。


 ゲートのすぐ傍、半径100メートルに及ぶ大爆発。その爆風と衝撃で、中心地周辺に居た守護者全員が巻き込まれたのだ。


「うっ・・・うう・・・」


 澪奈を覆うようにして守っていた佳胡のおかげで澪奈はほとんど怪我を受けることはなかったが、疲労と爆風で受けた衝撃は消せず、何とか顔を上げるのがやっとだった。


「・・・・・・っ・・・!」


 大爆発の中心地。そこで直立不動で立っている少し赤くなった肌に変化した異形モンスターを見た澪奈は戦慄した。見た目はボロボロで肌色が変化していること以外は特に変わった様子はない。しかし先ほどまでと明らかに違った。これまでに身に付けた力。更に今回新たに、開花した力で得た霊力マナによって、澪奈は相手の魔力マナの底が少しだけだが感じ取れるようになっていた。そして、その力の底が先ほどよりも明らかに上昇している事を感じた時、彼女の顔には恐怖と焦りが生まれていた。


「(ど・・・どうしよ・・・。そういう事じゃ・・・。逃げ・・・。どうやって?ここには皆が・・・)・・・っ!」


 朦朧とした意識で何とか必死に考える。しかし何も思い浮かばず、地面の土を強く握り締めてしまうのだった。


「(ここで・・・終わりなの・・・?)そん・・・なの・・・。いや・・・っ!」


 体に力を入れて何とか立ち上がろうとする澪奈。自身の体に、そしてそれ以上に心に喝を入れて立ち上がろうとする。


「っ・・・!・・・んんんっ!・・・っっ!」


 フラフラでも何とか立ち上がった澪奈。しかしそれが限界だった。もはや立っているのが限界だったのだ。


「はあ・・・・・・はあ・・・・・・はあ・・・・・・」


 呼吸だけが静かになった空間で聞こえる。その目はしっかりと相手の姿を捉えて、決して外すことなく見続けた。そして、そんな状態が10秒、20秒・・・。あるいは1分以上も続いた時だった。


「・・・(あ・・・)」

 

 若干赤い肌に変わった異形モンスターが嗤い、声を出したような表情をした。そして澪奈に向かってゆっくりと動き出した。


 ズン・・・・・・ズン・・・ズン・・・!ズン・・・!!


 徐々に芯に響く振動音と、その図体から来る圧迫感が澪奈に伝わってくる。


「はあ・・・・・・はあ・・・」


 澪奈は呼吸をしながら近づいて来るモンスターから決して目を逸らすことなく睨みつけていた。しかし途端に気が抜けた様にフと笑った。


「(対策も何もあったもんじゃない。でも・・・ううん。きっと誰かが・・・こいつを何とかしてくれる。・・・でも、ちょっとだけ・・・。早く来て欲しかったな~・・・)」


 モンスターが起こす振動音は思った以上に立つことに精一杯の澪奈には響いた。その距離が30メートルを切った時には、もはや立つことも出来ず座り込んでしまった。


「(立つことも出来ない。・・・はは・・・。悔しいな~・・・。もっと生きたかったな~・・・)」


 パンパンパン。


「・・・奈ちゃ・・・っ!・・・~~っ!」


 モンスターに向けて誰かが銃を撃っていた。しかし、異形モンスターには特に何とも感じていないのか変わる事の無いゆっくりとした速度で澪奈に向かって歩いていく。


「(誰か・・・木下さん達かな・・・。ダメ・・・もう頭が・・・)」


 とうとう意識を保つのも限界を迎えていた時だった。


 ザン・・・!・・・ブシュ~~~~~~~~~~・・・・っ!!


 突然、異形モンスターの首筋辺りから大きな光の刃が飛んで行った。その刃は不思議な事に突然、モンスターの内側から胸、肩、首を大きく切り裂き飛び出す様に出て行き空の彼方へと飛んで行った。


「・・・え・・・?」


 ドオオオンンンン・・・・・・・・・。ボシュ~~~~~・・・・・・!!


 モンスターは何もすることもなく突然、前のめりに倒れ込んだ。首から盛大な黒と赤の煙が空へと吹き上がり、霧散していく。そして、そのままモンスターは二度と起き上がることはなかった。


「何が・・・おき・・・て・・・?(あれ?・・・でも、アレ・・・どこかで・・・)」


 そこで澪奈の意識は途切れたのだった。







【十時影 純 (クリス)】15才 人間・・・かな~?(進化)

 レベル 38

 HP 724 MP 813

 STR 356

 VIT 301

 INT 393

 RES 334

 DEX 451

 AGI 428

 LUK 73

『マナ(情報体):レベル 9 』『波鋼:レベル 8 』『質量拡充:レベル 5 』

『魔法:水、風 』

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