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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
199/473

196 突発的な事に気遣う余裕なんてありません!?

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっ・・・」


 ガガガ・・・ザ~~~~~ッ・・・。


「おい。・・・これって、そもそもどういう事だ?通信エラーだとしても砂嵐は不自然だろ?」


 焦っていた事は内心誤魔化していた者達は、突然中央に置かれていたホログラムのモニターが映らなくなったことに文句を言ってしまった。


 ここはとある会議室。部屋はとても暗く、中央のホログラムで照らし出されている場所以外はほとんど光が射していない。そのため、会議室に座っている者達の顔も何も見えない。分かるのはシルエットだけ。更に椅子に座っている者に控えている者達の姿はもっと暗く。ほとんど闇と同化している様な状態だった。


「・・・」「これって~・・・結果としては良かったのかしら~?」「いや、しかしこっちにたくさんの同士を引き込むという事も・・・」「でも、勝手にやったんでしょ?」「そりゃあ、そうだけどよー・・・」


 各々がどういう反応で今起きたアクシデントを判断してよいものか悩んでしまう。


「・・・」


 まとめ役に徹している代表者の男は黙って今なお、自分達の事を打ち明けようとして機械エラーを起こしてタイミングを逃した男の少し不満と焦っている表情。女性が逃げる様に去って行く後姿。どこからか不明なアングルから怒り狂った軍服の老人がズカズカととある屋敷を出ていく所だった。そして、この3つも他の映像と同じく砂嵐の様に強制的にかき消され通信エラーを起こして真っ黒になってしまった。しかし、モニターだけは明るく表示されていた。


「ちょっと~。アレを見てよ」「「「?」」」


 少女のシルエットをした人物が指を指す先には・・・。リアルタイムでコメントを書き出されていく掲示板などがあったが・・・。その次々が謎の虫食い状態でコメントが消えていく。さらに徐々にそのサイトから今起こっていた事実がまるで落ちてゆく砂の様に消され、何も表示されなくなってしまった。


「・・・(何を・・・誰に邪魔されている?)・・・まさか・・・」




「ふっ!・・・はあっ!」「ギギッ」「グゲッ」「「ガッ・・・」」「アッ・・・」


 ドサ、ドサドサ、ドチャドチャ、ドサドサドサ・・・。シュウ~~~~~~・・・・・・。


「すー・・・・・・ふ~~・・・・・・」〔モンスターの数が増えてきましたね〕「(うん・・・。一向に減らないって感じだよ)」〔それでも、この先は・・・1体だけの様ですよ?〕「分かった・・・」〔私達を待ち構えています。気を付けてください〕


 純は煙りを上げるモンスター達、死屍累々の中をゆっくりと歩いて行く。


 現在は城内、本丸の離れ4階の渡り廊下に向かう大部屋の中を純は歩いていた。本来なら色々と廊下を曲がりくねる必要があったが面倒くさくなったのかど真ん中を進むように歩いていた。おかげで純は見つかり次第、影の武者モンスターなどから襲われている始末だった。しかしそれももう終わりが近づいてきた。純が思う以上に討伐されたモンスター達の数はとても多く。煙が、霧散せず充満する形になれば城の中は黒い煙で下の部分がほとんど見えなくなっていた事だろう。


「・・・あそこか?」〔その奥です〕


 木で出来た厚めの門扉の様な扉を押していく純。


 ガガガガガガガラガラガラガラ・・・・・・・。


 古いためか軋む音が大きく、そして重い。しかし身体能力が著しく向上している純にとってはちょっと重いな~と気持ち思う程度だった。


 ゴリゴリゴリゴリ・・・・・・。


 床の木を削る様に重い扉が開かれていく。・・・そして。


「・・・あれか・・・」〔はい〕「・・・なんか弁慶みたい」〔・・・見た目が黒い事と体が大きいこと以外はまんまそうですね~〕


 高さ、横幅8メートル強、奥行き40メートル前後の離れに向かう吹き抜けの渡り廊下。その奥の真ん中で純を見据えて薙刀を構える巨体モンスターがいた。目元以外を隠す五条袈裟に。法衣。・・・そして見事な真っ黒な下駄を履き、仁王立ちで薙刀を床に立てて純を見ていた。


〔・・・大きさ4メートル弱。史実の約2倍といった大きさですね〕「・・・あれは門番かな?それとも・・・」〔・・・ある種、刀狩りでは?・・・。さしずめ純は義経ですね〕「いや、別に家来にするつもりは・・・」〔・・・向こうは待ってくれないようですよ〕「え?」


 純が少し悩み下を浮いている間にモンスターの方から薙刀を構え、刃先を下に向けたまま向かって来た。ゆっくりとだがその歩みには迷いが無い足取りだった。


「・・・」〔行きましょう〕


 純も諦め、双剣を構えて歩いて行く。


 お互いの距離が詰まっていく。・・・30・・・24・・・12・・・。


「・・・!」


 ダンッ!


 下駄での床を踏み込む重い音と共に飛び出してきた弁慶型モンスターは薙刀を振りきった。純はサッと飛び上がった瞬間。薙刀が足元を通過する。そのモンスターの膂力は凄まじく。振り切る時の体重の掛かった足下の木が大きく凹み破片が飛び上がるほどだった。純もすかさず、着地と同時に斬り込んでいく。


 ガギィィン・・・ガキガキ・・・ギギギ~・・・ガゴン・・・。


「!」


 ズザー--・・・・・・。


 無理やり純の攻撃を膂力で戻した薙刀で反撃。そして同時に後ろに下がって純の追い打ちを次々と受け止める。数度の手合い、そこから左手に持ち替えた所を純が懐に踏み込んで一撃を斬り込もうとするのを器用に手元に戻しつつ更に後退するという行動で大振りでの薙刀での戦い方をモンスターはカバーしていた。少しだけ斬り結んだ後、純が押し出す様に重い1撃を繰り出し。10メートル以上後方へと滑って行くだけに留めた弁慶モンスター。


〔・・・なかなか面白い相手ですね〕「(あの武器と体と力じゃ、ここで戦うのは狭いはずなんだが・・・)」〔純の攻撃を器用に受け流していますね。最後の攻撃以外、あまりダメージは受けていないでしょう〕「(ココに来てから少し敵が強くなってきたな)」〔ココが本来の空間である以上。当然、敵の強さも外とは比較にならないでしょうね〕


 ガリっと下駄が床を踏みしめる音がした純はモンスターの方へ意識を集中する。


「・・・」


 ダンッ!


 力強い飛び出しでモンスターは薙刀を振るって来た。


「フッ!」


 ガギィン・・・!バキバキ・・・。


 渡り廊下の木に大きなヒビが入って行く。


〔本来の世界の空間であろうと流石に2人の力に耐えられるほど感情というワケではないようです〕「(分かってる!)」


 純はすぐさま振り下ろしてきた双剣を外へといなす。しかし弁慶モンスターも気付いていたのかすぐさま刃先の方角を変えて振るって来た。純は双剣でカードとしたが横薙ぎによって廊下に手すりにまで弾き飛ばされてしまった。


「ぐっ!」


 一部、木の手すりを吹き飛ばしたが何とか廊下の外へと押し出されるのは踏み止まった。しかし、それも読んでいるようにモンスターが追い打ちを掛けて来た。


「っ」「・・・っ!」


 態勢を立て直すのと同時に飛び込み前転して回避。純のいた所を薙刀が廊下ごと切り裂いた。更に一部が大きく埃を巻き上げて破壊されていくが、気にした様子もなくモンスターは純を追いかける。


「(このっ)」


 純もそれをサポートとのマナによるリンクで感知。気配から向かってくる事とどういう風に振るってくるのかを理解しその場で飛び上がった。そこからモンスターの頭に双剣を振り下ろす。咄嗟の事に一瞬の硬直が出来るモンスターだが、器用に体を後ろに倒して下に向いていた薙刀を跳ね上げる。それには純も予想外だったために反対に持っていた双剣で受け止めつつ逃げるしかなかった。着地するとすぐに動こうと思っていた純だが、それよりも先に薙刀を適当に振るい牽制して純に距離を取らせる弁慶モンスター。


 傍から見れば、少し泥臭く見えるがお互いはいたって真剣だった。


「うっ・・・・・・」「・・・」


 飛び出す勢いを殺されて、ゆっくりと離れていくしかない純と・・・。後方へと飛び跳ねて一気に起き上がるモンスター。またしても両者の間に距離が20メートル近くも出来上がってしまった。


〔どうしますか?このままでは決着がつくのは・・・」「・・・(仕方ない)」


 純はゆっくりと目を閉じ体内マナを感じ取ってから活性化。濃度と循環率を上げていく。


「・・・!」


 何かを感じ取ったのかモンスターは純に向かって一気に飛び出してくる。そして今度はモンスターも全力を出してきたのか先ほどとは明らかに速度が違っていた。・・・しかし。


「・・・」「!」


 純が目を開けた瞬間。純には少しモンスターがスローモーションのように映る。


「・・・」


 ガキン・・・!


「!」


 モンスターの袈裟切りを軽くVの字を描く様にはじき返してしまった純。あまりの事に驚くモンスターだが流石に瞬時に切り替えてその場で何度も叩き込んでいく。突き、払い、振り下ろし、回転・・・。その全てが純の前で明後日の方角へと弾き飛ばされて行った。


「っ~!!」


 モンスターは足に力を込めて踏み込んだ。純はそこに合わせる様に蹴ったのだ。


 バキィ・・・!


 折れてはいないがとてつもない音と衝撃を与えて溜まらず足が後ろへと払われてしまったモンスター。バランスを崩すが力任せに振り下ろして純との距離を開けさせ、無理矢理離す。そして・・・。


〔純・・・そこは・・・〕


 モンスターは薙刀を杖に足の脛を抑えて震えてしまっていた。


「・・・(別に卑怯な事はしてないと思う)」


 純も流石に急所を蹴ったとは思っていないので双剣を構え直した。しかし内心はちょっと焦りつつ、見た目から狙っていた部分ではあったが・・・。モンスターの体から黒い靄が吹き上がっていた。


〔・・・ああ~・・・〕「・・・」〔やっぱりマズかったんじゃ〕「セ、戦闘だから・・・。その~・・・」


 若干目が泳いでしまった純。しかしモンスターはそんな純の素振りなど気にしていなかった。吹き上がる靄と純達が感じているナニかを湧き上げながらモンスターはゆっくりと立ち上がった。明らかに怒っていた。


〔・・・でしょうね〕「・・・」



 モンスターは本能で更に加速して飛び出して突き出してくる。しかしその頃には純の中でも再び戦闘意識が高まっていく。とても先ほどまでの動きとは思えないほどのスピードで繰り出した突きを純は受け止めた。そして払う。


「!」


 負けじとモンスターも今度はステップを踏むように横へとズレ、角度を変え、純の攻撃を避けつつ体重を乗せた重い一撃を叩き込んでいく。


〔奥へ〕


 純はサポートの声を聞くと同時に振り下ろしてくる前に奥へと踏み出していった。


 バゴーーーン・・・!


 純が踏み出した後方では大きな音を立ててとうとう渡り廊下に大穴が出来てしまった。この廊下は頑丈なのか激しい振動は起きたが、まだまだ完全に崩壊するほどではなかった。しかし純の僅か1メートル後ろは5.6メートルの大穴が出来上がっていた。


「・・・」


 モンスターは振り下ろした姿勢で止まっていた。そしてゆっくりと薙刀を持ち上げて態勢を立て直す。


 ブン・・・!


 空を斬り、薙刀を純へと向けて腰を落とす弁慶モンスター。


「・・・ふぅ~・・・」


 再び純が呼吸をしてモンスターと同じように重心を落とした瞬間だった。


「っ!」


 一気に飛び出してきたモンスター。カッと見開いた純は左手の剣でその攻撃を弾くのではなく、なぞる様に薙刀の横へと滑らせ、方角を外側へと押しやった。そして右手の剣で分厚い横腹を擦れ違いざまに切り裂いた。


「ッ!!」


 滑って通り過ぎていくモンスターは切り裂かれた腹を押さえて振り返る。しかしゆっくりと振り返る純を見た瞬間に再び飛び込んでいった。今度は体の捻りを加えた片手による全力を乗せた押し出しの突きで。・・・しかし。


 ガギッ!ガギギギギギギギギギ・・・・・・。


「!」


 火花がほんの少しだけ双剣と薙刀の間でチリチリと飛ぶように感じでせめぎ合っていた。鍔迫り合いの様な状態になっていたがココに決定的な差があった。


 バギィ・・・バギイイイイイ・・・・・・!


 全身の体重を乗せたのであろう弁慶モンスターの1撃は純をその場から押し出すことが出来なかった。両者の足場の床の木がバキバキと傷んでいく崩れていく。ギリギリと両者の腕を介して武器が震えていた。しかし、純はその場から一歩も押し出されることなく立ち止まっていたのだ。この瞬間、体重などを無視してお互いの力という一点において均衡状態にあった。


「・・・あああっ!」「ッ!!」


 切り上げられた剣の力に負け、薙刀は大きく上に放り出される。仰け反ったその瞬間、先の刃が砕けていく薙刀の様をモンスターは目撃してしまった。スローモーションでその瞬間を目で追ってしまうモンスター。理解は出来ても反応はできなかった。


「っ。・・・・・・!」


 ゆっくりとした光景から感覚が戻ってくる。仰け反ってしまった上体を戻した、その時には。既に純は自分の遥か後方に立っていた。目を見開き、自分の体の違和感で気付いてしまったモンスター。


 ダン・・・・・・ドダーン・・・。


 巨体が沈んでいく。微かな振動を純まで届かせ、モンスターは膝・・・体と・・・前のめりに倒れ込んでいった。


 ブシュウ~~~~~~・・・・・・。


 大きな黒い煙を上げて消えていく巨体モンスター。純はその背中を少しだけ見た後。離れへの閉じられた扉を開けて奥へと進んでいくのだった。



「なかなか強かった~」〔その割には余裕そうでしたよ?〕「ん~・・・。マナは無尽蔵にあるわけじゃないからな~。あまり使い過ぎると・・・」〔確かにそうですね。この先に更に厄介なモノがいるのは当然ですし・・・。出来れば温存はしておきたいですね〕「・・・ま、結果的に。今のマナのコントロールと量は何となく掴めたよ」〔相手の実力も分かってきましたしね〕「・・・武器がパワーアップしたのは助かった~。あのままじゃ、もうちょっと時間掛かっちゃったかも」〔・・・お?どうやらあそこですね〕


 扉を開けて、更に襖を開けていく事、数回。目の前には分かり易く地下へと進む階段が真ん中に1つだけ。それ以外は何もないただの空間だった。


「・・・どういう場所だ?」〔特殊な場所のようですね。・・・気を付けて進みましょう〕


 頷いた純はゆっくりと横幅が大きめに作られた木造階段をゆっくりと下っていった。








【十時影 純 (クリス)】15才 人間・・・かな~?(進化)

 レベル 38

 HP 724 MP 813

 STR 356

 VIT 301

 INT 393

 RES 334

 DEX 451

 AGI 428

 LUK 73

『マナ(情報体):レベル 9 』『波鋼:レベル 8 』『質量拡充:レベル 5 』

『魔法:水、風 』

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