193 小さな亀裂
純が近づくと目の前には高さ30センチほどの高さの角の丸まった石が置かれていた。そしてその前には小さな赤い平盃が置かれている。
「・・・」〔見晴らしの良い所に置いたのでしょう〕「・・・うん・・・」
純はそこから見える前方に見える立派なお城があった。遥か遠くにあるにも関わらずとてもハッキリと見えた。
〔・・・ココから25キロほど先ですか・・・〕
お城はとても大きく格式高い存在に見えた。そして純達がこの世界に入って来た木の正体が城と一体化する様に立っていた。
〔これは風流と言ってもよろしいのでしょうか?〕「いや、俺に聞かれても・・・」
城の真ん中。最上階辺りを突き破って大きく聳え立つ桜の木。ひらひらとまるで柔らかな雨の様に花びらが城に舞い落ちていた。
〔行きましょう純。私達が向かう場所は・・・〕「うん。・・・っと、その前に・・・」〔?〕
早速、城に向かおうとしたが、そこで突然止まった純。純は石碑の前にしゃがみ込んで手を合わせた。理由はどうあれ、眠る人の冥福を願った。
ポーン・・・。
そんな時だった。突如頭の中に謎の音が響き、純のステータスボードが勝手に開いた。そしてステータスに載っている特殊アイテムが次々と勝手に出てくる。
「・・・」〔何らかの条件を達成したのでしょうか?〕
``かたえのリボン``、``指輪``、``手紙``が現れて空中で反応し合うように点滅する。さらに呼応する様に小さな赤い平盃も反応を示し、空中へと昇って行く。そしてそれぞれが混ざり合うように回転を始めると光に包まれ弾けた。
「・・・?」
何が起きたのかもわからない中、純は腰の違和感に手を伸ばした。すると手が勝手に異空間にしまっているはずの双剣に触れた。とりあえず出してみると双剣の形が少し変化していた。純は出現したままのステータスボードから確認する。
``双晶 メリフィエラ`` → ``流晶 メリフーラ``
「剣が変わった・・・」〔・・・双剣に流線の波紋ですか・・・〕
形や色自体がそれほど大きな変化はしていないが、心なしかうっすらと桜色が入った様な色になっていた。
「ん?」
純が双剣を見ていた時、目線の先で光に反射したのが目に入った。石碑の傍には白い指輪があったのだ。
「・・・これは?」
おもむろに拾い上げて見るとうっすらと赤い糸が見えた。しかしその糸は数十センチ先からは全く見えない。だが、その先はお城に向かって伸びていた。
「・・・?」〔どうかしましたか?〕「双剣を持った時にも感じたんだけど・・・」
純は指輪をポケットに入れると双剣を持ちマナを込めた。
〔なるほど。そういう事ですか〕
純の言葉でサポートも気付いたのか納得する。純は何もない空間に向かって斬撃を飛ばした。
ズギュウウウウウウンンン・・・・・・。
何かを吸い込み巻き込むように消し飛ばしたのか、そこには先ほどとは違う景色が浮かび上がってくる。
〔枝もあるようですね。なるほど・・・入口で見たあの幹はあそこに繋がっていたのですか〕「そういう事だったね」
純は双剣を異空間に収納した後、もう一度、絶景だった景色を改めて見渡す。そこかしこに太い枝が突き出し、峡谷の様な木々の景色を作り出していた。
「・・・行こう」〔でしたら純。あそこの方にも斬撃を〕
サポートの指示で飛ばした場所は石碑のすぐ傍の崖。そこに新しくなった双剣を振るとまたしても吸い込まれるようにどこかの次元へと消えていく。するとそこには太い幹の様な根が何本も姿を現した。
〔なるほど・・・。不安定だからこそ、敢えてそれを利用して上手くカモフラージュに使ったのですね。私でも気づかなかったわけです〕「マナでは見えないの?」〔細かく精査してもその度に情報体が消えてしまうのでは、違和感を感じる方が難しいでしょう〕「・・・ふふ」〔・・・何か?〕「いや。お前もそういう意味では・・・まだまだなんだな」〔・・・今だけです。私だって日々成長しているのですよ〕「はいはい」
珍しく負け惜しみなサポートの言葉に純の口元は自然と緩んでしまうのだった。
少し気を取り直した後、純達は崖から太い根に飛び乗って大きな桜の木が生えているお城へと走っていく。時には坂の様になり、上っては滑って目的地に向かって下っていく。更には根の穴を見つけては飛び込んで、滑り台の様に右へ左へと揺らされながら下りて行った。
「っとと・・・。ははははは」
根の穴から勢いよく飛び出したまま、別の根に飛び移り、そこからサーフィンをする様に滑っていく。このアトラクションの様な状況に思わず楽しんでしまう純。
〔随分近づいてきましたよ?準備はよろしいですか?〕「・・・ああ!」
根の先が突然、急降下する行き止まりなっている所まで来た瞬間。一気に飛び出し最後のジャンプをする純。そのまま大きく弧を描き木々の中にダイブ。
ガサガサガサガサ・・・・・・。
大きく葉を揺らしながらも着地して来た時には・・・目と鼻の先にお城が見えていた。
「・・・お、おおお~・・・。こうしてみるとホントデカいな」〔今日はずっとその言葉の繰り返しですね。もう少しボキャブラリーを〕「無茶言うなよ」
土や草を踏みしめ、木々から石畳の城の門前まで出てきた純は、その異様な大きさに圧倒されていた。
「・・・まず絶対、日本じゃ建てられないな。建築的にか予算的に」〔あと期間もありそうですね。別の国でしたら・・・100年ほど想定すれば〕「気の長い話だ。その頃には建てたかった人は死んでるだろうに」〔さあ、それはどうでしょう?〕「・・・あ、もしかしてマナ関連なら?」〔寿命が延びるので可能性はなくもないですよ〕「って事はこの世界の持ち主も」〔う~ん・・・。あくまでもし建てるのであれば、ですよ?〕「ああ、そっか」〔・・・それにしても。随分とボロボロな門ですね〕「あの桜の木が色々とお城を破壊しちゃったのかもね」〔・・・ですね。ここから見ても壁を突き破っていますし〕
本来ならもっと外観もキレイに建設されていたのだろうがお城の上を覆うほどの巨大な桜が良くも悪くも建築美を破壊していたのだった。
「ま、入り易くなってるんだし。遠慮なくお邪魔させてもらおう」〔気を付けてください。微かにですが影の世界のモンスター達と同じ気配がチラホラといますので〕「了解」
純はさっそく双剣を持ち出すと正面から城へと入って行くのであった。
「・・・(綺麗だね~。花見が出来たら、この辺り人で密集しそうだよ)」〔城一杯に人の山ですか・・・。敷地を確保するのが大変そうです〕「(ああ~。そういう意味で行くと大型ショッピングモールと変わんないのか・・・)」
純達はもちろん警戒はしつつも、綺麗な青空の下。上からひらひらと舞い散る桜に目を奪われていた。そのままお城特有の侵入者の足止めで作られた迷路の様な道を歩いて行く。サポートのマナという目があるおかげで道を間違えることがないため純はゆっくりと歩いて行った。いくつもの門を潜り抜け、そして辿り着いたのが城の中へ入る分厚い門の前だった。
〔ココからはおそらく城内です。中が狭くなっていますので十分に注意してください〕「(よし)」
気合いを入れ直し。ゆっくりと入ろうとした時だった。再び頭の中に電子音の様なモノが鳴った。
〔・・・今度は何でしょうか?〕「(さあ?)」
サポートも気付いたので一旦、開けようとした所を再び戻って、近くの壁へ。そこでステータスボードを確認する。
【追加クエスト】
ボスの討伐、赤い糸の縁を探せ
「縁・・・」
純は指輪をポケットから取り出す。すると斜め上へと赤い糸が延びた。
〔・・・頂上ではない様ですね。どこへ伸びているのでしょうか・・・。ふむ・・・どうやらこの城。すぐ横に離れの様な場所があるようです〕「という事はそこに行けと・・・」〔まあ行くかどうかは純が決めていいのですが・・・実質向かった方が良いという知らせでしょうね〕「なら、向かうまで」
指輪をポケットに入れ直すと再び門へ。今度こそ城内へと侵入した。
城内1階。
〔あ、純〕「?」〔ココは戦場です。靴は脱がなくていいですからね?〕「わ、分かってるよそれくらい」
サポートにからかわれながら侵入したのであった。
〔さっそくお出ましですよ?〕「(分かってる)」
出来るだけ足音を抑えていても木の板である上に、なかなかの年季も入っている建物っぽいのかギシギシと踏みしめる音が出てしまう。そして純は知らないそぶりをしながら目の前にある大部屋の襖を開けた。天井に張り付いた相手には気付いていない様に。
「・・・!」
一斉に飛び降りて純に向かって黒い槍をブスブスと突き刺しにかかる。純はマナの流れをスムーズに体中に行き渡らせ、畳の上を横へと滑り、そして足に力を入れると、舞うように襲って来た相手を槍ごと切り裂いて行った。
「グウ・・・」「グガ・・・」「ギア・・・」
短い悲鳴を上げた後、ドサドサと倒れ込んで黒い煙と共に消えていくモンスター達。その姿は顔の目の部分以外はほとんど隠すような衣装をしていた。白い目が大きく見開かれ倒れて消えていく。
「・・・忍者だな」〔忍者ですね・・・〕「もしかしてココって忍者屋敷?」〔いえ、城なので忍者城?〕「いや、そもそも忍者は間者。諜報活動とかが主だから城を築くにしても、こんな堂々とは・・・」〔・・・確かに・・・〕
ドタドタドタドタ・・・・・・。ピー・・・。
「あ、ヤベ」〔どうやら普通にお城のようですね〕「話してる場合じゃなかった」〔先ほどの忍者が何らかの方法で報せたのでしょう〕
バタンバタンと襖が大きく開かれ奥から刀や槍を持った武者達が押し寄せてくる。
「(城の中で槍って大丈夫なのかな?ほら範囲的に)」〔まあ、この広さなら何とかなるんでしょう。廊下ですと突きでしか使い方が絞られてしまうでしょうが〕
ゾロゾロと集まっていく黒い格好の武者達。純を包囲する様に移動をしていたが、純もただ黙って見ているわけにもいかない。
「では・・・いざ参る!」〔ちょっとノリノリですね〕
純は目の前に立つ影の武者から攻撃を仕掛けに行った。
バシュ・・・スパン。スパスパ・・・。
「押し通る!」
純はその言葉通り、密集している影のモンスター達を一刀両断の下。ばっさばっさと斬り飛ばしていた。
「(この双剣強くなりすぎじゃないか?!)」〔見た目以上に純とのマナの共鳴率が高くなっているようですね。下手すると城ごとブッダ切ってしまいますよ?〕「(やべ~・・・)」
違う意味で冷や汗を掻きながら純は迫りくる武者モンスターを掃討していったのだった。このモンスター達に感情というのが無かったのか、仲間がやられてもまっすぐ向かってくるのが幸いした。一通り倒し終えた純はサポートと共に周囲をマナで探った。
〔敵影、ありません。相当完了です〕「・・・ふ~。よし、それじゃあサッサと離れに行きますか」〔了解〕
純はサポートに任せ体内マナを活性化。しかし、出来るだけ外に漏れない様に調整してもらい。城の中を駆け出した。
純達が城に侵入を開始していた頃・・・。地球の東京時間、午後11時ごろ・・・。
どこかのとある研究機関。
「え?これって・・・成功?」「ほ、ホントにやれたのか?」「間違いありません!この計測。このエネルギー量・・・。成功です。今度こそ我々は吸収に成功しました!」「ではこれを機に上に良い報告を」「待ってください」
ピ・・・ピ、ピ、ピ、ピピピピピ・・・ピピピピピピピピピピピッ・・・。ビー・・・ビー・・・。
「どうした!」「主任!それが・・・」「・・・エネルギーが・・・」「?・・・っ!」
研究機関の主任達が計測データとそこから供給されてくるエネルギーを見た時、驚いて顔を引きつらせてしまった。
「っ!」
近くに居た研究者が急いで赤いボタンを押して吸収しているバルブを閉じようとする。最悪を想定し何層もの壁や防衛策は取っている・・・が。点滅と共に一向に鳴り止まないサイレン。
「退避―!!」
そこに気付いた主任の言葉の数秒後。突如爆発が起き1つの巨大研究機関は吹き飛んだ。
「あれ~?これってもう始まっちゃってるのかな~?」「いやいや、そんな暢気な事言ってないでどうするんですか?我々も乗り込むんですか?」「ちょっと落ち着きなさいよ。それで・・・ボスとしてはどうお考えで?」「う~ん・・・。勝手に動かれちゃうとか・・・困っちゃうな~。・・・うん。私達はいいや。ここで待機!」「りょっ、了解です」「分かりました」「っで~。そっちはどうするの~?」
大きくてとても暗い部屋では、相変わらず顔を見せないが数名が椅子に座り、世界の状況をホログラムによるネット越しに眺めていた。そのリアルタイムの情報から異変か何かを感じ取った者は他の者達に投げかけた。
「お?もうおっぱじめているのか・・・だったら俺は」「少々お待ちください」
突然、部屋の入り口が開かれ秘書の様な女性が入って来た。そして自分のボスの横に控え手に持った資料を見せる。
「・・・わかった」
ゆっくりと確かに頷いた男は女性を後ろに下がらせ、集まったメンバーに伝えた。
「先ほど、次層のエネルギーを研究していた期間の一部が消失した・・・。この報告によるとエネルギーの吸収には失敗したようだ。いや、正確に言えば、向こうからの流入量が爆発的に増え、タンクが耐えられなくなり爆発したようだ」「そのための対策は」「もちろん取っていただろうが・・・急速に膨れ上がり許容量をあっさりと越えてしまったのだろう」「そんなに強い力だったか?」「私達とは似て非なる力よ?扱いを慎重にしてたから今まで吸収できたのでしょうね」「ちっ、欲を掻き過ぎたってワケか。馬鹿が」「まあ、アイツ等はアイツ等で必死だったんだからいいんじゃない?・・・ま、結局。死んじゃったら元も子もないけど・・・」「ね~?それで・・・被害は?」
子供の様な幼い少女が男ではなく、控えている女性に話を振る。
「我々の調査班によりますと・・・研究者238名中、215名が死亡との事。残り23名も大怪我を負いましてとても話せる状況では・・・」「他には?」
別の若い男が更に女性に問う。
「研究機関の1つは完全に消失。使いモノになりません。またエネルギーが地球に流入。おそらくこれが原因で改造モンスターが暴走したのではないかと・・・」「ああ。ここに載っているリアルタイムの話はそう言う事か・・・」「して・・・。あの方は?」
ボスが顔を振り向かせ女性に聞いた。女性は暗い中、声だけだが苦渋を浮かべる様に絞り出した。
「・・・知らない、と。好きにして頂戴・・・だそうです」「ふは、マジか~」「おうおうそれは良いニュースじゃねえか」「う~ん♪久々に暴れるのも悪くないわね~」
楽しそうにする者達が多くいる中、少女だけは違った。
「ね~・・・本当にそれだけ?」「・・・・・・ただし。管理者に見つかっても知らないから。死んだら次の幹部に誰かを繰り上げて、と」「「「・・・」」」
乗り気だった者達が一斉に黙った。立ち上がっていた者達もスッと座り直した。
「やっぱね~。そういう気がしたんだよ」「も~分かってるなら、先に行ってちょうだいよ。そっちも~」「も、申し訳ありません」
微かに感じる殺気に委縮する女性。しかし男が片手を上げると殺気は消え失せた。小さく息を吐き出す女性。
「済まないな。この者達の早とちりに」「い、いえそんな事はっ」
女性にとっては、伝達の仕方次第では自分だけではなく周りにすら被害が及ぶと思い、慎重に言葉を選ぶしかなかった。しかし、自分の上司はその事にもちろん気付いていたのか気遣われてしまった。
「それで・・・どうする?あの方の話からすると管理者が間違いなく向かってくるそうだぞ?」
その言葉にそれぞれが悩み出す。
「う~ん・・・。この地位自体にはそこまで興味はねえんだが・・・あいつ等を相手に戦うっつうのはな~・・・」「あれ?前は余裕っぽく言ってなかったっけ?」「あの時はあの時なんだよ」「ふふふ」「な、何だよ?」
妖艶な女性が屈強そうな男を見て笑うのが気になったのか思わず口に出して聞いてしまった。
「私の部下と協力者に聞いたんだけど~・・・。この前、アメリカで特殊空間で戦う誰かさんがいて~。そこからボロボロになって逃げ帰って来る姿を見たんですって~」「っ!!」「あら?どうしたの?」「い、いや・・・」
一瞬、腰が浮いた男はゆっくりと再び座り直した。
「な~んか大声で叫んでいたそうでね~?``3体1は卑怯だろうが。正々堂々戦いやがれ``・・・ですって~。おかしいわよね~?クスクスクス」「・・・お前・・・見ていたのか・・・」「あら?何の事・・・?」「誰だ・・・。そいつらは誰だ?」「あら、怖~い。そういう殺気を身内に出さないで頂戴?私達は協力者なのよ?」「・・・・・・チ」
男は腕を組んで椅子に大きくふんぞり返って何も言わなくなった。そしてそれぞれが沈黙した所でまとめ役の男は告げる。
「今回の騒動。いやこれから起こる騒動はあの方・・・ひいては我々の上位者も見てはいるが関知するかは自由との事だ。改造モンスター共は・・・現在は・・・?」「約1万8000ほど」「ウム。その18000体を世界中にばら撒いている。どうやら最近のニュースの通り、次層からの何らかによる過剰エネルギーの供給で強化されている様だ。そいつらを使って好きに暴れるもよし。傍観するもよしだ。皆はどうする?」
その言葉に真っ先に手を上げたのは緩そうな男性だった。
「俺~パス~。こういうのって後で面倒な事になりそうだし~。管理者も絶対出てくるだろうしな。ただ見物させてもらうぜ~?」
その言葉を皮切りに次々と声を上げていく組織のトップ達。
「あたしもパス。ちょ~っと個人的に用事があるから」「・・・俺様もパス。その・・・ちょっと色々と試したいことがあるからな」「じゃあ、私も遠慮しよう。少し気になることがある。最近部下の1人と連絡がつかんのでな」「それじゃあ、私も遠慮するわ~。こういうのは私には向きそうにないし~」「(ボソ)嘘つけ」「あら~?何か言ったかしら~」「さあ?空耳なんじゃねえか?」
すっとぼける男と、嫣然とする妖艶な女。しかしどちらもシルエットしか見えない。そして全員が自分の部下達と話し合う雑談の空気が流れ始めた。そんな時、初めから会議にあまり乗り気でなかった男が突然、声を出した。
「はいはい、じゃあ俺もパス。ちょっと西に行ってみたいんだよね~?今だと管理者に出くわすことなく行けそうだから」「?・・・そこに行ってどうする?」
まとめ役の男が気になって食い付く。
「いやさ、あそこに未知のゲートっぽいものがあったじゃん?あそこを一度見てみたい」「それは少し難しいだろう」「?どうして?」
間髪入れず言い切った男に他のトップ達も話を中断した。
「この資料によると。今回の次層の爆発でゲートの一部が消滅したようだ」「はあ?!」
その言葉は流石に予想外だったのか立ち上がる男。
「そこにあった特殊魔力もどうやら何らかの事象によって消されてしまったそうだ。そして現在、この次層の余波が別の空間を作り出そうとしているという報告が上がっている」「ど・・・どうなってるんだ?」「あくまで1つの仮説に過ぎないそうだが・・・。どうやら報告には間違いなく他の一部のゲートも閉じられてしまっているそうだ。これではモンスターを生み出すことは出来ん」「・・・マジかよ~」
資料を落とし顔を上げた男はへなへなと崩れてテーブルに倒れ込む男。
「?それじゃあ俺達、何にもすることねえじゃん。何しに来たの?」
尤もな質問だと他のトップ達からも同意する反応があった。そこへ控えていた女性が語りだした。
「それが・・・今回お呼びしたのは他の事でして・・・」「「「?」」」
女性は近くにあった操作盤から中心にあるホログラムを操作、次々と別の画面が浮かび上がった。
「あれ?これってウチに協力してくれている・・・」「はい、我々にとっての表向きの協力者です。彼らは彼らで我々に何らかの地位等を求めておられまして・・・」「?何を?大体、ココに載ってる奴らなんてほとんど俗にいう成功者ばかりじゃん。ハリウッドとか政治の重役とか色々と出来る奴らばかりじゃん」「そうね~。今さら何を求めるのかしら~?」「ハッキリ申しますと・・・。力と安全です」「・・・は?」
それには流石に興味を持たなかったトップの1人が理解できず、固まってしまった。しかし他の者達は薄々は理解していた。
「こういう成功者というのは、それが一時的なモノだと思う奴も大勢いる」「ちょっとしたスキャンダルで乱高下するからねー。だから力が欲しいのかもよ?絶対的なモノが」「ああ~。そういう・・・。でも安全なんて・・・。特に政治だけじゃなくて軍とかの重役なんか放っておいても余程の事がない限りは・・・」「それが今回の事に繋がるのかもよ?」「?」
突如、横やりで入った言葉に理解が追い付かない男。
「今回の騒動。あのオーロラから既に起きていたんじゃねえか?対応に追われる政府。どっちに転ぶのかもわからない政策中に、更に俺達が流してやる情報の中にあったモンスター達の異変・・・。サッサと身の安全と確保したいんじゃないのか?」「そうする事で私達に恩と株を売る。先に手を打ったという事ね?」「・・・その通りです」
毅然とした女性が確認を取ると、ハッキリと頷く控えていた女性。
「・・・まあ、アタシ達に協力する人達って、こう一癖も二癖もありそうな問題連中ばかりじゃない?だからって言うのもアリそうよ?」「・・・流石に自称、解放者とかテロリスト連中は捨て駒しか寄越さんだろう」「私達を完全に信用しているわけではないしね~」「核なんて物を使おうものなら・・・。仕方ないがアチラ側と協力せざるを得ん。実に腹立たしいが・・・」「皮肉よね~。支配者が守護者と協力って」「ちょっと違えばお互い協力できる立場ではありますが・・・」「はっ、無駄だ」
屈強な男の吐き捨てだ言葉がその答えを物語っていた。
「特に管理者が・・・いや、その上の連中が我々の内の誰かが世界のトップの1人に立つことがお気に召さないんだ。初めから無理な話だ」「・・・」
ホログラムの微かな起動音だけが部屋に響く。そして再び口を開いたのはまとめ役の男だった。
「それで?その者らは何を?」「喧伝です。我々の存在を世間にほのめかすそうです」「おいおい、それって」「一応、我々の所在地は知らないはずですが・・・。中には・・・何を掴んでいるのか・・・」「あれ?それってマズくね?」「はい・・・。もしという事がありまして・・・。それで集まって頂いたのです」
どこかの何もない砂漠の様な場所・・・・・・。
ギュルルルルルルル・・・ウ~~ヴゥ~~~~~ン!!
突如、1点に風が集い回転し始める。すると周囲1メートルほどの空間が中心へと吸い込まれ、黒い穴が出現した。
「・・・ゲゲ?」
そこからノロノロと周囲を見渡し首を傾げる者が・・・。ゾロゾロと出て来たその者達は光が指しているのに全体が真っ黒い姿をしていた。
【十時影 純 (クリス)】15才 人間・・・かな~?(進化)
レベル 38
HP 724 MP 813
STR 356
VIT 301
INT 393
RES 334
DEX 451
AGI 428
LUK 73
『マナ(情報体):レベル 9 』『波鋼:レベル 8 』『質量拡充:レベル 5 』
『魔法:水、風 』




