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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
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192 目指せ!(影)世界の中心地

 世界では色々な事が起きている。その中にはもちろんどういう理屈でそうなってしまったのか答えるのが難しい変死体が出る。もちろんそのままを分析して考えればある程度は説明できるだろう。しかし・・・中にはどうしても説明にそのまま答えることが出来ないものがある。


「これは・・・何でしょうか?」「大方。どこかのマフィア・・・いやギャングが見せしめに殺したんだろうな」「・・・こんな場所で人知れず、ですか?」「通報はあったんだろ?」「はい。ですがたまたまここを居住にしようと来たホームレスですよ?見せしめにするなら何かしらの報告があるのでは・・・?」「死後何日なんだ?」「・・・最低でも2週間。ネズミに喰われている為にどれくらい経っているのかは難しいです。それに・・・ココは臭いが・・・」「慣れろ。刑事としてこういう現場は初めてじゃないだろ」「はい・・・」


 刑事はそのまま下水道の中を入って行く。下水道と言っても大きなトンネルの様な構造で人が住むには十分すぎるほどの広さがあった。真ん中の数メートルの溝から汚水が流れている。


「・・・なんでわざわざこんな所に・・・」「残骸からは何とも・・・。ただ・・・」「?」「残っていた胴体から分析した所。頭部の骨の一部が肺の中に入っていたそうです」「それは、ネズミによって押し込まれたとか」「いえ、鑑識によれば、これは上から強力な力で押し込まないと入り込まないそうです」「・・・重いモノを頭に落としたのか?鉄球とか・・・」「それだともう少し上で留まってしまいます。この被害者。肺・・・さらに言えば肝臓など内臓にまで頭の骨が入っていたそうです」「・・・どういう殺され方だ?」「・・・さあ?上から重い・・・車とかを落としたのでは・・・」「そんな死体をわざわざここに?」「はい。だから分からないのです」


 このような不可解な事件は世界中で起きていた。破壊された建物群。争ったような形跡はあれど全く意味の無い所に出来ている謎の陥没。そして・・・死体。ネットの一部では退屈しのぎの娯楽として・・・都市伝説の1つとして、楽しむ人達が興味のそそられる対象として語られていた。




「(さ~て。では6日ぶりになりますか・・・。見に行ってみますか~)」〔今日は下見程度にしますか?〕「(う~ん・・・。出来れば今日の内にある程度は済ませたい。まあこのクエストがどういう方向で俺達を案内したいのかちょっと分かり辛いけど・・・)」


 純は自宅で準備体操をしながら影の世界に入る適当な目的をサポートと話し合っていた。目標がある程度絞られていた方が行動はスムーズに運びやすいからだ。運動と同時に体内マナの流れをチェック。循環率のスムーズさに満足した後、早速と自分の部屋から出て1階へと向かった。


「純?これからどこかへ行くの?」「あ、うん。ちょっと駅の大通りの方に」「そう。あまり羽目を外して遅くならないようにね?」「・・・行ってらっしゃい」「姉さん達はお父さん達とどっかに行くの?」「うん。小旅行だって」「純も来る?」「ううん。俺はいいよ。せっかくだしみんなで楽しんできて」「「・・・」」「な、何?」


 大きめのカバンを持ち、何とも言えない表情になる美月と紅百葉。しかし彼女達は首を振った後、普段通りの顔に戻った。


「(ボソ)せっかくだから、誘おうと思ってたのに・・・」「(ボソ)急には無理・・・。そもそも純が私達と一緒に旅行に出掛けた事なんてあった?」「(ボソ)も~。お父さんもお母さんも急だよね~。いきなり出掛けるなんて言うから・・・」「(ボソ)仕方ない、姉さん。お父さん達との条件」「ん~~~っ」「・・・?」


 急に純から少し離れた所で話し合う2人。そしてすぐに美月が何かを言いたそうにしながらも、途中で諦め潔く自分達も出掛ける為に靴を履き始める。


「それで・・・?いつ帰って来るの?」「う~ん・・・日曜のお昼くらいには」「お母さん達も久々に2人して休みが取れたから」「じゃあお父さん達だけで行けばいいのに。せっかくの水入らずだし・・・」「・・・夏奈を1人にさせるワケにはいかない。どっちみち私達は強制的に行かなきゃならない」「はぁ・・・。昂輝もいなくなったから付き合わなきゃならないのね」「・・・じゃ、じゃあ・・・行ってきま~す」


 あまりに会話に入り辛そうな内容の為に純もそそくさと先に家を出て行くのだった。


「「行ってらっしゃ~い」」



 純は桜稲学園の近くにある駅・・・桜稲森駅に来ていた。正確にはその駅前の脇道。


「(ここから入るのは久しぶりだな)」〔今までは、4つの光の柱に沿って近いルートから侵入してきましたからね。一度、原点に戻る気持ちで初心に帰ってみましょう〕「(確かこの辺りが中心地っぽかったっけ?)」〔比較的にそうですね。見やすい位置にあったと思います〕「(見やすいも何もデカい光の柱が天空に昇っていたら・・・結構分かり易そうなもんだけど・・・)」〔ほらほら。そんな事言ってないで行きますよ?〕「(へいへい)」


 純は駅の近くの脇道。地元民しかあまり使わないであろう道を歩いて行く。そして当たり前の様にスッと時空の世界、霧の深い空間へと入って行く。その時、一瞬だけ目の前で人が消えた様に感じていた人もすぐには気にしなくなり、各々の目的に向かって歩いて行くのであった。


 霧深く、明るさの少ない空間。純は未だココに入る人も、意図的に入って来た人も見た事が無かった。純が子供を引きづり込んだこと以外、見た記憶がないと思っていた。


〔いえ、あの変なモンスターは入って来たんだと思いますよ?〕「?」〔ほら2つ目の特殊エリアです。あのモンスター。姿こそ順応するためなのか変化していましたが澪奈達と戦っていたあのモンスターですよ〕「・・・ああ。あれか~。でも何でだろう?」〔それこそ神隠しでしょうね。たまたまこの空間に入ってしまったのでしょう〕「・・・でもその1体だけか・・・。この影の世界ってよっぽど地球に住む人が入れない空間なんだろうな」〔しかしクエストは純にこの世界を導いた・・・。純自身に何かを求めているのか・・・あるいは〕「たらればはどこまで行っても答えなんて分かんないよ」〔・・・そうでしたね。もう少しステータスボードのクエストと会話が出来れば話は違うのですが・・・〕「俺たち自身が必要としている事にも協力しているのかもしれないし。今はそれでいいんじゃないか?」〔・・・ふぅ。ですね〕


 目の前に等身大の大きな鏡の様なモノが見えた。純は何の迷いもなくその鏡に触れて入って行く。


「さてと・・・今日から2日、姉さん達がいない間にどこまで進めるか・・・」〔ほぼ毎日、一緒に寝ていましたからね〕「う~ん。あれはどうにかしないと・・・。流石にもういい年なんだし。個室があるんだから自分の好きなタイミングで寝ても良いんじゃないだろうか?」


 純はどういう理屈か修復?されたボロボロ道路と建物に立っていた。そして目の前には影の世界の桜稲森駅。純はさっそく完全に修復がされているわけではなかった高いビルの壊れたドアから中へと侵入。サポートと話しながらゆっくりと階段などを昇っていく。


〔家族であまり旅行にも参加せず。それでいてその様な我が儘は・・・〕「ぐ、分かってるよ。ただ・・・義姉さん達も、色々と問題があるだろ?俺とじゃ」〔え?そうでしょうか。むしろ・・・〕「むしろ?」〔いえ・・・。(純に言ってもあまり真剣には受け止めてはくれないでしょう)〕「?」〔・・・ちなみに1つお聞きしたいのですが・・・。純はどんな女性がタイプなんでしょうか?〕「へ?・・・う~ん・・・。・・・いや、あれは、そういうのじゃないか・・・」


 エレベーターだった空間。その中の空洞を壁蹴りしながら上れる場所まで上がっていくと再び部屋へと出る。既にかなりの高さまで昇って来た。そこから再び階段まで歩いて行く。その時純はサポートの言葉につい足が止まってしまった。考えたのは自分を真剣に思い考えてくれた人・・・。そして死んでしまった人・・・。


〔なるほど・・・。その考えでいきますと・・・澪奈という事でしょうか?性格的にはかなり違いそうですが、根幹部分は同じ存在ですし〕「あの・・・俺の心をマナで読まないでくれる?」〔いえいえちょっと断片的な記憶が入って来ただけですよ。他意はありません〕「ふぅ・・・。と言っても、あの人はどっちかって言うと恩と謝罪が・・・」〔それを澪奈に返してあげては?〕「どうしてもくっつけたいワケね・・・」〔まあ同じ魂。どこかできっと純の恩返しは届きますよ〕「はいはい、気長に待ってますよ」


 ボロボロのビルも頂上へと辿り着く。屋上へ出る扉から外へ出た純は周りの景色を見て・・・。


「・・・なにアレ?・・・」


 これ以外言葉が出なかった。


 最初に影の世界にはいった時にはあまりハッキリと見えず気にしていなかったモノがこれでもかとデカデカと存在していた。


〔なかなか大きな木ですね〕「なかなかか?」


 雲の上に伸びている大きな木。もう少し正確に言えば木の幹しか見えなかった。極一部が雲に隠れ、それ以上にハッキリと大きな光がヴェールの様に包まれ、煌めいて枝や葉の部分が全く見せない状態だった。ただそこに大きな木が存在しているという事だけしか判らなかった。そして荒れ果てているが町は修復されたと思っていたのは勘違いだった。とんでもなく太い根が純が出現した位置からは全く見えなかったが至る所から飛び出して壊れたビルをさらに壊していた。中には地面から盛り上がったために太くて深い溝が出来上がっていた。そこにどこかから流れてくる大量の水が落ちていく。殺風景な世界ではあまりにもおかしな、ハッキリと自己主張する存在だった。


〔入って来た位置からこんなにも見えないものとは・・・驚きです〕「あ、そこに驚くんだ」〔いえ、もちろんこれだけ巨大だと壮観ですね。純、見てください〕「?・・・。光の柱が・・・吸い込まれている?」〔どうやら、あの先に行く必要がありそうですね〕「ちょっと待ってくれ。あそこって・・・何千メートルあると思ってんだ」〔・・・少なくとも3000メートル以上は・・・〕「高ぇって」〔しかし、あれほど主張してくださるのですから・・・行かないわけには〕「・・・分かってるよ。とにかく根の部分。根っこと幹の中心部分に行こうか」〔そうですね〕


 純はさっそく体内マナを循環、のんびりと会話していた空気から少しだけ意識を切り替える。そして体内マナの活性化を確かめた後、建物の屋上や壁などを蹴って、目的の大きな木の中心地に向かって行くのであった。


 建築物がほとんど無くなってくる。大きく盛り上がった太い根にビルがまるで落ち切らなかった土残りの様にくっ付いている。そして前回、特殊エリアが出現した時の様に大きな木が出現したことにより、深くて大きな溝を作り出していた。純が向かう木へは本来ならばどうしても大きく外回りしなければならなかった。しかし色々とレベルも能力も向上した純にはそれを覆すほどの物理的な力が備わっていた。循環させたマナの濃度を上げれば深い溝を無視して遥か上空・・・地上100メートルほどは上に存在する太い根に飛び乗ることが出来た。そこからひたすら幹に向かって走って行けるのだ。


「ギャアアア!」「グギェエエエ・・・!」「ゲギャア!!」「?」


 幹の上を走っていた純は声の聞こえた方角を見る。するとそこには何体もの影のモンスターが苦しみ出す声と同時にボロボロと体が崩れていく姿が見えた。そしてその体から煙が吹き上がり、それは大きな木に向かって吸い込まれるように飛んで行く。


〔この世界のモンスター達も吸収されているのでしょうか?〕「分からないけど。すべてはあそこに向かって行くようだな」


 はるか先にある大きな木。純はそこへ更に加速して走っていくのだった。



「・・・これを・・・上に登るのか?」〔・・・〕


 目の前に近づくほどにその圧倒的な大きさに流石のサポートも黙ってしまった。果たして何メートルあるのかも分からない。輝くヴェールの下に近づくが・・・。その先の枝や葉が見上げても全く見えない。


〔・・・!純、あそこを〕「?・・・魔法陣・・・なのかな?」


 とうとう幹にまでたどり着いた純達。木の先にはとても小さくうっすらと輝いている、白い欠片が上昇している円柱の様な光があった。目の前の木からすればとても小さいが純1人分くらいなら十分な広さの魔法陣だった。


「・・・魔法的な何か文様があるわけでも無いし・・・なんだコレ?」〔・・・もしかしたら上空への転送かもしれませんね〕「ああー。特殊エリアの脱出とかと同じかー・・・」


 純は上空を見上げて周囲を見回す。相変わらず真上の枝とかは光で見えない。しかし4つの特殊エリアからは光の様なモノがどんどんと木に向かって汲み上げられていくようだった。


〔私達も行きましょう。もしかしたらあのエリアの光が無くなると、転送できなくなるかもしれません〕「それは・・・マナで何か感じて?」〔いえ。影の世界のマナは不安定になることが多いのですが・・・。ここは恐ろしく安定しています。まるで始めからこの先が本当の場所で、この世界はそもそもその派生・・・。つまりこの世界を生み出した持ち主の余波で形成されたものではないかと〕「・・・残滓の様なモノか・・・」〔それほど強い想いが残っているのでしょう。しかしあの特殊エリアは違うようです。あれは一種の忘れ形見の様なモノでしょう。だからこそ強く残り専用エリアとして留まっていたのではないかと・・・〕「・・・あいつらは一体、何を・・・」〔ただ見せしめに殺しただけ。自分達の拠点を作るためだけとは考えにくいですね~・・・〕


 眉間に皺が寄り、目を瞑って相手の苦しみ、悲しみに悼む純。それは純の魂の一部でもあるサポートも同じ気持ちであった。


〔行きましょう〕「・・・」


 純はカッと目を開くとまっすぐ前を向き、光の柱の中へと入って行く。そして純をあっさりと迎え入れた魔法陣は純の体を輝かせ、粒子となって上空へと急速に押し上げていった。



 サ~~~・・・・・・。


 緩やかな風が流れる。木々の間からたくさんの木漏れ日が降り注ぐ、そんな場所に突然純は転送させられた。


「・・・ココが本来の・・・」〔はい。持ち主の世界ではないかと〕


 青々と生い茂る木々に包まれた暖かな場所。今までの影の世界とは全く違う景色に飛び込んだ純はとりあえず外の状況が見える場所まで歩くことにした。


「・・・なんか・・・。あそこがウソみたいな世界だな」〔心の模様が現れているのだと思いますよ?あそこは全てを失った成れの果てでは・・・〕「しかし・・・どうしてそれが現代の町がモデルになってるんだ?普通は時代を考えるともっと江戸とかその時代の・・・」〔あそこもまた色々なマナの流れが混ざり合った空間なのかもしれませんね。そして現在の東京の形に近づいたのではないかと・・・〕「ボロボロだけどね」〔そこは・・・特殊な世界という事で〕


 サポート自身もすべてが分かっているわけではない。それは純も同様。だからこの話に明確な答えなんてものは無かった。そうこう話していると開けた場所へと出てきた。


「おお~~っ!!絶景~~っ!」〔・・・どうやらどこかの山の崖辺りに来てしまったようですね〕


 山の中腹辺りなのか、そこから見晴らしの良い崖のような場所へと出てきた純達は目の前に広がる景色を一望して感動していた。周囲は綺麗な青空と緑だらけ・・・。とても純の様に都会暮らしで生活を送っている者にとってはあまり見ない光景だった。


〔システンビオーネではいやというほど見てきたと思うのですが?〕「やっぱり、直接見る機会が少ないと何度見ても感動しちゃうもんだな~」〔そうですか〕


 サポートは何とも言えない反応だけを返して純の気が済むまで待つことにした。しかし・・・。


〔純、アレを?〕「?」


 サポートが周囲のマナを使って、微かにマナの流れで純の視線を誘導した。釣られたその先には・・・石で出来た丸っこいものが少し小高くなった崖の先にあった。純は自然と崖まで歩いて行く。


「・・・石碑だ」


 角に丸みがある高さ30センチくらいの小さな石碑がそこにはあった。






【十時影 純 (クリス)】15才 人間・・・かな~?(進化)

 レベル 38

 HP 724 MP 813

 STR 356

 VIT 301

 INT 393

 RES 334

 DEX 451

 AGI 428

 LUK 73

『マナ(情報体):レベル 9 』『波鋼:レベル 8 』『質量拡充:レベル 5 』

『魔法:水、風 』

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