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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
194/473

191 変化は緩やかに、着実に・・・。

「ウチのボスが有能過ぎる件について・・・」「?どったの?」「美華っち何かあったの~?」「も~。ま~た勝手に前線に行こうとしてない?」「ちょっ、止めろし。せっかく背後に回ってきた所なんだから」「こういう時は連携が大事だって~」


 カチャ・・・。ババババババババババ・・・!!


「ちょ~!!」「ちょっと本気で撃つってアリ?!」「どうしたの美華ちゃん!」「・・・ウチのボスが有能過ぎる件について」


 淡々と語る声に驚いていた、全員が大人しくなる・・・はずだったが。


「やば、美華ちゃんのせいで敵が来ちゃった!」「先ずはココを排除か撤退でっ!」「了解」「ぎゃ~。やばい向こうからワラワラ来るのが見えた!」「撤退。撤退~!」「殿は任せろ。お前達は先に行け~!」「ダメだ~!」「止めろ!・・・あいつの勇姿を無駄にするな」「・・・総員。敬礼っ」


 バッ、バッ、バッ、バッ、バッ、バッ・・・!




「で、どうしたの美華っち?」


 いつも通りのメンバー(巫女仲間)でゲームをしていた美華達。一旦ゲームを終わらせ、皆が皆、休憩ムードに入ってから突然の美華の態度に改めて話が振られた。


「・・・ウチのボスが」「それはもういいって」「分かったから次」「・・・。皆に聞きたい。私達巫女(神子)ってなんだ?」「え?何をいまさら・・・」「そりゃあ。予言したり、神様みたいな人から神託を受けたり・・・。世界を守って・・・」「まあ、私達が実際に戦って守るわけじゃないけどね」「でも。最悪を回避するための予知とかで未然に防いだり。大事になる前に治める手を貸したり・・・」「ああ~。でもそういう意味ではあのオーロラと超常現象はナンにも分からなかったね~」「ぐう・・・痛い話だ・・・」「あの時の困られた・・・あの顔。なんか私達が悪いみたいで申し訳ないというか、やるせないというか・・・」「私達も別に超人ってわけじゃないからね~。あんなの読めません」「あれはでもちょっとビビったな~。ゲームをしている時にエラーを起こした時はマジで泣きそうになった」「?レアもんでも手に入れたの?」「そうなの!激レア。0.0何パーなのに!・・・せっかく手に入りそうだったのに・・・!」「泣くな・・・。そんな事を聞かされたら。私達だって・・・」


 僅かにすすり泣く様な声が聞こえた。関係なかった他の巫女達は美華に話を戻した。


「それで・・・?美華ちゃんは私達がどうしたの?」「・・・さっき言ってた。巫女としての存在が・・・脅かされている」「?秋夜ちゃんに何かあったの?」「ウチの秋夜に・・・。新たな力が身に付いた」「へ~どんな~?」「・・・・・・少し先の予知」「「「・・・」」」


 何を美華が言ったのか理解できず思考が停止してしまう巫女達。しかしその後、美華から口を出して言う事はなく少しの間、沈黙が流れた。ほんの数秒の後、1人の巫女が再起動した。


「え?は?え?ちょっとどういう事?」


 しかし口出した巫女は理解が出来ず混乱していた。しかし彼女が動いたことで他のメンバー達の再び声を出し始めた。


「え~と・・・つまり・・・どゆこと?」「私達と同じように・・・危険を察知する力を身に付けたって事?」「え?でもそれじゃあ・・・私達の意味って・・・」「「「はっ!」」」


 そこに来て初めて全員が美華が言いたいことの意味を知った。それは本来、特別な存在として常に裏で守られ崇められている美華達、巫女(神子)という希少存在。その価値に大きな変化がもたらされようとしていたからだ。


「え、ちょっ、そんな・・・!それって秋夜ちゃんだけ?!」「秋夜ちゃんだけならいいけど、もし他にも現れたりしたら、私の悠々自適な立場がっ」「ちゃんと仕事しろしw」「やってるっつの」「・・・分からない。ただ・・・きっかけはあのオーロラ・・・。あれが出てから私の行動を先読みしたような事をしてくる」「例えば?」「・・・ちょっとマンガ読もうと仕事を抜け出して」「それは美華っちが悪い」「仕事を終えて戻ってきたら。やり残しがあるって、指摘してきたり」「それって普段から美華ちゃんが手を抜くから知ってるって話じゃないの?」「・・・。つい昨日は」「無視かい」


 あまりにもナチュラルなスルーに思わず突っ込んでしまう巫女。しかし美華は気にせず話の続きをしていた。


「私がちょ~っと苦手にしていた学校の問題があって上手くモブに溶け込もうと考えていたら」「いやいやそこでモブって・・・」「私達って、ある意味モブだよね~?」「あ~。分からなくもない」


 ちょいちょい話の間に挟む巫女達だが決して美華の話を聞いていないわけではなかった。それを知っている美華は続ける。


「上手く前の子の身長を利用して姿勢低くして、先生に当てられない様にとか考えていたら。急に秋夜が``美華。次、ココあてられるから気を付けてね``って」「かもじゃなくて確定」「予言を超えた予知」「恐ろしい・・・」


 戦々恐々する巫女メンバー。


「それで、秋夜ちゃんに聞いたの?」「そう」


 頷く美華。しかしそれだけではまだ分からないと他の巫女メンバーは質問する。


「秋夜ちゃんに直接聞いたの?」「うん。そしたらなんかあのオーロラが出てから、たまに少しだけ未来が見えるんだって・・・。本当に断片的に少し先だけ。最初は何となく私が普段するだろう行動を予測しているだけだって思ってたけど・・・。何回もあるから流石におかしいって気付いて・・・自分の霊力とかどうなってるのか調べたんだって」「調べられんの?それ?」「おばさん達・・・。秋夜のお母さん達が協力して調べてくれたんだけど・・・。霊力自体には何の影響もないんだって。ただ、新たに力に目覚めた可能性があるって話になって」「おお~。スゲー。やっぱウチのボスはかっけ~」「ますます最強になる予感」「自分で意図的に使うには相当、集中して霊力を使わなきゃいけないからあまり使いたくはないって・・・。私達と同じように突発的に起きる事だと問題ないらしいよ?」「おお~秋夜ちゃんもとうとう私達と同じ領域に来るかもしれないって事ですか・・・」


 1人の巫女が顎に手をやり擦って感慨深そうに話していた。他の巫女メンバーも同様の気持ちのようだった。しかし・・・。


「思い出して欲しい。私達の存在を・・・」


 美華の言葉で再び思い出す巫女メンバー。


「いやでも、ちょっと先の未来でしょ?」「うんうん。それにその話から考えると自分の身近が基本でしょ?」「いきなり私達の存在が脅かされるなんて・・・」


 必死に自分達の大切さをアピールするが、その必死さが却って悲しくなる美華。そして1人の巫女がトドメを刺す一言を述べてしまった。


「それは・・・秋夜ちゃんがまだ目覚めたばかりだから・・・?」「「「・・・・・・」」」


 そう。今はまだ目覚めたばかり・・・。そう、あくまで今は・・・。この事は頭に一瞬チラついていたが必死に片隅に押しやって誤魔化していた。しかし1人の巫女の発言で浮上してしまった。もう、こうなっては誤魔化しようがない。


「あれ?私達・・・本気でマズくない?」「いや、私は一応しっかりと仕事してるし。1人でも2人でも同じ力を持った人がいた方がこの暮らしを維持するためには良いと思うんだけど」「・・・確かに」「少し増えるくらいなら、むしろ確実性が増すし、別に悪いこと無いんじゃない?」「あれ?でも・・・」


 思わぬ方向に流れが言ってしまい。焦る美華。自分の目的はその脅威に同意してくれる同氏を持つという事だった。そうしてくれないとこの自分の中の不安と焦りにどうすればいいのか困ってしまうからだった。


「いや~、美華ちゃん。実際問題。他にもたくさんの人に動いてもらってるんだし、ちょっとでも確率を上げて防ぐ人員をそっちに効率よく捌けた方が良くない?」「いや、それは・・・そうだけど・・・」「大体、私達だって別に仕事をサボってないし。無理やり向こうから頼み込んでおいて。アッチの方がシッカリ働いてくれるからもういらないって、ポイってされるのは普通に考えてどうなのって話じゃない?」「ビジネスで考えれば契約があるけど・・・。まあ、私達の場合。持ちつ持たれつだし」「焦って不安になる事なかったね」「あ~ビックリした~」「ねえ?それって秋夜ちゃんだけ?他の皆の所はどうなの?」「ん~・・・。私の所はそういう力に目覚めた人はいなかったかな~・・・?あ、でも。なんか違う力に覚醒したって噂は聞いたよ?」「あー。ウチの所もそうだ。なんか身体能力がかなりアップしたとか言ってたな」「私の所もそう。・・・やっぱり、オーロラ?」「ふ~む・・・。可能性として挙げるには、まあそれしかないよね」「はっ!て事は」「「「?」」」


 1人の巫女が呟いたことに他の巫女メンバーの意識が集まる。


「私達にもホントはもっと隠された力が目覚める可能性も眠っているとか?」「「「・・・はっ!」」」


 その声を聞いた瞬間、美華は``あ、もうダメだ``と諦めていた。


「確かにそうよね。スルー出来るけど、それってなくはない話よね?」「そうそう。私達だってこれはもしかしたらキッカケがあり次第、眠っていた力が・・・なんてことも」「まだ起きてないだけ・・・。でも起きないとは決まってない」「これは・・・私達にもチャンスある?」「あるでしょ」

「あの・・・」「ん?」


 美華の声に一斉に反応し沈黙する巫女メンバー。


「それで・・・私にもあるのかなー・・・なんて」


 声には気弱な感じが入り、恐る恐る聞いてしまう美華。


「「「・・・・・・」」」「あ・・・あの・・・」「秋夜ちゃん。・・・ボスって仕事はキッチリしているだろうしね~」「え?」


 その言葉に次々と他の巫女メンバーも会話に参加し始める。


「世界の為なら出来る限り身を粉にしそうだし・・・」「そういう人って、きっと大事にされるんじゃないかな?」「酷使して良いこと無いってのは、たぶん皆分かってるだろうしね~」「あのー・・・皆?」「・・・美華ちゃん。君は悪くないよ。悪くない」「・・・え?ちょっと」


 1人の巫女の言葉に嫌な予感が止まらない美華。いやそれを言うなら次々、飛んでくる言葉には明らかに嫌な予感しかしなかった。


「ただ・・・運が悪かった。ボス・・・。秋夜さんという絶大な存在がいては・・・美華ちゃんは・・・」「ちょっ・・・ちょっと・・・それって・・・」


 必死に拒否したくて仕方ない美華。口にまで出かかっているがそれを言ってしまったらもう引き返せないと堪えていた。しかし・・・現実とは残酷なモノである。


「美華ちゃん。今までありがとう・・・」「・・・」「総員!」


 1人の巫女が大きな言葉で他の巫女メンバーに投げかけた時。とうとう我慢が出来なかった。


「や・・・止めろ。・・・その言葉だけは・・・!」「美華隊員に・・・敬礼!」「「「敬礼!」」」「NOー--------ッ!!」


 美華の絶叫が木霊した。


 バターン!


「うるさい!何時だと思ってるんですか!寝なさい!」


 襖を開けて入って来るなり秋夜に怒られる美華だった。




 地球では現在。美華達が話題にしたようにオーロラが世界中で確認された事により。その話で色々な噂が飛び交っていた。曰く何者かの陰謀や・・・啓示だと・・・。


「ぐっ!おい、こいつ等っ・・・。こんなに、強かったか?!」「いや、そんなはずはない」「だったら、この状況をどうなんだ?」「っ・・・」


 アメリカ・・・モンタナ地方の外れ・・・。


 アメリカ平和を裏から守り続けている者達は、巫女達が伝えてくれた情報を元に今日も異形のモンスターを倒していた。それは、もはや最近では日課のように・・・。しかし、それほど脅威にも感じていなかった存在がココにきて急激に強くなり始めた。


「連絡は!」「あと2分だとっ・・・」「・・・(コレをか?)」


 アメリカで裏の正式に任務として職務を努めていた特殊部隊の数名は、どんどんと自分達の周りに囲うように増えていく異業種達に焦りを抱いていた。


「ボボ?」「ボ」「ブ?」「ブボ」


 何かを話しているように1体が声を出すと次々と別のモンスター達も声を出す。その口元は極めて醜悪に笑いながら。


「・・・」「ぐっ・・・」


 今まであったら、たかが2桁にちょっと入るくらいのモンスターなぞ取るに足らなかった特殊部隊達。しかし、今や数でも実力でも形勢は逆転。今や自分達の命が救援まで持つか・・・。それとも救援が来ても全滅するかの様な状況に立たされていた。


「・・・ドルド、シェーナ。お前達は私達の内側に居ろ。そして我々が道を作ったら・・・」「隊長!」「・・・」「・・・ココは従え・・・。分かってるだろ?」「・・・ゴードン」「私達が守っているのは仲間と家族と世界。そのために入ったはずよ?そして・・・今はどんな時か・・・」「ノーラ・・・」


 それぞれが覚悟を決めてモンスターに向き合う。その目に諦めの文字はない。


「(鼻息)ふ~。まさか映画であるようなベタな台詞が頭に浮かぶなんてな」「こっちはフィクションと違って大真面目だ。命が掛かればそんな事関係ない」「確かに・・・」


 ドタドタドタドタ・・・・・・。


 体の大きな異形モンスター達が次々と特殊部隊達に向かって近づいて来る。そしてその距離は狭まり5メートルも無くなって来た時。遠くの方で破壊音が木霊した。そして特殊部隊に近づいて来る者が・・・。


「お待たせしました!」「「「!」」」


 自分達と同じように政府から支給された武装と、その後を付いて来るラフな格好の者達が数名。


「やれやれ飛んだ厄日だ。せっかくの酒が・・・」「ぐだぐだ言ってないで仕事をお願いしますよ?」「はいはい・・・。ったくよ~。なんか、かみさんに怒られてる気分だ」「その武器は・・・!」


 特殊部隊の1人が助っ人に来た男が持っている大剣に目がいった。そしてその柄頭にぶら下げられたエンブレムを見た時、自然と顔に喜びと安堵が浮かび上がった。


「おっと、嬢ちゃん。気を抜くな?まだ戦闘中だ」「っ、はい」「助かる。私は半分ほどを何とかしてみる」「了解。まあこっちも、余裕があればウチのモンを加勢に向かわせる」「お願いする」


 必要な事を良い終えた者達は異形モンスター達に向かって走り出した。




 モナコの側、とある山奥。


「やれやれ・・・思ったよりも手こずってしまいました」「ここまで強力だとは聞いておりません」「んー、もしかしたら先日のアレで何かあったとか?」「・・・分かりません。私にはその判断は・・・」「まあ、良いじゃないですか。とりあえずは始末で来たんですし」「・・・楽観的だなお前?ホントそういう考えが羨ましいよ」「え?そうですかw?」「褒めてはいませんよ?」「え!そうなんですか!?」「ふふふ」


 3人の守護者達の周りにはシュウシュウと煙を上げて倒れた異形モンスターが数体いた。戦闘を終え、モンスターが消えるまで留まって話し合っていたのだった。


「ま、今回は上手くいったけど。次がそうとは限らない」「あなたが居ればこれくらいは」「それは無理だな」「・・・」「?何でですか?」「ん」


 カチャっと肩に預けていた鎌の様な武器を見せる。その刃先はかなりボロボロになっていた。もしここで増援がくればすぐにも折れて使い物にならないとハッキリわかるほどだった。仲間の2人はその武器の有様に引いてしまった。


「力技で寸断したようなモンだ。そうしないと切り落とすことも出来なかった。これを見て・・・どう思う?」「「・・・」」「・・・ふぅ。早急に俺達も他の者達と連携を取らないと・・・次は・・・」「分かりました」「りょっ、了解・・・です」




 ロシア・・・ウスチ=ネラのとある集落。


「オゥラアッ!!」「ブギャアアアア~~~ッ・・・」


 男は武器を肩に掛けて振り向いた。そこには倒れた母親に寄り添って泣いている男の子と女の子の姿があった。男はゆっくりと近づいて行き、膝を突いた。


「すまねえ。俺達がもっと早く来ていればこんな事にはならなかった」「うっぐ・・・お母さ~ん」「泣かないでヨシフ。・・・ありがとうございました」


 弟を抱きしめて姉が男に礼を言う。男が助けに入った集落は、以前は存在したと言われるほど何もかもを破壊されていた。壊れた建物に挟まれるようにして下敷きになって死んだであろう遺体がそこかしこに存在していた。助かった者達、助けられた者達は数えても集落のおそらく何分の一にも満たないだろう。


「生存者はこれで全てです。後は・・・」「いや、いい。子供達も引き連れて先ずは安全な場所に」「分かりました」


 男は報告に来た者達に子供達を身柄を保護させ避難してもらった。入れ替わる様に別の者達が男の傍に寄ってくる。


「・・・他の者達は?」「・・・いません。隊長。・・・もう誰も・・・」「そんな・・・」


 悔しそうに握り拳を作って下の雪を叩き込む男。その背中を立ったまま見ている上司と落ち込む部下が1人。


「・・・初めから判っていたはずよ?今回のモンスター達の数。どうしても被害は免れないって」「はい。分かってはいました。それでも・・・」「・・・」


 肩を落とし、軽くため息を吐き出した上司の女性は、控えていた部下の女性に振り向く。


「今回、救出した者達には」「あ、はい。出来るだけのことは・・・。既に、上の方からもその手筈で整っておいでだそうで。別の所に移住してもらうようになっています」「記憶は」「・・・最悪を考えますと・・・。上書きでこの一連を消すしか・・・」「ちょっと待ってください。それじゃあ!」


 既に見えなくなった子供達の方向と現在、母親の遺体を運んで行く政府達の姿を交互に見て、口を挟まずにはいられなかった男。


「選びなさい。まだ残党が残っている可能性があるわ。ここで立ち止まるのか。それとも・・・」「・・・」「結構。先ずは自分の出来る事から始めましょ?・・・いい?私達が世界の平和に与して戦っているのはこういうのを少しでも減らす為でしょ?」「・・・分かってます」「・・・フォロー。お願いね」「分かりました」


 上司は留まって他の者達に指示するために反転して去って行く。男と部下の女性2人は集落周辺を探し回る。静かな風と雪の冷たさを感じながら・・・おそらくいるかもしれない残敵の掃討に向かうために。



 世界中で、秘密裏に守護者が支配者、破壊者側から世界を守るために戦いを繰り広げていた。その激しさは増していくが・・・。まだ、現段階では世界にいる大半の一般人には知られずに済んでいた。未だ世界は大混乱には至っていない。もし大混乱が起きた時・・・どんな問題が発生するかわからない。想定は出来ても、その通りに必ず向かうとは限らない。そのため世界中の政府はこの件に関しては慎重かつ協力的であった。マスコミのごく一部もこれを世界中にばら撒くことが本当に報道と知る権利の自由という理由だけで済ませられるかの話になり、協力的だったのも今の世界が保たれている証明でもあった。


 例え世界中で大混乱が起きていても。あくまでもそれは一時的な話題(オーロラ等)にしかならない程度に治めて・・・。




「おい~っす、純」「あ、おはよう要君。・・・健介君も勤君も・・・。今日は機嫌が良いね?」「・・・ま~、僕達もそれだけ要君に巻き込まれたからかな~?」「それに昨日からずっとこんな感じだし・・・」


 純が登校したことに気付いて軽く挨拶した後、要はずっとスマホを操作しては手帳を見て、何かを書いていた。その顔はとても楽しそうだった。そしてそんな要の行動力にあてられている健介と勉も少しだけ浮足立っていた。


「~~っ!!たまんねえな~っ!」


 感情が高ぶってしまい声に出てしまう要。


「昨日のオーロラといい。まだあれから情報が入って来ない学校での事故といい。面白い事が目白押しで止まらないんだよ」「まあ、僕達は学校の方はお手上げだから。今はオーロラかな~」「他には?」


 純は素朴な疑問を2人に聞いた。


「ん~。ネットだと電子機器の異常って事だけど・・・。それもちょっとおかしいんだよね~?」「異常って言う割には被害は極少数。実際には殺人と言った様な暴動はほとんど起きなかったそうだよ?」「そのワードだけ聞くと怖いんだけど・・・」「ははは、まあ本当の話。電子機器に異常は起きたけど大きな事故が起きなかったのは良かった半面オカシイ」「あれだけ起きれば陰謀論は渦巻くんだけどー・・・結局、何1つとして分からないってのがね~・・・」「要君は逆にそれだから面白いんだってー」「は~・・・なるほど~」


 健介と勉に釣られ、テーブルで嬉々として何かを書き続ける要を見る純。そこにはとても人生を楽しんでいる1人の少年の姿があった。


〔幸せそうでなによりですね~〕「ははは・・・」「「?」」


 純の苦笑いに疑問に思う2人だった。



「はい。朝のホームルームを終わりま~す」「あのー、先生?」「?何ですか~?」「澪奈ちゃんと鏡花ちゃんはどうしたんですか?」


 クラスメイトの女子が2人の不在に質問した。それには女子達でも仲の良い者達が気になっていたようだった。それ以上に気になっていたのは男子生徒達だった。


「2人は家の都合で何日かお休みするそうですよ~?」「「「(そ・・・そんな・・・!!)」」」


 ガタガタガタ。ガク・・・。


 口には出さないが男子生徒達に分かり易いほどアクションが起こされた。それぞれに意味は違いそうだが・・・概ねの反応は・・・。


「(せっかくの癒しが・・・)」「(あの笑顔を見るために、わざわざ学校にっ)」


 と、落胆の色が大きかった。中には見舞い等と称して自宅に乗り込もうと考え別の男子に拘束される始末だった。


「「「・・・・・・」」」


 女子生徒達の何とも冷たい視線と微かに聞こえる声に気付く男子生徒はいなかった。


〔この学校は、平和ですね~〕「・・・」


 純を除いては・・・。




 オーロラが発生して3日後の事だった。


「?どうしました、美華?」「?星杜さんどうしました?何か」


 キーンコーンカーンコーン。


「・・・今日はここまで。それじゃあ、挨拶を」「起立・・・礼」


 教室の中が一気に騒がしくなり、教師がその教室を後にしていく。秋夜は隣の席でずっと立ったままだった美華に近づていく。


「(ボソ)何か見えたの?」「・・・」「美華?」


 美華は机の中にしまった教科書をカバンに入れて教室を出て行った。慌てた秋夜も同じく出て行く。カバンを持って出て行く美華と秋夜に少しだけ不思議に思いながらも特に気にすることなく会話に戻っていくクラスメイト達だった。


「一体何を見たの、美華?」「・・・後で話す」


 それだけを言った後、上履きから靴に履き替え学校を後にする2人。教師の1人が美華達に気付いて走っていくが・・・学校を出る最中に電話を掛けていたのか、それを教師に渡す。


「・・・分かりました。それじゃあ。また学校に来てくださいね?」「はい」「先生さようなら」


 秋夜も慣れたもので美華の後に付いて行く。そして学校を出て数分後・・・。


「木下さん、ありがとう」「いや、構わないよ。何かあったんだね?」「うん」


 その言葉に秋夜も真剣な顔になる。そしてスマホをスピーカーにして神社に努める母親達にも聞かせる。


「正確にはこれから起きるモノ・・・。たぶん他の皆も見えるか何か聞いたと思う。たぶん・・・数日後。今週辺りに大規模な異変が発生する。それで澪奈ちゃん達が戦っていたっていうモンスターが一斉に動き出すの」「「・・・」」


 ほんの少しだけ沈黙が流れた。車は美華達の住まいの神社に向かって走っていく。


「つまり・・・それって」「(コクン)全面戦争よ」






【十時影 純 (クリス)】15才 人間・・・かな~?(進化)

 レベル 38

 HP 724 MP 813

 STR 356

 VIT 301

 INT 393

 RES 334

 DEX 451

 AGI 428

 LUK 73

『マナ(情報体):レベル 9 』『波鋼:レベル 8 』『質量拡充:レベル 5 』

『魔法:水、風 』

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