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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
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185 初めての家族

「・・・やっぱり痕は残っているかー・・・」〔しかし、あの時よりはいくらか修復されたようですね〕「最終的にはどれだけが平地になってしまったんだか・・・」〔・・・およそ1キロといった所でしょうか・・・。しかも元々特殊な空間であるこの影の世界で・・・ですから。最悪、地球だともっと悲惨な現場になっていたでしょうね〕「うえぇ~・・・」


 現在は影の世界。そこで次の特殊エリア。最後の光の柱目指して開拓するために純は学校から帰宅後すぐに訪れた。殺風景な景色なのはもちろんの事。先の子供との戦いの爪痕がしっかりと残っていた。曇り空にポツンと突然、窪んだような地形。修復が成されていると言ったサポートの言葉を疑う気はないがどのあたりがそうなのか純には見分けがつかなかった。


〔さて純・・・。残りの柱ですが・・・〕「うん。ハッキリと白く出ているのは・・・」〔ココから少々離れていますね〕「まあ大体、4つとも対極に位置してるんだもんな~・・・。もう少し近くても良かったんじゃない?」〔この世界はあの子供の言葉では恨みなどが籠った女性のエネルギーで作り出されたようなものだと言っていましたから・・・〕「・・・それだけ凄く辛かったんだろう・・・」〔肉体は死してなお・・・囚われているのですね〕「(コクン)だからオーダークエストだったんだろう」〔しかし、祝福にしても成就にしても・・・。パーツとなるアイテムらしきものはありますが、まだ肝心の部分が・・・〕「探すにしても、そのヒントは特殊エリアにあるって事だな」


 純はやれやれと思いながら準備運動に入る。


〔今日は体育があったと思いますが・・・?動き足りませんでしたか?〕「分かってるくせに」〔ふふふ。それは失礼しました〕


 世の中に、動けるデブというのはいるがだからと言って純が運動神経が良いことを世間に晒す気はなかった。当然、授業でその片鱗を見せない様に隠して受けていた。結果、多少笑われることはあっても友達がいるおかげで昔ほど、体育の授業そのものが嫌いという事はなかった。


〔まあ純も・・・。もうそろそろ少々肥満程度に収まってきてますので・・・。いい加減、体が軽くなってきてという雰囲気を出して動いてもよろしいかと〕「う~ん。なんか今までそうやって授業を受けてきていたから・・・。いざ、今の学校で急に態度を変えるのには違和感が・・・」〔とか言ってサボり合いだけでは?〕「そ・・・そんなんじゃないよ」


 本当に思ってはいないと言い切りたいが・・・。純にとって長く体育は・・・いや、学校は早く終わって欲しいと思うモノだった。一日一日、時間ごとに区切られたスケジュールが嫌というほど長く感じることもあった。幸い、授業中でも教室で教えてくれる授業の間だけは、比較的休み時間と比べて安らげることが多いかった。いつ呼び出されて殴られるか分からないあの時間が迫る度に憂鬱と恐怖で胃がキリキリしそうになった時もあった。実際、腹痛を起こして休んだこともあった。出来るだけ世話になっている家族には迷惑を掛けない様にしていたが。それでも最初の方は休んでしまっていた。


「・・・」〔申し訳ありません純。イヤな事を思い出させましたね〕「いや、いいよ。す~・・・ふー」


 純はゆっくりと息を吸って鼻から吐いた。肩の力が抜け、気持ちリラックスできた気がした。


「あれから3ヶ月は経っているのに・・・。いやまだ3ヶ月なのかな?もう感覚的には異世界に渡っていた事もあってもっと経っているのに・・・。あの時の恐怖は抜けきってないのかな・・・?」〔それだけ心の深くに刻み込まれてしまったのでしょう。・・・今も怖いですか?〕「・・・う~~ん・・・」


 腕を組んで、イメージの中でそのかつての状況を思い出してみる。・・・・・・そして結論。


「無いわけじゃないが・・・。あの時よりは全然。まあ、絡まれたら流石に怖いけど・・・もっと命の危険に晒されながら戦って来たからかな?・・・いちいちつっかかって来ないで欲しいってのが・・・本音かな?」〔そうですか・・・。それならもう大丈夫ですね。後は純自身が決めつけてしまっているバイアスの問題です。ザックリ言ってしまえば思い込みですね〕「・・・思い込みかー・・・」


 そんな風に自分自身を考えた事の無かった純は改めて自分が一体何に囚われていたのかを考えた。


「・・・痛みと悔しさとか恥ずかしさ・・・かな?」〔それが色々と混ざり合っていつの間にか、大まかな形として捉えていたのかも知れませんね〕「・・・ふぅ~。ま、おいおい直っていくだろう」〔いきなり楽観視ですか・・・。ふ・・・まあそれが純らしいかもしれません〕「これからももっと危険な目に遭うんだろうし・・・。いちいちあの過去ばかりに意識は向けてられないよ」


 それが純の本心だった。だからこそサポートは少し微笑んで返すだけに留めた。


 ・・・・・・


〔純?そこを、建物の異空間を使った方が近道なのでは?〕「う~ん・・・。なんとなくだけど短距離ワープっぽいんだよね~。それより・・・ほら、この先の大きな崖になってる所の前・・・」〔?あそこですか?・・・っ!確かに・・・。ワープポイントの先が柱のすぐ傍に繋がってますね?〕「だろ?」〔しかしよく判りましたねね?〕「う~ん、なんていうかちょっとだけあっちの方が強い何かがある様な・・・そんな気がしたんだ」〔・・・もしかすると。純は私同様にマナの情報体を気配だけではなくて``量``として感じ始めているのかもしれませんね〕「量?」〔単純に情報量です。以前まで純が感じていたのが相手が放つ気配と言われるようなモノ。それに対して対象が持っている本質に近い所が・・・``量``になります〕「なるほど~」


 純は巨大クレーターから飛び立ちすぐにひた走っていた。そして普段?通りの荒れ果てた道路へと到着したら崩れた建物や立ちはだかる巨大な壁の様な建築物を至る所にあった地球との境目の異空間を使って突破。難なく目的の柱まで到着したのであった。


「ふ~・・・ようやく到着」


 いい汗かいたとばかりに額を拭うふりをする純。汗なんて一滴も掻いてはいなかった。ただ何だかんだとずっと走っていて気分的には気持ちのいい疲労感が少しは出てきていると思っていたからだった。


〔レベル様様ですが・・・どうされます?〕「もちろん・・・・・・帰るよ?」〔ですね〕


 開拓完了と判断した純はサッサと地球の世界へと帰還するのであった。


「攻略は明日・・・。今日は姉さん達が早く帰ってきてるだろうし、帰ろう」〔・・・そういえばどうしますか?〕「なにが?」〔流石にどこに行っていたか聞かれませんか?〕「あ・・・」


 建物を跨ぐように飛んでいた時に聞いてしまい。空中で停止してしまった純。一気にスピードが減速し、穴の開いた建物へと落下していった。そして木霊したのは焦った声だった。


「どうしよ~~~っ!」


 モンスターしかいない世界で1人。必死に義姉達が信じてくれそうな言い訳を探してうんうんと唸っていたのだった。


〔(ちょっとコンビニに、でも信じてくれそうですが・・・)〕


 こういう所は義姉達に対して真面目に対応しようと考える純であった。



 ・・・・・・


「も~、ちょっと遅れるなら言ってくれればいいのに・・・」「(コクン)私達も鬼じゃない。そこまで詮索ばかりはしない・・・。純もお年頃・・・」


 帰りが遅くなり、気付けば8時を回っていた。美月と紅百葉は料理を作り終えたが純が帰って来るまでは2人とも食事には手を付けず待っていた。少し眉間に皺を寄せつつもそれほど怒っていなかった美月とどこか違う方向に勘違いされてしまっている紅百葉に謝りつつ3人は仲良く食事をとることにしたのだった。


「・・・あ、おいしい。義姉さん達、また上手くなったね」「ふふん。まあこれくらい・・・」「(ゴクン)・・・でも純の方がまだ料理は上手」「・・・」


 紅百葉の一言で笑顔のまま固まった美月。すぐに元に戻ったが何故か首を傾げて納得のいかない表情を見せる。


「(ボソ)私達がほとんど作っているのに何で・・・?」「純には料理の才能があるんじゃ・・・?」


 ハッとした美月が純を見る。バラエティー番組を流しながら食事をとっていたために最初は気付かなかった純。いきなり美月が振り向いたことで気付き驚いた。


「え?なに?」「・・・純。あなた・・・もしかして私達に隠れて料理の練習をしてるとか・・・?」「・・・へ?」「姉さん・・・。往生際が悪い」「だあって~」「まあ、気持ちは分からなくもない」「でしょ~?」「(料理は・・・まあ、異世界で多少手伝った経験はあるけど・・・。概ね相棒のおかげだからな~)」〔料理とは・・・化学でありマナの上手く絡み合うハーモニー。私が可能性の開拓以外でまずい料理を作るなんてありえません。創作とは芸術も兼ね備えてこそ意味があるのです。無骨なモノにも・・・〕「(またどっかから情報を得て来たな)」


 頭の中で自分の、現在の料理に対する認識を知ってもらおうと純に向かって語っているサポート。そんな声と聞き流しながら義姉達が作ってくれた料理に口を運ぶ純であった。そして3人が夕食を済ませソファーに座ってまったりとテレビに流れていた映画を見ていた時。何気ない会話で美月と紅百葉は純に話した。


「純・・・」「ん?」「昂輝・・・転校するそうよ?」「え?」「なんかお父さん達と話して、別の高校との一貫校に転校する事になったそうよ?」「転校って・・・何で?」「・・・分からない。お父さんもお母さんも許可したそうなの」


 驚く純よそに、話の最中にシレっと純に膝枕してくる紅百葉。それを見た美月が悔しそうな顔を一瞬した後、同じように反対の膝に頭を乗っけた。純はそんな義姉達のよりも話の方が気になってしまっていた。


「許可したって・・・。どこに?」「さあ?」「お父さん達は良く知らない所だって言ってた」「良く知らないのに・・・いいの?」「昂輝が連れてきた人がその一貫校に知り合いがいて推薦で行かせてくれるんだって」「それって・・・大丈夫なの?」「最初はお母さん達も反対したんだって・・・。一応、名門校の1つらしいんだけど、いきなり誰かも知らない人にスカウトみたいな状態だから、心配したんじゃない?」「よく許可したね」「最終的にお父さんが許可したんだって」「・・・お母さんが。``せっかく昂輝も、自分の意志で動く様になり始めたんだ。ここは黙って見守ろう``・・・って」「・・・お義父さん達・・・。何かあったのかな?」「ね~?いままでだったらもっと詳しく問いただしてなかなか許可なんてしないって思ってたのに」「純や私達がこっちで住むようになってから何か変わったのかも・・・」「あ~。お母さんも似た様なこと言ってた様な・・・」「(昂輝に何かあったのかな?・・・あったとすれば・・・)」〔その可能性はあります。ただし・・・それが絶対ではありません。あくまで何らかのキッカケに繋がった可能性は、否定できないという程度です〕「・・・」「・・・ねえ純?」


 頭を横に向け、膝枕の状態のまま紅百葉が純の顔を見て聞く。表情こそ、そこまで変化はさせていないが・・・。


「純は・・・。転校したりしない?」「・・・」「どこかに行ったりしない?」「・・・まあ、今更どこに行くんだって話になるよ」「・・・」


 気付けば純の顔を下から見ているのは美月も同じだった。


「俺の家はココだよ・・・」「・・・そう」「そうね・・・」


 その言葉で何を受け取ったのか2人は再び映画鑑賞を再開する。


「っというか義姉さん達いつまで枕代わりにしてんの・・・離れて」「や」「いや」


 肩をガックリと落とし、映画が放送を終えるまでずっと純は義姉達2人の枕代わりになっていたのだった。


 ・・・・・・

 ・・・


「お父さん・・・」「母さん。昂輝はまだ中学生だ。色々と自分の意志を通したくなる年頃だ」「それは、分かりますけど・・・」「あの子も・・・。純とは違った意味で何かを押し隠していた気が・・・私にはするんだ」「・・・」「それが初めて、自分から何かをしたいと言って来た。最初こそ反対したが・・・。いきなりではあったし、それはもちろん初めて会った知らない人からというのもある。だから・・・もしかしたらあの子は騙されているのではないかと」「はい。一応調べたんだけど・・・。確かに有名校の1つなのは・・・間違いないわ。ただ・・・関西方面という事はあの子・・・1人になっちゃいますね」「もし寂しくなって帰って来た時は黙って迎えてあげよればいい」「はい・・・。一応親戚の方にもお願いしてみましょうか?確か関西方面に住んでいた人が・・・」「いや、大丈夫だろう・・・。あの子が自分の足で立ったんだ。色んな価値観に触れることは大切だろう」「・・・」「心配というよりも寂しい・・・かな?」「ええ。なんだか急に家族がバラバラになっていった感じがして・・・」「一番寂しいのはなんだかんだで母さんかも知れないな」「・・・もー」


 ・・・翌朝。


「もう大丈夫なのか?」「うん。必要なモノは入ってるし・・・。もし足りないモノがあったらその時は輸送で送って来てくれると助かるよ」「それくらいは大丈夫よ?あ、そういえばその時は何処の住所に送ればいいのかしら?」「それはこちらへ・・・」「・・・どこなのでしょうか?」「少々山奥になる地方の町なのですが・・・。ウチの知り合いの実家がそこにありまして・・・。彼にはしばらくそこで暮らしていただこうと思っております」「学校の寄宿舎ではないのですか?」「そこでもよかったのですが・・・」「俺が木下さんにお願いしたんだ」


 その言葉を受けた木下は少しだけ肩を落として苦笑した。


「何もこんな急に決めなくても・・・。君が本気ならもう少しゆっくりと手続きを出して・・・」「いえ・・・。今じゃないとダメだって思ったので・・・」「・・・ウチの息子がすみません」「いえ、勧誘みたいな事をしてしまったのは私達の方なので・・・お気になさらず・・・」「ちょっとお聞きしてもよろしいでしょうか?」


 咲恵は木下に聞いてきた。


「どうして木下さんが・・・?木下さんは警察官、でしたよね?その一貫校は警察学校という事なのでしょうか?」「いえ、そんな事はありませんよ?そこから様々な分野、大学へと目指した人も数多くいらっしゃいますよ?まあ、おそらくホームページの記録上は警察などのイメージが強くあるかもしれません」「なぜウチの息子が・・・」「たまたま知り合うキッカケがありまして、その時に(いた)く興味を持たれてしまいまして・・・」「なるほど・・・。そうですか・・・」


 優一は、昂輝がそれほど何かに強く関心を持ったところなど見た事がない記憶があった。だからこそ木下からその言葉を聞いた時、意外という思いと。息子の変化に少なからずの衝撃を受けていた。


「それで・・・あの・・・このサイトに載っているのは・・・」「はい・・・?」


 咲恵に持っていたスマホから見せられた所には何かの宗教の授業を受けている様子が掲載されていた。


「ふむ・・・おそらく授業の一環として、1つの題材で授業にした所を撮ったのでしょう。この高校は海外からの留学生もいます。そのためにそういった特殊な授業のカリキュラムも組んでいるのではないかと・・・」「な、なるほど・・・」


 流石に専門外なので咲恵も、そういうモノなんだろうと納得するしかなかった。そうして話し合っていた時、車の中から岡部が出てきた。それに気付いた木下が昂輝達の方へと振り返る。


「それでは、昂輝君・・・。しばらく親御さんとはお別れになってしまうけど・・・」「(コクン)・・・。それじゃあ父さんも母さん達も元気で・・・。あ、あと夏奈は・・・。(フルフル)姉さん達がいるから大丈夫か・・・」「純に言う事があったりする?」


 咲恵の何気ない言葉に一瞬止まってしまった昂輝。しかし、首を振って・・・。


「兄貴は・・・。・・・まあ、一応1人暮らしを始めたばかりで大変だろ?無理はするなよ・・・くらいで」「「・・・・・・」」「・・・じゃあ、もう行くから」


 昂輝はスタスタと車に向かい、入って行った。その後はずっとそっぽを向いて木下達が来るのを待っている。


「・・・あの子が・・・」「・・・ええ。うっふふふ」


 少し涙を浮かべてしまった咲恵。それだけで2人の心には今までになかった家族という繋がりを感じていた。


「それでは・・・我々も昂輝君を無事に送り届けて参ります」「木下さん・・・。どうか、昂輝の事・・・よろしくお願いします」


 優一と咲恵はゆっくりと頭を下げた。


「・・・それでは、失礼します」


 木下も頭を下げ。遠くで岡部も頭を下げて返礼した。2人が車に乗って発進。曲がり角で昂輝達の姿が見えなくなるまで優一と咲恵は黙って見送るのだった。・・・今までの、少し硬かった家族の空間に。ほんの少しだけ・・・今までにない、温かみという家族の絆が生まれた様な気が・・・2人は感じていた。それぞれが離れていくのに・・・そこには確かに、白星家として初めて・・・全員が家族として繋がった様な気がした。







【十時影 純 (クリス)】15才 人間・・・かな~?(進化)

 レベル 33

 HP 586 MP 742

 STR 293

 VIT 265

 INT 321

 RES 303

 DEX 425

 AGI 389

 LUK 65

『マナ(情報体):レベル 8 』『波鋼:レベル 7 』『質量拡充:レベル 4 』

『魔法:水、風 』

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