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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
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179 届いたものは・・・

「姉さん・・・」「・・・私達の記憶・・・」「はい。無理にとは言いません。出来れば今回の事は、あなた方の為にも秘密にはしていただきたいのですが・・・」「どこから情報を聞きつけて、変なモノがあらわれるとも限らないので・・・そこだけは慎重にしていただければ・・・」「「・・・」」


 現在、時刻は8時をとっくに過ぎていた。もうそろそろ9時にも回るかもしれなかった。そんな中、美月と紅百葉は木下と彰隆の連絡で警察や救急車がたくさん学校に来ている中。木下の部下の岡部と彰隆の社員の佳胡から説明を受けていた。


「あ・・・」「?どうしました?」


 紅百葉は友人が担架で運ばれ救急車に乗る所を目撃してしまう。その視線に釣られて美月達も目を追った。


「友達?」「(コクリ)・・・うん。今日、お母さん達に生徒会の用事でちょっと学校にって言ってて・・・。本当はもっと早く帰る予定だったのに・・・」「・・・安心してください。?安心?というのも変な話ですが・・・問題ない程度にこちらでご家族には説明をして病院の方まで来ていただきます」「・・・良かったわね?」「うん・・・」


 美月が肩を抱くと、微笑ながら返す紅百葉。


「それで・・・どうされますか?急で申し訳ありませんが・・・」「朱佐紀さん流石にすぐには・・・」「無理は承知です。すぐに決めて欲しいとは言えない立場かもしれませんが・・・私達も色々とやる事がありまして・・・申し訳ありません」「そんな急がなくても大丈夫でしょ。佳胡さん」「そうですよ~?私達はもう大丈夫ですから~」「そういうワケにはいきません。あなた達、立っているのがやっとじゃない。そもそも本当ならあなた達も救急車に運ばれて安静にしてもらわなきゃいけない状態なのよ?」


 フラフラな翼と來未は何処から調達してきたのか、それぞれが松葉杖を持って美月達の所まで歩いてきた。そんな状態の身内を3人も抱え、更には今後の事も考えて性急にやらなくてはいけない仕事が山積みになっていった。肝心の社長とそれに加え、護衛役でもある2人が重症レベルなのだから当然であった。見た目はただの疲労でそうなっているように見えるが・・・翼達の様な一般人レベルを超えていなければとっくに体のいたる所の神経などが切断されて、緊急搬送、絶対安静を余儀なくされるレベルであった。特に翼と來未はマナを純やサポートの様に感じ自在に使いこなせるわけではない。あくまで地球で生まれ育った者達だ。本来なら感知する事すら難しいものを無理矢理、活性化させ開花させるなどの荒業をすれば反動は大きすぎて目も当てられない。


「いえ、大丈夫です・・・。いいわね?」「(コクリ)」


 美月は紅百葉に確認を取るとすぐに岡部と佳胡に答えた。


「私達の記憶はそのままでお願いします」「・・・宜しいのですね?」「(コクリ)・・・最初は怖かった。・・・・・・けど、大切な物が何か凄くよくわかった」「・・・」


 紅百葉の言葉に美月も同様なのか頷いている。それを見ていた佳胡は岡部の方へと振り向いた。岡部も理解したのか、次の話へと移行する。翼と來未はそんない美月と紅百葉を見てどこか誇らしそうに頷いていた。


「先ほども申し上げた通りこの事は御内密にお願いします。もちろん家族にもです」「私達、警察の方でご家族様にはご連絡させていただきます」「わかりました」「(コクリ)・・・」


 この時は岡部と木下も知らなかった。のちの報告で、まさか姉弟4人がタイミング悪く不運に見舞われることになるとは・・・。その事で少しだけ運命を気にしてとある巫女に話を持ち掛けるが・・・たまたまだったという事で解決するのは・・・また別の話。


「・・・それで、ですが・・・。他に変わった事は・・・?」「・・・変わった事?」


 ふと岡部に質問に紅百葉は上を向いて思考を巡らせる。同じく美月も思い返す。そして二人して同じタイミングで声を出した。


「「・・・あ」」「何か思い出したんですか・・・!」


 少し前のめりで事情を聞く岡部。しかし美月と紅百葉は笑って、違うと答えた。


「特別な事ってわけじゃなくて・・・ただ、ちょっと家族の事を考えてたのを思い出しただけなので」「うん・・・」「ああ~。まあ仕方ないですよね~。私も時々、どうしてるのかな~って考えるときありますからね~」「あれ?優香ちゃんって家族と暮らしてないの?」「・・・」「?、なに?」「サラッと話し合いに加わらないでください。芽木白さん」「他人行儀!」「彰隆・・・。もしかしなくても今まで、そうやってナチュラルに女の子の中に入って口説いていたわけじゃないでしょうね?」「「・・・」」「いや流石に、そこまでじゃないって・・・!」


 來未、佳胡からの冷たい視線に晒されながらも彰隆は翼と岡部に弁明していた。美月と紅百葉はこの会話にどう入っていいのか分からないため黙っている。そして彰隆もどこからか調達した松葉杖をついていた。それに視線がいった美月と紅百葉に気付いて、彰隆が少し居住まいを正しながら答える。


「大丈夫。心配しなくても、周りが大袈裟にしてたからちょっと渡されただけだよ。君達が心配する必要はないよ。それよりも・・・君達こそ大丈夫かい?」「アンタよりは平気よ」「ぐわっ。ちょっと・・・。あああ~・・・。誰かー起き上がらせて~」「「「・・・」」」


 美月と紅百葉に詰め寄る様に寄って行った彰隆を横から松葉杖を蹴り上げた翼。そして案の定、ボロボロだった彰隆はその場に倒れ込んで起き上がれなくなる。その場面を冷めた目で見る女子が3人。


「あの人の事は放っておいてください」「は・・・はあ」「・・・ちょっと心配」


 口調こそ軽いが、体がボロボロなのはその現場を知っている美月と紅百葉には無視できない事だったからだ。しかし、そんな紅百葉の言葉と自分を気に掛けてくれる2人に気付いた彰隆の表情は分かり易いくらいユルユルになり嬉しそうだった。


「こんだけ喋っていられるうちはこの馬鹿は死なないわよ。気にしないで白星さん」「・・・そうなの?」「はい。いつも・・・無駄な所で調子の良い方ですから・・・」「甘やかすと、すぐに図に乗るんですよ~」「そんな風には・・・」「騙されてはいけませんよ?そうやって何回私の知り合いや友人に手を掛けようとしたことか」「「・・・」」「(あ、やべ・・・)」


 美月と紅百葉の視線が徐々に変化していくのを感じ焦る彰隆。他の女子達、翼、來未、佳胡、岡部に比べれば幾分か優しいが、その表情には軽蔑という言葉に塗り変わっていくのも時間の問題と分かったからだった。


「あ、あっ・・・ああ。い、いや~それにしても・・・翼達が知り合いだったとは意外だなー」「何なのその棒読み」「必死過ぎて、話題の変え方が無茶苦茶です」


 翼、佳胡という外野からの声を無視して続ける彰隆。


「君達は覚えてないから仕方ないけど・・・。俺達はちょっと仕事で君達を見た事があってね」「(ボソ)ストーカーですか」「(ボソ)ここにストーカーがいますね」「そういう事じゃねえよお?!」


 流石に來未と岡部の言葉には最後の語尾が急上昇するくらいのツッコミを上げて文句を言って訂正を求めた。


「だいたいあれは、お前達が馬鹿な中坊共をボコボコにしたのが原因じゃねえか」「は?いつの話よ?」「そんな事しましたっけ~?」「う~わっ・・・。マジかよこいつ等。3ヶ月前に起こした騒動の事もう忘れてやがるよ」「3ヶ月前・・・?」


 はて?と本気で忘れており思い出せない翼と來未。しかし佳胡は徐々に思い出してきたのか代わりに答えた。


「ああ~。確か勝手に先行して仕事現場に言ったら間違ってナンパ・・・といいますか・・・強引な誘いをしてきた不良グループとケンカした話ですね」「そう、それ!」「・・・ありました?」「・・・

さあ?」


 お互いを見合い聞き合う來未と翼。しかしその時のどうでもいい記憶など綺麗サッパリ忘れてしまっているのであった。


「ふざけんなよ、お前ら。あのことで俺は浩太に怒られたんだぞ。病院送りにしやがって・・・。おかげで、その後、どうなったのか退院した後を確認する為に学校に見に行かなきゃならなくなったの覚えてないのか?!」「流石に一般人相手に大きな後遺症を残す怪我は避けたいですからね。ですが・・・あれは向こうから仕掛けてきた事だと・・・?」「理由はイイの!この際問題なのは、やり過ぎなのが問題なのよ!」「・・・ああ~ああ~。思い出した無駄に絡んできて、楽しい事しようだの気持ちいい事して遊ぼうだの・・・下品な笑いが腹立ったあいつ等ね」「・・・ああ~何となくは~・・・。だから・・・まあ気持ちいい事を?」「お前の趣味の話は聞いてねえの!?その時、その趣味のせいでトラウマ抱えて生きられちゃ困るから行ってたんだよ。確認の為に」「べっつにいいでしょ。昔の事なんか」「そうですよ~。それにあれは向こうが悪いって事で解決したじゃないですか~?」「ったくお前らは~~っ・・・」


 本当にどうでも良いと思っているのか翼は鼻で笑って、素知らぬ顔。來未も笑って流すほど気にしていなかった。歯ぎしりしそうなほど食いしばった口から恨み節の様な声を出す彰隆を全く見ていない。


「・・・で?それと・・・ココにいらっしゃる白星さん達にどんなご関係が?」


 なかなか本題に進まない事に岡部が業を煮やし先を促す。それでようやく話が戻り改めて説明する。


「あ、ああ、そうだった。っでまあ、そこのウチの馬鹿2人のおかげで・・・中学校の卒業式には出られるようになった中坊共がどうなったのかを確認しに行ったんだよ」「中、学・・・?」


 その言葉に美月と紅百葉は思い当たる節があった。


「それはたぶん義弟の卒業式に参加した時ですね」「あの時・・・何人も話しかけられて困った」「ああ~、そうね~。純と帰ろうと待っていたっけ?」「(コクリ)・・・。ナンパばっかりしてきて断るのが大変だった・・・」「じゃあ、もしかしたらあの時に・・・?」


 その言葉に彰隆が我が意を得たりを得意げに頷いて答える。倒れたままで。


「そう・・・!もしかしたら2人のそのナンパの輪の中に入っていたんじゃないかな?俺達の顔、っつうか。もっぱら翼と來未を見つけて、すぐに逃げて行ったんだと思うけどな・・・」「そうだったんですか~。あの時はありがとうございました」「ありがとう」「いえいえ、どういたしまして。むふふ」「何で彰隆が喜んでいるのよ」「ここって~、私達のおかげでは~?」


 そんな外野の2人を無視して彰隆は何とか倒れた体で頭だけを上げて美月と紅百葉の礼を受け取っていた。しかし、そこへスッと佳胡が間に割って入って美月と紅百葉を少し彰隆から離した。


「え?ちょっ、なに?」「離れてください。あの位置からですと。少し強めの風が吹いただけで下着が見えてしまう位置です」「え?」「・・・え?」「全く・・・。油断も隙もありません」


 振り返りジト目で彰隆を見下ろす・・・いや見下す佳胡の目が合った。それを受けた彰隆は必死にまたしても弁明しなければならなかった。



 そんなこんなと話はお開きになって解散という形でそれぞれが帰ろうとしていた時、ふと気になった翼と來未は美月と紅百葉に質問した。


「そういえば白星さん達、あの時、何かあったの?」「ああ。なんか~一瞬、疑問の様な不思議な反応しましたよね~?」「え?」「私達を庇おうとした時よ」「あの~よくわからない風が直前~?」「「・・・ああ」」


 それは翼と來未を庇い覆った時の事だった。あの時、一瞬、美月と紅百葉は顔を上げて周囲を見た様な気がしたのだった。


「う、うんあれね・・・いや、ちょっと誰かの声を聞いた気がしたのよ」「・・・純を考えてた時にちょっと・・・声が聞こえた気がしたの」「2人同時にあのタイミングで?」「きっとその時、その人の声でも思い出したのでは~?」「う~~ん・・・」「違うの?」「(フルフル)・・・。知らない人の声。でも、不思議と安心した」「何故かもう大丈夫って感じがしたのよ。ふふふ、おかしな話だけどね」「へ~、なんでしょう~?」「ちょっと気になるわね~」「そんな大層な事じゃないのよ?」「うん・・・ただ一言だけ・・・」




「へ~・・・って事は澪奈ちゃんあの時、何かあったのか分からないけど・・・。それほど焦ってなかったんだ」「いや、焦ってましたよ?急にタイムリミットが来て・・・。もうダメだって思いましたもん」「本当にあの時は澪奈が心配でしたよ~」「っで、その後に私が現れたから勘違いしちゃったってワケ?」「あれはどうしたって勘違いしてしまう場面でしたよ~。だって楓花さん、凄くカッコ良かったですもん」「お?ありがとう。って言っても結局、あたし・・・。ホントに何もしてないんだけどね」「いえ、ですが私と澪奈が気付かなかったモンスターを倒してくれただけでも助かりましたよ」「気休めだけどね」「またまた~」


 澪奈、鏡花、楓花の3人は今回騒ぎになった場所を大きめに一通りの巡回をして現在は元の木下達がいる場所へと向かっている最中だった。


「それでなんて声が聞こえたの?」


 気になった楓花は澪奈に聞く。


「私がヤバイ、もうダメだ~って思った時・・・一言だけ聞こえたんです。・・・女性の声です」「何て?」



「私と紅百葉が聞いたのは・・・」




「「「そんなことさせません」」」




「って声だったんですよ~」「ええ~何それ~?」「だからよくわかんないんですよ~」「それが一言だけ頭の中にスッて・・・」「ふーん・・・なんだろう?」「それ聞いた時、どっかで思っちゃったの」「どう~ですか~?」「そしたらスッと納得がいっちゃったところもあったんですよね~」「へ~」


 この時の3人の顔はどこか不思議に感じつつも笑顔であった。







 【十時影 純 (クリス)】15才 人間・・・かな~?(進化)

 レベル 13

 HP 171 MP 156

 STR 89

 VIT 79

 INT 81

 RES 75

 DEX 95

 AGI 87

 LUK 23

『マナ(情報体):レベル 5 』『波鋼:レベル 5 』『質量拡充:レベル 1』

『魔法:水、風 』

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