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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
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173 異常事態

「う・・・うう゛~ん・・・ああ。・・・ごめんね~、付き合わせちゃって」「大丈夫・・・。元々、約束してたんだし・・・」


 桜稲学園、教室。夜7時10分辺り・・・。


 友達の手伝いで学校に資料の作成と提出用のプリントを作り終えた現在。伸びをして、肩に掛かっていた負担が消えて気持ち的に軽くなった生徒は首、肩を軽く回してリラックスしていた。そんな友達の言葉に返答を返しながら自分も荷物を整理して椅子から立ち上がろうとしている紅百葉。彼女達は次の生徒会の用事のため学校に来ていた。

 現在、彼女達が使っている教室には2人以外誰も居なかった。休日の土曜日。部活などで残っている生徒も次々と帰っていく頃。学校に残る生徒数は少なくなってきていた。まだまだ居残って練習する生徒はいるが・・・。教室、あるいは部室を教師が訪れて確認。帰るように促す時間帯であった。


 「・・・本当は紅百葉の大好きな義弟君とどこか行きたかったんじゃない?」「・・・今日はこれがあるから仕方ない。でも・・・その約束は取り付けた」「取るんじゃなくて、もう取り付けたのね・・・」「これで終わり?」「うん、ありがとう。これで委員会の仕事はおおむね終わったと思うわ。後は、生徒会長と教師陣が決めると思うから・・・」「・・・そう」「・・・それにしても、意外ね・・・?」「?、何が?」「この前、紅百葉が義弟君と登校してくる所を見たんだけど・・・。なんていうか凄く意外・・・」「・・・。言いたいことは分かる。容姿がどうのとかそういう事でしょ?」「あ、あははははは・・・。ごめん。前にも話してくれたけど。なんていうか紅百葉なら・・・もっとイイ男と既に付き合ってて、楽しいリア充ライフを送っているもんだとばかり・・・」


 頭を掻いて謝りながら思った事を紅百葉に話す友達。しかし、そんな友達の発言に首を傾げる紅百葉。


「?・・・楽しいよ?そういうのとは違うの?」「・・・」


 紅百葉にとっては純と一緒に生活し、更にはこれまで以上に、よそよそしさがなく今までとは違う生活を送られていることに少なからずの驚きと楽しさの毎日で満喫していた。これほど純が心を開いてくれた事など無いと紅百葉は思うくらいだった。それは美月も同様だろうとも思っている。



「純の中で何かがあったんじゃないかと思うけど・・・」「うん。・・・でも、悪い方じゃない」「・・・ええ、そうね。私達の知らない所で何か成長するキッカケでもあったんじゃない?」「・・・あの子が成長するのは良いコト」「確かに・・・。は~あ、これで私達がずっと気に掛けなくても少しは大丈夫になったのかな?」「ん・・・。ちょっと、男の子らしくなった」「男の子らしく・・・てのはまだ分からないけど・・・。少なくともあの子も少しずつ変わってきているから・・・」「・・・」「?なに?」「姉さん。・・・義姉ってよりはお母さん的な立場に見える」「ちょっとー。私はそこまでいきなりは老けてないわよ?」「ふふふ・・・冗談」「もー」「・・・でも」「なに?」「今の言い方だと姉さん的には純はもう1人でも大丈夫って事だよね?」「ん~・・・。まあ、多少は問題ないんじゃないかしら。あの子、自炊は普通に出来そうだし。何でか生活力が私達よりもある様な気がするのよね~」「・・・ナゾ・・・」「私達の方がお母さんのお手伝いはしてるはずなんだけど、一体いつの間に・・・?」「私達の知らない間に練習してたとか?」「それって・・・。この家で1人で生活するために・・・とか?」「分からないけど・・・少なくとも1人で何とかやっていくための力を付けていたんだと思う」「私達に気付かせずにするなんて・・・やるわね」「一緒の家にいたのに気付かなかった。・・・でも、これなら・・・」「?」「私達・・・。姉さんはもうこの家に居候しなくても、実家で生活してても良いんじゃないかって思って」「はあ!?ちょっと待ちなさい紅百葉。それはどういう意味?!」「姉さんはワタシと違って大学があるし、今後の就職活動もある。今までのように純ばかりを気に掛けてはいられない」「それは紅百葉も同じでしょ?受験だってあるし、もう少し勉強に力を入れてもっとランクの高い、良い大学を目指すことだって・・・」「私は姉さんが行ってる桜稲大学でいい。元々、そのつもりだったし・・・。だから純と私の事は気にせず。自分の将来について専念した方が」「とか言って、本当は純とも2人だけの生活を送りたいんじゃないの?」「(プイ)・・・」「(ジ~~~)・・・」



 そんなちょっとした出来事が純の不在の間に十時影家で起こっていた。傍から見ればくだらない。だけど紅百葉達にとってはとても楽しい思い出の1ページ。紅百葉はつい、フッと思い出して笑みが零れてしまった。


「・・・まあ紅百葉がそれで良いならいいか。(私が言っているのとは違うけど・・・)」「ただ自分のステータスの為に近づいて来る人は・・・イヤ」「・・・ああー」


 紅百葉の言葉の裏に何が籠っていたのかを理解した友達はそれ以上、この話題を振る気はなかった。そうこうしているうちに時間も、もっと深くなっていくことに気付き、紅百葉に謝って先に教室を出て資料を教師と生徒会室に持っていくと告げる友人。


「あ、ごめ~ん紅百葉。今日は家族で食事に行こうって話だったの。こんなに遅くなるとは思わなかった」「大丈夫、ココは私がカギを掛けるから」「ごめ~ん、ありがとう。急がないと、待たせすぎちゃったらお母さんに怒られる~」


 友人は急いで教室を出て行くのだった。紅百葉は了解して、教室の鍵を受け取り、忘れ物が無いかをチェックして教室を出て鍵を閉め、職員室に持っていこうを廊下を歩いて行くのだった。




「ん・・・ん゛ん゛ん゛~っ・・・」


 丸まってパソコンと睨めっこしていた美月は反らして、凝り固まった体を解す。紅百葉同様、今日は目的が合って大学に朝から来ていた。レポートを済ませて提出しなければならなかったからだ。期限はまだ先だが、美月は母の仕事の手伝いをしていたりする。といってもほとんどが母の仕事ぶりを見たり、そこで働いている人のお手伝いが主だが・・・。将来のために勉強として参加していたりするため予定が詰まっている事も多い。唯一、空けるとしたら純とどこかに出掛ける時などと限定されている。


「(さてと・・・。はい。これで終わり)」


 リラックスした美月は最後にレポートの入ったフォルダを担当教授の大学専用サイトに送り、課題を完了させた。


「それじゃあ。私は帰るね~?」「ちょっ、美月、早いって。もうレポート終わったの?」「うん。こういうのって先延ばしにすると大変になりそうだし」「だ、だったら手伝ってよ~」「ダ~メ。この前もそう言って、結局私がアイデアの大部分を作っちゃったじゃない。今回はちゃんと自分で作りなさい」「ええ~、そんな~」


 困っているのは高校で仲良くなった友人。大学も一緒の為、美月とは気楽に話し合う仲。そのためか美月に助けを求める事が多い困った友人でもあるが、なんだかんだで美月も放っておけないのかつい助けてしまったりする。しかし、今回は長い付き合いでまだそれほど困っていないと判るのか自分でやらせるべきと判断し、サッサと帰り支度を整えようとする美月。


「ちょっと~、友達を見捨てるのか~?薄情者ー」「・・・。言ってなさい」「あ、責めて帰る前に何か飲み物買って来てくれない?」「・・・いいわよ。それくらいなら奢るから」「お、ありがとう」


 お金を美月に渡そうとした所で、美月は拒否して自分のスマホを取り出した。


「(残金は問題なかったよね?)」


 一応、電子マネーの残高を確認してから美月は友人の方を向いた。


「それで、何がいいの?」「ん~・・・。ジュースが良いんだけど・・・。やっぱコーヒーの方がいいのかな~?」「なに?もしかしてまだ時間が掛かるの?」「ううん。さっきのレポートの方は問題ないの。ただ・・・コッチがね・・・」「・・・ああ。あの教授のレポートの方か」「どうして、こうマニアックなものを課題にするかな~?」「まあネットがあるんだし、調べるのは簡単でしょ?」「そうだけど・・・。調べるのも大変なんだよ。大概、どこどこの文明だったとか。誰かの感想混じりの文ばかりだから、レポートとしてまとめるのが難しいの」「・・・大変な授業科目を取っちゃったわね」「美月?遺跡についてとか知らない?何かこう・・・メジャーじゃないもの」「メジャーじゃないもの?」「そう・・・。教授。マイナーなモノを提出したら単位上げるって言ってたから」「それって大丈夫なの?」「美月が言いたいことは分かるわよ?適当に嘘の課題を提出する人も居るかもって事でしょ?」「それもあるけど・・・」「何でもマイナーなモノだと自分でも色々と調べるから、ウソをレポートを書いてもすぐにバレちゃうんだって」「だって・・・って。もしかして・・・」「うん。ウソのレポートを提出した人がいるの。バレた人は他の単位にまで影響したって話だよ?」「・・・確か権威ある教授なんだっけ?」「そうよ?」「・・・そもそもウソなんて見破れるもんかしら?」「さあ?何かあるんじゃない?噂だと見破れなかった事はないって話だし・・・」「そっちの方がなんか凄いわね」「まあ普通に無難にレポートを提出すれば問題ないんだけど・・・」「じゃあ、そうすればいいじゃない?」「ちっちっち。マイナーなモノの方が単位を多くくれるのよ。その結果、多少、他の科目で怪しいことになっても大丈夫になるんだから。受けない手はないでしょ?」「・・・そういう簡単な道を選んだ結果、今があるんでしょ?自業自得じゃない」「う・・・まあ、そうなんだけど・・・」「その科目・・・。かなり人が集まったんじゃない?」「うん・・・。たぶん・・・50人くらい?別の日にやっている授業も考えると・・・200人以上、かなあ?」「・・・」


 呆れたのか首を振って、半眼になり友人を見る美月。


「あ、あ、でも、あれよ?私みたいに一応普通に授業を受けている人は残っているけど・・・。美月が言うように本当にラクしようとしている人は割とすぐにいなくなったの」「・・・。提出課題の内容が難しくて?」「うーん、それも無くはないだろうけど・・・。単純に興味が無くなったからかな?」「・・・へー」


 美月が関心を持って友人の話を聞く。それは友人も多少、ラクをしたいと思う性格がある事は長い付き合いで知っていたからだ。そんな友人がそれほど苦労しているわけでもなく、権威ある教授の科目を受け続けている。それは友人にとっては興味を惹かれる授業だという事に他ならなかったからだ。それゆえに純粋に美月は興味を持ってしまった。先ほどは困っていると言っていたが、わざわざこのレポートには時間を費やすという事は、それほど彼女にとっては重要と判断している事なのだろうと美月は思った。


「・・・結構、好きなんだ~?」「ふふふ・・・まあね。なんだかんだであの教授の話も面白そうだから・・・。つい気付いたら受け続けていたんだよ」「へ~・・・。そう」「・・・あ、でマイナーな遺跡とかは?」「残念ながら知らないわよ。そう言うのは私の専門外」「あー・・・・・・そう」「ふふ。まあ落ち込まずに頑張りなさい?ジュース奢ってあげるんだから」「ああ、そうだった。うーん・・・やっぱ、コーヒーで」「了解」「おねが~い」


 美月は手を振って部屋を出て行く。友人は再びパソコンと向き合って課題の提出に掛かった。


 一部が節電しているのか暗くなった廊下を1人歩いて行く美月。まだ美月のいる大学にはたくさんの学生と教授達がいる。しかし、今はたまたま誰かと会う事もなく1人コツコツと廊下を歩いて行く。大学の中にある自販機で自分用の飲み物と友人用のコーヒーを購入する。電子決済の音が鳴り、紙コップに飲み物が注がれる。その一連の手順を見ながら思い出していた。先ほどの友人の話を思い出していた。


「(マイナーな遺跡・・・。確かに私は専門外だけど・・・。確か、純のお父さん達とかおじいさん辺りが遺跡に詳しかった様な・・・?・・・純に聞けば何か・・・?いえ、ダメね。わざわざあの頃の思い出を無理やり私から掘り起こすなんて・・・。もしあの子が嫌がったら・・・)」


 すぐに首を振って否定した美月はやはり力にはなれないと思い。代わりのコーヒーで友人を慰めようと部屋に戻っていった。


「・・・?、コーヒー。持って来たわよ?」


 美月達がいた部屋には他にも課題を済ませるために数名の学生がいたはずだった。それが、美月が戻って来た時にはいなくなったのか静まり返っていた。


「(ちょっと離れている間に帰ったのかな?それにしては話し声とか聞こえなかったような?)・・・持って来たわよコーヒー」


 キョロキョロと周囲を見回しながら友人のいた場所に戻って来た時。友人が倒れていた。


「ちょっと、どうしたの?!」


 すぐ傍のテーブルに紙コップを置いた美月は友人を抱き起こす。しかし、話しかけ、体をゆすっても友人は目を覚まさなかった。


「ねえ?聞こえる?」


 それでも何度か体をゆすりながら、美月は友人を観察すると・・・彼女の口から微かな寝息が聞こえてきた。


「何だ・・・。寝てるだけ?・・・。もう驚かせないでよ」


 一瞬、安堵した美月。しかしそこで次の疑問が浮かんだ。友人は床に倒れる様に寝ていた。しかも、急に床にでも寝たのか椅子が倒れてたのだ。急な眠気にしても、ここまで急だと流石に変だった。それに対してこの場に残った誰か1人くらい、異変に気付いていても不思議ではないはずとも美月は考えた。美月は友人をゆっくりと床に下ろし。立ち上がっていくつも並ぶ長テーブルとパソコンの列を順に見周っていく。


「っ!」


 そして・・・丁度テーブルで隠されて気付かなかったが、友人と同じように床に倒れる学生達を発見した事で驚く美月。


「・・・なにこれ?」


 改めて周囲を見回すと自分以外の残っていた学生は全員、床に倒れていた。


「(全員が寝てる?こんな場所で?いきなり?)・・・。あの、大丈夫ですか?」


 たまたま近くで倒れていた女性をゆするが友人同様、眠っていて起きない。


「・・・救急車っ。・・・・・・?・・・ええっ?圏・・・外?何で?!」


 焦る美月。どうしようと困っている時だった。


 バツン・・・。


 突然、部屋の電気も灯りのついたパソコンも消えてしまう。幸い非常灯は付いているのか薄暗いが全く見えないという事は無かった。窓から射すうっすらとした明かりもあって部屋を微かにだが見る事は出来る。


「(だ、誰か呼ばないとっ)」


 美月は急いで部屋を飛び出し廊下に出る。すると・・・。


「・・・なに・・・あれ?」


 無意識に口に出してしまった美月。廊下の窓の方へと歩いて行く。窓の外・・・町を見渡すと、薄紫の膜の様なモノが大学を囲んでいるように見えた。


「どうなって・・・?」


 しかしよくよく見ると、その範囲は大きく。どうやら大学とすぐ隣の高校までを覆っている様だった。何が起きたのか分からない美月。そんな美月が窓の下を見ると、友人と同じように今から帰ろうとしていた数人が倒れているのを発見した。


「(どういう・・・)」


 更に美月の位置から見える大学の渡り廊下にも目線を向けると倒れている人がいた。


「(一体何がっ)」


 美月はとにかく誰かの助けを求めるために廊下を走って階段を下り、大学の外まで行こうとしていた。そして階段を駆け下りている時だった。突然強い衝撃音が美月の耳に届いた。驚く美月は一瞬驚いて階段を転びそうになるが手すりを掴んで大事には至らなかった。そしてすぐさま近くの階段を下りて窓まで近づくと・・・モクモクと煙を上げているのが目に入った。そしてそこから逃げるように走っていく1人の人物を目撃した。


「紅百葉!」



 ほんの少し前・・・。



「(じゃあ、私も・・・)」


 教室に鍵を掛け、職員室に返しに行こうと1人、廊下を歩いていた。使用している場所にだけ明かりが点いていて、教室の中は真っ暗だった。廊下にはまだ明かりが点いていた。1人コツコツと歩く音だけが響く。


「(こんな時間まで残ることが無いから・・・。薄暗いと学校って、結構怖いって印象があるな~)」


 改めて周囲を見回しながら、廊下を歩き、階段を下りて職員室に向かって行く紅百葉。


「・・・失礼します」


 職員室のドアをノックして入った紅百葉。しかし、そこには誰も教師がいなかったため、どうしたもんかと悩む。もう少し踏み込んで職員室の中へと入る。そして周囲に誰かいないかを確認した時だった。


「・・・先生っ」


 床に倒れた教師を発見した。驚く紅百葉だが、傍へと駆け寄り、しゃがんで声を掛ける。しかし教師はどういうワケか突然眠った様に目を覚まさなかった。


「(一体どういう?)」


 美月と同じように紅百葉が疑問に思った時だった。先ほどまで付いていた職員室の明かりが突然消えたのだ。


「え?なに?・・・?」


 疑問に思っていた時、すぐ外から淡い光が紅百葉の目に入って来た。薄紫に輝く光である。


「これって・・・?」


 紅百葉はよくわからずに困惑してしまうが、すぐに意識を切り替え、誰か他にいないか確認する。職員室には他に誰もいない事が判ったので、スマホを取り出し救急車に連絡しようとするが美月同様、圏外と表示される。


「どういうこと?」


 疑問を浮かべてしまうがとにかく誰かに助けを求めようと廊下を出て外へ。まだ部活をしている生徒と教師がいたと思い出し駆け出した。そして、そこに向かって廊下を走っている時だった。


「・・・え?」


 先ほど別れた友人が倒れていたのである。


「大丈夫っ?!」


 急いで駆け寄ってうつ伏せになった体を反転させる。すると微かにおでこ辺りが床にぶつかって赤くなっているが、先ほど倒れていた教師と同じく寝ているだけだった。怪我をしていない事に安堵するがどうして倒れていたのかは不明の為、安心できるはずもなく、何度か体をゆすって起こそうとするがまるで起きる気配がなかった。仕方ないと友人を起こすのを諦め、部活をしている人達の方へと向かう。


「・・・っ!」


 廊下の1階。渡り廊下の先にある体育館に近づいた時。窓の外に倒れる部活をしていたであろう人達の倒れている姿を紅百葉は目撃して絶句してしまった。そこには数名いた。その中には教師も混ざっていた。誰かに殴り付けられた様な外傷は紅百葉の目からは確認できなかったが、かなりの異常事態なのは分かった。


 もともと違和感は在った。いくら夜になった学校とはいえ静かすぎたのだ。本来ならもう少し誰かの声がまだ聞こえてきても不思議じゃない時間だった。それこそ部活している人が残っていてもおかしくない時間だからだ。しかし、ここまで学校に遅くまで残ることをあまりしてこなかった紅百葉は、これも普通にあることなんだと。昼間とは違う夜なら起きる現象なんだとスルーしてしまっていた。


「・・・っ、なに?」


 再び発光する紫の光が外から紅百葉のいる中へも降り注いだ時。紅百葉はその光景に思考が止まってしまった。学校中を覆う巨大な紫のドーム状の膜。それが目に飛び込んできた時、どうしたらいいのか分からなくなってしまったのだ。


「・・・へえ。この中でも起きていられる人がいるんだ~?」「っ」


 突然、廊下の暗闇の向こうから掛けてくる声に驚く紅百葉。そんな紅百葉にゆっくりと歩いて来る誰か。


「君は一体誰なのかな?もしかしてアチラ側の組織の関係者?それとも・・・ただの一般人?」


 近づいてくる誰か。明かりの照らす紅百葉の傍へと一歩一歩近づいて来ると・・・。


「・・・子供?」「君が何者なのかちょっと興味があるな~・・・」


 中学に入ったばかりに見える男の子とも女の子とも見分けが付きにくい中世的な子供が紅百葉の前に姿を見せた。






 【十時影 純 (クリス)】15才 人間・・・かな~?(進化)

 レベル 7 → 13

 HP 57 → 171 MP 48 → 156

 STR 30 → 89

 VIT 27 → 79

 INT 22 → 81

 RES 26 → 75

 DEX 32 → 95

 AGI 33 → 87

 LUK 10 → 23

『マナ(情報体):レベル 2 → 5 』『波鋼:レベル 2 → 5 』『総量拡大:レベル 9 → 10 MAX → ?(変化?進化?中)』

『魔法: 水、風 』

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