167 強制戦闘とは如何ともしがたい・・・。逃げ道くらいは残してくれても・・・
「?・・・なあ、あれって・・・」〔・・・どうやら柱の周辺にその内部の特殊空間の影響が出ているようですね〕
純達はいま影の世界を探索していた。目下の目的は影の世界にある4つの光の柱を攻略する事。それがナニを意味するのかは今の所何も分からないが、念の為4つあった光の柱を1つずつ目指して移動していたのだった。しかし・・・。そもそも1つ1つの距離がかなり開いているため、なかなか辿り着くことが出来ない。都道府県を跨ぐ事は無くても、東京23区の端っこを移動しなければならないとなると、人間の足で行くにはかなりの時間を要する。普通なら最低でも何かしら乗り物が無いと難しいものである。しかし、ここは影の世界。反対世界であるから自転車なりなんなりで移動とも考えたが・・・何という事か。壊れているモノかパンクしたりと使えるモノは1つとしてなかった。
そして、サポートが言うように``それぐらいなら乗り物を使わず、純自身で走って飛んで行った方が速い``という結論に至る。だからこそずっと自らの足で歩いて探索しているわけだった。
そして、地盤が崩れ倒れたビル群だったモノの大きな建物の天井へと登ったと時に、ふと自然と光の柱に目を向けると、そこにはただ光っていた長く太い柱だけではなかったことに気付いた。
「何かあったのか・・・それとも元々これが本来の形なのか」〔ふむ・・・。何かあったとすれば以前、入った柱の1つを攻略完了した事でしょうか?思い当たるものとしてはそれくらいですが・・・〕
純は周囲を改めて見回した。そこには1本だけ他の柱と違い薄く中を透き通って半透明になっているモノが空へと向かって伸びていた。
「うーん、思い当たる節としてはそれくらいか・・・。しかし、外まで影響するとああなるのか?」〔そこまでは・・・。ただ、1番近い、アレを見るとそうなりますね〕
光りの柱の周囲には黒い粉塵と煙が黙々と立ち込め、地面に降り注いでいるように見える。そして柱自体が赤みを帯びたオレンジ色の強い光を発していた。
「・・・どう見ても、火山っぽいんだけど・・・?」〔・・・。中の様子は探れませんがそこまで熱くは無いようです〕「判るの?」〔サーモグラフィーの様にして一部、マナを視界で識別すると・・・。中の地形は全体的に気温値が高い事を示しておりますが、真っ赤というわけではないようです。どちらかというと、今、私達がいるこの場所より数度高い程度かと〕「・・・そんなもんなのか」
もはやサポートが色んな情報を取り入れる事も、何かサラッと凄いをしでかすことも受け入れ始め、スルーしていくことが増えてきた純。今回もあっさりと受け入れて流してしまうのだった。
〔近場の柱ですとあの柱ですし・・・。さっそく見て行きますか?〕「ああ、そうしようか」〔では、この近くの空間を渡っていきましょう〕「了解」
探索をして影の世界に何度も足を運ぶうちに、色々なルートを開拓していった純達。現実の世界と影の世界の間の空間は独自の流れがあり、その流れ方からどうすれば移動が短縮できるかをサポートなりに理解し純と共に、いくつも見つけて来たのであった。
「今日は姉さん達は実家の方に住むことになってるし。予定もあって3日程は家にいない。このうちにサッサと攻略してしまおう」〔わかりました。あ、そこを右の通路を通った先の扉の中にある空間に入ってください〕
サポートに指示され、崩れたビルの中へと、跳んだ状態から若干空中で微調整し、壊れた窓から中へとダイブ。そのまま通路を渡り、扉の先の現実と影の境目の空間に入る。そこから、サポートとの特殊スキル``連結``で、感覚だけではなく視界でも流れを見つけ、サポートの示すルートへと突き進む。繰り返すこと数回。開けた場所へ出ると、先ほどはかなりの距離があった特殊エリアの光の柱も、純の視界では両端が見切れて全く見えないほど目の前にあった。
「・・・心なしか熱くないか?それにちょっと息苦しい様な」〔それは錯覚でしょうね。純の肉体でそこまで敏感に、あのエリアから、まだ影響は受けるとは思えません。おそらく、以前はもっと太っていた事もあって暑がりだったのでしょう。その時の感覚が記憶に残っているのが原因では?〕「・・・。そんなもんなのか・・・」
そこでフとクリスだった時の事を思いだした。その時の肉体は幼い子供とは言え平均的な肉体だった。いや、寧ろ若干痩せているという感じですらあったかもしれない。その時の感覚では、汗は掻くこともあったがそこまでではなかったと記憶している純。そういうのであればサポートの言葉は正しいのだろうと受け入れて、気持ち、首元まで上げたジャージのファスナーを開けて風通しを良くするくらいに留めた。そして、いざ。光の柱の中、特殊エリアへと侵入するのであった。
「・・・暗い」〔しかし前回とは違って、気味の悪い暗さではないかと〕「いや、そうだけどさ~。この」〔あ、そこ危ないですよ?〕「おわ!」
ぴょんと飛び跳ねて、純が避けた瞬間。地面から白い煙が勢いよくシューシュー音を立てながら吹き出していた。ここは地底湖。いや、かつては地底湖だった場所であろう。そのためにいくつかの地面にはかなり暖かい水のたまり場が残っていた。しかし、ぶくぶく下から気泡が浮かび上がっている場所は温かいを通り越して高温だろうと純は思っている。
サポートのリンクによる明るい視界の確保が無くても、以前の様な鬱蒼とした場所と違い、どちらかというと明かりがチラホラとどこかから入ってくることで地面は見え辛いが、周囲を見通せないほどではなかった。というか、一部、通り道の向こうはハッキリと見える。なぜなら火山がすぐそこに流れているという事を感じられるからだった。つい、強い光が射している方角を見て立ち止まる純。
「流石にマグマの側は御遠慮を・・・」〔それは、ココのエリアボス次第でしょう。前回同様、この特殊エリアを支配する重要なポジションなら行くしかありませんよ〕「ええ~」〔ええ、じゃありません。そもそも純・・・。本来ならここはもっと高温地帯。マグマか水かは不明ですが、そういった極めて高い温度だった危険なエリアなんですよ?普通の人間なら、息苦しさと暑苦しさでダウンしてもおかしくもない場所です。己の進化の恩恵に感謝して諦めて進みましょう〕「・・・わ、分かってるけどね~」〔グダグダ言わず、進む〕
駄々をこねそうな純の感情を感じたサポートがキリキリと純を進ませるのだった。・・・と、そこである提案をサポートが示す。
〔それでしたら魔法を使ってみてはどうでしょうか?〕「あ、その手があった!」
純はさっそく体内マナを巡らせ、風と水の魔法の自分なりの感覚をイメージする。
「よし・・・ほい!」
自分の体を水色の液体が薄く拡がっていき、やがて全体を覆う。そして水色だった液体が透明に変わっているが純は頷いた。そして、更に上から体の周囲に、微かな風の膜の様なモノを広げて覆う。純の周りには一瞬、風が吹くがすぐに止んだ。
〔どうですか〕「おお~♪、快適快適。なんだこうすれば良かったじゃんか」〔効果時間はまだ正確には計測できておりませんので、あまり期待しすぎないようにしてください〕「りょ~か~い」〔・・・〕
鼻息を出してため息を吐いたサポートはそれ以上何も言わなかった。
そして快適な(自分だけ限定だけど)空間を作り出せた純は探索を再開する。そして凹凸の激しい地形を上り下りして、先へと進むと・・・。ゴリゴリと硬い岩で出来たモンスターやマグマの様にドロドロになったスライムがチラホラ。更には蝙蝠にしては明るい見た目に直径2メートルはくだらない大きさの集団やコモドオオトカゲが自分達の縄張りだという風に練り歩いていた。
それを見つけた純とサポートは戦闘を開始するために双剣を腰にある、目に見えない空間から引き抜く様に取り出した。
〔それでは、今度は双剣での戦闘を始めましょう〕「(距離感は掴めてきたし、後は経験あるのみ)」
純は岩壁の向こうに隠れていた所から覗く様に。先へと広がっている比較的、平らな地形に我が物顔で闊歩するモンスター達目掛けて駆け出すのだった。
・・・・・・。
「ふう~・・・。うん、結構いけるね」
片手の双剣をくるっと回してキャッチして、頷く純。その後ろでは、約70は超えるであろうモンスター達はシュウシュウと黒い煙を上げて消えていく光景が広がっていた。
飛び出した所を一気に詰め寄り、スライムを一閃。純の体内マナを込めた攻撃はスライム本来の粘着性という液体の性質を無視して倒してしまう。近くに居たトカゲも頭の上と下が離れて、なかなか黒い状態で倒れて絶命する。蝙蝠が鳴いて超音波で攻撃しながら接近してくるが。魔法のおかげもあって純には効かず、寧ろ自分から攻撃される為に向かって来ているとしか純には思えなかった。
いよいよ、数も過半数が失ったことで黒い地底湖のゴーレムと、それを甲羅にした亀の大きなモンスター達が動き出した。一瞬、双剣での攻撃が通用するかと頭を過ぎるが、そのすぐ後に大丈夫と思い直し、自ら走って向かって行く。その後は鎧袖一触だった。
腕を、足を、胴体を切断。甲羅を使って立て籠ろうがそれごと横から、背中の甲羅の頭頂部から一刀両断。盾にすらならなかった。そうして次々、倒していった結果が純の背中に広がる煙が立ち上る光景だった。
「これぐらいなら素手でもいけそうだな?」〔可能でしょうね。マナを循環させ魔法と同じように膜を張ってしまえば、おそらく火傷もしないでしょうね〕「それは助かるな~。まあ、武器があるなら避けたいけど」〔それでは、先へ進みましょうか?先ほどから奥に進むにつれモンスターの数が増えています〕「って事は、この先にいると・・・。分かり易いな」〔いえ、違うでしょう。純が考えている、従えているから傍に大勢いるのではなく、そこから逃げてココに移り住んでいたのではないかと。モンスターであっても独自の形態形勢がなされているのでしょう〕「・・・。という事は面倒な相手?」〔少なくとも、簡単な相手ならこんな地形でボスに君臨はしていませんね〕「そりゃそうか」
腕を組んで考えた後。純は意識を切り替え、早速ボスがいるであろう奥へと進んでいくのであった。
とても大きな空間。分かり易く戦いやすい地形のその大広場にはマグマが周囲の壁の端っこ辺りをうねる様に蠢いていた。そして広場の奥にはこれまたマグマが湖の様に数十メートルまで埋め尽くしていた。ここは本来、このマグマの中を平然と動き回り生きていけるモンスターだけが生息を許された場所だった。・・・しかし、そんな中に予期せぬ珍客が訪れていた。
体をマグマの様に明るい色が何種類もあり。見た目が目のない代わりに大きすぎるくらいの口が特徴のマーブル模様の数メートル位の巨体な人型だった。そんな珍客は自分の体よりも数倍デカいチンパンジー型のモンスターをムチャグチャと食べていた。微かに痙攣している所からそのチンパンジー型のモンスターは辛うじて生きていたのだろう。岩の性質も備えていたのだろう体部分も喰われていく。そして食べ続けている最中にチンパンジー型モンスターは事が切れた様に腕を地面に落とす。すると、黒い霧の煙をシュウシュウとあげて透ける様に消えていった。
代わりにそのモンスターを食べていたマーブル模様の異形モンスターに変化を表れる。岩の翼が生え、そして尻尾も生えてくる。数種類あったマーブル模様の肌が赤一色に染まる。
「・・・ボボボ」
そしてゆっくりと立ち上がると、僅かに言葉を発し、その場で止まってしまった。完全に停止したのである。
「(・・・なにアレ?)」〔・・・さあ?〕「(あれがボス?)」〔・・・いえ、違うと思います。たぶん先ほど倒されたのがおそらくボスではないかと。見てください〕
サポートの言葉に視線を空へと向けると真っ暗な天井からどうやってか白い光が広場の周囲一帯に広がっていく。
「(これって・・・クリアしたって事?)」〔その様ですね〕「(なんと言っていいのか)」
意気込んで、いよいよボスが目の前だと思って来て見れば、既に倒され別の何かがクリアしていた。そんな状況をどう反応していいのか困る純。
〔戦いますか?〕「(え?アレと?)」〔はい〕
目の前のナニかは立ち上がった姿勢からピクリとも動かずジッとしていた。そんな姿を見て、触れなければ問題ないのではと思ってしまいサッサと出て行こうと考える純。ここでこのままジッとしていても意味がないとゆっくりと踵を返し、迂回して出て行こうとした時だった。
突如、周囲に光の渦が浮かび上がり、純の退出を拒否する様に壁の様なモノが作られた。
「(ウソでしょ!)」
慌てて壁に手を触れるが、しっかりと形を成しており、感触も確かにコンクリートの壁の様だった。
〔これで、戦うしかなくなったようですよ?〕「マジか・・・」〔おや?どうやらあちらもそれを歓迎しているように見えますね〕
サポートの言葉に再び、広場を振り返れば・・・。純の存在を何らかの方法なのかで気付いて、ゆっくりと顔を向けた。そして大きな口が横へと開かれ・・・ニコッともニィっともどちらとも言える表情で歓迎する様に待っていた。
〔どうやら私達の居場所は正確にバレているようですね。どうしますか?このままやり過ごそうとしても意味が無いように思えますが、可能性もゼロではありませんよ?〕「・・・」
腕を組み、目を閉じて少しの逡巡。そして前を向いて目を開くと。
「行こう。どうせ戦うしかないようだし。この際、今の実力でやれることをやろう」
どういう理由か出られないだろう壁のせいで、閉じ込められた純は決断を下し、潔く高い位置の崖に立っていた場所から広場へと飛んで下りていく。
広場の真ん中へと下りたった純は相手の赤色に染まった異形のモンスターを観察する。それは向こうも同じようで、片手を動かして顎に手をやり純を値踏みするようだった。そしてお互いがゆっくりと近づいていく。純にとっては遠いが、相手にとっては丁度いい間合まで来る。しかしその間合は純が反撃に動き攻撃するにも悪くない距離とも言えた。瞬時に対応、動けるからだ。結果、お互いにとってはどちらからでも動くには丁度良い距離感になっていた。
「「・・・・・・」」
純はゆっくりと両手を腰の後ろへ。引っ込めていた双剣を空間から引き抜き、構える。異形のモンスターもただ、突っ立っていた姿勢から腰を下ろし格闘に入った。
〔多少の戦闘技術があるのかもしれません、注意を〕「(分かってる)」〔腰を落とし、戦闘態勢を取った事から、純に相当の実力がある可能性を感じたのかもしれません〕「(それは光栄)」「・・・ボ」
たった一言、モンスターが発し、ほんの少しの静寂。そして、そのすぐ後、凹っとマグマの弾ける音が聞こえた瞬間にモンスターは動き出し純に最短の距離で左ストレートを仕掛けた。
「ッ!」
しかし純も、その動きがハッキリと見えて、横へと回避。と同時に懐へ迫り、一撃を加える為に振り下ろした。しかし、それに反応した異形モンスターは右手を立てにガード。胸を大きく切り裂くつもりだったが失敗。しかし、純の攻撃力はあまりに高かった為、腕を大きく裂かれ、切り落とされてしまった。
「ギャ!」
瞬時に後方へと飛んで回避すると同時に尻尾による回転払いで純の側頭部を狙う。純もそれに気づき自らその場で飛んで空中へと横回転捻り、左腕の双剣で斬り払うように尻尾を追いかけ切断する。
その反応速度と純の攻撃力に驚いたモンスターは更に今度は大きく離れた。自らの翼を使って広場の端っこまで退避した。純は追いかけず黙って、双剣を構え直す。
「・・・ゴ・・・」「・・・」
そんな光景を見て、自分を落ち着かせるためか1声出した後、ゆっくりと観察する様に止まるモンスター。そして腰を落とすと同時に、切断され落ちている自分の右手と尻尾を見た。
純の目線からでは目があるようには見えないが、異形モンスターは視覚でハッキリと、モノを捉えている様子だった。そんな落ちてしまった腕と尻尾は煙を上げて霧のように溶けていく。
「・・・!」
それを見たモンスターは口を大きく開け驚いている様だった。しかし、首を振ってもう一度戦闘へと意識を切り替える様な仕草を取っていた。
〔随分と人間臭いと言いますか・・・変わったモンスターですね〕「(本当に何なんだろうな、アレ?)」
そう言って純が不思議に思っていると、どういう原理かモンスターの欠損した腕と尻尾がぶくぶくと内側から水滴が膨れ上がると形が変化していき、元の腕と尻尾に治してしまった。
「ホント、何なの?アレ?」〔再生能力があるようですね。しかしそこまで優れているわけではないようですよ?〕「あ・・・マナの容量・・・かな~?ちょっと減った?」〔その様です。そう何度も再生できるわけではないようですね〕「・・・ゴアアア!」
それは異形モンスターも分かっているのか、今度は自ら低空飛行で純へと迫っていく。純はそれを待ち構えて、攻撃してくるのに合わせた。モンスターの岩の能力も含めて何らかの力と固めたであろう腕と純の双剣がぶつかった。地面が大きく凹み、マグマが強制的にその余波で壁へと追いやられる。
ギイイイイィィィィィィ!!
火花が散っている。必死に力を乗せて押し込めようとするモンスター。それに対し片手でくい止めた純。両者の力には差があったようだった。純は空いた手の双剣を振りかぶるために腰の後ろへと回す。そして一気に振り抜く様に、受け止めた腕と入れ変わる様に反撃した。その攻撃は一瞬だけ硬い腕にぶつかった後バターにナイフが入っていくように滑らかに切断していく。モンスターは腕を犠牲にして空へと飛んで回避した。
腕の半分が断ち切られ、5本指の腕の中指から小指、肘にかけての腕が切り落とされた地面に転がる。それもすぐに霧と共に溶ける様に消えていく。口が大きい異形のモンスターは分かり易いくらい歯を食いしばり、ギリギリと歯ぎしりした後、腕を元に戻すのと同時に純に向かって突貫を開始した。
ガギン、ザン、ザシュ、ズン、ギン、ブシュ・・・。
高速で飛び回り何度も攻撃を仕掛けるモンスター。素人が見たら純に何かが迫ってきている・・・らしいくらいにしか分からないだろう。しかし、その純もほとんどその場から動かず回る様にクルクル動いているだけにしか見えなかったはずだ。
実際はモンスターが来るたびにカウンターと受け流し、いなすを繰り返しているのである。しかし、そんな事を簡単にやってのけている純に比べて、攻撃する度に回復する暇もなく切り傷が増えていくモンスター。焦るあまり自分の有利性等、微塵も冷静に考える余裕は無くなっていた。責めれば責めるほど大きな傷か増えていく。そして気付けばいつの間にか片腕も足も尻尾すら斬り飛ばされ再生できなくなっていた。焦りはどんどん募る。しまいには噛みついて攻撃しようと口を大きく開けて、高速で飛び込んでいく。
「・・・(ココ!)」
それに合わせるように、一歩、大きめに斜め前へと動くと同時に振り抜いた双剣で岩で出来た翼が切り落とされ地面を滑って転がるモンスター。
「ゴッ!・・・ボ!・・・アア!」
急いで起き上がろうとするが足と腕を1本ずつ斬り飛ばされて、再生していないためバランスを崩し上手く立てない異形モンスター。そんなモンスターをゆっくりと振り返り、見つめる純。
〔純、もうそろそろ魔法の効果時間が切れそうな感じですよ?〕「アレ?結構経ってた?」〔初めてこんな使い方しましたし・・・かれこれ30分くらいは持続できたんじゃないでしょうか?〕「は~、結構持つもんなんだな~」〔いえ、これくらいの相手なら純の魔法を吹き飛ばしたり、効果を弱らせられるほどの強さではなかったという事だと思いますよ?〕「実際はもうちょっとシビアかもしれない、かぁ・・・」〔あまり過信しすぎるよりは良いかもしれませんね。それではあのモンスターにトドメを〕「・・・あのモンスターに悪気はないけど・・・このままじゃ出られないし・・・ごめん!」
純がゆっくりと迫ってきたことで、後退り逃げようとするモンスター。流石に純もここまで怯えたモンスターに攻撃は躊躇われたが、何を思ったのかモンスターが体内マナを無理矢理膨れ上がらせ体を更に巨大化。出会った時は7メートル弱あった、体を倍以上にまで膨れ上がらせ純を取り込もうと飛び掛かってくる。
「・・・」〔体内マナを10%くらいで〕
一呼吸、息を吸った純は体内マナを双剣にも巡らせ一気に周囲を薙ぎ払うように回転乱舞を繰り出した。
「アアアアア・・・ああ・・・・・・あ・・・」
叫び声はすぐに消え去り、塵も残さず霧へと変え溶けていった。
【レベルが上がりました】
頭の中に微かな電子音と通知音の様なモノが響き、純の戦闘は終わった。
【十時影 純 (クリス)】15才 人間・・・かな~?(進化)
レベル 5 → ?
HP 25 → ? MP 22 → ?
STR 17 → ?
VIT 14 → ?
INT 12 → ?
RES 13 → ?
DEX 18 → ?
AGI 21 → ?
LUK 5 → ?
『マナ(情報体):レベル 1 → ? 』『波鋼:レベル 1 → ? 』『総量拡大:レベル 8 → ? 』
『魔法: 水、風 』




