150 友達と新たな学校生活
「十時影君おはよう」
「おっす、純」
「おはよう、十時影君」
「あ、松本君、笹本君、大木君おはよう」
教室に入ると、気さくに声を掛けて来る人達がいた。
純の高校に入って初めてできた友達だった。
「純、今日もキレイなお姉さん達と登校とは・・・羨ましい限りですな~」
純にフレンドリーに話すのは自称、情報通で噂が大好きな笹本 要。
「別に毎日一緒に学校に行く必要は無いと思うんだけどね」
「ははは、そんな贅沢・・・周りが知ったらタダじゃおかない文句だよ」
純の言葉に笑いながらも返すのは、眼鏡を掛けた、おとなしめで身長が高く優しい男。
大木 勤。
「いいな~。
僕だって言ってみたいよ、そんなセリフ」
ガタイがしっかりしていて、強そうな印象を受けるが、話すとすぐに分かっちゃう、のんびり屋。
松本 健介。
この3人が純が中学の1年以来、初めてできた友達にして、最大人数かもしれない友人の数だった。
「それより、どうしたの?
今日は皆、やけに早く集まってるね?」
「ああ。何か知らないけど、数日前の入学式、だったかに問題を起こした生徒がいてな~」
「さっき、その話で盛り上がっていた所なんだよ」
「登校初日に問題なんて物騒な話なんだけどね~?」
「・・・」
純は笑顔のまま何も言わない。
思いっきり関係者である上に・・・一応、被害者的立場である以上、不用意に口を出すべき事ではなかったからだ。
特に、笹本の前で変な事を口走ってしまったら、弄られてしまうのが目に見えていたからだった。
「(まあ、笹本君も本当に俺が嫌がったら止めてくれるとは思うけど・・・)」
〔ただ・・・自称情報通としては気になってしまう話題ですね〕
サポートの言葉通り、純は皆に言えない話だった。
実際、どこまで話が出回ったのかというと・・・。
「生徒の誰かを集団でイジメようとした所をたまたま教師が目撃してしまい、そのまま集団は生徒指導室行きになったらしいんだよ。
だけど、イジメた集団も、被害を受けた人も、よくは知らないんだけどな?」
「え、そうなの?」
「うん・・・と言っても、僕は笹本君に聞いて初めて知ったんだけど・・・」
「俺も」
そう言って、松本と大木は笹本を見る。
「俺も噂程度にしか聞いてないんだよ。
だってさ、その時、ほとんどの生徒が帰ってしまっていて実際にその現場を目撃した人がいなかったんだよ」
「?、じゃあ、どうしてそんな噂が?」
「一応、少しは残っている生徒もいたらしいんだけど・・・。
先生がサッサとその問題に対処したのか、何か騒動を起こした時の大声だけが廊下に響いて聞こえたそうなんだよ。
だけどその後、急に静まり返っちゃったらしくて・・・誰もその騒動がどこで起きた事なのか分かってないんだよ」
「だから噂話になってるんだって」
「へ~」
適当に相槌を打っておく純。
「でも数日前って・・・どうして次の日とかにその話題が出なかったんだろう?」
「聞いた生徒が少ないし・・・急に怒声が聞こえたから怖かったんじゃないかな?」
「確かに・・・。
いきなり、そんな現場に立ち会ったら怖いな~・・・。
でも・・・情報通としては、調べてもみたくなる」
「好奇心もいいけど、ケガだけはしないようにね?」
大木が笹本を心配して、一応注意しておく。
「・・・それで・・・なんで今更?」
「ああ、そうだった」
純の疑問に、話を戻す笹本。
「どうも、そのイジメていた集団。
停学処分になったそうなんだけど・・・どうも、その様子がおかしいって話なんだ・・・」
「それってどういう事?」
「笹本君は・・・どうして、そんな事を知っているんですか?」
「あ、寿さん、神橋さん、おはよう~」
急に話に入って来た澪奈と鏡花は、真っすぐに笹本を見て質問していた。
そんな2人に興味を持たれた笹本は得意げに話し出した。
「ふふん・・・情報の入手方法は教えられないが・・・そのイジメ集団については少しだけ話せるよ?」
「・・・何か、問題があったの?」
澪奈の質問に、首を僅かに振った後、傾げて、その対応が本当に合っているのか自分でも疑問に感じている笹本。
「問題・・・ってほどの事なのか・・・いや、そうだと思うんだけど・・・」
「一体どっちなの?」
「・・・寿さんが思っているような・・・。
何か・・・また問題行動を起こしたとか、そういう事じゃないんだけど・・・」
「?・・・では、何を?」
鏡花もついつい聞いてしまう。
「何でも、イジメようとした自覚はあるらしいんだが・・・何でそんな事をしたいと思ったのかが分からないそうなんだよ」
「・・・、はあ?」
素っ頓狂な声が出てしまった澪奈。
しかし、笹本は若干鼻で笑って同調した。
「ふふ、そう思うよね?
俺もそう思ったんだよ・・・。
だけど・・・どうも、本当っぽいんだよ」
「?・・・どうして、そう断言できるんですか?」
「だって、問題起こした連中の1人ってウチの中学の奴だから」
「それ・・・噂じゃなくて、本当の話じゃないか」
「あ、ヤベ」
頭を掻き、失敗したと分かり易い行動を取る笹本。
「ふふふふふ・・・情報通だけど・・・質問したら、簡単にネタをばらしてしまいそうですね?」
「ゴシップ好きな人くらい・・・信用度の低く、口の軽い人って思えばいいのかしら、笹本君の事?」
「あ、いや待って。
友達が本当に秘密にしてほしい事とかは黙ってるから」
「・・・」
「ふふふ」
片や半眼になって、片や笑って、笹本の言葉を聞いていた。
「し、信じてよ~」
遠ざかって行く、気持ちの距離からわざとらしく手を伸ばした後に、ガクッと首を落とす笹本。
「ふう、まあいいわ」
「ええ。
それよりも・・・その集団達の事が気になります」
澪奈と鏡花は先を促す。
松本も大木も・・・もちろん純だって気になっていた。
全員からの注目を浴びた笹本は気を取り直して続きを話し出す。
「オホン・・・。
それで・・・そいつ、俺とおな中だった人なんだけど・・・。
そもそも彼って、それほど何か問題を起こすような奴には見えなかったんだよ。
寧ろ、かなりの真面目君で、おとなしい奴だったはずだよ?
高校デビューにしても、いきなりここまではっちゃけるとは思えないんだよ。
中学の時の反動でって考えも無くはないけど・・・。
やっぱどうしても無理があるように思えるんだよ」
笹本が顎に手を添えて推理する様に考え出す。
それを聞いていた大木と松本も天井を見る様に上を見ながら・・・。
「確かに・・・ちょっといきなり、それはどうかと思うね~・・・」
「僕もそう思うよ。
せっかく有名校に入ったのに・・・それを台無しにするなんて・・・う~ん」
「どうやら、他の奴らも似た様なもんだって話でな?
何でも中学時代は結構、先生からも評判が良かったって話だぜ?
きっと、優等生で模範的な生徒だったりしてな?」
「ホント、どこから手に入れてきたのやら・・・」
「ですね・・・。
それで、笹本君?
笹本君の事ですから、当然その問題が起こる前の事も調べてたのでは?」
「さっすが神橋さん。
俺の事、もうわかってるんだから」
調子に乗り出す笹本。
鏡花は曖昧な笑顔を返すだけだった。
しかし、それについては鏡花も澪奈も・・・純達も口出ししない。
たった数日でも、笹本という人物の性格に慣れてきたからだった。
ここで、また話の腰を折るよりも先を促した方が前に進みやすいと分かっていたからだ。
「もちろん調べたに決まってるよ。
それで分かったのは・・・彼らの素行が急に悪くなったのは・・・4月に入った直後辺りだって話なんだよ。
それまでは普通の、一学生でしかなかったって話」
「う~ん、それだと・・・やっぱり中学時代の反動で来た高校デビュー?」
「俺も最初はそれを疑ったんだけど・・・。
俺と同じ中学にいた奴は・・・問題を起こした後・・・。
情報では、次の日くらいかな?
急に以前の大人しい奴に戻ったんだよ」
「自分にはそのデビューの仕方はやっぱり合わなかったとか?」
大木が笹本に聞いてみる。
「その可能性も無くはないけど・・・うーん、どうも納得がいかねえんだよ。
なんていうのかな~・・・俺の直感が違うって思ってるんだよ」
「笹本君の直感?」
純もつい聞いてしまった。
「ああ。
一応、これでも中学時代は新聞部みたいなことをやってたから、情報を集めるのは好きなんだよ」
「それは・・・イメージしやすいわね」
「ふふふ・・・確かに」
「で、色々集めた経験がある俺としては・・・今回のネタから思うのは、ただの高校デビューではないって事。
これは、たぶん間違ってないって思うんだよ」
「・・・笹本君なりの経験から感じた印象か・・・」
純は笹本の話に考え込む。
〔確かに・・・。彼の直感はさておき、今まで問題を起こさず・・・それこそ、模範的生徒に近い子供が急に、暴れ出すとは考えにくいですね・・・。
この地球において、学歴、というのは人生を左右するそうですから。
そこまで大事な事をすぐに手放すほど馬鹿な者達ではないでしょう〕
「(という事は・・・別の何か?)」
〔わかりません・・・。
あまり、何でも結びつけるのは良くありませんが・・・不自然過ぎるのは確かです。
しかし・・・その情報は、あくまで笹本から得た話だけ。
他からも情報を得ない事には、詮索しようもありません〕
その時、ふと松本が笹本に気になった事を聞いていた。
「あれ?・・・って事は、停学処分を受けた彼らって・・・」
「大人しく先生達の言う事を聞いているらしいって話だ。
ただ・・・どうも、問題を起こした当時の事を聞いても、曖昧らしいんだってよ」
「あいまい?」
澪奈が真剣な目になる。
鏡花も自然と澪奈と同じく真面目な顔になった。
「問題を起こしたかもしれない・・・ってのが、そいつらの言い分だそうだぜ?
実際に起こした記憶はあるんだから、ただの言い訳にしか聞こえないけど。
・・・どうも、本当に自分達が進んでやった事なのか・・・その辺りの記憶があやふやなんだって。
自分で本当に起こしたって自覚も実感も湧かないらしい」
「なにそれ」
「まあ、寿さんの気持ちも分からなくはないけど・・・。
どうも本当っぽいんだよな~?
何故そんな事をしたのか分からない・・・けど、そうしなければならない。
連中が言うには使命感の様なモノが湧いたってのが言い分らしい。
全くもっていい迷惑だよ」
笹本は腰に手を当て、やれやれと首を振っていた。
〔使命感、ですか・・・〕
サポートはその言葉を吟味する様に、呟くと考え出す。
そんな、肉体を持たないサポートなのだが、その状態が純には伝わった。
「はいはい~、みなさ~ん。
席に付いてくださ~い」
「あ、舞美ちゃんおはよう~」
「おはよう舞美ちゃん」
「はいはい、おはようございます。
けど、先生を名前で呼ばないように~」
パンパンと手を叩く為に、腕で寄せて集まった胸に男連中は``おお~!!``と声には出さないがジッとその視線が1点だけに集まった。
「(チッ、これだから男は・・・)」
どこからかそんな言葉が飛びそうな女子達の心の声。
実際、微かにそう言った声が聞こえた事に純は気付いてしまったが、怖いので知らないふりをした。
「はいみなさ~ん。
ホームルームを始めますよ~?」
「「は~い」」
そう言って、全員がそれぞれの席へと付いて行く。
純のクラスの担当講師、九重 舞美。
おっとりした、少しほんわかする印象を持たせる講師である。
あまりのスタイルと性格の良さに一部の男児連中から、既に告白を受けたとの噂がある教師だった。
男性だけではなく女性からも人気があり、親しみやすさが生徒との壁を無くしていた。
その結果、よく九重の周りに数人の男女が集まって会話する光景。
純は凄いと感心していた。
「(年齢とか関係なく、たくさんの人が集まるあの光景・・・。
あれがカリスマって奴なのかな~)」
羨ましくも思っていた。
〔純には純の良さがあります。
彼女には彼女の魅力があるのでしょう〕
「(ああいう、フレンドリーに誰とでも接する事が出来るのは・・・本当に凄いよ。
俺には無理だな~)」
この数日間で、純はそれを何度も見ていた。
「それでは出欠を取りますよ~」
どこかほんわかした感じでホームルームが始まった。
キーンコーンカーンコーン・・・キーンコーンカーンコーン・・・。
「それでは、今日はここまでにします」
英語教師の授業終了の合図と同時に、一気に突っ伏す生徒が数人。
「やっと終わった・・・」
「今日の授業・・・終了」
片や解放される喜びから天を仰ぐ様に手を広げる生徒も数人。
たった数日だが、もはや見慣れた光景になりつつあった。
「はいみなさ~ん、席に付いてくださ~い。
ホームルームを始めて、早く帰りたいですよね~?」
数分後に入って来た担任の九重先生の言葉に、気持ち全員が早く自分の席へと付いて行く。
「はい、それでは・・・。
え~、皆さんに報告する事としましては・・・近々、身体測定がありますので出来るだけ休まない様に学校に来てくださいね?
他には・・・そろそろ部活の勧誘活動が行われるかと思われます。
早めに入った方もいらっしゃるようですが・・・もしまだ入部していない人がいたなら、この機会に是非、一度体験してみるのもお勧めしますよ~?
何事も経験ですから~」
「(・・・なあ純?
お前はどこかの部活に入ったりするのか?)」
「(え?・・・いや、そんなつもりないけど)」
「(そうなのか?
ほらココって結構大きい学校で生徒数もかなりの数だから、お前が好きそうな部活があったりするかもしれねえじゃん?
だから、興味のある場所に行ってみたらいいって思うんだけど?)」
ホームルームでの報告の最中に隣の席から、笹本が話しかけてきた。
「(笹本君は?)」
「(ふ・・・もちろん新聞部)」
「(ああ。・・・なんか納得。
確か中学の時もそうだったんだよね?)」
「(まあ、前はほとんど気まぐれに近いもんだったけど・・・。
この学校の場合はちょっと違うんだよ)」
「(なにが違うの?)」
大木が興味を持ち、後ろの席から笹本に質問した。
同じくその横の席のいる松本も興味を持った。
「(それは・・・っと、ちょい待ち)」
笹本がそういったのとほぼ同時に。
「は~い、今日はここまでです。
きり~つ・・・礼」
「「ありがとうございました~」」
各々が解放されると同時に自由に動き出す。
サッサと帰る人。
友達を話す人。
部活にさっそく向かう人。
「っで、何が違うの?」
興味を持っていた松本と大木が笹本に再び質問した。
「この学校、人が多いから、数人が集まって先生に部活申請書を出すと、割と簡単に作れるんだ。
結成させる事って意外と簡単なんだってよ。
・・・っで、一応俺は新聞部に入るんだけど・・・その新聞部、色々なジャンルに手を出しているらしい」
「手を出す?」
「ああ。
別に堅苦しく、学校の事ばかりの情報を集めて出す必要はないんだよ。
自分の好きに集めた情報を掲載しても構わないそうだ。
ま、当然、あまりに問題になるものは出せないけど・・・。
それ以外だったら、本当にどんなジャンルもありなんだよ。
だから俺が入った新聞部・・・何人もいるんだけど、載せる記事は本当にその人の趣味が色濃く出るんだよ」
「へ~、どんな風に?」
純も少しだけ興味を持ってしまった。
「スポーツ関連、ゴシップ、報道系、自分の集め、調べた情報からの考察系。
未確認生物から、幽霊、アニメとかドラマや映画とか・・・他にもおすすめ小説の紹介もあるし」
「ホントに色々とあるんだね」
「それって新聞部内のまとまりってどうなの?」
「ん?、基本自由だよ。
未確認系とか、考察系なんかは、元々違う部活から掛け持ちで入って来たり。
逆に向こうの部活に勧誘されて入っている先輩もいるって聞いた」
「それって・・・新聞部?」
「まあ・・・純の言いたい気持ちも分かるけど。
ウチの新聞部は複合的な部活で・・・定期的に学校内の集めた話題を新聞として出さないといけないこと以外はフリーなんだよ。
だから結構な人数がいたりするんだ。
場合によってはお互いに手を取り合って1つの情報を集める事もあるって話だから・・・ある種、雑誌社で働いてるようなモノに近くなるって事で、生きた経験になるから学校側も推奨していたりするんだ。
・・・まあ、たまに行き過ぎて掲載中止させられる内容もあるらしいけど・・・」
「(一体、何を載せたんだ・・・)」
純は心の中でツッコみを入れてしまった。
「舞美ちゃんも言ってたじゃないか。
一度体験してみるのもアリだって。
それは・・・こういう何かしらの経験になるって分かっているからなんだよ」
「・・・なるほど・・・」
大木は何かを考え込む。
それは松本も一緒だった。
「勤も康太も、もし入りたい部活に悩んでいるんだったら、新聞部に体験に来てみるか?
慣れると割と楽しいぞ?」
「・・・うん、一応考えておくよ」
「僕も」
「純はどうする?」
「う~ん・・・俺は・・・」
その時。
「?」
「どうした?」
「あ、いや、なんでもない。
まだすぐには部活は決められないから、今度じっくり考えておくよ。
俺、ちょっと用事があるから先に帰るね?」
「おう、また明日な~」
「笹本君、明日は休みだよ」
「あ、そうだった。
じゃあ、明日どっか遊びに行こうぜ?」
「僕、行ってみたい所があるんだけど~?」
「ああ、それなら僕も。
一度、行ってみたかった場所があるんだよ」
「オッケイ。
じゃあ、その2つ、行ってみようぜー」
純が立ち去る中、笹本、大木、松本の3人は明日出掛ける場所の話で盛り上がるのだった。
純は教室を出て行き、下駄箱に向かいながらサポートと話し合っていた。
〔・・・久々ですか・・・約3週間ぶりでしょうか?〕
「(あの通知音って、お前にも聞こえたのか?)」
〔正確には感じた、といった感覚ですね。
ですが・・・これは間違いなく〕
「(うん。
たぶん・・・・・・クエストだ)」
【十時影 純 (クリス)】15才 人間・・・かな~?(進化)
レベル 1
HP 1 MP 1
STR 1
VIT 1
INT 1
RES 1
DEX 1
AGI 1
LUK 1
『マナ(情報体):レベル 1 』『波鋼:レベル 1 』『総量拡大:レベル 8 』
『魔法: 水、風 』




