147 新生活が大変だって事を改めて教えていただきました・・・。 いえ、気付かされた?
予定よりも早い段階から純の義理の姉。
白星美月と白星紅百葉は引っ越しの荷物を運んで純の家の前に訪れていた。
自分の家から1,2分の距離でしかない場所にあるにも関わらず、2人は楽しむように引っ越しの準備をして純の家に来ていた。
「・・・姉さん達、約束の日までちょっと早くない?」
これは純の偽らざる質問であり、気持ちだった。
約束の日である4月までまだ数日はあるが、姉達はそれよりも早くしていたからだった。
会う事自体は中学卒業後、純の本当の家である、十時影家へ引っ越しが済んで、住みだして少し経っているくらい。
本格的に住み出してからは、ほとんど来ていなかったが・・・。
「確かに・・・約束の日より早いかもしれないわね」
「うん・・・だけどね、純?」
「私達も4月から学校があるじゃない?
そうすると4月から引っ越しを始めてちゃ、ちょっと遅いのよ」
「こういうのは何事も早めにしておいた方が良い・・・」
〔それは確かにそうですね。
いつ、予期してない事態に巻き込まれるかわかりませんからね。
備えあれば憂いなしとは、まさにこの事ですね〕
「(またそんな諺まで覚えて・・・)」
「という事で、純には悪いんだけど・・・少しだけ早めの引っ越しに来ちゃった」
ごめんねと明るく謝りながら話しかける義理の長女の美月。
「・・・それじゃあ・・・お邪魔していいかな?」
少し長女に比べて、言葉が少なめだけど優しい次女、紅百葉。
「いや・・・まあ、そんな事ないけど・・・。
荷物ってそれで全部?」
純は姉達が背負っているボストンバッグやキャリーケースを見て質問。
「ううん。
まだ少し本格的に純の家に住むのなら必要な物があるけど・・・」
「これぐらいの距離だし。
一度、私達が住む部屋に置いてから少しずつ運ぼうかと」
そう言って紅百葉が指差したのは自分の家・・・白星家である。
「(そうだよな~・・・ってか、ここから見える距離にあるんだよな~・・・)」
〔引っ越しというより、近所の友達の家に少しだけ泊りに来た・・・という感じの方がしっくりきそうな距離感ですね〕
サポートの言葉に思わず納得して頷きそうになる純だった。
「純・・・それで・・・入っていいかしら?」
「・・・荷物置きたいし・・・」
「えっ?ああ、ごめん」
すぐに横を開けて、扉を開き入り易い状態を作った。
「(・・・妙にそわそわしている様な感じだけど・・・。
何かあったのかな?)」
〔・・・一応。
義理の姉弟とはいえ、他人の家に移り住むのですから少しは緊張する者ではないかと〕
「(あ、確かにそうか)」
純は自分が引き取られた時の心境を思い出し納得した。
急に慣れ親しんだ家ではなく。
別の他人の家に上がり込むのだから緊張するものだった。
純も当時は、緊張して今以上に畏まって接していた気がすると懐かしんでいた。
実際は、つい最近まで義理の家族から純は、よそよそしく感じられていたのだが当の本人は自覚していなかった。
〔(・・・まあ、純が思っているのとは若干違う可能性はありそうですが)〕
微かに流れる、普段の姉達と違うマナから、サポートは少しだけ別の考えを持っていた。
「(・・・いざ、ここまで来てみたけど・・・今思うと純の家に来るのって、最近まで無かったのよね)」
「(・・・これからは一緒に生活する・・・。
だけど、この前とは違う・・・)」
改めて、美月と紅百葉は純の家の全体を見る。
「「(これから一緒に住む・・・)」」
果たして2人にとってその言葉が何を意味しているのか・・・その時の姉達も、ハッキリとは分かっていなかった。
案の定・・・純は荷物運びを手伝わされた。
そして、第1の関門?に早速出くわそうとしていた。
「私達の部屋は・・・純の隣ね?」
「ん、異議なし」
十時影家は白星家よりも家が小さいとはいえ、その広さは十分にあった。
「いや、別にわざわざ近くの部屋にしなくても。
まだ他にも部屋はあるんだし、少し離れてもいいんじゃ・・・」
「「ここにします」」
「・・・」
何事もハッキリと決断したりする事がある、姉達のその潔さに、純は意見を言うのを止めた。
言ったってどうしようもないと、分かりきっているからだった。
「まあ、純も男の子だし・・・色々と私達に聞かせられない事もある・・・」
「大丈夫よ。
私達もそこは気を付けるつもりだし・・・」
「(何故か、俺の方が問題みたいな言い方されてるけど・・・。
まあ、一部あってるけど)」
〔たぶん、お姉さんが言いたいのはそういう事では〕
「(分かってるから訂正しないでくれ)」
2人は顔を少し赤らめながらも、純の顔を見る。
片や興味はあるけど・・・見守るように。
片や受け入れているが、どこかソワソワする様に・・・。
何となくサポートはマナの流れから気付いていた。
純はそこまでは気付いていないが、敢えてサポートはそこまでは説明しなかった。
「まあ、私達も家族だけど・・・そういうのは気まずいし・・・それとなく気を付けていきましょ?」
「うん。
これも、一緒に暮らすためのマナー・・・」
「一緒にって・・・前からずっと一緒だったでしょ?」
「そういう問題じゃないわよ」
「それはそれ・・・これはこれ」
姉達2人が力強く頷く。
「だったら、もう少し離れても」
「もう決めたの」
「今更、変える気はない」
・・・と、こうなっては純にはどうすることも出来なかった。
そして第2の関門?が出てくる。
ダイニング。
「・・・そういえば姉さん達って、料理ってできたっけ?」
「何言ってんのよ?
私達だってこれまで純が食べる食事、出してたじゃない?」
「うん、一応私達も料理はしてる」
「でも・・・ほとんど義母さんが作った料理をテーブルに運んでいただけだよね?」
「「・・・」」
(あれ?黙った?)
「わ、私達だって料理くらいできるわよ・・・」
若干声が上擦る長女。
「一応・・・盛り付けと味付けも立派な料理・・・」
純を見て言っているはずなのに、どこか遠くを見ているような次女。
「そ、そんな事言って、ホントは純も料理が出来ないのを誤魔化しているだけなんじゃないの?」
「私達がいないと思って、ラーメンとかコンビニ弁当ばかりで生活していくつもり・・・」
「はぁ~・・・やれやれ。
今日、私達が来るまで自炊せずに済ましてきたんでしょ~?」
「きっと、そう。
でも大丈夫よ。
お母さんほどじゃないけど、私達だって少しくらいは出来るし」
「そうそう。
これから少しずつ料理のスキルも磨いていけばいいしね」
「(それは、もはや・・・出来ないって言ってるも同然だよ、姉さん達・・・)」
2人は頷き合ってお互いをフォローしあっていた。
「純もインスタントや冷凍食品ばかりの生活は避けた・・・ほう・・・が・・・」
美月はキッチンにある料理と先ほどまで食事をしていたのだろう後を見て固まった。
「お父さんから生活費は貰っているといっても限度がある・・・し・・・」
同じく紅百葉も食事の後の流し台に置かれていた食器の後を見て固まった。
「えっ・・・純、自分で料理をしてたの?」
「え?・・・うん、まあ一応。
確かに姉さん達の言う通り、インスタントばかりじゃダメかなと思ってちょっとだけ・・・」
「・・・(美月姉さん)」
紅百葉が美月に目配せすると。
「(コクン)・・・純、ちょっとだけ待ってて」
「?」
「少しだけだから」
そういうと2人は、冷蔵庫の中、引き出し等、キッチンの周囲を調べた後、2人でコソコソと話し出した。
「(どういうこと?
これ・・・私達よりしっかり作れてるんじゃない?)」
そういうと美月は少し多めに作り置きしていた味噌汁の入った鍋のフタを開けて、中身を見てからそっと閉じた。
「(こっちの冷蔵庫にもちゃんとした作り置きがあった)」
紅百葉は冷蔵庫の中にあった、野菜多めの肉炒めと魚の煮物を発見。
美月と同じくそっと冷蔵庫を閉めて美月に合流して現在の話し合いになっていた。
「(これじゃあ、あの子が自分1人で生活できているって事じゃない)」
「(最大の弱点・・・。
純がほとんど料理をしないという予想からの、私達が代わりに作ってあげるというアドバンテージが無くなった)」
「(えっ、それじゃあ私達がココで一緒に生活しなくても大丈夫ってこと?)」
「(そもそも、私達があの子の部屋に入った時を思い出して?
もともと、あまりコレクションとなる物もない部屋だったから気付かなかったけど。
かなり整理整頓されてた)」
「(確かに・・・。
純の部屋が汚れてる事なんてほとんど見た事ないわよね?)」
「(コクン)(お母さんが純のいない間に片づけていたのかと思っていた)」
「(・・・ああ、そういえば・・・)」
「純の部屋?」
「そう・・・。
私達の部屋もそうだけど・・・お母さんが私達のいない間に掃除してるのかなって・・・?」
「う~ん・・・昔はそうだったわね~。
美月も紅百葉もそうだったけど・・・。
あなた達、自分で部屋の掃除を始めたのって中学生くらいから、だったじゃない。
それまでは週に1回はお母さんがやっていたのよ?
覚えてない?」
「え~?そうだったけ~?」
「昂輝と夏奈はまだ、自分でしているつもりでも結構汚れていたりして、私が代わりに掃除してあげてる事がほとんどよ?」
「あれ?純は?」
「あの子は・・・。
あまり私達を部屋に入れたくない感じかしら・・・。
まあ、居候という意識が強く根付いてしまっているからでしょうね。
だから、私が掃除をしなくても勝手に自分で綺麗に保とうと定期的に片づけているのよ。
久々にあの子の部屋に入って驚いたわよ。
まあ、多少年季が入って汚れてしまうのは仕方ないにしても・・・。
あの子の部屋・・・純が初めてココに居候を始めた時からほとんど汚れが無いのよ。
美月達と違って、物が少ないからなのか、使っている時に付く独特のシミ、使用感って言うのかしら?・・・がほとんど無かったのよ」
「でも、そこで過ごしてもいるんだし、埃とか・・・」
「それも自分で毎週しているからなのか、それとも週に何回かしているのかは知らないけど、清潔を保っていてね・・・。
あの部屋だけ、あなた達の部屋と比べて、とてもキレイなのよ・・・。
出来れば美月も・・・純の様に綺麗な部屋を保ってほしいわ・・・」
「ちゃんと綺麗にしてます~」
「今は、でしょ?」
「(という事は掃除も問題なし・・・)」
紅百葉は美月の話から、この項目でも自分達の必要性を失ってしまう。
「(じゃあ、洗濯は?
後、服とか下着とか)」
「(それも、さっきこのキッチンに来る前にチラッとだけ洗濯機がある場所を見た・・・。
それと、部屋のベランダも。
洗濯物が干されていたのが見えた。
たぶん、最低限はすべて出来る)」
「(ちょっと~、それじゃあ私達がココで生活する理由が・・・)」
「(大丈夫・・・)」
紅百葉が美月にそう断言した後、スッと純の方へと振り向いた。
「純・・・」
「?、なに?」
「純はこれから1人で生活していくとしても・・・料理とか掃除とか、ずっと継続していくのは大変」
「?、まあそうだね」
そして人差し指を顔の前で立てて純に言う紅百葉。
「そこで提案。
私達が純の生活をサポートしてあげる。
純もこれから高校生活が始まるけど・・・高校の最初って大変な事が多いはず」
「そうなの?」
知らないので純粋に聞いてしまう。
「そ、そうなのよ。
だって今までの友達と別々になっちゃうし」
〔純の場合、友達はいませんでしたけどね〕
「もしかしたら同じ学校のクラスメイトか知り合いが一緒かもしれないけど。
それだって高校生になったら、知り合いだって事を隠して初対面みたいな態度を取られたりするんだから」
〔純の場合、孤立無援も良い所でしたからね〕
「中学では親身に助けてくれた先生だって、高校ではどうすることも出来ないじゃない」
〔助けてくれたのは自分の為である可能性が高く、純を本当に気に掛ける教師はほとんどいませんでしたけどね〕
「(お前は俺を勇気付けたいのか?貶めたいのか?)」
姉の言う事に現実を言って訂正をしてくるサポートに純がついツッコミを入れてしまう。
「高校って全く違う学校から色んな人が入って来るから・・・。
別にそんなつもりは無くても、自然と周囲に気を使ってしまうものだしね」
「へ~・・・。
やっぱり姉さん達もそうだったの?」
「うん、大変だった・・・」
「そりゃそうよ。
まあ、相性の問題かもしれないけど・・・こう話しかけてくる人がね~・・・?」
「(コクン)どうしてか、男の子も多かった」
美月の視線に紅百葉が頷いて、当時の事を述べる。
「同性の・・・後で友達になった子もいるんだけど・・・。
大抵、最初ってとにかく皆手探りで話し合ったり、アプローチ掛けたりするじゃない?
そうしちゃうのは分かるんだけど・・・」
「・・・何故か、意味も無く、接近してきて慣れ慣れしくしてくる人もいたりする」
姉達に何があったのか・・・懐かしむ気持ちとは別に苦悶の表情を見せた。
「(なにがあったんだろう?)」
〔さあ?〕
ただ・・・姉達の口から時々``彼氏気取りはどうなの?``と言った話が聞こえてくる。
そんな2人見ていた純の姿に気付き、美月と紅百葉は現実に意識を戻した。
「コホン・・・とにかく。
私達も大変だったって事は・・・」
「当然、純も同じく大変な目に遭ったりするの」
「そうかな~?」
「今だけよ、そう気楽に思えるのは」
「始まったら、嫌でも分かってしまうもの」
「そこから帰って来て、あれもしないとこれもしないとなんて、気力が起きると思う?」
「疲れ果てて家に帰ってから、それでもしなくちゃいけないと思える?」
2人の言葉に純も真剣に考えだす。
「(・・・確かに。
中学の時は、帰ってから義母さんが料理とか作ってくれてたから、ふて寝して過ごしたりしても問題なかった。
でも、もし姉さん達が言う通りなら、全部自分でしなくちゃならないんだ」
〔冒険者として村や町には行きましたが・・・大抵は保存食のような物をいただいたりして生活をカバーしてもらっていましたからね~。
出来なくはないでしょうが・・・キープできるかというと・・・。
多少、不安が残りますか・・・〕
サポートも姉達2人の言葉には一理あると考えた。
「そうか・・・。
確かに姉さん達の言う通りだ。
ずっと自炊は出来ないと思って、一応、冷凍食品とかも買い置きはしていたけど・・・」
「それは間違ってないけど・・・。
気付くと、楽で美味しいって理由から、自然と料理を作らなくなっちゃうわよ?」
「純はまだまだ成長期、これからもっと大きくなるかもしれない。
そんな時に偏った食事ばかりじゃ体に良くない」
「だから・・・。
私達がココに住んで、純の代わりに料理を作ってあげようってわけ」
「私達もいずれは自分で料理が出来た方が良いと思っていた」
「?、それってウチじゃないとダメって事ない気がするんけど・・・?」
2人の説明につい疑問が浮かび尤もな事を言ってしまった純。
姉達は少し焦りながらも、純に必死に説得する。
「ああ、ほら一応、お母さん達も様子を見に来るかもしれないけど・・・」
「いつまでもお母さんがいないと料理も家事も出来ないってのは・・・ちょっと問題」
「だから、純には高校生活の間。
私達の生活力アップに付き合ってほしいのよ」
「・・・ダメかな?」
多少、我が儘で申し訳ないという気持ちもあるためか上目遣いの様に見てくる2人に、純は元気づける様に頷いて返した。
「そんな事ないよ。
姉さん達が言ってた事が本当なら、俺も最初の高校生活は大変で困ってたかもしれないし・・・。
それを姉さん達が助けてくれるなら嬉しいよ」
「・・・そう」
「良かった」
安堵した2人。
その安堵には色々な思いが混ざっていたが純には分からなかった。
〔まあ、純が思っている不安と、美月、紅百葉が思っている懸念は別だと思いますけどね〕
「(姉さん達には・・・やっぱり俺がいじめられてた事、知っているんだな・・・)」
〔心当たりでも?〕
「(うん・・・。
親戚とは別に、一応バレない様に顔を守るようにしてなるべく気付きにくいように避けていたんだけど・・・)」
〔ほぼ毎日、日常の様に振る舞われては・・・隠し通すのも限界がある、と〕
「(どっかで気付かれていたんだな~)」
純は心の中で姉達2人を心配させたことを謝った。
〔それにしても・・・学生生活ってのは大変なのですね〕
「(なにを今更)」
サポートの言葉に呆れてしまう。
「(1年間の間に色んな行事があるのが学校だよ?
テレビか何かで言ってたけど。
自分で色々なイベントに参加しない限りは、学校ほど盛りだくさんの行事を詰まった場所はそうそうないんだよ?)」
〔なるほど・・・学校自体が社会に出るための学習ですか・・・〕
サポートは純の言葉に改めて学校というモノの構造を少し学んだようだった。
「・・・それで、念のために聞いておきたいんだけど・・・姉さん達って料理の方は・・・?」
「「・・・」」
何故か純を見ずにお互いを目配せで見合う。
そして。
「それも含めてこれから覚えるのよ」
「家事スキル向上・・・。
今から楽しみ・・・」
〔これは・・・。
下手したらしばらく・・・純が料理をしなくちゃいけないか、料理の実験台になりそうですね〕
「ははは・・・」
乾いた笑いがキッチンにむなしく響いた。
【十時影 純 (クリス)】15才 人間・・・かな~?(進化)
レベル 1
HP 1 MP 1
STR 1
VIT 1
INT 1
RES 1
DEX 1
AGI 1
LUK 1
『マナ(情報体):レベル 1 』『波鋼:レベル 1 』『総量拡大:レベル 8 』
『魔法: 水、風 』




