表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
145/473

143 不安になる実績と得てきた信頼

「?」

〔クリス、どうされました?〕


 クリスは感覚的に通知の合図が来たのを感じ宙を見た。


「ステータスに知らせだ。

 なんだろう?」


 クリスはベッドに腰かけ半透明なボードを表示した。


 ここはクリスが泊っている宿。

 現在は領主の部屋での話し合いが終了して、民衆浴場のお風呂でサッパリして帰って来た所だった。


 開くと同時に目の前のステータスボードのログに表記されていたのは・・・。


「実績を・・・また、得たのか・・・」

〔・・・あまり嬉しそうじゃありませんね・・・〕


 クリスの言葉のニュアンスからそう受け取ったサポート。


〔一応、クリス専用の特殊な力ですよ?

 実績をたくさん得る事はクリス自身を強くする上で必要な事ではありませんか・・・〕

「そりゃあ・・・そうなんだけど・・・。

 でも・・・実績の名前って・・・あまり良いモノじゃなかった気がするし・・・」

〔そんな事はありませんよ。

 クリス自身が行動した、その結果、生まれ手に入ったものなのですから・・・〕

「そう言ったら聞こえはいいけど・・・でも、名前はどうにかならないの?」

〔無理ですね。

 勝手に付いてしまうものですから・・・。

 まあ、実績の名前なんて・・・ハッキリ言って、ネタですね〕

「ネタ!

 言っちゃった、ネタってハッキリ言っちゃった・・・。

 お前もそう思ってるんじゃないかよ!」


 クリスはサポートにツッコミを入れるほど、自分の得た特殊な力に何とも言えない気持ちがあった。

 必要な事だし、実際に有難いの事なのに・・・素直に喜べないこの気持ち。

 生き延びる上では必要な力なのに・・・素直に受け入れにくい気持ちだった。


〔まあこの際、ネタでも良いじゃないですか・・・。

 それよりどんな実績を得たのか見て見ましょう〕


 心なしかウキウキしているサポートの声を聞いたクリスは、ため息を吐きたくなる気持ちを乗せながらログから実績をタップして表示させた。


〈実績:良いトコ取り? を獲得しました。

    本当に存在、隠す気ある? を獲得しました。

    主人公?いえ、ヒロインです。 を獲得しました。

    止めて!私の為に争わないで! を獲得しました。

    死にぞこない を獲得しました。

    戦争の真っ只中で眠る、普通? を獲得しました。

    へへへ、あいつは最初から気に入らなかったんだ・・・ を獲得しました。


 総合:やっぱりヒロイン?

    最初に死ぬ三下役? を獲得しました〉


〔さて・・・どこからイジりますか?〕

「イジる!

 もはや、そこから前提として話すの?!」


 サポートは冷静に実績を見たうえで話を振った。

 果たして・・・これを振ったと言っていいのかクリスには疑問に思うしかない言葉だった。


〔先ず、実績の表記された順から言いますと・・・。

 確かに我々の行動は美味しいトコ取り言わざるを得ないでしょう。

 もはや狙ってないとできない芸当ですよ?・・・コレ?〕

「いや、たまたま皆が危ない所を救えたって事でしょ?

 だったらもっと素直に救世主的な扱いで・・・ねえ?」

〔そんな事私に言われましても・・・〕

「・・・どうしてこう・・・俺の実績は皮肉というか・・・斜めに見た考えになるんだよ」


 ガクッと肩と頭を落とすクリス。


〔ある意味、昔の純としての性格も反映されていたりするのかもしれませんね?〕

「昔の俺?」

〔はい・・・。

 イジメられていると、下手に目立たない様にしようという考えから、自分を否定的な目で見てしまったりするからではないでしょうか?

 そうした目線がどこか卑屈になってしまっているからでは?〕

「・・・・・・あああ~・・・」


 昔の自分を思い出し、そして今の自分も考えて、その傾向があるなと理解したクリス。


〔なかなか、染みついた考えを一朝一夕では外せませんし。

 塗り替えるにしても時間が掛かるでしょう。

 クリスが受けた数年分をたった2,3ヶ月で治すのは本格的なリハビリの様な事をしなくてはなりませんよ?〕

「いきなりは・・・難しいか・・・」

〔まあ、それでも・・・昔に比べて大分、明るくなったのではないでしょうか?

 私は昔のクリスを魂から断片的にしか判りませんが・・・周りの方々との会話や反応から、以前ほどの根暗な印象を持たれてはいないと思われますよ?〕

「・・・だと良いな~・・・」

〔まあ、その辺りはこれからも変化していくので気楽に・・・。

 さて・・・次は・・・。

 これはどうしようもありませんね。

 先ほどの良いトコ取りと同じく、生き延びて冒険者として旅して戦っていれば、イヤでも目立ってしまいますね〕

「・・・やっぱ、単純に見た目かな?」

〔そうでしょうね。

 種族で、体が小さい・・・あるいは何らかの理由で小さい姿なのでしたら多少説明すれば信じてもらえそうですが・・・。

 クリスの場合・・・本当に子供ですからね~。

 もし目立ちたくないのなら最初の町で上手く一定年齢までひっそりと暮らすか・・・。

 初めから冒険者なんて目立ってしまう仕事に就かないことが現実です〕

「夢を否定されてる?!

 世界を見てみたいってだけなのに・・・!?

 異世界に来たら世界見てみたいって思わない?!」

〔そんな事だから目立つ行動に繋がるんですよ〕

「あっ・・・」


 再びガックリと肩と頭を下げてしまったクリス。

 間髪入れずハッキリと正論でサポートに返されるので言い訳のしようも無かった。


〔まあ、その辺りは今となっては仕方ないでしょう。

 今回であった、あの変な笑いをする太った老人。

 彼には何らかの特殊な力と・・・何か面倒な存在がバックにいそうでしたからね〕

「向こうの神様、的な存在かな?」

〔そこまでは・・・ただ、何か繋がりはあると考えた方が自然ですね・・・。

 クリスの存在を知っているのはまだ、あの者だけだと思っておきたいです〕

「そうか・・・もしここで、襲撃されたら」

〔まだクリスには勝ち目はありませんね。

 例えクリスに戦う気が無くても、向こうはお構いなしですから・・・〕

「はあぁぁぁ・・・勘弁してほしいぃぃぃ・・・。

 俺はただ、別に正義のヒーローみたいに世界を守る勇者でも何でもないのに・・・」

〔取っている行動は、ほとんどその立ち位置ですけどね〕

「だったらさあ?

 何でこの実績なの?!」


 クリスは半透明なボードに表記された文字をつつく。


〔・・・クリスを巡って、美人な女性が次々と取り合う姿。

 一見するとギャルゲー?っと呼ばれるものの主人公ですね〕

「どこからそんな情報を・・・」


 クリスが知らない間に、またしてもサポートが地球で得たのだろうワードが飛んでくる。


〔しかし、考えてみてください?

 実力のある少女達がクリスを守って戦う。

 これってもはや向こうが勇者的、立ち位置ではないでしょうか?〕


 その言葉にクリスは腕を組んで難しい顔になる。


「う゛~ん・・・見方によっては・・・そう見えなくも・・・ない様な・・・・・・ある様な・・・」


 素直にそうだと認めたくない気持ちから言葉を濁すクリス。


〔ですから、この実績は間違っていないのでしょう。

 クリスがどう思おうと、あなたを巡って起きた事実から考えると・・・あなたは、ヒロインです!〕

「最後の部分・・・そう力強くハッキリ言わないでくれると・・・助かります」


 どんどんと落ち込んでいくクリス。

 自分がヒロインとは決して思わない。

 いや、思いたくはない・・・が、実際にはそう見えてしまう事が度々、起きてしまった。

 その結果がこの実績である。


「体か・・・この見た目が・・・そうさせるのか・・・」


 初めて・・・幼い体がこんな弊害を生むことに、特に精神的にダメージを与える事になるとは思わなかったクリス。

 プルプルと震える手を見ながら衝撃を受けていた。


 そんなクリスを無視する様に話を続けるサポート。


〔お次ですが・・・これは・・・あのメイドですね〕


 クリスもクラシカルな衣装に身を包んだメイドを思い出し、冷静になった。


「・・・あれは・・・本当に死にかけた」

〔結局、何者なのか探ることが出来ませんでしたね?〕

「それどころじゃなかったしな・・・」


 クリスはベッドに仰向けに倒れ込んで天井を見つめる。


「今戦っても・・・あの強さに追いつけるとはとても思えないし・・・」

〔次元が違い過ぎましたね・・・。

 生きているだけでも御の字です。

 指輪様様ですね〕


 サポートの言葉を聞いて、お風呂から上がり再び付け直した、右手人差し指に嵌めた壊れかけの指輪を見つめた。


「これがなければ最初の一撃でほとんど即死だったな・・・」

〔その後の何度も死んでいましたからね。

 身代わりになってくれたので助かりました〕

「・・・俺に残された物も・・・気付けば指輪とリュックだけになったな・・・。

 そうだリュック!」

〔クリス?〕


 クリスはこの宿に預かってもらっていたリュックへ近づいてまじまじと見た。


「これ、最初にこっちに来た時に遺跡で交換したサーニャってこのリュックなんだよ。

 返してあげなきゃ」

〔確か・・・ツェーゲンが魔界に向かうって話でしたね?〕

「うん、ついでに届けてもらおう・・・。

 本当は自分で返した方が良いと思うんだけど・・・そもそもどこにいるのか分からないし。

 それに・・・」


 クリスは未だ表示した状態のステータスボードを見た。


「クエストがいつ、どんな場所を指すのか分からないし・・・」

〔・・・そういえば、まだ宝石についてと・・・彼らの封印された先生を助け出していませんからね〕

「・・・その辺りについても・・・明日話すのかな?」

〔おそらくは・・・〕


 クリスは再びリュックを見つめ、当時を思い出し少しだけ笑った。


「ラーナ、サーニャ、ダルトさん・・・。

 皆元気にしてるかな~?」

〔元気ですよ・・・きっと・・・〕

「うん・・・」


 クリスはリュックの汚れをチェックして払落し、テーブルの上に置いた。


〔・・・そして次は・・・〕


 サポートの言葉で話が戻った事に気付く。


「これ・・・完全に悪役だよね?」

〔小物、とも言えますね〕

「あの存在は世界にとって重要だったって事かな?」

〔そこまでは分かりません。

 ただ・・・どういった理由でも結果的には、相容れなかったかもしれません。

 私達に・・・シェイミ―に危害を加えようとしていた以上。

 無視する事は出来ませんでしたから・・・〕

「・・・そっか・・・。

 しっかし、何でこのセリフ?」


 気持ちを切り替えて実績の名前に喰い付くクリス。


「あの状況なら・・・そう言えなくもないけど・・・。

 ただ戦っただけでしょ?

 何もここまで嫌っていたわけじゃないし・・・」

〔いじめっ子が、ちょっと気に入らない子をシメる時ってどんな気持ちですか?〕

「・・・どうしたの?突然?」

〔いえ・・・。

 気に入らないから、とにかく殴ったり、なんなりでちょっかいを掛けようとするのではないかと思いまして・・・〕

「え?・・・それって・・・俺が掛ける立場なの・・・!?」

〔何か重要な存在だったモノを自分の気持ちで倒してしまっては・・・〕

「・・・そこまで、そんな見方で解釈しちゃうの?これ?」

〔・・・〕


 あまりの事に呆れかえるクリス。


「ねえ?

 これって・・・本当に俺のための力なの?」

〔・・・・・・・・・のはずです〕


 かなり悩んだ末、回答したサポート。


「・・・」


 それほどサポートも自信が持てない今回の実績獲得だった。



 色々とツッコミどころが満載の実績紹介から明けて、次の日・・・。



「概ねは昨日の話し合いである程度はまとまっている。

 これから話すのは今後についてだが・・・」


 そう切り出して、バーデンがトウジロウ達の方を見た。


「またどこか面白そうな場所に向かうとすっか・・・」

「先生?

 私達の道場の方は・・・?」

「一度、帰った方が宜しいかと」

「あまり勝ってを言うようですと、はっ倒してでも連れて帰りますよ?」

「わ、わ~ったよ・・・ったく~。

 怖えなあ、おい」


 トウジロウは慄きながら弟子達の言葉に同意した。


「私達は元々住んでいた首都へ戻ります。

 今回の事の顛末を見ておきたいので・・・」

「うん・・・王様もそこまでひどい判決は下さないと思う」

「むしろ、使える駒として馬車ウマの様に働かせたりしてな」

「奉仕活動って可能性なら・・・ありそうですね」

「ここまで大きな問題を起こしたんだし・・・妥当な所じゃない?」


 イスカ達は首都へ帰り、ゲネイストの処罰を見届ける様だった。


「私達も帰りましょうか」

「そうですね。

 流石に・・・あの子達もずっと僕達がいなくて寂しい思いをしていたかもしれませんし」

「ふふふ・・・良いお土産と、自慢が出来る・・・」

「あまり力を見せつけてイジメるなよ?

 まだまだ成長途中の子達なんだから・・・」


 テス達も自分の住まいへと帰ると報告。


「もともと我々も緊急で来たからな。

 一度教会本部に戻る予定だった」

「はあ~・・・大変な仕事だった~」

「生き残ったのが奇跡です~」


 ボールド達も自分の所属する教会へと帰還する様子。


 そして・・・。


「君はどうするんだい?」


 バーデンがクリスへと視線を向けた。

 釣られるように全員の視線が集まる。


「・・・まだちょっと決めかねてます。

 ちょっと個人的な事もあるので・・・」


 言葉を濁すクリス。


「そうか・・・。

 まあ、無理に急ぐこともあるまい。

 君がしばらくこの町に居たいというなら、私の方で何かしらの援助はさせてもらうつもりだよ?」

「いえ、別にそこまでは」

「はっはっはっ・・・遠慮しないでくれ。

 君には助けられてばかりだからな・・・」

「そうよ~クリスちゃん?

 ここであなたが、困っちゃうと・・・私達の方がもっと困っちゃうの・・・。

 ここは私達を助けるためだと思って・・・ね?」


 可愛くウインクをして見せるレナ―シェ。


「は・・・はあ」


 とりあえず頷いておくクリス。


「あ、そうだ」

「?どうしたの?」


 クリスは昨日、サポートとの話し合いの中で出てきた事を思いだした。

 そして、首に下げたペンダントを取り出すとツェーゲン達に渡そうと歩み寄った。


「これ・・・渡しておきます」

「・・・これは・・・!」

「はい・・・。

 前に見せた、宝石の入ったペンダントです。

 水晶の中の人を助けようとしているのならツェーゲンさん達に渡した方が良いのかなって・・・」

「・・・お母さん」


 シャーリィがクリスの言葉からふと封印された育ての親を思い出してしまった。


「・・・ありがとう。

 ・・・でも受け取れない」

「え?どうして、ツェーゲン?」

「彼に宝石・・・このペンダントが渡った事には意味がある気がする。

 だから・・・。

 寧ろ・・・これを君に渡した方が良いと、俺は思う」


 そう言って袋を懐から取り出したツェーゲン。


「これは・・・あの城で盗まれた宝石だ。

 これで・・・今、我々の探していた宝石は9つ全部揃ったことになる」


 そう言ってツェーゲンが袋から宝石を取り出した時。

 それぞれの宝石が輝きだした。


 赤、橙、紫、白・・・4つの宝石がクリスの持つペンダントへ吸い込まれるように消えていった。


 そしてペンダントの中の花びらがそれぞれの色を輝かせて花を彩っていた。


 その時。


「ん?」

「どうした?」


 頭の中に通知音がしたクリス。


「(まさか・・・)

 ちょ、ちょっと失礼します!」

「え?」

「どうしたの、クリス君?」


 クリスは部屋を飛び出し、誰もいない個室へと入った。

 そして通知音がした自身のステータスボードを開ける。


「・・・やっぱり・・・」

〔・・・揃ったことで、目的が表れたようですね〕


 クリスとサポートはクエストタブを開いて見ていた。



 【緊急クエスト】


 宝石を用いて封印された者を解放せよ



「(・・・さて、どう説明したもんか・・・)」

〔困りましたね・・・。

 いっそ正直に話してみますか?〕

「(そんな事、どうやって信じてもらえと?)」

〔・・・ステータスボード・・・は見えていない可能性がありましたね・・・〕

「(う~ん・・・どうしよう?)」


「クリス君、ここにいるの?」


 コンコンとノックをしてテスが入って来た。

 続いてイスカとシェイミ―も入って来た。


「どうしたのよ、クリス?

 何か大事な事?」

「・・・だったら、私達にも教えて?

 もしかしたら力になれるかもしれない・・・」

「え・・・あ、う~ん・・・」


 困り、どうしたものかと悩むクリス。


〔クリス・・・ココは彼女達を信じて、行き当たりばったりでもいいので言ってみましょう〕


 サポートの意見は尤もだった。

 このまま何も言えない状態だと、心配してきてくれた彼女達を困らせる事になってしまう。


「(・・・ええい、こうなったらヤケだ)」


 クリスは意を決して、打ち明ける。


「信じられないかもしれないけど・・・信じてほしいんだ。

 ただ・・・自分でも確信があるわけじゃないけど・・・」


 クエストボードに記載されたことは、これまで現象として起こった事しかない。

 しかし・・・必ずしもそれが良い方向に運んでくれるという保証もない。

 だからクリスにはそれを良い切れるほど自信が無かった。


 それでも打ち明ける以上、ここで引き下がるつもりはなかった。


「さっき、宝石がこのペンダントに集まった時に何かを聞いた気がしたんだ。

 それで・・・少しだけ1人になって確かめようと思ったんだ」

「・・・何を聞いたの?」

「・・・あのミカルズの塔で見た水晶に入った女の人。

 それを救えるんじゃないかっていう・・・知らせ?と言えばいいのか音?と言えばいいのか・・・」


 肝心な部分を濁してしまう。

 しかし、ココをどういったら信じてもらえるのか。

 そこを正直にすべて話すべきなのか悩むクリス。


「・・・助けられるの?」


 イスカがクリスの言葉を聞いて確認を取る。


「分からない・・・だけど・・・そんな気がする・・・」

「・・・」


 イスカはテスとシェイミ―を見た。


「・・・分かったわ」

「ええ」


 何を言いたいのか阿吽の呼吸で理解できたシェイミ―とテスも賛同しクリスに声を掛ける。


「クリス、お父様達の所へ行きましょう?」

「クリス君が聞いた知らせについては、あなた自身も分からない。

 だけど・・・何んとなく、そう思わせる何かがあったのよね?」

「う、うん。

 ・・・信じてもらうのは難しいと思うけど・・・」

「大丈夫」

「そうよ、だってクリスが言うんだもん」

「あなたが言った事なら、私達は信じるよ?

 だから・・・一緒に皆の所に戻りましょ?」


 そう言って近づき手を差し伸べるテス。


「・・・はい」


 クリスはその手を取って部屋を出て行った。



「・・・とても信じられない・・・けど」

「その子が言ってる事が嘘とは思いたくないし~」

「・・・行ってみるか・・・」

「確かめる・・・」

「・・・坊主が言ってんだから、行ってみたらいいんじゃねえか?

 どうせ、ここで話し合っても埒なんて明かねえんだからよお?」

「・・・行ってみよう」


 そうして全員が納得して出掛ける準備を始めるために、それぞれの荷物を取りに戻って行く。


「・・・君に出会ってから、俺達の目的が急展開ばかりだな」

「・・・すみません」

「はは・・・気にしないでくれ。

 寧ろ、いい知らせばかりでこちらとして感謝しかないさ」

「(ツェーゲンが珍しく笑ったよ?)」

「(こんな場面、滅多に見られませんわね~)」

「(あいつもあれくらい素直ならな~)」

「(そんなのツェーゲン様じゃありませんよ~)」

「何か言ったか、お前達?」


 ビクッと肩を跳ねた者達はスクッと綺麗に立ち上がり、そそくさと出て行った。


「・・・全く・・・」

「それではツェーゲン様」

「私達も準備してまいります」

「ああ。すまない」


「ははははは・・・昨日の今日で屋敷の中は随分と賑やかになったよ」

「ねえねえ、お父様?

 私も付いて行っていい?」

「ダメよシェイミ―。

 あなたはココでお留守番」

「ええ~」


「あ、僕もちょっと宿に戻って荷物を取りに行ってきます」

「ああ、了解した。

 それじゃあ、屋敷の玄関ホールで集合するよう皆に私の方から伝えておくよ」

「ありがとうございます。

 それじゃあ・・・」


 クリスは大部屋を出て行き、宿へ戻ってリュックを取りに行った。


「あれ?クリス君お帰り~。

 今日はどうしたのまたどこかに探検?」


 宿を出て行く時、たまたま奥の厨房からこの宿の娘の女の子が話しかけてきた。


「はい。

 ちょっとミカルズの塔に用事があって」

「???ミカルズの塔?

 君って冒険者だけど・・・仮登録だよね?」

「?そうですけど?」

「そうですけどって・・・君、あそこは中級以上のランクの冒険者しか入れないのよ?

 どうして仮登録の君が、そこへ行こうとしてるの?

 行く前に門番の人達に止められちゃうわよ?」

「?・・・ああ!

 大丈夫です。

 一応、ギルド長から特別に入るための許可証は貰っているので・・・」

「えっ・・・あれ・・・?

 そうだっけ・・・?

 いや、でも・・・何で?」


 混乱する看板娘を置き去りに宿を出て行こうとするクリス。


「あ、ちょっと待って!

 その荷物を持っていくって事は・・・ココを出て行くつもりなの?」

「え?いえ、まだわかりませんけど・・・」

「・・・分かった。

 一応、もしまだ泊って行くなら、あの部屋は開けておくようお母さんとお父さんに言っておくね?」

「はい、ありがとうございます。

 それじゃあ・・・行ってきま~す!」

「・・・」


 元気に走って行く子供の背中を微笑ましそうに見つめる看板娘。


「色々と謎が多い子供だけど・・・あの子なら問題ないか・・・。

 テスさん達も、あの子を気に掛けているようだし」


 そう言って、もう一度厨房へと入って行くのだった。







 【クリス】5才 人間(変化)

 レベル 301

 HP 13672 MP 14983

 STR 4429

 VIT 4318

 INT 4197

 RES 4265

 DEX 4351

 AGI 4512

 LUK 1457

『マナ性質:レベル MAX 10 』『強靭:レベル MAX 10 』『総量拡大:レベル 5 』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ