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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
144/473

142 閉幕

 首都アルヴォークでの騒動が起きた少し後の事。


 とある空間


「にゅう・・・にゅぐぐぐぐぐ」


 騒動の事を思い出しプルプルと震える小太り老人。


「まさか・・・あ奴があそこまで強いとは予想外でしたぞ・・・。

 おかげで私がコテンパンにされてしまいました・・・。

 あのような屈辱・・・放っておくわけには行きません。

 必ず奴を探し出して、用済みと判断した時には私自ら、本気でお相手して・・・にゅっぷぷぷぷぷ」


 想像してその怒りを楽しみへと変えていく老人。


「結果はどうなった?」


 そこへどこからともなく紅い龍の仮面を被った存在が現れた。

 声は男だが、本当に男なのかは不明。


「こ、これはこれは主様・・・。

 はは~っ」


 大仰に芝居がかって頭を下げる老人。

 そしてガバッと顔を上げて興奮したように説明する。


「ワタクシ、やり遂げて見せましたぞ!

 しっかりと鐘を鳴らしたことをこの耳で聞き届け。

 その集合体が降臨したことを確認したしましたぞ」

「・・・よくやった」


 短くもしっかりと老人を褒める紅い仮面。


「あ・・・ありがとうございます・・・!」


 感動のあまり少し涙を浮かべる老人。


「では・・・これで因子が現われ・・・」

「はい・・・世界は更に上へと押し上げられます」

「うむ・・・。

 私が連れて来いと言った子供は・・・?」

「ははっ、あの場にて因子・・・黒を発動いたしましたぞ?」

「そうか・・・」


 どこか嬉しそうに数回、頷く紅い仮面。


「しかい・・・予期せぬ事態も・・・。

 連れ去った子供の姉が・・・白を発動させました」

「なんだと・・・?

 ・・・・・・これも因果という事なのか・・・」


 老人の言葉に顎に手をやり考え出す紅い仮面。


「・・・どうやら目的に1つは成功したようだな?」


 そう言って黒い靄を纏った男が現れた。

 足元から浮かび出てくる靄はまるで浸食をするような、そんな印象を彷彿させるものだった。


「・・・貴様の手伝いのおかげでもある。

 助かった・・・」

「気にするな。

 ・・・それに、主に動いたのは俺ではない。

 俺は邪魔な加護持ちを始末していただけだ。

 まさか・・・その結果がこうも早く成果に繋がるとは思わなかったが・・・」

「予想ではもう少しかかるつもりだったのですか?」


 老人は男に聞く。


「そうだ。

 俺の予想では・・・早くとも、後10年ほどは掛かると思っていた。

 まさか・・・たった5年で終わらせることになるとは・・・意外だったぞ?」

「・・・そちらの情報が役に立った。

 しかし・・・ここからが大変だぞ?」


 紅い仮面は2人に改めて真剣になって話しかける。


「・・・この世界が中心軸の1つであることは間違いないのだな?」

「それは確かだ・・・だが・・・」

「主様が懸念される通り・・・システンビオーネ、でしたかな?

 この世界から主様達の目的を果たさせるのは困難かと・・・。

 何より情報がありません。

 ・・・ですので」

「ウム・・・。

 ここで一度ココを離れ別の世界へと向かおうと思う」


 紅い仮面は男に事情を説明した。


「ここで見つかりづらいのなら別の世界で代用になるものを見つけてくればよい。

 この世界は我々の主が生み出し、作り出した世界の数々。

 ならば・・・」

「そこから、探す方が手っ取り早い・・・か。

 なるほど・・・。

 それで?・・・俺はどうすればいい?」

「我が主と貴様の主は求めているモノが違うだろう?

 ならば、ここで一時、解散としよう。

 どうせ我々の主が求める所には似た傾向の部分もある。

 いずれ再び手を取り合う事になるだろう」

「・・・確かにな」


 男は納得して頷いた。


「では・・・主様」

「ああ・・・。

 私達はココを一度、空ける。

 この世界で何が起ころうともすぐには手伝えんから、その事は肝に銘じておいてくれ」

「承知した」

「ではな・・・」


 紅い仮面がまたもどこかへと消えていく。


「にょほほほほほ・・・では、失礼いたします」


 小太り老人も追いかける様に消えていった。


「・・・」


 消えた2人見送った男は少し考える。


「(確かに・・・奴らの言う通りか・・・。

 この世界で探すより・・・代用品を集めた方が、確実性は増す。

 しかし・・・そうなると)」


 顎に手を乗せていた指を離し、口に出して言った。


「替えも含めていくつか集めておいた方が良いな・・・」


 男は踵を返す。


「ならば・・・私も、奴らとは違う世界へ向かうとしようか・・・」


 男は靄だけを残し先に消えた。

 靄も後を追いかける様に徐々に消えていった。




 アルヴォークでの騒動が無事解決に終わり。

 町の手前で待機していた高ランクの冒険者達にトウジロウ達が説明を終え、クレフーテの町へと帰還した。


 召喚獣を呼んで飛んで帰って来たのだが、メルム達の器とレベルが上がった影響か、その効果は絶大だった。


 ほとんど日の出と共に出発しアルヴォークに昼頃に着いた行きに対して。

 帰りの飛行は速く、夕方には帰って来ることが出来た。


 念のために町や城に残党がいないか見て回ったが何者かによって残りのモンスター達は掃討されていた。


 元国王で、この戦争の首謀者であるゲネイスト・メル・バル。

 大人しくイスカ達の指示に従った。

 待機組の冒険者に渡す際も大人しく従い・・・。


「この騒動の責任は取らねばならん。

 私の勝手な欲望で、民達には迷惑をかけたからな」


 ゲネイストが本気を出せば、イスカ達数人か、クリスが居なければ簡単に脱走する事も可能だが・・・本人の強い意志で、イスカ達が所属する国の本国の国王の下へと輸送されることになった。


 イスカ達はひとまずクレフーテの町へ報告に向かった後、首都へ帰還する事になる。


 そのため輸送は、冒険者チームの責任者へ引き渡し運んでもらう事になった。

 勇者達やそれに賛同した冒険者達でない事からメルム達も安心だという話だった。


 そして町の入口へと帰還し召喚獣から降り立った瞬間。


「シェイミ―、キルシュ!」


 2人の母親のレナ―シェが走って来て、我が子を抱きしめた。


「・・・良かった~。

 2人が無事で・・・ケガはない?

 どこか体の調子が悪い所は?」

「お、お母様、大丈夫です」

「お母様・・・ただいま」


 母親の胸に顔を埋められるように抱きしめられ、シェイミ―が照れくさくなって恥ずかしがり。

 キルシュは素直に抱きしめ返し、甘えていた。


「おお・・・(ごくっ)」


 周囲の男達からそんな言葉と生唾を飲みこむ音が聞こえてくる。


「・・・いいな~」

「う・・・羨ましい・・・」


 クリス達の中から若干2名、その光景に興奮した色を乗せていたが・・・。


「う゛う゛ん」

「天誅・・・」


 咳払いされた後に頭を殴られ、悶絶する大人が2名いた。


「・・・クリス君」

「・・・ん」


 両手を広げ笑顔のテスと、若干恥ずかしそうにしながらも満更でもないイスカ。

 2人がクリスを見て両手を広げて待っていた。


「・・・」


 どうしたらいいのか再び固まるクリス。


 しかし。


「・・・」


 スッと横からシェイミ―が現われてクリスの前に立った。


 両者の間に無言の視線が交わされた。


「・・・なにあれ?」

「さあ~?・・・ふふん、なんなのかしらね~?」

「ウワッと・・・」


 後ろからガバッとクリスに抱き着くクラル。


「「「あっ!」」」

「どうやら彼女達は話があるようですし。

 わたくしだけで~、先に領主の屋敷に行ってましょうか~?」

「え?そうなんですか?」

「うん、そうそう~」


 クラルは強引にクリスの手を引いて領主の屋敷へと向かった。


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ~!」

「今のはズルいですよ?」

「うんうん・・・」


 3人もクリス達を追って屋敷へと向かった。


「それじゃあ奥様。

 キルシュ君も連れてお屋敷で・・・」

「・・・ええ、そうね。

 さ・・・行きましょ?」

「はい!」


 メルムが場を仕切って話しかけ、キルシュは母と手を繋いで家へと帰って行ったのだった。




「・・・となりました。

 信じられませんが、今のが私達が見た一部始終です」


 黙って聞いていたのはクレフーテの町の領主。

 シェイミ―達の父親、バーデン・H・フロスタンと妻のレナ―シェ。

 他にも護衛騎士筆頭のビスガルとリンジー。

 更に領主の護衛にあたっていた冒険者``夜明けのメーテ``から、マイク、キャシル、トルカ、コールディの4人と・・・。

 そして最後にこのクレフーテの町の冒険者ギルドのギルド長、セルリアが説明を受けていた。


「何とも・・・凄まじい話だ。

 予想外の連続に・・・未知の存在・・・か・・・」

「シェイミ―ちゃん、キルシュちゃん。

 2人共、どこか体に異変はない?

 体調が悪くなったりしてない?」

「大丈夫よお母様」

「うん。

 最初は気分悪かったような気がするけど・・・今は問題ないよ?」

「しかし・・・手の甲に何か浮かび出したんだろう?

 本当に何ともなかったのかい?」

「う~ん・・・そんな事言われても~」

「あんまり覚えてないよ~」


 父親としても気になるために質問するが2人にはその時の状況をあまり覚えていなかった。


「・・・自覚が無いのか・・・」

「それじゃあ、今はどうしようもありませんね。

 念のために私の方でも調べておきます」

「お願いね~?セルリアちゃん」


 そうしてシェイミ―とキルシュの話は打ち切った。


「そして・・・肝心のその老人の事だが・・・」

「残念ながら逃げられてしましました」

「うん・・・それ所じゃなかったし・・・」

「私達も予想外の相手に手が一杯一杯でしたから・・・。

 申し訳ありません」

「あ、いや責めているわけでは無いんだ。

 気を悪くしたなら謝る。

 ・・・しかし・・・そうなると今後、どのような事をしでかすのか・・・」


 悩むバーデン。

 しかし・・・。


「案外大人しくなるんじゃねえか?」

「えっ・・・先生・・・?!」


 気楽そうに答えるトウジロウ。


「どうしてそう思うのだ?」


 ツェーゲンも気になり質問した。


「奴にとっては、あの化け物も何らかの目的の1つだったようでな・・・。

 だが暴走したのかどうかは知らねえが、奴の思惑通りには上手く事は運ばなかったようだぜ?

 もし、何かしらの目的が成功してるのだとしたら、しばらくは大人しくなるか。

 あるいはもっと大々的に行動を取るはずだ。

 今日起きた事件だが・・・あの手の事がそうそう簡単に起こせるわけがねえ。

 もし起こせるのだとしたら・・・」

「事前にもっと入念に下準備しているはず・・・か」

「そういうこった」

「セルリア君に念のためにギルド間で注意を呼び掛けてもらうが・・・」


 視線をセルリアにバーデンが送ると頷いて答えた。


「もし計画が次の段階にうまく運んでいると仮定してだ・・・。

 その者が次に起こすとしたらどんな事をする?」

「さあな~・・・奴はわざとにふざけた行動を取っているように思えたが・・・目的自体はしっかりしていそうだった」

「(・・・あれがわざと?)」

「(ありえないでしょ。

 絶対素だよ)」

「(私もそう思う)」


 一部女性陣から否定的な意見が聞こえてくるが無視するトウジロウ。


「もし、今回のが奴にとって完全に成功したと判断するのなら・・・。

 次の手も同じように成功させなくては意味がないだろう。

 ここですぐに出ないのなら・・・まだ、慎重に事を運ぶしかない段階のはずだ。

 焦って失敗に終われば、せっかく今回の様な時間のかかる大掛かり計画も水の泡になってしまうからな・・・」

「・・・つまり。

 心配するだけ無駄・・・と?」


 バーデンの考えに頷いて答えたトウジロウ。


「気苦労ばかりが増えて、こっちの精神がすり減るだけだからな」

「しかし・・・。

 その様な気楽な考えで良いモノなのでしょうか?」


 リンジーが尤もな疑問を投げかけた。


「あまりに構い過ぎて、奴の策に嵌って翻弄されて終わりになったら・・・それこそ目も当てられん」

「確かに・・・」


 ビスガルは納得の声を出す。


 しかし、女性陣からは納得ではなく、あの妙な笑い声が降りかかってくるイメージが湧いてしまい、怒りが募っていく。


「うわ~・・・サイ、アク!」

「・・・殴り飛ばしたかった」

「・・・あの癇に障る笑い方・・・出来なくしてやりたいですわ~。

 ウフフフフフフ・・・」


「・・・オホン。

 とまあ、そんな具合だ。

 奴に子馬鹿されて終わるのが落ちなら、警戒はしつつも今、出来る事をする以外手はねえってこった」


 トウジロウが話をまとめた。


「ふむ・・・分かっていることが少ない以上。

 先ずは消えていった老人の足取りから探すしかあるまい。

 ・・・皆、ご苦労だった。

 今日は疲れているだろう。

 ひとまず今日の会議は終了し休息してくれ。

 また明日、ここに集まって、今後の事で話を聞かせてほしい。

 おそらく他の者達にも予定がある。

 明日、明後日で私の方でも話をまとめたいのでな。

 すまないがそれまで付き合ってほしい」


 頭を下げたバーデン。

 それにそれぞれが納得して頷いたりしていた。


「以上、解散だ」


 それぞれが解放され、思い思い喋りながら出て行こうとした。


「・・・それで、イルミナ達はどうするの?」

「そうっすね~。

 まあ本来なら私達も王様と一緒で裁きを受ける身なんすっけど・・・」

「あの王が1人で全部被る気のようだからな・・・。

 とりあえずは生活をするために働く事から始めないと・・・」

「それって・・・私達もそうか・・・」


 イルミナとエレイズの話を聞いていたシャーリィが仲間に言いだした。


「・・・私達もアジトの後始末をしてきましたし・・・。

 またどこかで生活するにしても、それなりの支度を始めないといけませんねえ・・・」


 ノイシュがその言葉に、これからの事を考え出した。


「だったら!」


 突然、シェイミ―が乗り出し、腰に手を当て言い放った。


「あなた達、私達の護衛として働いて?」

「え?」

「シェイミ―様?」


 突然の事にビスガルとリンジーが戸惑う。


「困っているみたいだし。

 ここで働くなら私達の護衛として付いてくれた方が良いじゃない?」


 ビスガル達に説明するシェイミ―。


「しかし」

「ビスガルもリンジーも考えて?

 私はともかく、キルシュが狙われたのよ?

 もし、その時に今回のようにあなた達がいたとしても数で負けてしまう可能性だってあるじゃない。

 実力が上だってある。

 だったら、少しでも見知っていて力がある人達を雇うのは間違ってないでしょ?」

「それは・・・その通りですが・・・」


 リンジーはシェイミ―のアイディアを否定できなかった。

 自分もいながら、更には高ランクの冒険者も傍にいながら攫われてしまったからだ。


「それにビスガルもリンジーも、他の護衛騎士達もお父様やお母様。

 他にも町の住民達まで守って動いたりすることもあるじゃない?

 そんな時に私達だけを守るのは難しいでしょ?」

「・・・・・・」


 バーデンは静かに娘の話を聞いて思案する。


 そして・・・。


「娘はそう言っているが・・・君達の方はどうなんだい?」

「あなた・・・?」


 バーデンはイルミナ達に視線を向けて問いかけた。


「マイク君達は今回の緊急のために私達の護衛に付いていた。

 ビスガルもリンジーも、領主である私と、妻の護衛を最優先に傍についていた。

 だが・・・皆さんの話から、その心配もある程度は退けたと判断していいだろう」


 バーデンは少しずつツェーゲン達の側へと歩んでいく。


「もし・・・君達さえよければ・・・娘だけじゃない。

 私の我が儘ですまないが・・・護衛の任を引き受けてはくれないだろうか?」

「あなた・・・」


 レナ―シェの言いたいことは分かるバーデン。

 攫った一味を逆に引き入れる危険性も僅かにある。

 しかし、自分の子供達が懐き。

 そして子供達を守るために命を懸けてくれた相手にバーデンなりに敬意を表したかったのだ。


「君達にも都合があるかもしれない。

 無理にとは言わないが・・・」

「「「・・・」」」


 全員がそれぞれ見合わせる。


「・・・」

「ツェーゲン・・・」


 シャーリィがバーデンから視線を外さずジッと顔を見つめる。


 ・・・そして。


 スッとツェーゲンはその場で膝を付いて頭を下げた。


「こちらからの都合で申し訳ありませんが・・・。

 もし・・・許していただけるのなら・・・俺達の仲間の保護も兼ねてここで働かせてはもらえないだろうか?」

「ツェーゲン・・・」

「私がその分、あなた方に仕えるとしましょう。

 ですから」

「ツェーゲン様!」


 スッと今度はバーデンからツェーゲンへ膝と付き、手を差し伸べた。


「そこまで畏まらなくて構わない。

 君達の事情も理解している。

 その上での私からのお願いなのだ。

 どうか顔を上げて、立ってくれないか?」

「・・・」


 バーデンが立ち上がった後、その手を取ってツェーゲンも立ち上がった。


「君達の仲間に戦闘向きでない者も私の方で雇う事を約束する」

「・・・」


 真剣に、真摯に相手の目を見て話すバーデン。


「・・・ありがとう」


 ツェーゲンの言葉にシャーリィ、クラル、ヤハト、サック、ベーデル、ノイシュ、トリシュがそれぞれ安堵した気持ちで微笑んだ。


「ま・・・ココに住むのも悪くないんじゃない?」

「私達の部屋って~、あるのよね~?

 出来れば~・・・個室で」

「おいおい2人共、我が儘を言うなっての・・・」

「・・・感謝します・・・」

「私達もよろしいのでしょうか?」

「雇っていただけるのですから・・・受け入れて頑張って行きましょう・・・」

「はぁ~・・・。

 もしかしたらあたし達、この先しばらく野宿生活なんじゃないかってヒヤヒヤしましたよ・・・」


 それぞれが口々に言いながらも明るい声で、これからの生活を喜んでいた。


「お前達・・・」

「はっはっはっはっは・・・構わない。

 この屋敷は、かなり大きくてな。

 空き部屋はまだまだあるんだ。

 個室も十分に余っている、好きな場所を使ってくれ」

「イヤッタ~!!」


 シャーリィが諸手を上げて素直に喜んだ。


「それで・・・君達はどうするんだい?」


 イルミナとエレイズに顔を向けて、話を振ったバーデン。


「いいでしょ?

 イルミナお姉ちゃん、エレイズ・・・」


 シェイミ―の不安が入り混じった顔を見た2人。


「・・・エレイズがどうするのかは知らないっすが。

 私は、シェイミ―とキルシュの護衛に付くつもりっすよ?」

「・・・ホント!」


 どんどんと分かり易く明るくなるシェイミ―の表情。


「いちいち僕をのけ者にするやり方は止めてほしい。

 僕も子供達の護衛に付くつもりだ」

「・・・ホント?エレイズ?」

「だから、どうして僕は呼び捨てなんだ」


 キルシュがエレイズの側に近づいて聞いた質問に納得いかないと抗議する軽口が出てきた。


 それを見ていたバーデンは頷き、言葉を発する。


「決まりだ。

 君達はこれから私達の護衛。

 主にシェイミ―とキルシュの護衛任務に就いてもらう事にしてもらう。

 これからよろしく頼む」

「「「・・・はっ!」」」


 それぞれがその場で頭を下げ、その任を引き受けた。


「バーデン様」

「バーデンで構わない。

 ここは畏まった場ではないので、普通にしてくれて結構だ」

「では・・・バーデン。

 すまないが・・・少しの間、俺は護衛の任に付くのを後になってしまう事を許してほしい」

「・・・ツェーゲン?」


 サックがツェーゲンの言葉に疑問を浮かべた。


「少しだけ・・・魔界で世話になった者に挨拶に行こうと思っている。

 何も、すべてが私達だけでここまで生き延びて来られたワケではないのでな・・・」

「・・・そうか、恩人がいるのだな・・・?」

「ああ」

「だったら私達も」

「いや、お前達は子供達の護衛に付いていてくれ。

 私だけで問題ない。

 向こうも理解してくれるしな・・・」

「信頼しているのだな」

「ほとんど無条件で手を貸してくれたからな・・・。

 しっかりと礼を言いに行かなくては・・・」

「分かった」


 そう言ってバーデンは振り返り、妻のレナ―シェと護衛騎士のビルガル、リンジーに確認を取る。


「・・・あなたがそれで構わないなら、問題ないわ~・・・」

「はい・・・。

 確かに、実力不足なのは否めなかったのも事実ではあります。

 ここでこれだけの貴重な人材が雇えるのは幸運でしょう」

「・・・そうですね・・・。

 ですが・・・!

 シェイミ―様とキルシュ様の護衛の任から私は抜けたつもりはありませんから」


 3人の受け入れてくれた返事に笑いながらもバーデンは感謝した。


「ふふふ・・・ありがとう」



 こうして、長く大変な戦いが幕を閉じたのだった。






 【クリス】5才 人間(変化)

 レベル 301

 HP 13672 MP 14983

 STR 4429

 VIT 4318

 INT 4197

 RES 4265

 DEX 4351

 AGI 4512

 LUK 1457

『マナ性質:レベル MAX 10 』『強靭:レベル MAX 10 』『総量拡大:レベル 5 』



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