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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
135/473

133 本当の闘いの幕開け

「・・・」

「どうかされましたか、先生?」

「・・・やけに暗いなと思ってよ・・・」

「確かに・・・通り雨でもふるのでしょうか?」

「今はそんな事言っている場合ではないでしょう」

「そうだった、すまねえ」



「・・・ツェーゲン?」

「・・・どうかしたの~?」

「・・・いや、この暗さが気になってな・・・」

「雨が降る・・・って、そんな空気じゃねえよな?」

「ああ・・・。

 何か嫌な予感がする」

「うん・・・僕もそう思う。

 ・・・こっちは調べ終わったよ」

「分かった」

「では、上に参りましょう」

「ツェーゲン様、アタシ思うんですけど・・・連れ去られた子供がいるのって・・・」

「ああ。・・・玉座、おそらくそこにいる。

 急ぐぞ」



「っ!何だってんだ、これは!」

「・・・ここで何かがあった・・・」

「・・・この辺りは障壁で物理も魔法も衝撃には強く、頑丈にされていた。

 ・・・それを考えると・・・」

「ひえ~・・・ボ、ボールドさ~ん。

 私達、こんな相手と戦わないといけないんですか~?」

「諦めなさいケイト。

 まだ、そうと決まったわけじゃないけど・・・。

 もしかしたらって事も考えておくのよ」

「そ・・・そんな~」

「・・・それにしても・・・」

「イスカ?」

「・・・変な感じ・・・」

「変?」

「・・・ここで誰が戦ってたんだろう?」

「イスカが言ってた、あの子供なんじゃないの?」

「・・・ああ、それもあり得る」

「ちょっ、冗談で言ったのに・・・」

「あの子なら確かに。

 ・・・あり得ますね」

「・・・でも、相手が1人じゃない」

「何人か言ったって事でしょうか?」

「分からない・・・。

 メルム・・・先に行って・・・」

「え?イスカ?」

「僕が付いて行きます」

「ゾッドさん・・・お願いします。

 ・・・私達はこのまま玉座に向かいましょう」

「了解っす」

「なんでお前が真っ先に返事を返してんだ」

「いや~・・・流れで」



 そして、先行したテス達を除いたメンバー達が玉座、ゲネイスト・メル・バルがいる部屋へと走る。



「・・・」

「こ・・・これはいったい・・・?!」


 イスカ、ゾッドは3階まで突き抜ける様に破壊された部屋・・・と呼ばれる場所に立っていた。


「・・・」

「ここで、何が・・・?」


 この城の階の高さはかなりある。

 多少、背の高い種族も入る構造で作られているのか。

 現在、イスカ達がいる1階から高さ約10メートルくらい上に2階があったりする。


「っ・・・この・・・者は・・・」


 ゾッドが目の前で上半身と下半身が分断された遺体を見た。


「・・・見た目、特徴が違うけど・・・。

 たぶんテス達が言っていた、子供達を攫った男」

「しかし・・・テス達が言っていた男は50代くらいの者だと・・・。

 殺されたこの者は、明らかに30代に入ったばかり・・・」

「・・・何かの方法で若返った・・・?

 ・・・分からない。

 けど・・・可能性があるとしたら・・・」

「・・・あるとしたら?」

「・・・突破」

「?・・・限界突破の事でしょうか?」


 短く言ったイスカの言葉に何とかその情報から考えつく答えを導き出すゾッド。


「(コクン)・・・限界を超えた者は器が大きくなる。

 その結果、寿命も延びるって話があった・・・」

「・・・だとしても・・・伸びる事は分かりますが・・・。

 若返る、とはどういう事でしょう?」

「分からない・・・。

 死んだこの人からはもうほとんどマナが残っていないから・・・何とも・・・。

 それでも、中に残っているマナの密度と質から考えると・・・。

 活性化させた状態、私達の様に戦える状態まで元に戻したんだと・・・思う」

「・・・テス達と相手した時は、体がまだ万全ではなかった・・・という解釈で良いんでしょうか?」

「たぶん・・・。

 あの子と戦うためには、もう一度、戦える状態まで戻さなくちゃいけないと考えたんだと思う」

「では・・・これは・・・彼が?」


 イスカはゾッドの言葉からクリスの事を考えた。

 イスカの中のクリスの印象とは僅かに違う・・・そんな違和感から素直に頷けなかった。


「うーん・・・違う、と思う・・・。

 あの子なら勝負がついた相手にトドメは刺さない。

 それが必要なのは相手がそれでも襲い掛かって来た時だけ。

 だけど・・・もし、あの子がここまでしなくちゃ勝てなかったのなら・・・分かる」

「それだけの激しい戦いがあったという事・・・ですか・・・」


 改めてゾッドは周囲を見る。


 この首都は特殊障壁で簡単には壊れない様に守られている。

 実際、Aランクにあるイスカ達の戦いにも建物の被害はかなり少なく抑えられている。

 本来、上位の冒険者が能力を発揮すれば、町はすぐに瓦礫の山になりかねないものだからだ。


 しかし、今回は現場の建物が何件か壊れた程度だった。

 全壊したのは2~3件が良い所だった。


 まあ、破壊された家の住人は堪ったものではないが・・・。


 それだけこの特殊障壁は頑丈に造られていた。


 そして・・・それは中心となる王城に近ければ近いほど・・・その障壁はより強く作用している。

 それを・・・ここまで破壊されてしまえる激しい戦闘が、この場では行われていた。


「障壁のおかげでこの城は、これだけで済んだと考えるべきなのか・・・。

 それとも城自体が頑丈に築かれていたのか・・・」

「・・・両方。

 そうでもないとこの状態で留まることは無い」


 イスカもゾッドと同じく周辺を見て判断を下す。


「・・・周辺に彼の・・・クリス君の姿が見えませんが・・・」

「うん・・・これだけ激しい戦闘になれば無事で済むとは思えない・・・。

 どこかで負傷しているのかも・・・探してくる」

「僕も探します」

「ううん、大丈夫・・・。

 あなたの補助魔法はメルム達には重要。

 先に行って援護してあげて・・・?

 ここは私があの子を探すから」

「・・・分かりました」


 ゾッドはイスカに後を任せ、メルム達を追って、玉座へと向かった。


「(さて・・・何処にいるの?)」


 イスカは周辺の窪みなどを見つけては覗き。

 また見つけてはと繰り返し探す。


「(・・・ここには死体以外の、他のマナをほとんど感じない・・・。

 他の所に言ったのかも・・・)」


 イスカは部屋と出て行き、周辺を探すことにした。



「にゅぷぷぷ・・・。

 それでは始めますぞ?」

「はい・・・お願いします」


 ゲネイストは玉座の間、その中央に小太り老人が生み出した半透明の立体な正方形の中へと入った。


「それでは・・・いきますぞー!」


 小太り老人は両手を光の球の様に輝かせ、上へと掲げた。

 すると・・・一層、老人の両手が輝きを放つ。

 それに呼応するように、四角い立方体が反応し、周囲に幾何学模様が現われ、その中を流れていく。

 立方体の外を魔法陣が囲み、数式が何かを計算する様に流れていく。


 そして・・・元王が手に持った宝石が宙へと浮き上がり、回転し始めた。

 宝石もそれぞれの色を強く呼応するように輝きだす。



〔これは・・・!〕


 それは現在、睡眠中のクリスの胸にあるペンダントも同じく輝きだしていた。


〔いったい・・・何が・・・?〕


 サポートは予期せぬ事態に嫌な予感を持ってしまうが、今はクリスの能力の調整に入ることを優先する。


〔・・・もう少し・・・あと少しです・・・〕


 焦る気持ちが僅かに生まれるが・・・努めて忠実に今すべきことに意識を向けるサポート。



「にゅっぷぷぷぷぷ・・・やはりあのガキはこの町か城のどこかにいたのですね?

 これは僥倖・・・幸先が良いですね~。

 では・・・発動といきますかね?

 ・・・にょほぉぉぉぉおおおおおおおおおっ!」


 掲げた手を前に、ゲネイストがいる立方体に向けた。


 キュウ~~~ン!

 ガチチチ、ガゴンカコンガコン・・・。


 重い何かが移動し、組み上げていくような音。

 そして・・・。


 ・・・・・・カチリ。


 嵌った音の瞬間。

 立方体が激しく輝く。

 そして宝石の光が、細く空へと昇っていく。


 クリスの首に下げたペンダントからも光が上へと昇っていく。


 ・・・やがて、9つの光が雲よりもはるか上の上空で大きなそれぞれの光の球を形成し止まる。


 そして、一気に光の球が全てが真ん中の一か所へとぶつかる。


 その瞬間、大きな爆発の波が世界中に広まった。

 それと同時にどこかの誰かの・・・囚われた水晶の中から女性の悲鳴が幻聴として聞こえた。


 カチリ・・・・・・リンゴ~ン・・・・・・。


 何かが嵌り、たった1回だけ鐘の音が鳴った。



「にょっほほほほほほほ・・・・成功だ~!」


 小太り老人は飛び跳ねて喜び小躍りする。


「・・・お~らよっ!」

「にょひ?」


 小躍りしていた老人が見たのは立方体に斬りかかるトウジロウの姿だった。


「チッ、かてぇな~」


 斬りかかったトウジロウは弾かれ、片手をプラプラと動かして痛みを和らげている。


「なっ!

 き、貴様達は誰だ!?」

「先に玉座目指して正解だったか?」

「先生・・・勝手に行かないでください」

「全くで、って・・・どうやらお取込み中だったようですね」

「・・・その様ですね」


 トウジロウに遅れてカレン、ディック、チャルルが到着し、謎の四角い何かに囲まれる男。

 それに遠くで驚き、怒っている小太りの老人。


 そして・・・。


「ゾッドさんがおっしゃっていた子供・・・あの子がキルシュ君ですね・・・?」

「仮面を被った巨人・・・なるほど・・・」

「先に子供を助けることが先ですね」


 カレン、ディック、チャルルの3人は謎の巨人を標的にし刀を抜いた。


「・・・先生」

「ああ、任せろ・・・。

 あの爺さん・・・なかなか強えじゃねえの・・・。

 戦ってなくても分かるぜ・・・へへ・・・ちょっと楽しくなりそうじゃないか・・・」

「こっちにいる男は?」


 チャルルがゲネイストを目線で指して聞く。


「放っておけ・・・。

 今は何をやってもその障壁みたいなものは砕けねえ」

「・・・分かりました」


 それだけを確認するとトウジロウ達はそれぞれ目の前の相手に視線を向けた。


「にゅ~~またしても、冒険者の一味ですか・・・忌々しい。

 せっかく急いで戻ってきたというのに・・・」


 老人は歯をギリギリと歯ぎしりしたいくらい念の籠った視線をトウジロウに向ける。


「ワリィが、元々この帝国は怪しかったんだよ。

 だから俺達に万が一に備えた依頼があったんだ。

 今回の騒動とか関係なくな」

「(チッ・・・。

 あの無能大臣に好きかってさせ過ぎましたか・・・)」


 自分達が招いた事とはいえ、こうも迅速に対応されては計画は危ぶまれていたのか、と改めて、相手側を舐めていたと老人は自覚した。


「(王が問題ないとは言っていましたが・・・流石にここまで来て下がれはしませんよ?

 まあ、本来の私の仕事はほぼ完了したわけなのですが・・・)」


 老人は上空を見る。

 そこは天井で空を見ることは出来ないが、老人はその天井を見透かし、更にはるか上にある何かを見ている様だった。


「・・・何が面白い?

 上に何があるんだ?」


 トウジロウに話しかけられて自分がつい口元をニヤけていた事に気付く。

 しかし、その顔のままでトウジロウと会話をする。


「いえなに・・・ちょっと浮かれていただけですよ・・・。

 目的が達成できて、つい嬉しくなって・・・」

「・・・」

「しかし、あなた方も不運なのか幸運なのか・・・。

 面白いモノに立ち会えたのですから・・・是非、楽しんでいってください。

 ・・・にゅっぷぷぷぷぷ・・・」

「その笑い・・・なかなか腹が立つな・・・」

「これはこれは・・・申し訳ありません。

 何せ、これから楽しい世界に変わっていくとなると思うと・・・にゅっぷぷぷぷぷ・・・」


 トウジロウは刀を下げゆっくりと呼吸を始めた。


「・・・おや?どうされまし、っ!」


 老人はトウジロウの斬りかかりに反応しガードした。


「(速い)」

「随分、密度の濃いマナを持ってんじゃねえかよ。

 この攻撃を防ぐか・・・」


 ギギギ・・・ガキン、ガキ、・・・ダン・・・キンギンキン・・・。


「(おもっ・・・)ぐえ・・・あびっ・・・ぐひょっ・・・にょぎば、ぐちょっ」


 老人はトウジロウに蹴られ、綺麗にボールの様にバウンドし、壁にぶつかって止まった。


「随分と転がりやすい爺さんだ。

 いったいその体、何で出来ている?」

「あ・・・ああ・・・ぐっ・・・よくも・・・私を足蹴にしましたね~・・・!」


 ふるふると震えながら小太り老人は立ち上がる。

 その鼻から僅かに血を流している。


「(あれだけの攻撃を防ぎながらほとんど効いていない・・・か・・・。

 刀での攻撃には注意していた所と鼻血が出た所から考えると、別に倒せないってわけではないらしいが・・・)」


 トウジロウには全く老人を倒せるビジョンが見えず、イメージが湧かなかった。


「(さて・・・どうしたもんか・・・)」


 悩んではいる・・・悩んではいるが・・・。

 その口は自然とつり上がってしまっていた。



「何だ!この巨人は!」

「正確には大型のヒト種が近いでしょう。

 本当の巨人はもっと大きいでしょうし」

「ああ!確かに・・・。

 でも、この者達がまだ子供の部類に入る可能性は?」

「なくはないでしょう」

「そんな悠長な会話をしたいのではない!」

「分かっています」

「あの・・・お手伝いしましょうか?」

「「・・・結構です」大丈夫だ!」


 カレンの言葉にチャルルとディックが目の前の仮面の者達に苦戦しながらも強く拒否を伝える。

 当のカレンも決して余裕がある相手ではない。

 しかし2人に比べて幾分か確かな差があり仮面の1体を相手にどんどんと追い込んでいった。


「・・・ㇷ―、フー・・・!

 ァァァアアアアアアアア・・・」


 1体が興奮し雄叫び声の様なモノを上げるとそれにつられるように他の仮面の者達も呼応し、より一層いままで以上の力を振り絞り、活発に動いて果敢にカレン達に攻めかかった。


「ぐあ・・・ぐう」

「うう・・・これは・・・」

「ディック、チャルル!」


 襲い掛かり殴り掛かる攻撃に刀で斬りかかる2人だが、相手の体が頑丈なため、斬り付けようとした2人が力負けしてバランスを崩し後ろへと無理やり仰け反らされる。


「「アアアアアアアアッ!」

「なっ・・・この・・・ああっ!」

「きゃあ!」


 とうとうディック、チャルルの2人は吹き飛ばされ大きく玉座の部屋の壁近くまで追いやられ倒れた。

 そこをトドメとばかりに迫る仮面の2体。


「させません!」

「ギャアアアアアッ!」


 カレンに襲い掛かっていた1体もカレンを殺そうと襲い掛かったが、逆に強い力で反撃を受けて体を大きく切り裂かれて吹き飛ばされた。


 そのままカレンは倒れた仲間の下へと駆け寄りながら刀を鞘へ納める。


「ふ~・・・」


 そして抜刀の構えで、今まさに殺そうと殴り掛かる2体の仮面に向けて、一気に刀を抜いた。


「(一の型)・・・線火!」


 カレンが振り抜いた刀の一閃が鋭い火の刃となって飛んで行く。


「あああっ!」

「ぐもっ!」


 2体は本能で気付いたのか何なのか、あと少しという所で迫りくる火の刃から急停止して回避行動に出た。


「「ぐ・・・ぐぼあああああああああああっ!」


 しかし、回避行動が間に合わず、2体とも片手を失い、体にも大きく刃の切り裂かれた痕がつく。

 更に負傷を折った個所から火が点き、強制的に体を燃やしていく。


 たまらず2体は暴れまわり、転げまわり、振り払い、火の鎮火に暴れ狂った。


「・・・これは・・・」


 自分の技に一体に何が起こったのか分かっていないカレンはただ、向こうで暴れまわている仮面の2体を呆然と見ていた。


「にゃっ・・・にゃんですと―――!!」


 そして、それ以上に驚いているのは小太り老人だった。


「まさか・・・まさか・・・貴様らも・・・!」

「どうやら突破したことで技にも影響が出てしまったようだな・・・。

 いや~これはうっかりうっかり・・・なっはっはっはっは・・・」


 頭を掻きながらカレンの技に笑うトウジロウ。


「これって、技にも影響を受けるモノなのですか!」

「ああ。どうやらその様だな」

「き、聞いてませんよ!」

「俺も知らなかった」


 戦場であるにも関わらずどこか緩い空気が流れていた。


「(にゅぐぐぐ・・・これは予想外・・・。

 まさか、地下にいた奴以外にも、他に限界突破した者がいるとは・・・。

 これでは、最後の楽しみ(・・・・・・)をお目にかかれない・・・)」


 ギリギリと悔しがる老人。


「ええい!ゲネイスト殿、何をしているのです!

 もう儀式は完了してもよろしいのではないか!?」


 小太り老人は焦り立方体の中にいる元王に向かって大声を上げたる。


「・・・すみません。

 どうやら、取りこむのに少しだけ時間が掛かってしまっていたようです」


 そして・・・。


 ピシッ・・・ピシピシ・・・・・・パリン!

 ガシャン、カラカラ・・・。


 1つのヒビから全体に渡り亀裂が走り・・・ガラスの様に砕け散った。


 その中から20歳ぐらい・・・いや、正確な年齢は不明だが。

 少年から青年に入ったばかりの若い男がそこには立っていた。


 とても端正で目鼻立ちもハッキリとした、将来凛々しくかっこいい男性になる様な者が目の前に立っていた。


「・・・・・・」


 ゲネイストは自分の手の左右を握っては開きを繰り返しながら交互に見る。


「・・・私の予想よりも随分と若くなっている印象を受けるんだが・・・」


 手だけで姿までは分からないが・・・皺というものがほとんどなく、若々しい肉体から予想するゲネイスト。


「にょほ~・・・ようやくですか~。

 ・・・それは、まだあなたの体に完全に馴染んでいないのでしょう。

 大丈夫ですよ。

 すぐに慣れていきますので・・・」


 そこまでよそ見をして油断したつもりはなかったトウジロウだったが・・・。

 いつの間にか小太り老人はゲネイストの傍にいて、楽しそうに話していた。


 そこへ・・・。


 ビシイ!!


 突然、2人を包んで大きな氷の結晶が床から生まれた。


 バキン・・・ガリン!


 しかし、ゲネイストが振り払い、氷に覆われた束縛から解除された。


「ああ、あああ、ぶるるるるるっ。

 こ・・・この氷は・・・」


 ガタガタと震え、両手で自分を抱きしめながら玉座の間の入り口を見ると・・・。


「キルシュ!」

「おねえちゃ~ん!」


 そこにはシェイミ―とテスがいた。


 キルシュはシェイミ―の傍まで駆ける。


「良かった~、ケガはない!」

「うん・・・大丈夫」

「・・・シェイミーちゃん、キルシュ君。

 申し訳ないけど、少し離れていてくれるかしら・・・」


 テスは剣と体をゲネイストに向けたまま、振り返らなかった。


「あなた達・・・立てますか?

 立てるのでしたらこの子達をお願いします」


 テスはディック、チャルルに2人の護衛を頼む。


「ぐ・・・わかり・・・ました」

「・・・承知しました」

「私も!」

「いえ、あなたはこちらへ」


 カレンも子供達の護衛にと乗り出す。

 しかし、テスはこれを断り、援護を頼む。


「にょっほほほほ・・・。

 そんなに守りを固めて、大丈夫なので・・・何ですとー!!」


 余裕を見せて、チラッと自分の駒の仮面を見た瞬間。

 粉々に砕け散って、原型が無くなっている姿を見てしまった老人。


「あなた方の拘束と同時に倒しておきました。

 なるほど・・・技にまで影響するとは・・・前回の戦いでは如何に、自分が突破というものを理解していなかったか、身に染みて分かりましたよ・・・」

「にゅぐぐぐぐぐ・・・・・・」


 悔しがる老人。

 しかし・・・それとは対照的にゲネイストは平然と周囲を見回し、他人事の様な反応にすら見える態度を示していた。


「・・・なるほど。

 能力の強化・・・器の上昇はそれだけではないのか・・・忘れていた・・・」

「・・・ゲネイスト殿?」


 老人が傍のゲネイストの反応に不思議に思っていると・・・。


 カアッ!


 突然、ゲネイストが光り輝き、服が変化していった。


 光りが止んだ時・・・ゲネイストは法衣を羽織った姿へと変化し、金色に輝く棒を持っていた。


「・・・確かに・・・これは凄いな・・・。

 昔感じた限界突破とは次元が違うようだ・・・」


 軽くゲネイストが手に出現させた棒を振るった。


 たったそれだけで・・・。


 ビシビシビシビシビシ・・・。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・。


 ゲネイストの周囲からたくさんの亀裂が走り、地響きを起こす。


「・・・この力・・・。扱うには時間が掛かるか・・・。

 お前達・・・付き合ってもらうぞ?」


 ゲネイストはテス達に向かって戦闘態勢に入ろうとしていた。






 【クリス】5才 人間(変化) 成長中  調整中

 レベル 148 → 205 → ?

 HP 5467 → 7826 → ? MP 6729 → 8317 → ?

 STR 1082 → 2104 → ?

 VIT 1013 → 2025 → ?

 INT 1000 → 1984 → ?

 RES 1243 → 2147 → ?

 DEX 1033 → 2009 → ?

 AGI 1355 → 2368 → ?

 LUK  397 → 672 → ?

『マナ性質:レベル ? 』『強靭:レベル ? 』『総量増加: ? 』変化中?

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