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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
131/473

129 覆う曇りは何をさす?

「・・・はぁ・・・なかなか面倒くさい敵だったな?」

「ハア・・・ハア・・・ハア・・・はい・・・」

「はあ・・・はあ・・・疲れ・・・ました・・・」

「・・・お疲れ様です」

「はあ・・・これは精神的に来ますね~・・・」


 トウジロウは仲間達に振り返りながら話を振った。

 しかし、ディック、チャルルは返事を返すのは難しいくらい疲弊していた。

 カレン、テトは、まだ平気だが・・・テトの言う通り、人だった成れの果ての異形者には、精神的に何度も復活するモンスター以上に疲れ果てていた。


 人形達も復活を繰り返すが・・・見た目、そして部位が失っても襲い掛かってくる様はどうしても心にトラウマを抱えそうなほどだった。


「まあ、こういうのは踏ん切りが大事だ。

 誰かの好き勝手にいじくられて、消滅するまでこき使われるのなら・・・いっそ、サッサと葬ってやった方がこいつ等の為じゃねえか?」

「そう・・・かもしれませんね」

「うう~。

 私はこんな使われ方はイヤですよ~」

「はっはっはっ・・・俺もだ」


 元気な3人と違って2人はそんなトウジロウ、カレン、テトに少しばかり引け目を感じていた。


「分かっては・・・いたが、ここまで差を感じると・・・」

「ええ・・・悔しいです」

「気にするな・・・ってのは無理か。

 だが・・・自信を持て。

 お前達の実力はここまで付いて来れた時点で既にAランクに匹敵するぞ。

 レベルやステータスの問題だけじゃなく、精神的な部分で、普段の実力以上の戦いをやってきているじゃねえか」

「そ、そうでしょうか?」

「ああ、自信を持っていいぞ。

 俺が保障する。

 甘く見ているわけではなく・・・一冒険者としてな」


 トウジロウがディック、チャルルの2人をしっかりと見て言葉を掛けた。


 それは師として。

 そして先に行く上の慕う人。

 憧れている人からの賛辞だからだった。


「・・・最善を尽くします」

「・・・ふふふ」

「何ですか?」

「いえ・・・何でもありません」


 チャルルの照れた姿につい笑ってしまったカレンだった。



 一方・・・違う意味で闘志を燃やす2人も・・・。


「くそ・・・はあ・・・ああ・・・ぜってー・・・追い越してやる!」

「まけ・・・るもんか!」


 ロイド、フェリルもイスカやメルム、カイル、ケイトの戦闘に対しての余裕な姿から能力の差を感じ負けん気と意地を見せ、向上心に変えようとしていた。


「うん・・・頑張って・・・」


 イスカが2人の姿にどこか優しい顔になって応援した。


「あれって・・・頑張っている2人からしたらどう思うのですか?」

「う~ん・・・イスカの事を考えて思うなら・・・素直に応援ですね」

「しかし・・・自分の立場からすれば・・・皮肉に聞こえてしまうかもしれませんね」


 ケイトの質問に的確に答えをだすメルムとカイル。


「くっそが~~~っ・・・!!」

「うん・・・なってやる・・・!」


 それを見たケイトは・・・。


「確かに・・・お2人の言う通りでしたね」


 少し笑ってメルムとカイルを見た。


「皆さん、こちらにいたのですね・・・」

「・・・テス・・・」


 テス達のメンバーがイスカ達と合流した。


「・・・面倒な敵だった」

「あれは人ではない感じだったな」

「死人に近い者を無理やり操っている感じでしょうか?

 悪趣味でしたが・・・」

「・・・知らない。

 そもそも僕達は雇われた身。

 あのような存在を連れてきたのはあの老人だ」


 最後の男の言葉にイスカ達が振り向いた。


「・・・君は・・・あの時の・・・?」

「連れてきました。

 シェイミ―ちゃんとキルシュ君を助けるための手伝いと案内をしていただくために」


 太った男の部下、若い男は分かり易いアクションで肩を落とし説明した。


「この2人に負けた以上。

 僕はただの捕虜の様なものだ。

 負けた以上は勝ったこいつ等に従う」

「・・・というわけ」

「・・・なるほど。

 納得・・・」


 イスカがすぐに頷いた。

 リーダーが納得してしまえば他のメンバーに否応は無かった。


 それはイスカの実力を知っているパーティはもちろん。

 即席のケイトも、前回と今回でイスカの実力と判断力は分かっていたからだった。


「分かりました。

 ・・・それで・・・あなた・・・名前は?」

「エレイズだ。

 仲間からはそう呼ばれている」

「分かりました。

 では・・・あなたに質問です」


 メルムが正面から若い男・・・エレイズを見て尋問した。


「先ほどの話で出てきました雇われた身。

 ・・・あなたは誰にやとわれたのですか?」


 その言葉に全員が真剣に話を聞く。


「それは王だ。

 この国の王、ゲネイスト・メル・バルだ」

「えっ・・・」

「それって・・・」

「確か、牢獄に幽閉されてたって話じゃなかったか?」

「それに・・・調査隊の話では死んだって話も・・・」

「死んでない。

 正確には死んだと思わせる偽装をしていた」


 その言葉で一同が黙った。

 イスカが一歩近づいて聞く。


「・・・理由は?」

「・・・さあ、詳しくは・・・。

 だがウチのボスの話では更に強く限界突破するためだとか・・・」

「はあ!?

 そんな事の為!!」

「わざわざそこまでしてこんな騒動を起こすのですか・・・?!」


 驚きを通り越して若干怒りが混じっているフェリルとケイト。


「詳しくはさっきも言ったが分からない。

 ただ・・・この計画自体は初めから起こすつもりだった。

 それを突然、王位に目が眩んで・・・さらなる欲望から世界を支配しようとまで考えた、元大臣の反乱を利用して計画を早めただけだ。

 本来はもう少し後になるって聞いた」

「・・・その大臣は?」

「殺したよ。

 奴が国境の砦を攻めた後にな。

 後々面倒な事は少しでも減らすためにな・・・」

「・・・分かりました。

 それでは次の質問です。

 今の話から王は生きているのですね?」

「今回の元々の首謀者はこの国の王だからな。

 今もあの城の玉座にいるんじゃないか?」


 エレイズが城を指して言った。


「・・・随分、城に大きな穴が出来てんな」

「・・・中で何かあったのでしょうか?」


 ゾッドが全員に話を聞く。


「・・・見てないの?」


 イスカがテス達を見て首を傾げた。


「ええ。

 私達の方角からでは丁度、お城は死角で見えませんでしたから」

「・・・何があったの?」

「分かりません。

 突然、魔法の様な大きな爆発、起こったと思いきや、突然城の一部があの様に抉られていたのです」


 プリムの質問にケイトが答える。

 しかし、ここにいる全員にも城で何があったのかは分からなかった。


「ここからじゃあ遠かったけどマナが急に膨れ上がった気がしたわ。

 あんたの仲間にとんでもないマナを持った奴がいたんじゃない?」


 フェリルがエレイズに確認を取るが・・・エレイズは首を振った。


「能力が詳しくは知らないのがこの国の王様だ。

 だが・・・王が今、大事な時にその力を使うという事は・・・。

 お前達の誰かがあそこにいる事を意味するが・・・それにしては静かだ。

 どちらかが勝った可能性も考えられるが・・・それにしては、ここの空気が先ほどと変わらない。

 おそらく、全く別の何かだろう」

「別の何か?」

「あんな魔法なのか物理的破壊力なのかは知らないが、あれを可能とする人物は王を除けばウチのボスくらいだ」

「・・・あの老人は?」

「あれは違う。

 奴はそもそも自分から進んで戦闘で直接対決を望むとは考えにくい。

 よくは知らないが、あの手は色々な策を取って間接的に攻めてくるタイプだ」

「「「ああ~・・・」」」


 テス、ヘレン、プリムの3人が納得の声を出した。

 たった1回、会っただけでそこまで容易に想像できるくらい悪質な印象を受けたのだろう。


 3人の反応に残りのメンバーも何となく小太り老人のイメージが湧いたようだった。


「では・・・その老人の策の何かで?」

「・・・それも違う気がする。

 奴は王に手を貸していた」

「手を貸す?」

「ウチのボスと王は知り合いだったようだが・・・あの爺さんに関しては知らない。

 どういった関係なのか、どんな経緯で知り合ったのかも・・・。

 ただ・・・王の態度からしてかなり大切な客人として扱っている印象を受けたな・・・」

「王が・・・大切にする客人・・・」

「この計画の一端はあの爺さんの差し金だって話もある。

 それを聞いた王がボスを呼んだのではないかって話だ・・・」

「他人事の様に聞こえますが・・・」

「その時は別の用事があって離れていたんでな。

 帰った時には交渉がほとんど無条件で成立していたんだ。

 昔馴染みはぁ・・・なかなか面倒くさい敵だったな?」

「ハア・・・ハア・・・ハア・・・はい・・・」

「はあ・・・はあ・・・疲れ・・・ました・・・」

「・・・お疲れ様です」

「はあ・・・これは精神的に来ますね~・・・」


 トウジロウは仲間達に振り返りながら話を振った。

 しかし、ディック、チャルルは返事を返すのは難しいくらい疲弊していた。

 カレン、テトは、まだ平気だが・・・テトの言う通り、人だった成れの果ての異形者には、精神的に何度も復活するモンスター以上に疲れ果てていた。


 人形達も復活を繰り返すが・・・見た目、そして部位が失っても襲い掛かってくる様はどうしても心にトラウマを抱えそうなほどだった。


「まあ、こういうのは踏ん切りが大事だ。

 誰かの好き勝手にいじくられて、消滅するまでこき使われるのなら・・・いっそ、サッサと葬ってやった方がこいつ等の為じゃねえか?」

「そう・・・かもしれませんね」

「うう~。

 私はこんな使われ方はイヤですよ~」

「はっはっはっ・・・俺もだ」


 元気な3人と違って2人はそんなトウジロウ、カレン、テトに少しばかり引け目を感じていた。


「分かっては・・・いたが、ここまで差を感じると・・・」

「ええ・・・悔しいです」

「気にするな・・・ってのは無理か。

 だが・・・自信を持て。

 お前達の実力はここまで付いて来れた時点で既にAランクに匹敵するぞ。

 レベルやステータスの問題だけじゃなく、精神的な部分で、普段の実力以上の戦いをやってきているじゃねえか」

「そ、そうでしょうか?」

「ああ、自信を持っていいぞ。

 俺が保障する。

 甘く見ているわけではなく・・・一冒険者としてな」


 トウジロウがディック、チャルルの2人をしっかりと見て言葉を掛けた。


 それは師として。

 そして先に行く上の慕う人。

 憧れている人からの賛辞だからだった。


「・・・最善を尽くします」

「・・・ふふふ」

「何ですか?」

「いえ・・・何でもありません」


 チャルルの照れた姿につい笑ってしまったカレンだった。



 一方・・・違う意味で闘志を燃やす2人も・・・。


「くそ・・・はあ・・・ああ・・・ぜってー・・・追い越してやる!」

「まけ・・・るもんか!」


 ロイド、フェリルもイスカやメルム、カイル、ケイトの戦闘に対しての余裕な姿から能力の差を感じ負けん気と意地を見せ、向上心に変えようとしていた。


「うん・・・頑張って・・・」


 イスカが2人の姿にどこか優しい顔になって応援した。


「あれって・・・頑張っている2人からしたらどう思うのですか?」

「う~ん・・・イスカの事を考えて思うなら・・・素直に応援ですね」

「しかし・・・自分の立場からすれば・・・皮肉に聞こえてしまうかもしれませんね」


 ケイトの質問に的確に答えをだすメルムとカイル。


「くっそが~~~っ・・・!!」

「うん・・・なってやる・・・!」


 それを見たケイトは・・・。


「確かに・・・お2人の言う通りでしたね」


 少し笑ってメルムとカイルを見た。


「皆さん、こちらにいたのですね・・・」

「・・・テス・・・」


 テス達のメンバーがイスカ達と合流した。


「・・・面倒な敵だった」

「あれは人ではない感じだったな」

「死人に近い者を無理やり操っている感じでしょうか?

 悪趣味でしたが・・・」

「・・・知らない。

 そもそも僕達は雇われた身。

 あのような存在を連れてきたのはあの老人だ」


 最後の男の言葉にイスカ達が振り向いた。


「・・・君は・・・あの時の・・・?」

「連れてきました。

 シェイミ―ちゃんとキルシュ君を助けるための手伝いと案内をしていただくために」


 太った男の部下、若い男は分かり易いアクションで肩を落とし説明した。


「この2人に負けた以上。

 僕はただの捕虜の様なものだ。

 負けた以上は勝ったこいつ等に従う」

「・・・というわけ」

「・・・なるほど。

 納得・・・」


 イスカがすぐに頷いた。

 リーダーが納得してしまえば他のメンバーに否応は無かった。


 それはイスカの実力を知っているパーティはもちろん。

 即席のケイトも、前回と今回でイスカの実力と判断力は分かっていたからだった。


「分かりました。

 ・・・それで・・・あなた・・・名前は?」

「エレイズだ。

 仲間からはそう呼ばれている」

「分かりました。

 では・・・あなたに質問です」


 メルムが正面から若い男・・・エレイズを見て尋問した。


「先ほどの話で出てきました雇われた身。

 ・・・あなたは誰にやとわれたのですか?」


 その言葉に全員が真剣に話を聞く。


「それは王だ。

 この国の王、ゲネイスト・メル・バルだ」

「えっ・・・」

「それって・・・」

「確か、牢獄に幽閉されてたって話じゃなかったか?」

「それに・・・調査隊の話では死んだって話も・・・」

「死んでない。

 正確には死んだと思わせる偽装をしていた」


 その言葉で一同が黙った。

 イスカが一歩近づいて聞く。


「・・・理由は?」

「・・・さあ、詳しくは・・・。

 だがウチのボスの話では更に強く限界突破するためだとか・・・」

「はあ!?

 そんな事の為!!」

「わざわざそこまでしてこんな騒動を起こすのですか・・・?!」


 驚きを通り越して若干怒りが混じっているフェリルとケイト。


「詳しくはさっきも言ったが分からない。

 ただ・・・この計画自体は初めから起こすつもりだった。

 それを突然、王位に目が眩んで・・・さらなる欲望から世界を支配しようとまで考えた、元大臣の反乱を利用して計画を早めただけだ。

 本来はもう少し後になるって聞いた」

「・・・その大臣は?」

「殺したよ。

 奴が国境の砦を攻めた後にな。

 後々面倒な事は少しでも減らすためにな・・・」

「・・・分かりました。

 それでは次の質問です。

 今の話から王は生きているのですね?」

「今回の元々の首謀者はこの国の王だからな。

 今もあの城の玉座にいるんじゃないか?」


 エレイズが城を指して言った。


「・・・随分、城に大きな穴が出来てんな」

「・・・中で何かあったのでしょうか?」


 ゾッドが全員に話を聞く。


「・・・見てないの?」


 イスカがテス達を見て首を傾げた。


「ええ。

 私達の方角からでは丁度、お城は死角で見えませんでしたから」

「・・・何があったの?」

「分かりません。

 突然、魔法の様な大きな爆発、起こったと思いきや、突然城の一部があの様に抉られていたのです」


 プリムの質問にケイトが答える。

 しかし、ここにいる全員にも城で何があったのかは分からなかった。


「ここからじゃあ遠かったけどマナが急に膨れ上がった気がしたわ。

 あんたの仲間にとんでもないマナを持った奴がいたんじゃない?」


 フェリルがエレイズに確認を取るが・・・エレイズは首を振った。


「能力が詳しくは知らないのがこの国の王様だ。

 だが・・・王が今、大事な時にその力を使うという事は・・・。

 お前達の誰かがあそこにいる事を意味するが・・・それにしては静かだ。

 どちらかが勝った可能性も考えられるが・・・それにしては、ここの空気が先ほどと変わらない。

 おそらく、全く別の何かだろう」

「別の何か?」

「あんな魔法なのか物理的破壊力なのかは知らないが、あれを可能とする人物は王を除けばウチのボスくらいだ」

「・・・あの老人は?」

「あれは違う。

 奴はそもそも自分から進んで戦闘で直接対決を望むとは考えにくい。

 よくは知らないが、あの手は色々な策を取って間接的に攻めてくるタイプだ」

「「「ああ~・・・」」」


 テス、ヘレン、プリムの3人が納得の声を出した。

 たった1回、会っただけでそこまで容易に想像できるくらい悪質な印象を受けたのだろう。


 3人の反応に残りのメンバーも何となく小太り老人のイメージが湧いたようだった。


「では・・・その老人の策の何かで?」

「・・・それも違う気がする。

 奴は王に手を貸していた」

「手を貸す?」

「ウチのボスと王は知り合いだったようだが・・・あの爺さんに関しては知らない。

 どういった関係なのか、どんな経緯で知り合ったのかも・・・。

 ただ・・・王の態度からしてかなり大切な客人として扱っている印象を受けたな・・・」

「王が・・・大切にする客人・・・」

「この計画の一端はあの爺さんの差し金だって話もある。

 それを聞いた王がボスを呼んだのではないかって話だ・・・」

「他人事の様に聞こえますが・・・」

「その時は別の用事があって離れていたんでな。

 帰った時には交渉がほとんど無条件で成立していたんだ。

 昔馴染みたっての願いだったからじゃないのか?」


 エレイズの話を聞いたメルム、カイル、ゾッドが考え込む。


「随分、大規模な願い引き受けたもんだ・・・」

「あ、ケイトちゃ~ん」

「テト・・・!」


 トウジロウ達もイスカ達の所へと集まって来ていた。


「それで?・・・状況は・・・?」


 ・・・・・・

 ・・・


「なるほど。

 では・・・この辺りのモンスターは一掃できたわけですか?」

「・・・全部ではないと思う気けど粗方は・・・」

「っで?その謎の城の破壊の件は置いておくとしてだ。

 肝心な所だが・・・首謀者と領主のガキ達はどこにいる?」


 トウジロウはエレイズに今回の依頼の重要部分に触れる。


「王は話した通り玉座だろう。

 子供達だが・・・。

 城の地下、俺達の住処にしている場所の一角で、俺と一緒にいたイルミナという女が面倒を見ているはずだ」

「地下か・・・だとしたらツェーゲン達が向かってるかもしれねえな」

「・・・私達も行く?」

「そうしてぇが、俺達の相手にはこの国の王も入っている。

 しかも・・・あんた等の話と、こいつの言うボスの話から考えてその王も突破者の1人だろうな」


 テス、ヘレン、プリムを見てからエレイズに顔を向けるトウジロウ。


「この場合、私達が子供達を助けに向かった方が良いでしょうね。

 彼女達と面識があるのは私達ですし」


 テスの話にヘレン、プリムが頷き続く。


「先に言った仲間を追うのは私達が良いだろう」

「・・・そうしないと、子供達が不安になるかもしれない」


 話を聞いたメルムがまとめる。


「分かりました。

 念のため、ケイトさん、テトさんは・・・そちらにボールドさんがいる事ですし付いて行ってください。

 そして・・・残りのチームでこの騒動の首謀者を・・・叩きに行きます」

 



「・・・計画は順調に進んでいるようだな」

「あなた様は・・・!!

 ははっ。

 わざわざこちらにまでお出向かれるとは・・・何かおありになりましたので?」


 紅い龍の仮面を被る年齢、性別不詳の人物が現れるとゲネイストは跪き、頭を垂れる。

 紅い仮面の人物の足元からは紅い靄とも粒子とも取れる何かが発していた。

 それが次第に消えて行く。


「今作戦の・・・その後の様子を確かめに来たまでだ・・・。

 ・・・お前以外にに誰もいないのか?」

「は・・・私の友人は、誰かを待っているのか下の大広間で待っていまして・・・。

 あと、あなた様の使いの方は現在、攫った子供のいる地下の特殊な部屋の前にいらっしゃると思われます」

「・・・なるほどな・・・最終段階に入った、という事か・・・。

 それならそれで構わない。

 ・・・貴様の戦力も随分少なっているようだが・・・」

「我が友人と戦った冒険者達が参加しているのかと・・・。

 その者が作り出したモンスターと人形を排除して回っているようです」


 ゲネイストの言葉に紅い仮面が考え事をする。

 ・・・やがて、手を前に出し、手のひらを下に向ける・・・すると・・・。

 凝縮された紅いマナの雫が1滴床に落ちた。

 落ちた雫は波紋を生み出し部屋を飛び出し外まで伸びて消える。


 波紋が消えてすぐに、赤い方陣が出現し、その中から紅白体を持ち縦長の仮面を付けた3メートルほどのヒトの姿をした何かが出現した。


「・・・・・アアアアアアアアアア・・・・・・・」


 仮面の口部分が割れ、開いた口から湯気が湧く。

 目が血走り、ギョロギョロと周囲を窺うように探る。


「これは・・・」

「私の駒が使っているモノ・・・それの本来の使い方、と言えばよいのか。

 まあ一種のモンスターの様なモノだ」

「・・・(かなり強い性質を持っている様だ・・・)」


 ゲネイストは紅い龍の仮面が生み出した、モンスターと呼ぶ存在を見てそんな感想を抱いた。


 何故なら、その一体一体がゲネイストと良い勝負を繰り広げそうな濃いマナを持ち、限界突破者相手でも十分に使える戦力に感じたからだ。


「20体ほど呼んでおいた。

 好きに使え。餞別だ」

「ははっ、ありがとうございます」


 そしてゲネイストの横を通り過ぎ、外を見る紅い龍の仮面の人物。


 その空はいつの間にか曇が覆い始めていた。


「お前の活躍次第・・・。

 どういう結末になるのか駒から後で聞く。

 その話でお前が私の下に入れるかどうかを決める・・・良いな?」

「は・・・」


 紅い仮面はそれだけを言い終わると、突然、粒子の残滓だけを残して消えていた。







 【クリス】5才 人間(変化)

 レベル ?

 HP ? MP ?

 STR  ?

 VIT  ?

 INT  ?

 RES  ?

 DEX  ?

 AGI  ?

 LUK  ?

『マナ性質:レベル ? 』『強靭:レベル ? 』『総量増加:レベル ? 』

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