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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
128/473

126 決戦!首都アルヴォーク

「さて、大人しく待っていてくれるかね~?」

「無理でしょ?」

「無理ですね」

「考えるだけ無駄でしょうね」


トウジロウの発言に、ケイト、メルム、カイルがハッキリと言い切った。


「・・・そこまで・・・?」

「あれ?クリス君知らないの?

勇者の称号を持ってる人って当たり外れが多いのよ。

色んな理由で称号が与えられるから、本当の意味でその称号の重さを自覚している人って案外少ないのよ?」

「うん・・・。何でもかんでも簡単に称号を与えた弊害」

「・・・活躍した話だけが1人歩きして広まった結果。

だから、勇者になると途端に偉そうになる人も後を絶たない」


 有名な話なのかテスの話にプリム、イスカも頷く。


「それでいいのでしょうか?」

「納得がいかないのは仕方ないわ。

 だけど、この中に本物がいる以上、無碍にも出来ないの。

 本物の勇者に迷惑でしかないけど・・・中に称号を貰って、より一層頑張る人もいるからなお厄介になるの」

「・・・もはや勇者という称号は乱立状態」

「そう・・・。

 無視はできないけど、放置も出来ない。

 それが今のこの世界における勇者という称号」

「もっと、しっかりと管理するべきでは・・・?」


 カレンが素朴な疑問を聞く。


「一応、管理はある程度は出来ているみたいよ?

 昔と違って、勇者という名が横行する事はそれほどないみたい」

「国、教会共に与える人数は制限を掛けているみたい」

「勇者という名で、冒険者以上に融通が聞いたりするから、称号を与えられた人は毎年、査定の様なモノが開いて、その人が本当に相応しいのか判定するみたいよ?

 だから、1年、あるいはそれよりも早く、国や教会に与えられた人は剥奪されるなんてのもザラだったりするの」

「・・・あ、ああ!!

 ありましたね!

 国や教会のトップ達が集まる大きなお祭りや記念行事が・・・。

 あの話にある、査定結果って言う話って・・・」

「表向きは今後の国に付いて」

「後はその年の活躍したりした者達」

「だけど・・・裏では勇者の授与と剥奪の審議会」

「割と噂では広まって耳に入ってはきますけど・・・本当かどうか怪しいって話だったのですが・・・?」

「・・・嘘ではない」

「一部は本当なの」

「考えても見てほしいのよ。

 毎年、何かしらの功績を挙げた人を称えて、その人を勇者にして・・・果たしてそれって、自国にもその人にとっても本当にいい事なのかしら?」

「・・・確かに」


 カレンはテス達の言葉に改めて気付かされていた。


〔なかなか、本当に形だけのプロパガンダですね〕

「ほとんど選挙の道具みたい・・・。

 勇者ってそんな政治色みたいなもんだっけ?」

「ん?クリス君なにか言った?」

「え?・・・いえ、何も」

「?・・・そう?」


 危うく、素が出すぎてしまい怪しまれかけた。


〔しかし・・・勇者というのは、冒険者と何が違うのでしょうか?〕

「(何らかの理由があって、なってしまうというけど・・・。

 ここまで来ると、もはやあまり違いがないのかもしれない)」

〔有力者への優先クーポン券くらい、ちょっとしたお得感のような感じでしょうか?〕

「(・・・勇者とは・・・いったい・・・)」


 クリスはゲームにある主人公の様なかっこいいイメージを強く持っていたが・・・。

 サポートの言葉に、勇ましく、カリスマ性を感じるイメージから、富裕層の娯楽の1つくらいにイメージがスケールダウンしてしまった。


〔ゲームというフィクションに夢を持ちすぎてしまいましたね。

 これが現実というものですよ〕

「(ああ・・・・・・そう(ガクッ))」


 またしても無意識に描いていた幻想が打ち砕かれた様に感じるクリスだった。




「見えたわよ・・・あれね!」

「・・・やっぱり、始めてやがったか・・・」

「まあ、予想はしていましたけどね」

「ここまで来ると、呆れてものが言えねえぜ」

「・・・同感だな」


 フェリルが指した先に、町のあちこちで火の手が上がっていた、

 ロイドとディックは呆れ返り、最後にはうんざりとしていた。

 ツェーゲンもまたこの景色を少しは予想していたが・・・本気にはしていなかった分、その気持ちが大きかった。


「ねえ?アレどうするわけ?」

「ん~・・・ほっといても良いんじゃないかしら~?」

「はぁ・・・そうしたいのはやまやまだが・・・見て見な」


 シャーリィとクラルがどうするか話し合っていたがヤハトが火の手のすぐ近く。

 町の家などの屋根辺りを指した。


「・・・なにあれ?」

「待ち伏せだ」

「あっ、あれって!」

「ええ、忘れません。

 あの集団達の顔」


 シャーリィの疑問に答えたヤハト。

 そして、思い出したトリシュに、恨みが籠った言葉を乗せるノイシュ。


「あれは・・・僕達を襲った襲撃者」

「・・・何人かに見覚えがございます。

 宝石を奪った者達でしょう」

「・・・という事は・・・」


 サック、ベーデル達の話を聞いたツェーゲンが王城を鋭く見た。


「来た来た。

 来たっすよボス?

 あの召喚獣じゃないっすか?」

「・・・ああ」


 太った男は若い女に言われ、城の窓から召喚獣を確認した。

 そして・・・笑った。


「ようやく来たな小僧。

 お前は・・・俺の手で・・・」


 遠くて見えているわけでも無いはずだが男はそれでも召喚獣の背に乗る小さな子供が確実にそこにいると確信して、テンションが湧き上がり、自然と体内マナが外へと放出された。


「(ううっ・・・ボスがここまでやる気だして放ったマナってここまで濃くて、苦しいもんなんっすか!?)」


 太った男の側にいた為に、その影響を強く受けてしまい、女は自然と距離を開けてしまう。


「っと、ワリィワリィ。

 つい勝手に出ちまっていた。

 ・・・しかし、これぐれぇで根を上げるとは・・・俺の部下に骨のある奴はいないのか?」

「・・・ボスがそこまで磨けば誰もすぐには追いつけませんよ」


 若い男がゆっくりと歩んで近づいてきた。


「・・・お前が来たという事は・・・」

「もうほとんど手払った、という事っすか?」

「ああ。

 全員参加したかったそうだよ。

 誰が一番先に勇者や強い奴を仕留めるかで賭けをしている所でした」

「はっはっは・・・あいつ等はそれぐれえのバカでいいじゃねえか」


 豪快に太った男は笑った。


「まとめる側としては笑い事ではありませんけどね」

「まあそれも、今回でお役御免かもしれないっすね?」

「ああ、そうだろうな。

 今来た奴らが参加するなら、殺しはしないかもしれねえが倒されるのはほぼ間違いねえだろ」


 太った男はそう断言した。

 その事に関して若い男女は何も言わなかった。

 それは、自分達が負け帰った経験から容易に想像出来たからだった。


「で?どうするんです?」

「まさかボス自ら戦場に向かうんっすか?」


 首を振って、窓から視線を外し出て行こうとする太った男。


「いや・・・俺は待ってるさ。

 あの小僧なら必ず城にやって来るからな

 俺は奴を待てばいい。

 ・・・お前達はどうする?」


 聞かれた男女は考え出す。


「ん~・・・そうっすね~・・・。

 私は子供達の面倒でも見ておくっすかね。

 なんだかんだで子供の面倒見るの嫌いじゃないっすから」

「なかなかの警戒っぷりだったが?」

「そりゃ、攫われたんだから仕方ないっすよ」

「それに、嫌われてただろ」

「自分達を守るためには仕方がなかったんっすよ。

 そう邪険にすること無いっすよ。

 あれで素直ないい子達なんっすから~」

「・・・めげないなお前」

「何がっすか?

 ・・・あっ!もしかして、自分だけが嫌われている事にヤキモチ焼いてんっすか?

 そりゃあ仕方ないっすよ。

 いつもムスッとして、表情も乏しく、怖い感じなんすから、嫌われて当然っすよ~。

 今更、気にしないでくださいよ~」


 かなりの毒を吐いている女。

 しかし男はそれを指摘する事はせず、はぁ・・・っと、ため息を吐くだけだった。


「もういい。

 好きにしろ。

 僕も好きにさせてもらう」

「戦闘に行くんっすか?」

「ああ。

 前回負けたのはこちらも準備不足だったのが原因だ。

 しかし、今回は違う。

 この状態でしっかりと白黒つけんと僕の気が済まん」

「やれやれ、負けず嫌いっすね~」

「お前は何とも思っていないのか?」

「無いことは無いっすけど・・・。

 それとこれとは別っす。

 私は戦争には興味はないっすから」


 明るく答える女。


「そうか・・・ではここで、お別れだな」

「何も今生の別れみたいな」

「僕は何時でもそういう意識でいる。

 その方が気が楽でな」

「・・・変わってるっすね~。

 ・・・っま、生き残っていたらまたどこかで逢いましょっす」

「ああ」


 若い男は太った男に一礼し、部屋を出て行った。


「・・・あいつもお前と同じで、俺に付いてきた中じゃ珍しいタイプだったんだがな・・・」

「へ~・・・そうなん・・・・・・確かに。

 ボスに集まる奴らって・・・どうして最終的に、血の気が多く盗賊みたいになるんっすかね?」

「さあな。

 俺はそんな事、望んじゃいなかったのに付いてくる奴が勝手する行動が、その類に勘違いされそうな事ばかりしやがるからかな・・・。

 おいおい、よく考えると俺って被害者じゃねえか?

 あいつ等に迷惑かけられてんじゃねえかよ」


 今更、その事に気付き不満を膨れ上がらせ漏らしていく太った男。


「まあ、ある意味、ボスの人徳って奴っすよ。

 ・・・脛に傷を持っている集団がボスの所に来て少しは自由になれたんっすから・・・感謝してるんっすよ。

 ・・・私も・・・」

「ふんっ。

 だったら、もっと感謝と恩を返しやがれってんだ」


 その言葉を聞いた女は笑って答えた。


「ははははは・・・ボスの注文はいつも無理難題なんっすから。

 無茶言わないでくださいよ・・・」


 そして、どこか笑っている表情とは違い、寂しそうな雰囲気を見せる女。


「ありがとうございました。

 今まで、ご迷惑ばかりお掛けして・・・」

「・・・言うのが、もっと遅いと思っておったぞ・・・」


 ニカッと笑う太った男。

 そんな男に釣られて女も笑顔になり・・・。


「じゃあ、私はボスの最後の命令に向かうっすね?」

「・・・危なくなったらすぐにトンズラしていいんだぞ?」

「ふふ・・・初めからそのつもりっす」


 そう言って女も、部屋を太った男より先に出て行った。


「ふん・・・まあまあ、楽しめたぜ・・・お前達」


 男も部屋を出て行った。



「どういうことだよ!

 あんたなら簡単に倒せるんじゃなかったのかよ!」

「貴様達こそ、一番に倒してやると息巻いてこのざまとはなんだ!

 碌に倒せておらんではないか!」

「それをいうならあんた等だってそうだろうが!

 1体倒すのにどれだけ掛かってるんだ!」

「そんなくだらない話はいいから早く倒すの手伝って!」


 余裕綽々で首都アルヴォークへ向かった勇者一行と冒険者達。


 勝てると高を踏み、挑むも予想以上の反撃を食らい、首都に入った時点でメンバーの中は荒れていき、首都で徘徊する特殊モンスターには苦戦を強いられていた。


 ギルドから国に報告が入り、情報はちゃんと伝えたはずだが、。

 真面目に取り合おうとしなかった集団は何度も復活するモンスター相手に防戦一方だった。


 結果、首都には入ったものの遅々として入口から先へ進めていなかった。


 その原因は勇者の独断による身勝手な行動だった。


 即席メンバーである以上は、取れる連携も作戦も限られてくる所。

 そこを自分が最も輝くための作戦の様に、冒険者を配置させ動かそうとした結果、本来の力すら発揮出来ず、いつの間にか自分達がモンスターに囲まれかける始末だった。


 さらに・・・。


「おし!

 バカな男にヒットしたぞ?」

「マジかよ~。

 俺が今度は奢るのかよ~」

「じゃあ、あたしは酒ね」

「ちょっ、お前まで賭けてたのかよ」


 太った男の配下の者達が物陰から襲撃して少しずつ冒険者達を倒していった。


「何なんだ、あいつ等は・・・!

 こんなの報告には無かったぞ!」

「誰か、手を貸してくれ!

 仲間がやられた!」

「ちょっと~、押さないでよ!

 コッチはもうモンスターがすぐそこに来てるのよ!」

「おい、回復魔法はまだか!

 遅いぞ!」

「うあああ~、く、来るな~!」


 混乱は更に拡大してしまっていた。



「はあ・・・やっぱ始めてたか~」

「分かってはいましたけどね・・・」

「・・・見ちゃおれん」


 呆れるトウジロウ、メルム、ボールドの3人。


「すまんが、誰かあそこの冒険者達の拠点に向かって連絡を取ってくれ。

 俺達も今から参戦するってな」

「じゃあ、私が・・・!」


 ガキン!


 テスが進んで連絡係に回ろうとした時、突如、上空へ飛んできた複数の矢と魔法。

 それを氷の障壁を作り出し、全てを叩き落した。


「・・・どうやら、あちらも私達の事を敵視しているようですね」

「・・・時間が無い。

 ここは私が行く」

「それでしたら僕もお供します」


 イスカが言うや否や召喚獣から飛び降りる。

 カイルも続いて飛び降りる。


 かなり上空からのダイブなのにも拘らず平然と着地し、そのまま走っていく2人。


「・・・まあ、カイルがいるんだし問題ねえだろ」

「イスカだけで行くといった時は若干焦りましたが、彼も向かうのなら問題ないでしょう」

「・・・んで?どうする?

 さっきから攻撃を仕掛けているようだが・・・?」


 メルムがイスカの口下手に少し焦ったが、ちゃんとその辺りをフォローできるカイルが向かう事に安心した。

 ロイドはカイルが向かうと分かり特に気にしていなかった。

 それよりも、話している間も攻撃を仕掛けている連中が気に入らないようだった。


「まあ、落ち着け、これぐらいなら。

 そこの嬢ちゃんの氷で何とかなる」


 ヤハトがロイドを宥める。


「それよりも・・・ココからどうするかだが・・・」

「っ!」

「おわっと!」

「なに・・・!?」

「ど、どうしたのよ!」


 突然、メルム、フェリル、プリムが召喚獣を首都から遠ざけた。


「・・・障壁・・・」

「かなりヤバイもののようね」

「この子達が気付いてくれなければ危うく嵌ってしまう所でした。

 かなり強力な障壁を張っているようです」


 首都の真ん中、王城を中心とした大きな円で城を見えにくい特殊な障壁が覆っていた。

 メルムが召喚獣を撫で、皆に説明した。


 避けた障壁を凝視するプリム。


「ん・・・厄介。

 捕まったら、しばらくこの子が動けなくなる」

「チッ、王城に入りたければ自分の足で来いってか?」

「我々が来ることは予想済みであっただろう。

 だから、事前に対策を取っていたのだろうな」


 ツェーゲンがロイドの言葉に理由を述べた。


「対策を取るのは当たり前だ。

 それに・・・それだけ僕達を警戒しての事だろうな」

「わーってるよ、そんくらい」

「取り合えず、作戦なんだがどうす」

「私達はあいつに用がある」

「うん・・・これも因縁」


 ヘレン、プリムはトウジロウの話を遮り、大きな建物の上にいる若い男に目が入った。

 そして、彼との決着は自分達で付けると答える。


「・・・分かったお前達がそれで良いなら構わない」

「ありがとう」

「・・・ありがとう」

「ここまで乗せてくれたんだ。

 それくれえの優先はしてもいいさ」


 トウジロウが首都の入口にいる冒険者の側に飛び降りた。

 そして、地面に着地する瞬間に目の前にいたモンスターを一刀両断する。


「・・・うし!

 すぐには死なねえようだが、ここに居るのは比較的弱え奴だな」

「・・・すげえ・・・」

「モンスターが真っ二つ・・・」

「あのモンスターほとんどダメージが通らなかったはずなのに・・・」

「・・・・・・」


 冒険者達はトウジロウのバカげた強さに呆然とした。

 そして、その中で一番驚いていたのは・・・勇者本人だった。


 そんな中、首都の次々下りていく者達。


「な・・・何なんだこの連中」

「いったい・・・」

「ちょっ、子供までいるじゃない!」


 冒険者達の中には見た目が幼く見えるプリム、フェリル、シャーリィ・・・そして、クリスを見て驚いていた。


「・・・今なんか凄くバカにされた気がするんだけど・・・」

「気のせいじゃないかしら~・・・」

「僕もそう思うよ」

「あたしもそんな気がするんだけど・・・?」

「まあまあ、今はそんな事はどうでもいいでしょ?」

「はんっ、下らねえ事言ってねえで、お前も戦え・・・ってんだ!」


 ロイドが迫りくるモンスターの1体を蹴り飛ばす。


「・・・これで、全員ですね」

「そうだな。

 ・・・おい、お前が勇者か?」


 トウジロウが勇者に確認と共に歩み寄る。


 モンスターや太った男の仲間達が攻撃を仕掛けてくるが下り立った、ディック、チャルルやカレン、ケイト、テトがモンスターを撃退し。


 シャーリィ、クラル、サック、ツェーゲンを中心に伏兵を撃退していった。


 そのため、トウジロウは悠々と歩いて近づいて行った。


「そうだが・・・貴様達は・・・?」

「俺はメンセイテンのトウジロウって冒険者だ。

 一応、確認のつもりで聞くが・・・ギルドから情報は聞いているはずだが、どういう事だ?」

「・・・何がだ?」

「とぼけるな。

 俺達が到着するまで、待機しろって話だ。

 知らねえとは言わさねえぞ?」


 トウジロウは静かに威圧を出して勇者を見る。


「・・・こ・・・こんな問題。

 き、貴様達が出るまでもなく俺が簡単に」

「解決できると思っていたのか?」

「・・・」


 更に強い威圧が出される。

 体内マナを使って中にあるマナの濃度の濃さが相まって、トウジロウの威圧がより強さを増す。


 それは周囲にもまき散らし、平然としているのは遅れてきたメンバーのみだった。

 若干名、少し怯えているがそこまでではなかった。


 しかし、まともに浴びせられた勇者達は違った。

 離れている冒険者達もトウジロウの圧に耐えられず、尻餅を付いて震えだす者まで現れる。

 中には頭を抱えて下を向く者も。


「お前達の勝手な判断で被害が大きくなることは分かって行動したんだよな?

 最悪の場合、その落とし前を付ける覚悟はあったんだよな?」

「・・・」


 勇者はプライドに賭けて意地でも屈さず、冷や汗をダラダラ掻きながらもトウジロウと相対していた。

 対等の立場で居続けようと立って、目線を逸らさなかった。


「俺は勇者だ。

 その称号の下に俺は立つ。

 俺が取った行動に、間違いは・・・無い!」

「・・・・・・」


 少しの間黙って勇者を見ていたトウジロウはフッと威圧を消して普通に戻った。


「そうだな。

 自分なりに判断して選んだ行動なんだな。

 ワリィワリィ」


 トウジロウは勇者の鎧の肩をポンポン叩いて踵を返した。


「だが・・・。

 お前達じゃ役不足だ」

「何だと?」

「お、おい見ろ!」


 勇者の仲間の1人が話を振り、周囲を見回す。

 そこで、初めて気付いた。


 先ほどまで防戦一方で負けそうだった状態がいつの間にか無くなっていた。


 それはトウジロウ達の仲間が周囲にいたモンスターと伏兵を一掃したからであった。


「・・・いつの間に・・・!」

「ここに居る奴らは大した奴らじゃねえ。

 おそらく、城に近くなればなるほどもっと強いモンスターがいるはずだ」


 トウジロウの言葉に冒険者達が戦慄した。


「嘘だろ」

「だって、あんな強い化け物そうそういるもんじゃないだろ・・・!?」

「それに・・・そんなのが何度も復活したら・・・」

「国なんて簡単に滅びてしまうじゃねーか!」

「私達でやっと3体は倒せたと思ったのに・・・」


 恐怖と悔しさ、そして襲い掛かってくる絶望に冒険者達の戦意がみるみる消えて行く。


「本来ならもう少し、その辺りの認識も持って挑んでくれると思って期待したんだがな・・・」


 トウジロウはあからさまに首を振って、勇者達を見た。


「功績が欲しいのか、名誉が欲しいのか知らねえが、今回は拠点まで帰れ。

 邪魔だ」

「なっ!」

「勝手に国が与えた称号で過信するな。

 今の自分の力を知れ。

 さっきまで自分がどんな状況にあったか考えろ」

「あ、あれは!

 こいつらが役に立たなかったから!」


 勇者は冒険者達を指差し、トウジロウの評価に自分とは関係ないと言い切った。


「勝手に来た奴全員が悪い。

 幸い、まだ死者が出なかった事を幸運に考えておけ」

「それこそ、こいつらの責任」

「責任はテメエにもあるって言ったんだ」

「・・・」

「いいかバカ共。

 重傷者が半数以上もいて、しかもまだ撤退できる手段が取れたにもかかわらず、戦闘を続行し、余計な被害を出しているこの現状。

 指揮官がお前だとしたら、相当な疫病神だ」

「なっ・・・」

「お前がどうしてそんな行動に出たか興味はねえ。

 どうでもいい。

 だが・・・大人数で作戦に挑む以上は個人の主張だけを押し通すなんてのは無理だ。

 そんな事をすればテメエの都合で誰かが酷い目に遭う」

「・・・」

「だから勝手に進むなら自己責任だが、強引に引き連れていく以上はそれ相応の覚悟を持て。

 自己満足の欲求だけではなく矜持を持て」

「・・・」

「・・・まっ、俺に言えた義理でもないけどな」

「全くです」

「おいおい、そこは``そんな事ないです``って言う所だろ」


 ハッキリとカレンが肯定したためにトウジロウがツッコんでしまった。


 勇者達や冒険者達は改めて今の自分の現状を考える。


「納得いかないかもしれませんが、ここは撤退してください」

「後は我々でこの戦いにあたる」

「今は怪我の治療と回復に専念してください」


 テス、ボールド、メルムからも言われ、冒険者達はトボトボと踵を返し拠点へと戻って行く。


「貴様もだ勇者一行」

「あんた達がここに居ても邪魔なだけ」

「今は大人しく引いてください」


 ツェーゲン、シャーリィ、トリシュに言われる勇者。


「っ・・・!」


 何かを言いかけた勇者だが、仲間の1人が首を振り、拠点へと帰って行った。

 それを見た勇者は、顔を歪ませた。


 しかし、他の仲間も背中を叩いて歩くよう促した事で拠点に向かって歩いて行くのだった。


「・・・何かあった?」

「・・・今、戻りました・・・けど・・・彼らはいったい・・・?」


 すれ違いでトウジロウの下まで来たイスカとトウジロウ。


「ちょっと、無茶して、手痛い目に遭って反省させていた所だ」

「・・・意外と優しい」

「おいおい、俺は何時だって優しい男だぞ?」

「・・・そうなの?」

「・・・・・・」

「おい、そこはしっかりと頷くか返事を返せよ」


 イスカがカレン達を見るが、カレン、ディック、チャルルの3人は眉を寄せ変な顔をして考えて各々コメントを控えた。


「カイル君それで?」

「え?ああ、はい。

 一応、指揮官には伝えてありますよ。

 何でも協力はするつもりだと、おっしゃっていました」

「そうですか・・・。

 指揮官が話の分かる人で助かります」

「それと、事前に話してあった事を指揮官に伝えたのですが・・・。

 一応許可は下りましたよ」

「そうですか・・・良かった・・・」

「うん・・・何か私達の事を知っている人がいたみたい」

「まあ、私達もそれなりに名は知れていますからね」

「って事は・・・」


 ロイドがメルムに確認を取る。


「はい。

 事前に話していた通り。

 この戦い、私達の独断で動いても構わないという判断をいただきました」

「それじゃあ自由にして良いって事か?」

「ああ、そうだ。

 ただし・・・もし、何かあっても助けは期待しないでくれ・・・だってさ」

「はっ、上等」


 パシッと手のひらに拳を叩き、やる気を燃やすロイド。


「っつうわけだ。

 こっからは・・・まあ、さっきあいつ等に言った手前で何だが・・・自己責任でこの戦いに努めてくれ」

「私達はあの男の所に向かう」

「うん・・・」


 ヘレンとプリムは言い終わるとすぐに若い男がいた方向へと向かって走って行った。


「あ、待ってヘレン、プリム!」

「僕達も追いましょう」


 ゾッドがヘレン達を追いかける。


「クリス君も」

「おっと、待った」


 テスがクリスを連れて行こうと手を差し出したが、トウジロウが遮る。


「どうして・・・」

「・・・坊主。

 テメエはテメエの好きなように動け」

「え?」


 急に真剣な顔でトウジロウがクリスを見て言葉を掛ける。


「ああー。

 ハッキリ言っちゃなんだが、お前がこの中で一番戦えるかもしれねえ。

 だが、そこに俺達が入っちゃ、お前が十分に戦えねえだろ。

 だから・・・坊主、お前だけは1人で好きな所へ行け。

 どこに行くかもどうするかもお前が決めろ」

「・・・」

「ちょっと先生、そんな事、いきなり子供言っても分からないじゃないですか」

「大丈夫だ」


 擁護するディックをトウジロウはハッキリとクリスの顔を見て断言した。


「安全を取りつつ攻略をしなければいけない以上は最低でもペアを組むべき所だが・・・坊主に関しちゃ単独行動の方がむしろ動きやすいだろう」

「・・・そうだな。

 俺もそう思う」

「俺もだ」


 ボールド、ツェーゲンが同意した。


「そうだねー。

 その子なら問題ないんじゃない?」

「むしろ~私達の方がシッカリしないと。

 自分達で作り出したモンスターに殺されちゃうかも~?」


 そんなつもりは無いと思いながらもふざけるクラル。


「まあ、今回はあんたの意見に俺も賛成だ」


 ヤハトも賛成する。


「今は別々に行動、事前に話し合った事を先に片づけてからにしようじゃない」

「そうだったな」

「・・・うん」


 テスがクリスをそれでも心配する様な不安な顔になった。


「大丈夫」

「・・・イスカ・・・」


 イスカがテスの肩に触れて元気づける。

 やがて、頷くテス。

 それを見たトウジロウがまとめる。


「そんじゃあおさらいだ。

 俺達メンセイテンはこのまま周囲のモンスターから一掃する。

 イスカのパーティも同様だ。

 テスの嬢ちゃん、あんたの所は先に仲間が向かった所の問題を片付けてから中央、城へと向かいながら伏兵とモンスターを倒していってくれ。

 そして、ツェーゲン。

 お前達は領主の子供達の救出を優先してくれ」

「はい」

「うん」

「分かりました」

「そのつもりだ」


 カレンが返事を返したのに続きそれぞれのリーダーも返した。

「それと砂丘のダムガ。

 あんた等のパーティは3人だ。

 元々人数が少ない以上、3人で固まって動くかそれぞれのパーティの中に入って戦ってくれ」

「了解だ」


 ボールドが答え。

 ケイト、テトも頷いた。


「そして・・・坊主。

 お前は好きに動け。

 たぶん、いや必ずお前を待っている奴が城にいる可能性が高い・・・。

 ガキ達はツェーゲン達が探し出す。

 お前はお前のやることやれ・・・」

「・・・」


 クリスは上空から見た城の方角を見る。


トウジロウが全員を見回し笑った。


「・・・さて、ここいらでいっちょ決着を付けようじゃねえの」






【クリス】5才 人間(変化)

 レベル 23

 HP 279 MP 265

 STR 112

 VIT 101

 INT 107

 RES 102

 DEX 109

 AGI 120

 LUK 63

『マナ性質:レベル 2 』『強靭:レベル 2 』『総量増加:レベル 6 』

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