122 お恥ずかしいかぎりで・・・
領主に、シェイミ―とキルシュが連れ去られたことの顛末が説明された。
場所は人数を考えて、大部屋で行われた。
現在、ここには古城攻略に参加したメンバー、クリスやテス達を含む高ランク冒険者達。
教会からボールド達・・・さらにギルドからセルリアと・・・。
「・・・ごめんなさい」
「いや・・・君のせいじゃない。
もちろんそれは、あなた方も同じだ。
娘と息子の為に尽力を尽くしてくれた君達を責める資格は・・・私には無い」
唇を強くかみしめ沈痛な面持ちで話す領主バーデン。
「クリスちゃん、テスちゃん達もよく頑張ってくれたのは分かるわ。
・・・だから、そんな顔をしないでちょうだい・・・ね?」
自分もつらい気持ちになるが、努めて冷静に対応しようと頑張る領主の妻レナ―シェ。
「・・・」
「・・・それでも、重ねて・・・。
あなた方のお子様達を守れなかった事・・・代表として謝らせていただきます。
誠に・・・申し訳ありません」
深く、テスが頭を下げたのに合わせて、ヘレン、プリム、そして護衛騎士のリンジーと、途中で助けに参加したトルカが謝罪した。
「・・・私達の子供は誇らしいよ。
あなた方みたいな方に大事に思われて・・・。
たとえ、短い関わりだったとしても、懸命になって戦ってくれた事から私でも何となくだが分かる。
ありがとう」
「そうね・・・だから、謝らないでちょうだい?
それに・・・シェイミ―もキルシュも捕まったのであっても、それ以上は事はされてないと思うの・・・きっと・・・」
最後の言葉はレナ―シェ自身への言い聞かせであり、希望、願いであった。
「しかし・・・どうして宝石を・・・それに息子まで・・・」
「それについては・・・彼らが・・・」
リンジーがバーデンの疑問に答えるため連れてきた者達を紹介する。
「彼らは・・・魔族?・・・いや、それぞれ種族が違うな」
「初めまして・・・私は、ツェーゲンという・・・」
少し前・・・。
「サックどうして皆をここに集めた?」
「先にココにある緑の宝石を回収ためにじゃない?」
「それもある・・・ただ、今・・・全員をここに呼ばなければいけない気がしたんだ」
「・・・お前さんの能力関係か?」
「(こくん)」
「・・・一体ここに何が?」
「そうですね。
あたし達まで連れてくるなんて・・・」
「ベーデルさん、トリシュも・・・サック様が必要な事だとおっしゃるのなら、それは重要な事のはずよ?」
「でも~、ここってその宝石のある町からちょっと外過ぎじゃない~?」
「・・・ここに意味があるのだろう・・・そうだな?」
「分からない・・・だけど、ここに来るよう強く呼ばれた気がするんだ・・・」
「・・・この場所に?」
「うん・・・!」
「?、どうし・・・!」
「「「!」」」
サックが異質なマナに反応し、その後にツェーゲン達も気付き反応した。
「なんだこのマナは・・・?」
「あっち・・・」
「サック!」
サックが森を走り出し、町の近くまで向かう。
ツェーゲン達のそれに続いた。
そして、目の当たりにしたのは・・・自分達が作り出したモンスターを使役する男達と冒険者達が戦っている姿だった。
「なっ!あれって!」
「俺達が作ったモンスター・・・!」
「・・・あの男は・・・!」
「それに・・・あの若い男と女・・・」
「こんな所に・・・」
「まさか、宝石を狙って!?」
「ああ。・・・ベーデルからの話では可能性はある」
「そうか・・・あいつらが・・・お前達と宝石を・・・」
「ヤハト、落ち着け・・・様子を見ろ・・・」
ツェーゲンの言葉に仲間達は、マナを抑え、シャーリィとクラルが魔法でカモフラージュをして存在を隠し、目の前の戦闘を見つめた。
「モンスターとあの男女を相手に勝っている?」
「ああ・・・それに、護衛の者達もモンスターを相手に負けていない」
「というか、あの子供何なの・・・!?
明らかに年齢に逢っていない様な魔法の威力なんだけど・・・!」
「・・・分からないわ~。
ただ、それでも・・・勝ち切れていない様にも見える」
「ああ・・・だぶん原因はあいつだ」
ヤハトの言葉に太った男を見るツェーゲン達。
「やはりあの者ですか・・・」
「ベーデルを逃がした男か・・・」
「あれを逃がしたとは絶対言わないと思うんだけど・・・」
「ですね・・・その仲間達が問答無用で襲ってきていましたから・・・」
「このままじゃ・・・負けちゃうのかな?」
そんな思いが出始めた時・・・それは現実の物となった。
「なんだあいつの異様なマナは・・・!」
「怖い・・・こんなに離れているのに・・・」
「量じゃない・・・質だ。
奴が持つマナが以上に濃くて濃密なんだ・・・何だあいつは・・・!」
それからはあっという間に形勢が傾き、敗北一色に変わる。
さらに、追加で現れた男。
「?・・・誰だ?」
「知らない」
「見た事もない・・・なんだあの爺さん?」
小太りの老人が現われ、いよいよこの戦いも終止符が打たれる時・・・。
「?」
「え?」
「なに?」
突然、今まで圧倒し続けた太った男が吹き飛ばされた。
そして、下り立つ少年。
「・・・今、あの子供がやったの?」
「・・・分からない」
「・・・何をしたのでしょうか?」
「何も見えなかった・・・」
それはモンスターをいつの間にか倒し、男に斬り込む姿しか見えていなかったからだった。
「(この離れた距離からでも、あの子供がとった行動が見切れていなかった、というのか・・・?!)」
ツェーゲン達にとって、クリスの戦闘は一般の子供の常識を遥かに超える規格外な戦闘だった。
そこからの男との応酬。
そして男の方が徐々に苦戦しているようにも見える光景に唖然としていた。
そして、吹き飛ばされ大きく後方へ、ツェーゲン達の側を通過し飛んで行った。
「ぐっ」
全員が飛んできた風に顔を自然と守るように庇った。
「さっきと全然違うじゃない、あの男!」
「あの子供が異常なんだ。
力を出さないと負けるって本能で判ったんだ!」
そして・・・。
〔クリス、近くに複数の存在を感知しました〕
「(奴らの関係者か?
そうじゃなければ、先にあいつだ)」
クリスが微かにサポートの知らせから感知した方向に目を向けるがサッとまた戻し、戦場へと戻るために加速した。
「・・・いま、私達に気付いた?」
「分かりません。
ですが・・・明らかに目線が・・・」
「こっちを向いていたな・・・あの子供・・・」
「位置や人数までは分かっていないとは思うけど・・・気付かれてると思う」
サックはクリスの反応に気付きツェーゲン達に答える。
「マジかよ・・・とんでもねえガキだな」
「・・・」
ツェーゲンは黙って戦場を見た。
「あれって!」
「宝石!」
「あの子からも光った。
もしかして・・・彼も持っているの・・・?!」
更なる衝撃がツェーゲン達に齎された。
そして、シェイミ―達が連れ去られるまでの一部始終を見た後・・・。
「・・・僕達には彼の力が必要・・・」
「サック・・・」
「まあ、あれだけ強けりゃあねえ?」
「分かる気がしますわ~」
「違う・・・それだけじゃなくて」
首を振ってサックが仲間の言葉を中断させる。
「彼が・・・僕達の願いの助けに絶対になってくれる・・・」
「・・・ただの協力じゃなく?」
「(こくん)」
「・・・分かった、行こう・・・」
「えっ?ツェーゲン?」
ツェーゲンはサックの言葉を信じ、クリス達の前へと自ら現れた。
それが・・・戦闘が終了し、兵士達やマイク達が来た時とほぼ同時だった。
そして現在・・・。
「私達には・・・彼の力がどうしても必要だ」
「ちょ・・・ちょっと待ってください。
クリス君の力を見て、それが欲しくなったのは分かりましたが・・・彼の意志はどうなるんですか?
そもそも、この子はまだ子供です。
確かに冒険者ではありますが仮登録の・・・まだ、幼い子なんですよ?」
「分かっているつもりだ・・・。
勝手な話なのは分かっている。
それでも・・・」
「ツェーゲン・・・」
スッと頭を下げたツェーゲン。
「私・・・いや、俺達にはどうしても彼の力が必要なんだ」
「・・・事情は少しは分かりました」
領主が代表して言葉を発する。
「あなた方にも、どうしても引けない事情がおありなのでしょう・・・。
そして、シェイミ―達を襲った者・・・モンスターとも浅からぬ因縁があると見える」
「それについてはすまないと思っている。
あのモンスターは・・・俺達が作ったモノだ」
「「「!」」」
それぞれが衝撃に包まれる。
「シェイミ―様達を連れ去った者達が引き連れたモンスターは貴様が・・・」
リンジーが震えながらツェーゲンに言う。
「そうだ・・・奪取され、今はあいつらが持ち去ったが・・・元は俺達の作ったモノだ」
「・・・では・・・あの時、あの洞窟で・・・」
「あの洞窟?」
リンジーの言葉に疑問を浮かべるツェーゲン。
「とぼけるな!
貴様らのせいで死にかけた事だ!
知らないとは言わせない!」
リンジーがツェーゲンに掴み掛ろうと飛びつく前にビスガルが羽交い絞めにして止めにかかる。
「落ち着けリンジー!」
「ぐっ・・・放してください!
あいつは・・・あいつ等だけは・・・。
それに今回だって、本当の事を言ってるとは限らないじゃありませんか!
シェイミ―様とキルシュ様を攫った仲間ですよ、きっと!」
「それは違うわ!」
シャーリィがリンジーの言葉に真っ向から否定する。
「どこにそんな証明が出来る!
貴様達が連れ去ったという方が、誰だって納得するぞ!」
羽交い絞めにされながらも噛みつこうと暴れるリンジー。
しかし・・・。
「本当に・・・違う?」
「?・・・クリス君?」
クリスがツェーゲンの前に来て、顔を見上げ見つめる様にして聞く。
「・・・・・・洞窟の件は詳しく聞かないと分からない。
しかし、今回の事に俺達は関係していない。
誓って・・・」
スッと片膝を付き、クリスと出来る限り同じ目線になって話すツェーゲン。
「俺達の勝手な頼みで申し訳ないが力を貸してくれ・・・頼む。
代わりに、攫われた子供達は俺達が全力で力を貸して協力する・・・だから・・・」
頭を下げたツェーゲン。
それに倣うように、ヤハト、シャーリィ、クラル、サック、ベーデル、ノイシュ、トリシュが頭を下げる。
「・・・リンジー・・・私の子供達の為に感情的になってくれて感謝する。
だが、ここは・・・私に免じて矛を収めてはくれないだろうか?」
「私からもお願い、リンジーちゃん。
あなたの怒りは嬉しいわ。
・・・けど、彼らが嘘を付いてるとは思えないの・・・だから・・・ね?」
「・・・・・・申し訳・・・ありません」
力が抜けだらりと腕を下げたリンジー。
ビスガルは解き、背中を軽く叩いて慰めた。
「お前の気持ちは分かる。
だが・・・今重要なのは、これからどうするかだ」
「・・・はい・・・!」
ビスガルを見て、しっかりと心に刻むように返事を返すリンジーだった。
「では・・・少しだけ、今後の前に聞かせてほしい。
洞窟での件についてだ・・・」
・・・・・・
・・・
「事情は分かった。
君達が強力してくれるなら心強い。
クリス君の話では、男はアルヴォーク・バルの首都で待つっと言っていたそうだな?
だったら、娘達もそこにいるのは間違いない」
「ひどい目に遭ってないかしら~・・・?」
「・・・おそらく大丈夫だろう・・・」
「・・・彼らのアジトを襲った時はそんな約束を守れそうな印象は受けなかったのだけど・・・。
クリス君か・・・」
「ああ。
彼がクリス君を怒らせるためなら、シェイミ―とキルシュに危害を加えるだろう。
しかし・・・既に、攫ってしまった以上、それ以上の事はしないだろうな」
「しかし・・・どうしてキルシュを攫おうとしたのかしら~?」
「分からない・・・宝石との関連がありそうだが・・・代々あれは、長男、長女が引き継ぐことがほとんどだった。
攫うにしても、キルシュではなくシェイミ―のはず」
「うーん、その辺り・・・何か分からないかしら?」
レナ―シェがツェーゲン達に話を振った。
「・・・分からない。
私達は、宝石に用があった。
それ以外には特に重要視していなかった」
「・・・貴様が以前接触していた奴は?」
ボールドが質問する。
「・・・あいつか・・・。
その可能性は否定できん・・・。
しかし、奴が他の者・・・今回の様な仲間を引き連れていた所を一度も見たことは無い」
「お前達の前では、そうしなかっただけでは?」
「その可能性はある・・・が・・・」
「あの手の奴は一匹狼を好む。
無駄につるんで、自らの計画を潰すよりも、個人で動きたい性分だろうな」
「お互いに利害が一致した時は動くが、それ以外の干渉が嫌っていたからな」
ヤハトが追加で伝えた情報、更に補足で言ったツェーゲンの言葉にボールドは黙った。
「たが・・・奴が関連するにしても何にしても・・・その子供と宝石が必要なのは確かかもしれない」
「何を根拠に?」
カレンがツェーゲンに疑問を投げかける。
「儀式かどうかは知らんが・・・宝石が無いと計画は進まないという事だろう・・・。
わざわざ、彼に来るよう仕向けるという事は・・・彼が持っている宝石・・・。
それが必要という事だ。
それまでは肝心の何かは進められないのだろう」
「・・・分からないことだらけだが、少なくともそれまではシェイミ―もキルシュも無事、という事だな?」
「おそらく・・・」
ツェーゲンがバーデンの確認に肯定して返す。
「・・・なら、少しは安心ね。
それで・・・ギルドの方は?」
レナ―シェがセルリアに問う。
振られたセルリアは席を立ち、説明する。
「現在、分かっている段階では、帝国からの避難民がたくさん隣国に流れてきているようです。
私達の国もそうです。
調査に向かった、攻め込まれた砦の国境からたくさんの列を成して逃げて来た者達がいるとの報告がありました」
「それは、私達の方でも聞いている」
バーデンが頷き答える。
「現在、その事から考えて、帝国の町・・・あるいは首都は壊滅状態ではと予測し、調査隊を増やし、帝国の内部を調べてもらっています。
そして、分かった事がほとんどの町の内部が荒らされていたわけではないそうですが・・・それなりの被害には遭われたようです」
「被害・・・?」
「先ほどおっしゃったツェーゲンさん達が作ったというモンスターが大量に現われ、町を占拠したようです。
それは、突然現れ、町の一部を破壊し、暴れたそうです。
反撃に出た兵士や騎士たちは殺され、襲い掛かってこない者は無視していたそうですが、恐怖した住民が町を捨て、逃げてきたようです」
「・・・モンスターの数はどれくらいになる?」
「分からない・・・我々の作った数は300体。
今回、そこの冒険者やウチのベーデル達を襲撃した時にいくらか数は減らせてはいたが・・・それでも200近くは残っていると考えた方が良いだろう・・・」
「200・・・」
「はっ、そんくらいの数、どうとでもねえさ」
数に深刻になるカイルとは別にロイドは気楽に返す。
「・・・その考えは甘い」
「確かに」
「あ?・・・どうしてだ?」
プリム、ヘレンがロイドの言葉に首を振って否定した。
「・・・どういう原理か分からないんだけどー。
マナを強制消費するリミッターが外されてたんだよねー・・・」
「リミッター?」
シャーリィの言葉に、疑問を浮かべたメルム。
代わりにクラルが説明した。
「マナって~。
自分が持つ限界まで使えるって言われてるけど~・・・実は、違うのよね~・・・。
ヒトは命が関わってくると無意識に本能が働いて~、これ以上はダメ~って歯止めがかかるのよ~。
だからマナを使い切って死ぬ、なんてことはそうそう起こらないのよ~」
そこにサックが続いて説明した。
「それはモンスターも例外じゃない。
当然、僕達が作った特殊モンスターも・・・。
だけど、何をしたのかさっき彼女達が戦ったモンスターは無理やり超速再生して復活した」
「最後には消え、消滅したがあの使い方は異常なマナの消費を起こす。
ただ、破れるだけでは起きない現象だ。
消えるまでに時間が掛かるのは持っているマナを世界に還元させるには多少の時間が掛かるからだ。
そこを・・・奴らは、無理やり消滅する最後まで使い復活させた」
ツェーゲン達の話に得心がいったクリス達。
「確かに・・・クリス君が倒したモンスターは消えるまでしばらくかかったが・・・」
「私達が倒したモンスター。
マイクさん達が来るまでそれほど時間が経っていなかったのにも関わらず、私達が屠ったモンスターは完全に消え去っていた」
テス達はあとからその状況を知って、疑問に感じていた。
「あれなら・・・最悪、2回~3回は復活できる。
更に強いモンスターだともっと多いかもしれない」
「はん、たかだかそれぐらい」
「僕達が作った段階では弱いモノで冒険者ランクで言えば中級程度。
レベル200代が多かった。
だけど・・・更に強化していたのだとしたら最低レベルが200じゃない」
「・・・私達が戦ったモンスター・・・あれはその中のどれくらい?」
プリムが素朴な疑問をサックに投げかけた。
「最初に出てきたのは・・・大半が最低レベル200代からちょっと強めの辺りだったと思う」
「・・・そう・・・」
「おいおい、どうした?
たかが200。
Cランク程度の間じゃねえか」
「・・・テス。
あなたの感想で良い。
Cランクほどの強さだった?」
ロイドが鼻で笑いあしらうが、イスカはテスに確かめた。
「・・・感覚で言えばB・・・あるいは能力を加味すればAにも入るかもしれないわね」
「私も同意見だ」
「うん・・・そんな感じ」
「おいおい、持ち上げ過ぎじゃねえか?
そこまではいくら何でも」
「・・・ねえ、あたし達と互角かもしれない奴らと戦ったのよね?
どうしてあんた達はそのモンスターには簡単に倒せたの?」
フェリルがロイドの言葉を遮り質問した。
「俺も気になる・・・どうしてだ?」
「私も気になります」
「私も・・・」
ディック、チャルル、カレンも気になっているようだ。
周りを見てみると、ケイトもテトも気になると表情に書いていそうな感じだった。
「そりゃあ、突破したからだ・・・」
「突破?・・・」
トウジロウが言ったことが理解できず、オウム返しでシャーリィが聞き返す。
「長い歴史の中で、冒険者の中には英雄と呼ばれる・・・まあ、ある種の伝説。
頂点に君臨する存在という枠組みがある。
そういう奴らは決まって自らのレベル、魂っつうものの限界を超えた事がある奴がなっている領域だと言われている」
トウジロウの言葉に誰もが黙って聞いていた。
「まっ、大抵はレベルが早くガンガン上がっちまえば、その影響で強くなっちまうから、自分の限界なんてのは分からねえ。
自ら年齢だ何だで限界を作っちまうだけだ。
実際に英雄と呼ばれる存在はいるし、限界を突破する事はままあるこの世界では・・・本当の意味で限界に差し掛かり、そこから殻を破った存在なんてのは極少数の為、知らねえんだ。
そもそも自らの限界なんてのは、探ってみると分からねえもんだ。
だがある時・・・経験だけじゃねえ、自身の負の心じゃねえどこかで・・・核心を持って、気づいちまう問題にぶち当たる。
俺の限界はココだって・・・」
トウジロウの言葉に思い当たる者達が、下を向き、自分の事を考えた。
「そして、そこから何らかの方法で突破した奴が更に上の領域へと足を踏み入れる。
俺がそれを体験したから言えることだ。
確信を持って言う、英雄に昇り詰める奴らはそんな領域に生きている化け物だ。
そして・・・奇しくも俺達はその領域に入ったか、殻にヒビを入れ、入ろうとしている」
「・・・俺達?」
ケイトがつい、言葉に出てしまった。
「そうだ。
古城・・・あの依頼で戦った、あのバンパイアに戦った者はおそらく例外なく、従来のその領域とは異なる感覚に襲われたはずだ。
心当たりねえか?」
トウジロウはテス、プリム、ヘレンの顔を順々に見る。
「・・・確かに、戦った時に感覚と、思考と、肉体に少し違和感を起こしていました」
「・・・ん」
「私もだ。
そうか・・・あれは・・・」
「どうやら、心当たりはあるようだな。
限界を突破し、器が昇華したことで不一致を起こしているんだろうな。
こればかりは自分で確かめて調整するしかねえ。
器がどこまで成長し、落ち着くか分からねえからな。
時間が少し掛かっちまうだろうな」
「あそこにいた全員って事は・・・あたし達も!?」
ケイトがトウジロウの言葉に少しづつ理解が追い付くにつれ驚きが大きくなった。
「あのバンパイアに挑んだ奴らは漏れなく、その力の片鱗は手に入れたはずだ」
「あ、あの~・・・それでは~・・・その少年も?」
テトがクリスを指したことで全員の視線が一点を指した。
「ああー、そこの坊主は例外だ。
というかおそらくとっくに限界を突破しているはずだ。
前回の依頼といい、今回の襲撃といい、それは証明済みだろう」
トウジロウの言葉にクリスの力を理解した者達は黙って納得していた。
マイク達はとっくにミカルズの塔で知っていたために大きく頷いていた。
特に驚いていたのはツェーゲン達。
「えっ、あの吸血鬼、倒されたの!?」
「知らなかった~」
「ははは・・・いやはや、驚きを通り越して怖いね~」
「なるほど・・・確かに、彼なら・・・」
ツェーゲン達も各々がそれぞれの反応をしながらもどこかで納得していく。
「・・・今更、驚くべきか、どうなのか困るな」
「そうね~」
「・・・君はホントにとんでもない事してくれるね~」
例外はいた。
初対面に近い者と記録と口頭でしかしらないバーデン、レナ―シェ、セルリアの面々は戸惑っていた。
〔注目の的ですね~クリス〕
「(楽しそうに言わないで。
こういうの慣れてないから恥ずかしいんだって)」
何とも言えず困惑した顔のクリス。
「・・・ふふふ」
そんなクリスの表情にとても嬉しそうにするテス。
「(なんだかんだ言っても、やっぱり子供だもんね)」
クリスが遠い存在ではなく、とても身近に感じたテスは温かい目でクリスを見ていた。
【クリス】5才 人間(変化)
レベル 23
HP 279 MP 265
STR 112
VIT 101
INT 107
RES 102
DEX 109
AGI 120
LUK 63
『マナ性質:レベル 2 』『強靭:レベル 2 』『総量増加:レベル 6 』




