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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
122/473

120 襲撃者

 それは話し合っていた最中だった。


〔クリス!〕


 サポートからの強めの呼び出し。


「(どうした?)」

〔外・・・壁の方から、異質なマナを感じ取りました〕

「(外?・・・)」

「ーーー・・・クリス君?」


 ふと窓の外を見ると、クリスにはまだ、ハッキリとは掴めていないが、何らかのエネルギーがうねるように壁を伝って町に入ってくるようなイメージが湧く流れを微かに感じ取った。


「〔壁の・・・外!〕」


 理解したとたん、感じた方角からシェイミ―達が出て行った方角に気付く。

 クリスは即座に行動に移し窓を開け、そこから飛んで屋根伝いに飛び越えて行った。



「・・・よお、元気かい?」


 筋肉はしっかりあるのに、お腹周りが残念な太った男がどういう仕組みか空間を切り裂いてテス達の前にやってきた。


「それ・・・前も同じことを言ってたっすよねー?

 ほかの挨拶の仕方ないんすか?」

「普通のすればいいのでは?」

「お前ら、せっかく登場したってのに、ド頭からダメ出しすんじゃねえよ。

 傷つくだろ?」

「・・・意外です。

 そんな柔な心なんてあったんすか!?

 衝撃です!!」

「いや、だから、もっと優しくしろよ・・・ったく。

 こんな部下ばかりなんだよ。

 どう思うお前ら?」


 太った男と若い男女が空間から、ヘレン達の側の平原。

 クレフーテの町に下りてきた。


 そして、その後ろを数十体もの異形なモンスターが続き、クレフーテに出てきた。


「あ・・・あのモンスター・・・!」

「お姉ちゃん!」


 キルシュはヘレン達に守られながら後退し合流。

 シェイミ―と手を繋ぐ。


「お嬢様達は私の後ろへ・・・」


 リンジーがシェイミ―、キルシュの前に立ち抜刀する。


「・・・なんなのあいつ?」

「わからん。だが・・・危険な奴だ」


 プリムとヘレンも警戒し身構え、側にいる召喚獣が唸っていた。


「・・・あなた方はどなたでしょうか?」


 テスもゆっくりと細剣を引き抜き、ヘレン達の更に前へ立って、質問した。


「俺か?・・・俺はー・・・まあ、しがない元冒険者って奴かな?」

「知らないっすよ、そんなこと―」

「我々はあなた方に危害を加える気はありません。

 ただ・・・その子をいただければ」

「っ!」


 若い男がキルシュを指差す。

 差されたキルシュは姉にしがみついて顔を埋める。


「~~っ・・・いいっすね~。

 すんごく可愛い子じゃないっすかー」


 キルシュの反応に女がクネクネさせて喜ぶ。


「残念ながら、聞けない話ですね」

「んーー、まあお前さんには聞いてないんだがなっ、っと」


 ドンッ!


 飛び出した太った男が大きな斧を片手で操り、テスに斬りかかった。


 バッギイイイイイイイイイイイイイイン・・・・・。


「っ・・・(重い・・・)」


 衝撃で地面が深く、テスと太った男を中心に沈んでいく。

 砕け、地面の土が捲れ上がるほどの衝撃その規模は膨らんでいき・・・。


「「っ!」」


 ヘレン達が飛んで後方へと下がる。


「・・・ははははははは・・・お前、今の動きが見えたのか・・・へ~・・・」

「っ・・・どういう、事でしょうか・・・。

 確かに、早く・・・それにっ!」


 ガインッ!

 ヅガアアアアアア・・・。


 受け止めた斧を力で切り払ったテスの攻撃で地面が更に男の方へ伸びる様に抉れた。


「おっと・・・ふう・・・。

 なんだ、気づいてねえのか?」

「?」

「はあ・・・こりゃ、期待外れかな・・・やれ」


 男の合図で待機していた異形のモンスターが動き出した。


「「「ぐぎびでぐごああああああああああ」」」


 オーク、オーガ、ゴブリン、ミノタウロス、ケンタウロス、カエル、ヘビ等々。

 顔の形だけは体と合っているが、いや合わせているが、そもそも大きさが、分かり易いくらいバランスが取れていない。

 更にマナの流れが異質にうねり混ざり、体から吹き出していた。

 そして、そのマナが触手のようにウネウネと動き回っていた。


「これって・・・テス!」

「ええ、分かってる。

 報告にあった異形なモンスター。

 たぶん、これの事を指しているのでしょうね」

「・・・でも・・・オカシイ」

「ええ。

 確か、砦で消息を絶ったって話だけど・・・そもそもここは帝国の国境から離れている。

 さっきの歪んだ空間は・・・魔法?」

「およ?思ったよりも冷静っすね~?」

「砦を襲ったことが知られていたようですね」

「ふむ・・・どっちでもいいわ。

 どのみち時間の問題だったんだからな」


 テス達の反応から襲撃犯も気付いた様子だった。


「帝国がわざわざ子供を誘拐ですか?」

「・・・」

「それとも・・・別の何かでしょうか?」


 テスは男達の目を見て、僅かな反応でも見逃さないようにして探っている。


「どんな理由でも許されない行為ですよ?」

「・・・」

「(反応なし・・・ですか)」


 太った男は肩に斧を担ぎ首を回す。


 テス達は相手の真意を探るために質問を投げかけるが取り合わない。

 そんなテス、ヘレン、プリムは会話をしながら異形モンスターを次々葬っていた。


「ちょっと~、どうすんっすか~?

 予定とちがうんっすけど~?」

「思った以上にあっさりと殺されて行きますね~。

 本当にコレが使えるのか・・・」

「ふむ・・・こいつらもか・・・。

 予定変更・・・こいつらはココで始末しろ。

 あーいや、お前達じゃ、難しいか・・・。

 そこの連れてきた道具共を使って足止めしておけ。

 俺が倒す」


 太った男は再び前に出る。


「ちょっとさっきの話聞き捨てならないんっすけどー?」

「同感です。

 いきなり、そんなにハッキリ言われてしまうのは心外です」


 抗議して太った男に文句を言いながらヘレン、プリムの下へ向かう若い男女。


「あ~あ~、悪い悪い。

 言い方が悪かったのは認める。

 ・・・だが、お前達では歯が立たなくなるぞ。

 倒すんだったらサッサとしろよ?

 時間を掛け過ぎると・・・負けるぞ?」

「はっ・・・私らが~?」

「冗談ではありません」


 女は両手にダガーを、男は懐にしまっていたアクセサリーを変化させ槍に変えて構えた。


「2人とも・・・そっちはお願い」

「・・・分かった」

「了解」


 テスは太った男の相手で手一杯と判断し、2人の仲間に頼む。


「・・・リンジーさん、悪いんだけどそちらをフォローできないかもしれない」

「・・・ごめん」

「お任せを!

 こちらは何とかやってみます」


 ヘレンとプリムには若い男女と、まだ生き残っている異形のモンスターが数体付いていた。


「おっと、簡単に対処出来ると思わねえでくれ」


 男は太い手で指を鳴らした。

 ・・・すると、どういう原理なのか、寸断されたり、焼かれ焼死したはずのモンスター達が再びマナを発し動き出した。


「超速再生っ・・・!」

「いくら何でも早すぎる」

「それに確かに・・・死んでから時間が経っている。

 それなのにどうしてっ・・・」


 驚くテス達の表情を楽しそうに見る太った男。


「こいつらは特殊な存在らしい。

 ただでは倒されん・・・という事だろうな。

 さてどうする?

 一気に負担が大きくなっちまったみてぇだが・・・」

「っ・・・」


 男に睨みつけるテス。


「逃げたって構わねえが・・・お前らの様な存在が早々いるとは思えねえし、居たとしてもそいつが来るまでにどれだけの被害が出るかな?」


 男はテス達の後ろにある町に目線を移し、愉快そうに質問した。


「うっわ~・・・なんてゲスいんっすか・・・」

「それが我々のリーダーですから」

「聞こえてっぞー、そういうのはもう少し小さく喋るもんだろ」


 2人の間にだけ聞こえる程度で話している若い男女だが、その声はヒソヒソではなく普段通りの音量だった。

 まるで、わざと聞かせるみたいに。


「まあいいか・・・再開だ」


 頭をボリボリ掻いた太った男は再び斧を構えテスに挑む。



 ゴン・・・ドガアアア。

 ピュンビュン・・・ド、ッボガー――ン。



「ほらほらどんどん行くぞ~?」

「っ~~・・・まだまだ~!」


 テスは何とか斧を振り回す男の懐に何度も入って攻撃を加える。

 しかし、懐に飛び込めたはずなのにいつの間にか、男の斧がテスに向かって届きそうになりガードせざるを得ない場面が多々、見受けられた。


「(・・・どうして!)」

「なかなかいい反応速度じゃねえか。

 だが・・・おめえのはまだ手に入れた力(・・・・・・)に振り回されているだけだ~。

 そんな事じゃあ、俺には勝てねえぞ~・・・?

 ほらほら~・・・・・・ふふふぬあっはっはっはっはっはっは・・・・・・」

「・・・何の事です!」


 勢いを乗せまいと一気に切り払い、距離を離させるテス。


「っ・・・ちっ・・・。

 お前が知らなくても良い事だ。

 今から死ぬような相手にはな・・・」


 男は初めてここで、マナを放出し、体内や斧からそのマナが溢れだしていた。


「っぐ・・・なんて濃い・・・」

「ほ~・・・これを感じ取れるか・・・随分厄介な相手と戦って来たじゃねえか、勿体ねえ・・・。

 仕方ない・・・まあ、この世界には色んな奴がいる。

 楽しかったぜ?・・・」

「・・・(これはマズい・・・)」


 テスはチラッと仲間たちの方を見る。


「っ・・・ちょっと~・・・どういう事っすか~!

 負けそうなんですけど~!!」

「っ!ゴフッ!」


 魔法で若い男の攻撃が相殺され、その隙をプリムの召喚獣の犬がタックルを当て、直撃した男は遠くへと吹き飛ばされた。


「ちょっと~!」

「プリム!」

「っ!」


 すかさず女がフォローに入り、ダガーを1本、プリムに投げた。

 プリムはそれをハッキリと目で捕らえて、躱した。


「・・・さっきから何だろう・・・これ・・・」

「ああ。体は動かせるが・・・なんかズレてしまう」


 プリム、ヘレンは古城の主デルトと戦った事で経験値が急増し、器が昇華したことで、従来の戦闘方法と思考、感覚、肉体がズレを起こし混乱していた。


 それはテスも同様だった。

 思った以上に男の懐へは入り込めるが今一歩、足りない。


 それは、体が昇華した影響・・・ひいてはテス達自身がそれを自覚出来ていないのが原因だった。

 自分の存在が更に上へと進化したことを知らないことでただ困惑し、戸惑っていたのだ。


「はああああっ!」

「いっけええええっ!」


 リンジーとシェイミ―も奮闘している。

 迫りくるモンスターを寄せ付けないようにしてリンジーが前に出て戦い。

 その隙間を縫って、襲ってくるモンスターをシェイミーが倒していた。


 時間が多少、掛かるがシェイミー、キルシュにモンスターを寄せ付けない様にしながら少しずつ倒していた。


「ほほ~・・・上手い使い方をする。

 ステータス以上(・・・・・・・)の能力を発揮してるじゃねえか。

 変わってるな~」


 楽しそうに太った男はリンジーとシェイミ―を見ていた。


「それに引き換え・・・なんて様だ・・・。

 だからあれほどサッサと倒せって言っただろうが・・・」


 自分の部下達に目線を移し、ボリボリと頭を掻きながら文句を言う男。


「し・・・仕方ないじゃないっすか~!

 こんなに出来るとは思ってなかったんですもん!」

「ぐっ・・・申し訳ありません」

「はあ・・・こっちはなんて体たらくだ。

 仕方ねえ、俺がまとめて相手する。

 お前達は下がれ」


 斧を担いでいた状態から下ろし、指示を出す太った男。


「し、しかし!」

「このままじゃ、終われないっすよ~!」

「今回は諦めろ。

 まあ、すぐにその機会は訪れるかもしれねえんだから。

 今日は帰って休め・・・いいな?」


 太った男はそれ以降、部下に振り返ることは無かった。


「・・・はい」

「本当に諦めるんすか!」

「今日はここまでだ。

 また別の機会に、この失敗は取り戻す」

「・・・はあ、悔しいっすけど・・・分かったっす。

 せいぜい短い瞬間を楽しむ事っすね!」


 キッとヘレン達に振り向いた女が負け惜しみを放って、若い男と共に現れた時同様、歪んだマナの裂け目に入って消えていった。



「やれやれ、しょうがねえ奴らだな~」


 頭をポリポリと掻いて、見送る太った男。


「あなたも逃げたらどうですか?」

「逃げる?俺が?冗談言うなよ。

 ・・・お前達くらい俺1人でも十分だ」


 一気に男のマナの濃度が上がった。


「ぐっ・・・」

「っ・・・」

「なに・・・このマナ・・・?」


 テス、ヘレン、プリムの3人は男のマナに押しつぶされそうな圧迫感を感じる。


「・・・何ですか?」

「一体何?」

「お、お姉ちゃ~ん」


 リンジー、シェイミー、キルシュの3人は異質なマナの流れに不安に駆られる。


「モンスター共はほとんど殺されてしまったようだが・・・まあいいか。

 今回のこれも報告に加えておこう。

 それにしても・・・お前達を殺すのは本当に惜しくなるな・・・。

 普通の奴らはあの騎士や嬢ちゃんと坊主の様に不安や恐怖を覚えるだけなんだが・・・」

「ぐううっ・・・」


 更にマナを濃く、強く発する男。


「・・・あっさりと死ぬんじゃねえぞ?」


 ダンッ!


「ッ!」


 男が踏み込んだ一歩の音に反応し顔を上げたテスの目の前に、斧を振り下ろした男が見えた。


「!・・・」


 細剣でガードをしようとするテス。

 しかし、そのスピードがやけに遅くスローモーションに感じられた。


 そして・・・細剣と斧がぶつかった瞬間。


 ボガアアアアアアアアン・・・・・・!


 とても大きな爆発音と衝撃が2人を中心に巻き起こった。


 その時吹き上がった、砂埃は遠く離れた、町の壁より上にまで昇るほどだった。


「「テス!」」


 舞い上がった砂埃が消え失せていき、目に飛び込んできた衝撃にヘレンとプリムが思わず叫んだ。


 男の一撃で50メートル以上も吹き飛ばされ、テスが倒れていたからだった。


「よそ見すんじゃねえぞ?」

「っ!」

「ヘレン!」


 咄嗟にヘレンに障壁を張ったプリム。


「いや、お前が先だ」

「っ、っぐぶ・・・」

「プリム!」


 一瞬で移動しよそ見をしたプリムのお腹を殴り、その衝撃で高い放物線を描いてリンジー達のいた後方まで飛んでいき、落下するプリム。


 落ちたプリムはその場で動かなくなった。


「ぐうううがああああああっ!」


 プリムがやられた事に怒った召喚獣が男に襲い掛かる。


「邪魔だ雑魚が」

「ギャン!」


 適当に振るった裏拳を受け、遠くへ吹き飛ばされる召喚獣。

 飛んで行く中で粒子になって消えていった。


「おっと・・・。

 ほ~・・・いい判断だ」


 よそ見をした瞬間を見逃さず矢を射るヘレン。

 しかし、男は避け、2射目を手で掴み、矢を握り潰した。


「っく!」


 ダガーに持ち替え、戦いを挑むヘレン。


「ん~、この絶望な中でも果敢に挑む精神力・・・冒険者ってのはこうでねえと、なっ」

「ぐふ」


 プリムの張った障壁が簡単に砕け、飛び掛かったヘレンをカウンターで殴った男の一撃を受け、何度もバウンドを繰り返し、吹き飛ばされるヘレン。


「ぎ・・・ぐっ・・・」

「おうおう、粘る粘る」


 楽しそうにする男。

 そんな男を睨みつけ血を吐きながらも立ち上がろうとするヘレン。


「ぐ・・・く・・・」


 しかし。


 ドサッ・・・。


 ほんの一瞬気を抜いた瞬間、意識が完全に持っていかれてしまった。


「・・・まあ、初めて突破した者でも・・・こんなもんか」


 肩に斧を担ぎ直す太った男。


「ニュ・・・ニュぐふっふっふっふっふっふ。

 計画はどうですか?ってなんですかー、これは―!!」


 男が出てきた歪んだ裂け目からまた知らない、小太りの老人が姿を現してきた。

 こちらは男と違って、筋肉というモノが見えない、身長の低いまん丸と太った老人だった。

 老人と言っても50代くらいだろうか、見た目とは裏腹に機動力は無駄に俊敏だったりする。


「うるせえなー。

 テメエらが回収しろって言ったモンスター共じゃねえか。

 こいつらにはあまり役立ってないぞ」

「そ、そんなわけないでしょー。

 あれだけのモンスターそうそう作れるものではありませんよ」

「でも現に・・・ほれ」

「へ?」


 男はあとから来た小太り老人に顎で、今だ奮戦しているリンジー達を示す。


「なっ・・・バカな・・・」

「だから言っただろう・・・。

 強いっつってもこの程度じゃ限界なんてのはすぐだってよ~?」

「・・・いや、そもそもこの新型モンスター共は中級冒険者達でもほとんど太刀打ちが出来ないくらいのはずですよ!

 それを・・・あの騎士と子供は何ですか!」

「さあ?

 マナの扱いがやけに上手いが・・・ただの騎士と子供だろ?」

「あんな強い騎士と子供がいてたまりますかー!」

「ああ、もうわかったから、耳元で叫ぶな。

 お前の声がキンキン響いてうるせえんだから」


 太った男は耳に指を突っ込んで、仲間の小太り老人に文句を言った。


「はあ・・・まあ良いでしょう・・・それで、対象はどちらで?」

「あのガキの方だな、小さいほう」


 男達はキルシュを見る。


「では、そちらは私が連れて帰りましょう。

 あなたは・・・」

「はいはい、他の奴らの排除・・・ね」

「では手筈通りに」


 パチンと指を鳴らした小太りの老人。

 それに反応し、再び倒された数体が起き上がり動き出した。


「ぐっ・・・シェイミ―様。

 キルシュ様を引き連れお逃げください!」

「リンジー!」

「私だけではこの場はどうしようもありません!早く!」

「・・・キルシュ!」

「っ」


 シェイミ―はキルシュの手を握って町へと逃げようとする。

 先ほどの大きな音で門に居た兵達が気付き、助けてくれると信じて・・・。

 

 しかし。


「にゅふふふふふ・・・どこに行かれるおつもりで?」

「っ!」

「んん!」


 シェイミ―達の前に老人が先回りし、立ちはだかる。

 キルシュはシェイミ―に抱き付き、怖がってその背中に隠れる。


「残念ですが・・・あなた方を逃がすわけにょほ~~~!」


 老人が喋っている最中に唱えた魔法を放つシェイミー。

 咄嗟に大きく横へ仰け反る老人。


「あ・・・あぶな・・・。

 いきなり魔法を放つとはどういう教育~~~~~っ!」


 老人はまるでゴムの様に伸縮しグネグネと骨がある動きなのか疑ってしまう避け方でシェイミーの連続魔法を何度も回避する。


「キルシュ。行きなさい」

「おねえ・・・ちゃん」

「お願い、誰かを・・・強い冒険者に助けを・・・」

「・・・」

「お願い・・・キルシュ」


 シェイミ―の言葉を聞いたキルシュは意を決し、老人を相手に時間を稼ぐシェイミ―から離れ、助けを求めて走り出す。


「にょほ?

 ま、待ちなさい!」

「待つのはあなた!」

「にょひ~~!

 なんてガキなんだ!」


 グネグネと回避しながらも、走っていくキルシュを捕まえようと、何とか隙を伺う老人。


 シェイミ―はそんな老人と立ち位置を調整しキルシュと町を背にするの方向へと移動しながら戦っていた。


「ぐ~ぬぬぬぬぬ・・・戦い方を分かっている様な立ち回り・・・。

 忌々しいガキだ・・・こうなったら!」

「っ!」


 どむんっ。


 横に避けていた体を一気に沈め、バウンドをするかのような勢いでシェイミ―に迫りタックルをかました老人。


「きゃあ!」


 ドサーー・・・。


「お姉ちゃん!」


 吹き飛ばされ、叫んだ姉の声に反応し立ち止まってしまったキルシュ。


「だ・・・ダメ!逃げて!」

「お姉ちゃん!」

「ぬふふ、逃がすわけないでしょ?」

「キルシュ!」


 シェイミ―を吹き飛ばした老人はその勢いのままキルシュの後ろまで回り込んでいた。


「・・・ヒッ」


 驚き、思わず尻もちを付いてしまうキルシュ。


「いけない!キルシュ!」

「さあ・・・観念して付いてきなされ」


 老人がキルシュに手を伸ばす。


 その時、同じく咄嗟に手を伸ばしたシェイミ―の手から衝撃波が飛び出す。


「にゅ?ぼごーーーーっ!」


 どむ・・・ぼよ~ん・・・・・・ぼよん・・・・・・・・・ぼん・・・。


 気付かなかった老人は直撃し吹き飛ばされ、遠くへ転がって行った。


「これは・・・?」


 シェイミ―が疑問に思った瞬間、突然、シェイミーの胸に緑の光が外まで溢れかえる。


「?・・・なんだ~?」


 太った男は暢気に老人が吹き飛ばされ、緑の光が溢れかえっている光景をのんびりと見ていた。


「ぐ・・・ぐぐぐ。

 にゅ!この光は・・・まさか!」


 小太り老人もシェイミ―の方を見た。


「まさか・・・あのガキが緑の宝石を!

 おい!約束を果たしなさい!

 あの子供が持っている宝石を奪うのです!」

「ああ?

 ・・・ああ、あれがあいつが欲しがっていたやつか・・・。

 仕方ねえな」


 老人の指示に、男は思い出しズンズンとシェイミ―に向かって歩き出した。


「っく!」

「おっと、効かねえぞ?

 さっきよりだいぶ力が上がったが、一時的のようだな」


 迫りくる男に風の魔法を放つが避けられ、徐々に近づいてくる。


 そして、あと数歩といった所だった。


「っ!」


 ガギイイイン・・・。


 大きな衝撃音が響き、太った男は来た道を無理やり戻されてしまった。


「大丈夫!?シェイミ―、キルシュ!」

「「クリス」兄ちゃん!」







【クリス】5才 人間(変化)

 レベル 23

 HP 279 MP 265

 STR 112

 VIT 101

 INT 107

 RES 102

 DEX 109

 AGI 120

 LUK 63

『マナ性質:レベル 2 』『強靭:レベル 2 』『総量増加:レベル 6 』

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