118 昇華した者達と強すぎる力の管理と契約
「今回の話、これが帝国による宣戦布告なのか。
それとも未知にモンスターによる襲撃なのかは不明です。
引き続き情報が入り次第、皆さんにお伝えしますので・・・その間、この町で休息とって、万事に備えて英気を養ってください。
以上・・・これにて会議は解散します」
セルリアは頭を下げ、部屋を出て行った。
報告に来た職員さんも後を続いて出て行った。
「さ~て、ちょっくら飲みに行くか~」
「ちょっ、先生・・・今からですか?」
「なんだ、ギルド長も英気を養えって言ってたから、ちょっと飲みに行くだけだ・・・いけないか?」
「・・・先生。
先ずは自分の武器とかの手入れでは・・・」
「そんなのとっくに預けてあるよ・・・ほれ、今は代わりの物を1本」
自分の腰に下げた刀を叩いて、存在をアピールした。
「・・・だとしても、昨日の今日では体に障りますよ。
先生の場合、ちょっとと言いながら何本も空にしてしまうではありませんか。
ここは体の事を思って控えるべきです」
「かてえ事言うなよチャルル」
「ダメです。
以前、Cランク相当の仕事の時に二日酔いでフラフラで仕事をして、危うく依頼が失敗に終わりかけました」
「いや・・・でも、最終的には問題なかったじゃ」
「そういう事ではありません。
いざという時・・・自分のミスで大きく失敗になるのは避けるべきだとチャルルは言っているのです先生。
それに・・・そんな事は起こさない、と言いながら、本当に起きてしまった時・・・先生はどうするおつもりですか?」
「先生・・・今回は諦めましょう」
「ディック・・・おめえまで・・・。
はぁ・・・わあったよ、今回はちゃんと休んでおくさ」
「そうしてください・・・昨日の様な事は・・・嫌ですから・・・」
カレンは少しだけ表情に影を落とした。
「・・・冒険者っつうのは、いつ死んでもおかしくねえ事の連続だ。
命を進んで危険に晒し、自分で死に場所へと首を突っ込むからなー。
今回はたまたま、俺達だけじゃ対抗出来なかった、というだけの話だ。
それでも、今回は運よく生きている。
あの坊主のおかげでな・・・それさえ忘れてなけりゃあ、後は意外とどうとでもなるもんだ」
カレンの頭をぐりぐりと雑に撫でまわし、部屋を出て行ったトウジロウ。
「・・・カレン。
あなたが戦った相手がどんな奴だったかは分かりませんが・・・あまり思い詰めてはいけませんよ?」
「・・・そうだな。
どんな時だって、自分だけではどうしようもない瞬間は訪れてしまう・・・その事は覚えておこう」
「チャルル・・・ディック・・・・・・はい!」
カレン達も部屋を後にした。
「・・・ボールドさん。
帰るにしても荷支度は済ませないといけませんから私達も・・・」
「そうだな」
「・・・あの時は、もう死ぬと諦めてしまいました~」
「・・・私も・・・」
普段なら``何を言ってるの``と笑い飛ばす所だが・・・自分が何も出来なかったという実感がケイトの心に強く悔しさと、悲しみを残していた。
「・・・我々も休息を取って、痛めている身体を治すぞ?」
ボールドが先に出て行き、ケイト、テトが続いて部屋を退室し、部屋は無人となった。
「・・・で?クリス君はどこに行きたい?」
「・・・そういえば、ダンジョンとか塔攻略に必要なアイテムを買いに外へ行くくらいしか出掛けてなかった」
「じゃあ、一緒にブラブラしてみましょうか?」
「え?あ、はい」
クリスの手をしっかりと握って歩くテス。
その顔はとても幸せそうだった。
「・・・手を離す気も無く、話を持ち出してる・・・」
「断れない様にしているわね」
「どうする?・・・」
「ん~・・・あれじゃあ、ほとんど強制だしね~・・・」
「・・・そんな事より、僕達も破損した武器や失ったアイテムの買い出しに向かわないと・・・。
それに・・・帰るにしても、食料とかも調達しておかないと」
「分かった。
じゃあ、ゾッドがテスにそれを伝えて・・・」
「え?」
「町を出る準備が必要なので、クリス君とのお出かけは諦めなさい・・・って、伝えるのよ」
「そ・・・それは・・・」
ニコニコと満面の笑みで色々な所を見てはクリスに話しかけるテスの幸せそうな顔を見たゾッドは、急に今後の準備の事を伝え、悲しまれる姿を想像して戸惑ってしまう。
「・・・出来ればプリムに」
「私は少し滞在が伸びるくらい構わない。
それに・・・あの子には恩が出来た・・・何か返せないかとも思う」
「・・・・・・でしたらヘレンが」
「私はイヤ。
彼にはプリム同様、何かしらで返したいと思っている」
プリムは特段気にせず、ヘレンはハッキリと拒絶してゾッドのお願いを切り捨てた。
「あの子はまだ幼い子・・・経験が私達より浅い。
世界についてとか・・・何か彼に教えてあげたりできるかもしれないから」
「まあ、純粋な戦闘面は不要でも・・・トラップとか、何か私達の経験した知識を教えてあげられるかもしれないしね」
「・・・・・・」
少しばかりゾッドよりも一緒にいた時間が長かっただけで、いつの間にか信頼を勝ち取っていたクリス。
ゾッドにとってはクリス本来の力がどの程度か不明のためにいまいち納得が出来ていないが・・・自分は生きている。
この事から納得せざるを得ない為に・・・何ともじれったい気持ちになった。
「ゾッド・・・どうして、あなたはクリス君の事が気に食わないの?」
「気に食わないとか・・・そういうワケでは・・・」
「・・・でも、昨日に続き、何か思う事はあるようね?」
「・・・ただ、孤児の子供たち以上に構い過ぎているなと・・・」
「昨日話したでしょ?
助けてくれた子だから」
「それは分かっている。
ただ・・・本当にそれだけでしょうか?
彼女には・・・何か・・・。
それに・・・あの子供も・・・」
自分の中でハッキリと出来ない言葉に、途中で言うのを止めてしまったゾッド。
「・・・これが青春?」
「・・・なかなか、甘酸っぱいモノだね・・・」
クリス、テスの後を付いて行くゾッド。
そんなゾッドを後方から見て、何やら微笑ましくなるプリムとヘレンだった。
次の日の朝。
クレフーテの町の側のとある森の中。
「・・・ふっ」
ザシュ。
「ぐわおおおあああああっ!」
ドスン・・・。
イスカは振り抜いたハルバードを戻し、ゆっくりと立ち、自分の手を見つめ何度も開いては閉じるを繰り返している。
グッ、パッ、グッ、パッ・・・。
「・・・」
「・・・違和感が生まれてるんだろ?」
「・・・トウジロウ」
「おいおい、一応、お前さんよりも年上なんだし敬ってくれてもいいだろう?
・・・まあ、無理か。
そういう事は苦手そうだし」
「ム・・・そんな事はない」
眉を寄せて、物言いと不満げな顔をするイスカ。
その変化は小さく、それほど怒っているわけでも無い。
「はっはっは・・・まあ、いいか・・・そんな事。
それよりも・・・どうだ調子は?・・・」
「変な感じ・・・ケガの後遺症ではない・・・」
「だろうな。
回復薬ならあんたの所の嬢ちゃんがちゃんとしてくれたんだ。
その心配はねえだろう」
「だったら・・・何?」
「・・・おそらくだが・・・」
「器・・・己の限界を突破したんだろう」
ガサガサ、と草木を掻き分けボールドが2人の会話に入った。
「やっぱりそうか・・・てことは、あの戦いに参加した奴らは・・・」
「おそらく、何かしらの変化は起こしたはずだ。
すぐには現れんかもしれぬが、直に分かるだろう」
「・・・あの(古城)主?」
「そうだ・・・奴は突破者だ。
そして、おそらくレベルとは違い、器による次元の強さが、我々と違い過ぎた。
そして、そんな化け物と戦い生き残ったことによる影響だろう」
「まあ、正確には坊主が倒したことが1番の原因だろうな。
あいつが倒したことで経験値が分配され、戦った俺達にもその恩恵が分けられたってわけだ」
「・・・そういう事だ」
トウジロウとボールドの言葉に、イスカは再び自分の手を見つめていた。
「・・・あそこにいた人全員?」
「どこまでを判定するかは不明だが・・・おそらく倒される瞬間までいた者達は対象だろう。
そして・・・俺や・・・お前達はずっと戦い続けていた。
勝てない存在に挑み続けた事が、どうやら俺達を早く、上の次元へ高めたらしい」
「俺は倒せるつもりだったんだけどな?」
「・・・突破者・・・」
イスカは一言呟くと顔を上げボールドに質問した。
「・・・何か変化はあるの?
この違和感以外に・・・?」
「俺も詳しくは知らん。
ただ・・・違和感自体は感覚と意識にズレが起きている現象だ。
戦闘で意識と上手く繋がれば、何の心配もない」
「体が上手く使えてねえってだけか・・・」
「まだ成長し進化の途中ともいえる段階だろう。
成長しきるまでは数日かかるかもしれん」
「・・・他には?」
「・・・突破した者の話が言うには寿命が延びて、肉体が若くなるらしい。
あるいはその状態が維持されるとも言う・・・」
「お?という事は、起きた時に腰が痛てぇとは起きたりしねえのか。
そりゃあ、いいなあ・・・いや待てよ?
俺のこの渋い感じが失ってしまうのは・・・勿体ねえかもしれねえな・・・」
「・・・伸びるというのは・・・」
「延命・・・というよりは・・・本来の可能性が広がる認識だろうか?
私の見解だが・・・そもそも最初から寿命が長い種族と同列・・・あるいはそれとは異が違う存在になるのかもしれない。
理由は尤もに聞こえるが、そもそもエルフやドワーフ達、龍族なんかがどうしてあれほど長い寿命を持っているか分かるか?
マナの素養だけ見れば、鍛えそれ以上の実力を持つヒューマンがいるのにだ」
「・・・確かに」
「生まれや性質、種族を主張する奴は多いがその根本部分は分かっていない。
神の祝福だという者もいるだろう。
その中には``人間は世界を荒らす事ばかりの種族だから神からの祝福がほとんど与えられなかった``と、相手を否定する事はあっても本当の意味で理由を述べられる者がいない。
いるとすれば・・・あるいはその理由に近い答えを証明できるのが・・・」
「この突破者・・・か・・・」
ボールドは首肯した。
「もう少し正確に言えば``器``・・・ココに理由があるだろう。
初めから長い寿命と変わらない肉体を持った種族にはその感覚が分かりづらい。
俺達がより寿命の短い虫等の感覚が正しく掴めないようにな・・・」
「・・・それ以外だと、何か問題は無いの?」
「・・・まあ、しいて言えば自分だけが長生きだと、知り合いがほとんど死んで置いてけぼりをくらってりするんじゃねえか?
何せ、寿命で死ぬんなら、他の奴らよりもずっと遅せえんだからよ。
・・・あー、そういう意味では、あっさりとしたエルフがいるのも納得かもしれねえ。
寿命の感覚が違うから・・・気付いた時には既に別の種族の仲間や友が死んじまっていたら・・・何ともやるせねえ気持ちになるか・・・。
同種達の中で生きる方が、心の安定には良いってことだろうな・・・」
トウジロウは顎に手をやり、違う種族の中の認識の違いを改めてしみじみと理解していった。
「寿命云々は置いておくとして・・・。
イスカ・・・お前が言いたいのはレベルといった強さ・・・変化の事だな」
「・・・」
黙って頷くイスカ。
「・・・どこでこの器の成長・・・昇華が終わるかは不明だが、おそらく一区切り着くだろう。
その時、仲間でも冒険者でも、我々の教会でもどこでもいいから鑑定してもらうといい。
おそらく、レベルとステータスは著しく下がるかもしれんが・・・表記とは別にその一部・・・得た能力の一部が・・・器。
魂に還元されているはずだ」
「・・・魂に・・・?」
イスカは自身の胸を見つめ、そっと手を乗せる。
「レベルが高いモンスターに対抗するには・・・こういった工程が我々には必要なのだろう。
あるいはそれほどの存在を相対した結果ともいえる」
「・・・そこまでして・・・どこに行きたいの?」
正解のない答えにぶつかりそうな問題だった。
イスカの言葉は自分に言い聞かせているのか、それとも・・・別の何かに訴えているのか・・・。
そばにいたトウジロウとボールドにはイスカの求める答えを、持ち合わせてはいなかった。
「はっ・・・そんなの上目指して、世界を見てみれば、なんか分かるんじゃねえか?」
「・・・何ともいい加減だな」
トウジロウの言葉に苦笑して返すボールド。
「いい加減でいいんだよ。
世界を見て回って、そんで・・・その時、思った事や考えた事を行動に移しゃあいい。
結局、分かる事ってのは現状の事しかねえんだからよ。
これからなんてのを全て分かって動いていて、何が楽しいよ。
そもそも分かんねえんじゃ、誰かに答えてもらってもテメエで納得いかねえんならどうしようもねえだろ」
トウジロウは頭の後ろで手を組み森の木々の隙間から空を見る。
トウジロウにとってはのどかで・・・緩やかな時間・・・だけど、その時間をとても楽しんでいる様なそぶりだった。
イスカにはそんな風に感じられた。
「・・・お前がどう思うかは分からんが・・・。
少なくとも、そこまで焦る必要はないだろう・・・」
「焦る・・・?」
ボールドの意外そうな言葉に驚き、気持ち少しだけ目が大きく開かれたイスカ。
「すぐに答えを求めていそうな顔だったのでな・・・。
今は自分の出来る事・・・分かっていることに意識を向けて整理してみてはどうだ・・・?
そうすれば、少しは分かってくるかもしれんぞ?」
「・・・」
少し俯き一点を見つめるイスカ。
・・・やがて。
「うん・・・そうする」
どこかで自分の中で折り合いがついたのか、柔らかな笑顔で返す。
「・・・それでいい。
無理はするな」
「うん・・・ありがとう」
「なに・・・困っているの者を助けるのも教職者の務め」
「はん、今更、教会の顔をされてもな・・・」
ボールドの言葉にトウジロウがつい、本音を漏らす。
散々、一緒に戦ってきた冒険者が急に聖職者の顔に変わり、説法を説くことに違和感しかなかった。
「一応、私の役職では合っているのでな」
「・・・それで・・・あの子供は?」
「あの子供・・・クリスって子供か?」
コクンと頷くイスカ。
「あの子も突破者なのは間違いないの?」
「・・・実力的には、そうだろう。
現にバンパイアとの戦闘では圧倒的だったからな」
「ありゃあ凄かったな~・・・今ならあの坊主に手合わせしたら、いい勝負になれんのかねー?」
トウジロウは口元をニヤつかせ思いを馳せる。
しかし。
「無理だろう・・・。
あれは一種の化け物だ。
俺達が1回、限界突破しただけでどうこうなる相手ではない」
「なら、2回、3回と突破すりゃあいい話じゃねえか」
「簡単に言うが・・・そもそも、お前達冒険者を初めて何年だ?
レベルがほとんど上がりにくくなって、レベルもステータスも頭打ちなってどれくらい経つ?」
「・・・私は1年位前からほとんど上がらなくなった・・・」
「・・・さあ、どうだろうな?」
「メンセイテンのトウジロウ。
お前はもともと、そこまで昔は刀を使った戦い方に拘っていなかったはずだ。
昔は普通に剣を使っていたと認識している」
「そうなの・・・?」
驚きトウジロウの顔を見るイスカ。
「・・・ちっ、随分詳しく知ってんだな・・・あんた」
「メンセイテン・・・その中にかつてリーダーが使っていた流派が・・・それがお前が使う流派だったと記憶している」
「そこまで知ってくれているとは・・・」
「教会の内部でも有名だったぞ?
お前達の流派は・・・」
「・・・まあ、お前達同様、俺にも過去があるってこったな・・・」
「・・・」
元気に返すが答える気はないのかはぐらかすトウジロウ。
ボールドはそれ以上の追及はしなかった。
「それで・・・あのクリスって坊主の事だが・・・」
トウジロウは話題を戻し、クリスの話に戻った。
「あの坊主の力・・・マジな話、お前達・・・どの程度掴めた?」
「・・・技術はほとんど素人に近いのかな・・・?
誰かに戦闘の指導を受けていない感じだった」
「それは俺も思った。
何かワケがあって旅をしているのだろう。
本来ならあのような小さな子が1人で旅をしていることの方が心配だ。
しかし・・・」
「あれだけ強い、いや・・・あるいはその可能性を感じた誰かが、冒険者カードの発行を許したってことだろうな」
「・・・許した人ももしかして突破者?」
「可能性はあるな。
理由は分からんが・・・経験がそうさせるのか・・・突破した者は、相対した時に分かる者もいるそうだ」
「・・・お互いの力量をマナとかの流れで判別できるような感じ?」
「気配みたいなもんか・・・確かに、あのバンパイア・・・とんでもなく強えとは思ったが勝てないとは思っていなかった」
先ほどまでの強がりではなく真剣に話すトウジロウ。
「俺達は本質、という意味で見ることも感じ取ることも出来なかったんだろう」
「だから・・・あの魔物の強さが分からなかった」
異質で強大。
それだけを感じれば十分というのは、分かり易い相手、あるいは低ランクの冒険者同士ならまだマシな所だろう。
・・・しかし、高ランク。
中級以上にのなれば命取りになる致命的な状況になりかねない。
そのために無鉄砲でいても、実は冷静に判断できる頭でいたりするのが高ランク冒険者には必須とも呼ばれるところだった。
言い方を変えれば、生きてランクを積み上げれば自ずと身に付くものだからだ。
「思い出した感覚が、正確にアテに出来るかは定かじゃねえが・・・少なくとも、今ならもっと奴を本気にさせ、その上で倒せるという確信はある」
「ただし・・・。
1人ではなく、このメンバー・・・あるいは自身のパーティという条件付きだけどな」
「・・・今ならあの時のマナの量、質の濃さや高さは分かった・・・でも、あの子は・・・」
「あの坊主のマナ・・・最初、古城に向かう時に感じたものが、戦闘中少し膨らんだかどうかだった。
自分で制御して外部にほとんど漏らさないようにしているのなら大した技術だ」
「しかし・・・本当にそれだけか?
あの時、引き上げた力・・・そこからの戦闘での立ち回り・・・ほとんど見えなかった。
たとえ、あれが全力だとしても・・・能力の底が全く見えなかった」
「うん・・・あの子はまだ幼い子供。
それなのに・・・とっくに私達の上を行っていた」
「・・・更に3回突破しただけじゃあ追いつけねえか・・・面白え子供だな・・・?」
トウジロウはニヤニヤと楽しそうにしながら顎を擦る。
「まあ・・・何はともあれ、俺達もその化け物の領域に仲間入りしたことを意味する。
例え、足先だけかもしれんが入ってしまった以上は更に強くなるしかないだろうな」
「・・・どうして?」
ボールドの言葉に疑問を持ったイスカ。
「考えてもみろ。
今回の様な事はないっつっても世界で見て回れば・・・そんな奴らはうようよいるぞ。
ランクというぬるま湯に使って、安楽な生き方をしたいなら構わねえが。
周りがお前の力を求め、無茶な依頼が殺到するぞ?
放っておいたって、お前が自分で隠居しない限りは誰かが使い果たす。
お前の承諾なんぞを受け入れずにな」
「・・・はぁ・・・冒険者をもう少しやっていきたいのに・・・」
「はっはっは、お前は国の専属だろ?
だったら今の内がある意味のんびりできる期間かもしれねえな?」
辟易して肩を落とすイスカを笑ってみるトウジロウだった。
「お前も他人事ではないぞ?」
「あん?どういう意味だ?」
「お前の冒険者だ。
近いうち、どこかの国が専属として契約しに招き入れに来るだろう」
「はっ、お断りだな」
「それは無理」
「あん?どうしてだ?」
「一定以上のランクに達した冒険者で完全に自由気ままに動いていられるものはほとんどいない」
「高ランクの冒険者はどこも欲しい」
「だから、もし国に専属契約をしていなくとも、一定期間冒険者ギルドの使いであり専属護衛として、どこかのギルドに滞在しなくてはならない」
「ああ~・・・あれか~・・・」
思い出したのかトウジロウが面倒くさそうな顔になる。
「あれは避けられない。
一定の功績を上げた、中級以上から高ランクの冒険者には必ず付いてくるものだ」
「お前さんは・・・ってそうか、教会か」
「そうだ。都合上は冒険者ギルドにも登録しているが本来、俺、ケイト、テトは教会の者だ。
冒険者ギルドの契約には入らない」
「高ランクの冒険者が様々な国に入国が許されるのはギルドという信頼があるから。
・・・だから、私達はメルムの考えで先に専属契約を交わし、サッサと満了をさせるつもり」
「・・・でも、そうやって拘束されっと自由に行き来、出来ねえだろ」
「そんなことは無い」
「なに・・・?」
トウジロウはイスカを見る。
自分の理解している契約の内容をあっさりと否定したからだった。
「そもそも今回の様に何か国・・・あるいは国王が信頼している領主の願い、要請が掛かった場合のみ、それに参加しなくてはならないだけだ。
それ以外は基本自由にして構わない」
「ん・・・どんな契約でも、こちらの事を配慮出来ない無能な所には従う義務はないって、メルムが言っていた」
イスカの言葉にボールドも頷く。
「多少個人的な意見が混ざっているが概ねそんな所だ。
道理を反すれば、背いても構わない。
冒険者ギルドも国に仕えているわけではなく、世界中に存在する独立した組織だからな。
民衆を支援するためにある様なところも大きい」
「だけど、高額で一定期間と言わず、永続契約を交わす者もいたりする。
そして、そういった噂が貴族達の中で広まって、世界中に国に契約をする冒険者は道具のような存在だと勝手に認知する状況が作られてしまったって・・・」
「その結果が・・・都合の良い道具扱い・・・ね。
似た様なもんだが、まだギルドで仕事する方がマシじゃねえか」
「だから、最悪な国に目を付けられ契約を組まされる前にサッサと、信頼できる所、ギルドで契約を終了させようって人もいるって話・・・」
「ギルドは世界中にあるが一個人としては・・・勢力が一か所に集まっている国とは違い、戦力も権力も分散してしまっているからな。
教会も総本山ならまだしも、世界となると・・・やはり国が動く方が面倒な事になる。
多勢に無勢だ」
トウジロウはイスカ、ボールドの話を聞き、真剣に腕を組み考え出す。
「・・・となると・・・俺達も早くどこかに一時、所属した方だ良いという事か・・・」
「少なくとも今回の騒動で、さらに世界に噂と名声が広まった可能性はある。
早めに唾を付けようとする所も出てくるはずだ」
「お、おい・・・お前達はいいとして・・・あのテスって嬢ちゃん達のパーティはどうなんだ?
俺達と一緒で一気に噂が広まるだろ・・・」
「・・・彼女たちは、おそらく問題ないだろう」
「な・・・何故だ?」
「たぶん彼女達・・・いや、そのほとんどかもしれんが・・・おそらくどこかの国のお偉いさんの子供達だ。
あるいはその関係者だろう・・・」
「つ、つまり・・・?」
「今回の依頼を頼まれてきたという事は契約に近い何かを果たしているはずだ。
つまり、イスカ達と同じだ」
「じゃ、じゃあ・・・」
「どことも契約を交わしていないのはあなた達だけ・・・」
「今回の事で契約を持ち掛けられるのはお前達のパーティ以外には・・・いない」
「あの子もそう・・・。
そもそもあの子は単独だし、それよりなにより子供・・・」
「仮登録じゃあ正式な記録には記載されん。
・・・という事は、あの少年の分もお前達が活躍したと評価されるだろうな」
「・・・まじかよ・・・」
呆然としてしまうトウジロウ。
「早いもの勝負」
「休暇も良いが、今の内に考えておいた方が良いぞ?
後から無理やり契約を交わされるよりも先に・・・」
「こ、こうしちゃいられねえ・・・早くあいつ等に話しておかねえと!」
トウジロウはすぐさま踵を返し町へと帰還するのだった。
ちなみにカレン、チャルル、ディックがその事を事前に知らないはずがなく、それとなく分散する形でギルドと契約を交わし、一定期間ごとにその場所に滞在し依頼をこなすように手筈を整えていたのだった。
酒を飲んでは楽しそうに、ただ何も考えず暮らしていたトウジロウだけが知らなかったのである。
それを知ったのは、現在より少し後の事だった。
【クリス】5才 人間(変化)
レベル 23
HP 279 MP 265
STR 112
VIT 101
INT 107
RES 102
DEX 109
AGI 120
LUK 63
『マナ性質:レベル 2 』『強靭:レベル 2 』『総量増加:レベル 6 』




