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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
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10 限界の向こうへ?

 今日も今日とてクリスはモンスターを倒していた。


 最初のころからスリングショット使い方にも慣れ、モンスターを効率よく倒すことができてきた。

 人間、慣れると人に近くても所詮モンスターと割り切ってしまう部分ができると案外、躊躇いは少なくなってくると実感する。

 しかし、フと真面目に考えてしまったら、やっぱりどこかで迷いと不安が出てきてしまうため、クリスは意識的にその考えが浮かぶと強制的に切り替えて、また狩りに向かう。


「ふぅ・・・よし。

 まあ、今日はこんなもんだろう」


 以前、クレアに帰りが遅いと怒られて以来、早めに帰宅している。

 今回も夕方に差し込む手前には孤児院に向かって帰ろうとしていた。


「~♪

 だいぶ強くなってきた気がするな」


 実際、最初のころに比べて体を動かしても疲れはかなり少なくなってきた。

 最初、この街に来たときは勝手に身体強化の力を勝手に行動の補助に使っていたため、慣れないうちは休憩をすぐに取らないと、下手をすると歩けないくらいになってその場で倒れるほどだった。

 今は、走る速度も結構早くなり体力もついてきた。

 魔法店のレイシーさんの使い魔、ミミのおかげで身体強化の勝手使用も体内マナの流れが少しずつ掴めてきたため普段の生活はもちろん、戦闘の時にもある程度は勝手に使われることは減りむしろ、使用の仕方から応用まで使えるんじゃないかって所まで来ている。


 そんな現在のクリスはステータスを見ながら帰っていた。


 どうやらこのステータスは自分にしか見えていないらしい。

 ただ気を付けないと、何もないところを凝視していて変に見える。

 実際、この前孤児院で、夜ステータスのチェックしていたらミィナにどうしたの?と聞かれたときは少し焦った。

 何も無い虚空をじっと見つめていたら、知らない人が俺だったら怖くて近寄りたくない。

 だから少しだけ周りの目を気にしながらステータスを見るようにした。


 そして現在のクリスのステータスは


【クリス】3才

 レベル 7→12

 HP 23 → 56 MP 15 → 39

 STR 11 → 20

 VIT 9 → 15

 INT 8 → 12

 RES 8 → 13

 DEX 13 → 22

 AGI 10 → 18

 LUK 7 → 14

 『欠損』


 と、こんな感じ。

 最初から比べてだいぶ強くなった。

 これでも、まだまだみんなとは、ステータスに差はあるんだと思うけど・・・でも、ミィナやローク達孤児院の子供たちはもちろん、アーシュやモルドにまで近づきそうな実力に現在なってきている。


 これはどういうことかわからないが、俺のステータスの表記はおかしいが、能力的には一時的に下がっていた当初から考えてこの世界の人と差はないことが分かった。

 本当に俺が見ている表記だけ低く見えているだけかもしれない、というのがクリスの考えだった。


 では、クレアに出会うまでなぜ生きてこれたか。

 おそらく、転生した時、馬車にあった飲み物(後にポーション類だと知ったが)をいくつか飲んだ中にステータスを少しの間強化するものがあったんだろうと思う。


 とにかく、今を生きこれからあの異世界生活を楽しもうとクリスは思った。


「目に見えて成果が数字で表れると頑張ったって思えて楽しいな」


 クリスは日本でかつてやったゲームの曲を鼻歌いながら帰宅した。


 追記しておくとクリスの容姿はお世辞抜きで良くはない。

 孤児院には鏡があってそこでは毎日、歯を磨いたり顔を洗ったり、またお風呂にも鏡はあったりするので嫌というほど自分の顔を見ている。

 さ迷っていた当時に水分補給に川へ行き、川に映った自分の顔を見たことはあったがしっかりとは見ていなかった。

 しかし、あの時のように生きるのに必死すぎていた頃より幾分、心に余裕を持ち、いやでも向き合ってしまう状況になれば見てしまうもの。


 そこに移っていたものは、目がどこか垂れ目といえば、まだ可愛い方か、明らかに目じりが下がってなんとも頼りない感じの目に見える。

 顔もまだ幼いからわかりづらい部分も多いがそばかすが目立ち、ほかの孤児院のみんなと比べてしまうと、将来明らかに迎えるのは村人EとかFくらいなもんだと思う。


(まあ、転生前よりは何かの集団の中の目立たない一人や根暗集団の一人くらいには容姿がというか、枠組みの中には入れてもらえるくらいにはなったと思う。

 あの頃は、しゃべる友達のいなくなって、いつも一人で居たし)

 

「・・・家族とは、あまり話さなくなったな・・・」


 フとそんなことを懐かしんだ。



 門の前に来ると人が普段では見ないぐらい集まり騒がしくなっていた。


「どうしたの?おじさん」

「ん?おお、クリス君か。

 今日は早いね。

 もう、モンスター退治はいいのかい?」

「うん。

 まあ、クレアさんのこともあるし。

 それで、この人たちは何?」

「・・・なんでも、この町にいるダンジョンモンスターの一部がどういうわけか外に出ているんだよ。

 それで、その中にずいぶん特殊なモンスターがいて、そのモンスターの影響で普段はダンジョン内に留まるモンスターが出て行ってしまったんだよ。

 それでね、ついさっきそのダンジョンの別の通路から外に出る道と出てったモンスターが発見されたって報告がついさっき届いたんだ」

「・・・だから冒険者の人が集まってるんだね?」

「ああ、そうだ。

 ・・・と、ギルド長も来たか・・・」


 そこには、いまだ現役真っ盛りではないだろうかという見た目は30代に入ったばかりにしか見えない筋肉が引き締まり、髪の毛が短くそれでいてとても野性的な感じのするオレンジ色の髪。

 瞳は朱色と髪よりも濃い色していて、臨戦態勢ばっちりな身長が2メートル越えする男性がいた。

 それがギルド長、バルク・ハーケイン。

 御年52になる人らしいがとてもそうは見えない。


 冒険者だけでなくほかの人にも言えることらしいが、この世界の特に危険に身を置く冒険者の寿命は短いと、まあ現代の地球の価値観では考えてしまう。


 しかしここは異世界、基本この世界に生きるというより存在してるものは、大抵少なかろうがマナを持っていて使用している。

 まっっったく使えない人でも無意識に外の出たりするぐらいには持っていたりするものだそうだ。

 ある意味、マナを鋭敏に感知、知覚できる人の付近に隠れてもバレるんだと思う。

 まあ、見えちゃってたら頭かくして尻隠さずならぬ、マナ隠さずだな。


 というくらいマナは重要だと再三にわたって思い知らされ身を持っても知っていたが、ここにきて、ある意味特に女性にとっても、まあ俺がいた時代は男性も少なからずいたと思うが、なんとレベルによる強さを含む、その人がどれだけ能力を込みでマナが内包されているかによって、寿命と肉体的若さが劇的に変化するらしい。

 特に顕著なのが寿命が短いもの、人間や小人といった平均寿命が短いものにはそれこそ何倍も寿命が延びていくらしく、100を超えても現役で冒険者や何らかの仕事をしている人はいるんだそうだ。

 それこそ、中には軽く1000年以上も生きている人もいたらしい。

 そんな人は老いが極端に少なくなり、亡くなる場合でも見た目はその力でもふけているほうで60前後くらいなんだそうだ。

 地球の人間にとっては全く羨ましい限りだ。


 なぜそんなことになってしまうのかは、偏に自身の限界、壁を破ることだそうだ。

 この世界にとってレベル、経験値という概念があるから割と案外行けるのかなっと思ってギルドでいろいろ教えてくれる、いつも頼りにしている美人の受付のエルフお姉さんに聞いた。



「クリス君の言うことは半分だけ正解」

「半分だけ?」

「そもそも、私たちエルフが寿命が長いのにどうして、周りの冒険者よりレベルが低いのか・・・」


(確かに、エルフ=長寿とは勝手に誰かが考えた空想に過ぎない。

 それなのに長いとなると・・・やっぱり)


「マナ」

「正解・・・といってもそれだけじゃまだ不正解。

 エルフはかなり昔になっちゃうけど、精霊とその精霊が使えている神の一種と契約した一族なのよ。

 その関係で当時のエルフ種族は全員その精霊と神の恩恵、加護を授かっちゃうわけ。

 だから、生まれた時から魔法がたとえ使えなくても、内包しているマナの純度といえばいいかしら。

 この量と質が高いおかげで、長く若い姿でいつづけるのよ?

 ドワーフは、また違う形でその当時の誰かが授かった恩恵が同じ種族全体に廻っていったという感じね」

「・・・つまり、人間やほかの種族は授かってない?」

「そんなことはないわ。

 クレアさんやシスター長、ほかの教会の方々という風に全く授かっていないわけではないわ。

 ・・・ただ、これは寿命や短かったり、ほかにもいろいろな価値観しがらみを持って生まれる人間たち特有の所もあって・・・」

「・・・信じる者が人それぞれ」

「そういうこと」


 なるほど、極端な言い方をすれば人は本来自分勝手。

 そして、誰を何を尊敬し敬うかはバラバラ。

 そういう意味では、信仰心にもばらつきがある。

 しかし、エルフにしてもドワーフにしても、多少信仰するものは違えど大体同じところに落ち着くから、そういった部分の違いが分かりやすく寿命としてマナと関係が繋がっているのかもしれない。


「じゃあ、寿命はどうするの?」

「そこが、限界を越えること。

 自分自身の壁を破ることなんだよ」

「・・・?

 そうすると寿命が延びるの?」

「簡単に言えばそうね。

 うちのギルド長もその限界を何度も超えたから、今も元気に・・・ホント、たまに勝手に何も連絡せずどこか行くんだから・・・帰ったら、お説教ね」


 ちょくちょくやっているらしい、顔は笑顔なのに声と空気だけがどんどんと暗くなっていく。

 ・・・こわい。

 まだ会ったことのない、この町のギルド長のことが少しだけ心配になる瞬間だった。


「お姉さん、それで限界って?」

「・・・あとに仕事を残される身にもなってもらいたいわ・・・。

 え?ああ!

 ・・・コホン。

 限界だったわね?

 ん~そうねぇ、この前とさっきマナの内包している量が違うと肉体に影響すると話したわね?」

「はい」

「言ってしまえば、この内包量が、一定の量で限界を迎えることなの。

 人間だけでなく、ほかの種族もモンスターも蓄積できる量が人それぞれであって、それ以上いくらレベルを上げても上りはするけど強くはなるけど、それによる成長は微々たるものになってくるのよ。

 どれだけ才能があふれている人でも、これは変わらないわ。

 そして、この限界がどこにあるのかはわからないけど、その先を自分自身で越えないことには上の成長、モンスターとある意味同じかしら。

 進化できないのよ」

「・・・進化・・・」

「そう、越え方に決まりはないと思うけど、それが私たちこの世界に生きる者のある意味試練だったりするところなの。

 結果的に、わかりやすくまずその限界に迎えやすいのが、冒険者として活動してモンスターを討伐したりすることなの」

「・・・ギルド長はそれをした・・・」

「まあね。

 だいたいギルド長になる人はその壁を越えたことがある人がなることが多いの。

 ・・・うちのギルド長、そのあたりは、なんか楽しそうに越えているそうだわ。

 ``限界があるということは、越えられる所が目の前にあるということだろ?``って言ってたわ。

 あそこまで楽しそうにすると・・・もう尊敬を通り越して呆れるわね」

「・・・はっははは・・・」


 乾いた笑いしか出てこなかった。



 そして今日初めて、そのギルド長を見たわけだ。



「みんな集まってくれて悪いな。

 どうやら今回のモンスター、ずいぶん特殊だと聞いている。

 中には俺と同じように初めて聞く奴もいるだろうが、今回のモンスター討伐は手早く済ませたい。

 このモンスターにやられた仲間の冒険者や病院にいる患者たちを知っている者たちは理解しているだろうと思う。

 この特殊モンスターの完全な治療方法が現在ない。

 つまり、問題の根源であるモンスターを探し調べないと治療法がわからないということ。

 今は、幸い軽度の者たちは少しあざが残る程度だが、重傷者は意識不明になっている」


 集まった冒険者の中にかなりの知らない者たちがいたようでザワザワしだした。


「安心しろ、だからこそここに私が来た。

 捜索事態は皆に協力してもらうが戦闘は私がする!」






【クリス】3才

 レベル 12

 HP 56 MP 39

 STR 20

 VIT 15

 INT 12

 RES 13

 DEX 22

 AGI 18

 LUK 14

 『欠損』

できるだけ、展開をスピーディーにしたいと思う今日この頃。

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