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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
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104 止めて!私のために争わない・・・・・・って、おかしくね?

 壁に蛇を模った大きな旗とその前には玉座が作られいる。

 肘を掛け、顎に手を乗せながらアルトーネは侵入者を見ていた。


「・・・そなたらがデルトの申していた侵入者か?」


 アルトーネはヤハト達を値踏みする様に見る。


「(おほ~、なんて美人さんなんだ。

 向こうにこんな人がいるなんて・・・。

 それに・・・ぐっふふ、配下の人達もそれぞれ色々と魅力あふれる可愛い子ちゃんじゃないかー。

 これは、お近づきになるチャンス?)

 あー・・・おほん。

 おれ、あ、いや・・・ワタクシ、ヤハトと申します。

 あなた様のお名前をお聞きしても?」


 片膝をつきキリリとした顔つきで玉座に座るアルトーネに聞くヤハト。


「「・・・」」


 すぐ近くで2人の女性が冷ややかな目でヤハトを見ているが・・・気付かない。


「わらわはアルトーネと申す。

 この者達を束ねる族長じゃ・・・」

「アルトーネ・・・良い名前ですね・・・。

 アルトーネ様はこの城の主とは、どういうご関係で?」

「「・・・ッチ」」


 舌打ちをする2人がいるが、まったく気にした様子の無いヤハト。


「ふむ・・・こちらにも、理由があって奴とは組んでいるんじゃが・・・お主達には関係なかろう?

 ここで、死ぬ者には行っても意味のない事ゆえ・・・」

「いえ、ワタクシとしてはあなたの様なとても聡明でお美しい方とは出来れば・・・良いお関係を気付きたいと思いまして・・・」

「・・・」

「(ああ、あの冷ややかな目もとても美しい。

 ・・・おほ、キレイな太ももがとても魅力的です)」


 足を組み替える時に腰布から見えた艶めかしい太ももに喜ぶヤハト。

 見下ろす形が、立ち位置がとても絶妙でヤハトの心をどんどんと誘惑してくる。


 しかし、女性にとって、そういった視線は敏感なモノで、真摯なフリをしているヤハトのやらしい目線には気づかれていた。

 気づかないのは本人だけであった。


「・・・わらわはお主達に興味はない。

 ・・・侵入者にはココで退場してもらおう・・・」


 パチンッと指を鳴らす、その合図で控えていた配下達が一斉に階段前の守るようにしながら、ヤハト達を囲むように動き始め、陣形を整えていく。


「交渉なんて、ハナからなかったのよ」

「ええ・・・というか、コチラもする気はありませんでしたけど・・・」

「ええっ!そうなの!?」

「「・・・」」

「冷たい!なんて冷たい目なの!

 一応、お兄さんも君達の家族じゃない!」

「「か・ぞ・く~?・・・フン」ハンッ」

「ヒドイ!・・・なんて、こんなにひどい扱いなの!?」


 ヤハトの言葉を無視し、少し前に出るシャーリィとクラル。


「ふむ・・・侵入者はそこそこ強いと奴が申していたな・・・?

 なら、少しは楽しい余興になるかもしれぬな?

 せいぜい、わらわを楽しませてくれ・・・」


 頬杖をついているのとは反対の手を上げ、合図を送ろうとするアルトーネ。


「はんっ、こんな雑魚ちゃっちゃと終わらせて、あんたも殺してあげるわよ」

「そうね~。

 こんな蛇共に不快な思いをさせられ続けるの・・・ワタクシも限界なので・・・」


 戦意たっぷり、気合が入っている2人。


「あの~・・・お兄さんは・・・。

 あ、何でもないです・・・」


 言葉に反応して振り返り、鋭く刺さるような冷ややかな目で見る2人にあっさりと引き下がるヤハトだった。


「あんたは隅っこの方に行ってなさいよ」

「何だったらこの蛇共と一緒にいたぶってあげましょうか~?」

「・・・あの、支援の方は・・・あ、いらないですね、分かりました」


 支援という言葉を出した瞬間、黒いマナを感じた様な錯覚に陥ったヤハトは、大人しく入口の壁まで下がることにした。


「あの者は参加しないのか?

 では、後でわらわが個人的に相手でもしてやろうかのう・・・」


 パアアッと表情が明るくなったようなヤハトの気配。


「・・・ッチ」

「ウフフフフ・・・」


 分かり易くイラついたり、暗い笑いで返す者達。


「「そんな心配は不要ね」いりませんわね」


 ハッキリと拒絶する。

 その言葉に静かにガックリと膝をつき落ち込むヤハトなど気にせず2人は戦闘態勢を取った。


「そうか・・・少々、惜しいな・・・」


 スッと手を下ろされた瞬間、一斉に配下達が攻めてきた。


「クラル、前をお願い。

 私は魔法使い達を倒す!」

「分かったわ~。

 じゃあ、奥はお願いね~?」


 シャーリィとクラルの、アルトーネとの対決の火ぶたが切られた。




「あの~ヨネーリさん・・・まだ幼い子供にそういう色仕掛けは私もどうかと思うのですが・・・」

「んも~、トレマール・・・あなたは私の味方でしょ~?

 こういう時は黙って応援するのが仲間ってものでしょ~?」

「いえ、しかし相手は子供です・・・そこまで餓えているとは・・・私も気づきませんでした・・・」

「ちっがーう。

 い~い?あの子供は将来有望になりそうな感じがするのよー。

 まだ小さい時に色々と教えてあげた方が良いじゃない?

 そ・れ・に・・・ここで出会ったって事は~どんな理由にしても、私にとっても必要な事なんじゃないかって思うのよね~?」

「そんな乙女チックな事を言うとはおも・・・」

「トレマールちゃ~ん。

 私・・・これでもまだ乙女だと思うんですけど~?」

「・・・大変失礼しました・・・」


 ヨネーリの言葉に冷や汗をダラダラ掻く様な幻覚を感じさせるようにトレマールはとても規則正しい礼をしながら謝った。


「(・・・なんなの、アレ?)」

「(女としても気持ちの問題だろう。

 お前の場合は・・・クリス君ほどではないにしても、子供って言われたらどうする?)」

「(ム・・・実際に私はまだ小さい・・・でも子供と言われるほど幼くは無いと思う・・・)」

「(そういう反応だ・・・。

 まあ、まだお前は幼い、これから成長するんだから、それは・・・まあ、そこまで気にしなくてもいいだろう・・・)」

「(やっぱり、私は幼い・・・の?)」

「(気にするな・・・これからだ。

 しかし・・・向こうはどうなんだろうな。

 ゴーストで見た目的にはおそらく止まっている可能性があるが・・・実年齢は相当・・・)」

「ちょっと~、そういうのは聞こえない様に話してくれない~?

 ケンカ売ってんのー?」


 声は穏やか、表情は笑顔・・・しかし・・・。

 明らかに殺意が混じっていた。


「と、とにかく、ヨネーリさんはそちらのお嬢さんの相手をなさる・・・という事でよろしいでしょうか?」


 トレマールは脱線し続ける話を切り替えるべく、テスを見てヨネーリに確認を取る。

 本能的にこの手の話のとばっちりを避けるためという事を隠しながら・・・。


「そ~ね~?

 どうも、あの子を手に入れるには、あの良い子ちゃんアピールして子供を(たぶら)かそうとしている、陰険女(・・・)が邪魔だろうし~・・・」

「陰険とは失礼ね~。

 私はそんなことをクリス君にやってませんよ~?

 どこかの色気(・・)を振りまくしかできないゴーストとはちがいますので・・・」


 見えない火花が散っている。

 それを感じたテス、ヨネーリの仲間は自然と2人から距離を離していく。


「・・・そ、それじゃあ、そちらは任せましたよ、ヨネーリさん?」


 一目散に伝える事だけを告げ、避難したトレマール。


「ヘレン、プリム」

「う、うん?」

「な、なに?」

「そっちは任せますね」

「も、もちろん。

 分かったわ・・・」


 ヘレン、プリムは何度も頷き退避して行った。


〔これは修羅場ですね~。

 モテモテですね、クリス?〕

「(・・・これがモテてる人が向かえる修羅場ってやつなのか?

 っというか、俺の場合は力がどうだとか、子供だからであって・・・そういうのとは違うと思うんだけど・・・)」

〔いえいえ、モテるとは常に、恋愛がイコールでもスタートでもありませんよ?

 何かしらの魅力があって、そこに興味や魅了された者が往々にして引き起こされるものなのですから・・・〕

「(いや・・・俺に魅力って・・・)」

〔自分を卑下して、鼻で笑ってしまっていますが・・・人というのはそういうものですよ。

 誰も、その人の存在を見ない、知らないでいる事なんて・・・そのものが在り続ける限り難しかったりしますからね~。

 むしろ、意図的に存在を消さなくちゃいけなかったりしますからねー・・・。

 そういう意味ではクリスという存在は、クリス自身を知れば知るほど、忘れろという方が難しいものになっているかもしれません。

 誰かに言われ``知らなかったことに・・・``というの暗黙の了解は逆に口には出さなくても強烈に記憶に残してしまうものですから・・・と脱線してしまいましたが・・・これは、これで私達にとってはまだマシな方でしょう。

 これだけの高ランクの冒険者が我々の存在を喋ったとしても、私達自身を知るものは限られる。

 ギルドや公の場で大々的に発表されていない事の方が都合が良いというものですよ・・・〕

「(・・・そう、なんだけど・・・)」


 クリスはどう答えたらいいのか複雑な顔をしながらテスとヨネーリを見る。


〔・・・あの2人は諦めましょう。

 クリスを思い、戦っている以上、なんと言おうと今のクリスはヒロインです〕

「(ヒロインというのはちょっと・・・)」


 何ともむず痒い扱いをされていて落ち着かないクリス。


〔仕方ないでしょう。

 あなたの人生は、あの2人によって今後がどうなるか別れてしまう・・・と、おそらく考えられているのでしょうから・・・。

 まあ強者同士の戦いになるのですから、そう考えてしまうのは自然でしょう・・・〕


 うんうん、と勝手に頷いて解決しているサポート。


「(・・・もしかして・・・楽しんでない?

 この状況を・・・?)」

〔とんでもない!

 まさか、この様なおもしr、いえ、事態になるとは私としても・・・〕

「(・・・・・・)」

〔と、とにかくクリス。

 こうなってしまっては、あの者に頼るほかないでしょう。

 クリスの実力がどの程度通じるのか分からないのですから・・・〕

「(あ、そっか、相手はゴースト・・・)」

〔はい。

 マナも持つ以上、クリスの攻撃も通じるとは思いますが、程度までは分かりません。

 テスの攻撃で、どれだけ今のクリスが高ランクの存在に通用するか見極めねばならないでしょう〕

「(・・・わかった)」


 ズシャ!


 何かを切り裂くような音がしてクリスは意識を目の前に戻した。


 そこには、細剣を軽く振り下ろし、下段に構えヨネーリを見るテスがいた。


「あまり私を無視しないでくれませんか?」

「そ~んなことしないわよー。

 ただ邪魔だったから・・・」

「幻覚でも起こさせよう・・・と、しましたか?」

「・・・っち、面倒ねー」

「これくらいじゃ効きませんよ?・・・ふふふ」

〔どうやら戦いは始まっていたようですね〕

「(気づかなかったな?

 幻覚って事は・・・誘惑とか、相手を混乱させるって事か?)」

〔・・・ゴーストという性質上に合った戦い方として、魔法による搦め手で来たのかもしれませんね〕

「(・・・搦め手でも魔法が使えることが羨ましい・・・)」

〔そんな無いものねだりしても仕方ないでしょう。

 それより、今は彼女達高ランクの冒険者の実力を見て色々と学んでいきましょう〕


 クリスは頷きながらも、テス達の戦闘を見ていた。


 音や姿と言った幻覚による魔法をヨネーリは駆使するがテスには全くと言っていいほど効いていないようで、ヨネーリが距離を大きく置いて魔法による直接攻撃に出ていることが多い。

 対するテスは逆にほとんど魔法関連は使わず、自身の身体強化で間合いを詰めようと接近する。

 その過程で、迫ってきた魔法を切り裂いたり、あるいは避けたりしながら、差を縮め、直接攻撃を与えようと何度も間合いを詰めた。


 逃げ、遠くから狙うヨネーリと、邪魔は切り裂き、追いかけ直接を狙うテス。

 それが何度も繰り返されていた。


〔まだ、どこかでお互いに力を出し切っていないようですね。

 小手調べといった所でしょうか・・・?〕

「(今の所、動き自体は普通に見えるな・・・)」

〔ええ、おそらく一般の方には少々、目で追いきれない所もあるでしょうが私達には問題ないようですね・・・。

 まあ、あれくらいならマイク達もすぐに追いつけるでしょう・・・とすれば〕

「(ここからが高ランク冒険者としての実力か・・・)」


 クリス達はより真剣になって戦闘するテス達を見る。


「では・・・私達も始めましょうか?」

「お手柔らかに・・・」

「私達はココの主を倒しに来ただけ。

 ・・・それ以上の面倒は・・・ごめん・・・」

「ええ。ですから、すんなりと通してもらえないかしら?」

「御冗談を・・・。

 私はこの城の主、デルト様の使いですよ?

 侵入者の皆様をお出迎えするのが私の務めです・・・。

 立ち去っていただけるのなら無理に追いはしませんが?・・・」

「それこそ冗談」

「スタンピードを意図的に起こされる以前に・・・その前からこの近くにある村々を襲っている以上、黙って見過ごす段階ではもうないのよ・・・」

「・・・そうでした。

 お互い・・・こんな事でなければ、相対する事はなかったかもしれませんね・・・」

「ええ・・・残念ね・・・」

「・・・」


 トレマール、ヘレン、プリムは会話しながらも静かに体内のマナの出力を上げていた。

 クリス達はそれにも、もちろん気付き、離れた場所から観察する事にした。


〔この戦い次第でクリスがどこまで対応できるかが問われますね・・・〕

「(さっきも言ってたけど別に戦うとは限らないからね?・・・)」


 どこか他人事感が離れないクリス達だった。







【クリス】5才 人間(変化)

 レベル 19

 HP 224 MP 201

 STR 89

 VIT 80

 INT 92

 RES 81

 DEX 84

 AGI 88

 LUK 56

『マナ性質:レベル 1』『強靭:レベル 1』『総量増加:レベル 5』

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