101 動き出している色々・・・そして・・・・・・え、目立ってます?
「確かに渡したぞ?
これだけいれば文句ないな?」
「ふふふふふ・・・十分だ。
それで・・・これは、俺の言う事を聞くのだな?」
「ああ。
前回はまだ調整段階のモノをお前の部下が勝手に持ち出して暴走したのだろう。
部下が死んだのは忠告を受けなかった奴が悪い」
「ああ、気にするな。
奴は私の駒の1つにすぎん。
(もちろん、いずれはお前達もそうなるかもしれんが・・・)
ここまでの助力には感謝しておく」
「ふん、心にもない事を・・・。
それで、予定通りに向こうの王都を攻め落とすのか?」
「いや、まずは境界の破壊が先だな。
友好関係とは言っても所詮こちらは敗戦国。
昔作り上げられた、あの大きな要塞と化した砦と門を徹底的に破壊する事こそが我らの民と戦場に赴く兵士共の士気を一気に上げてくれる」
「時間をかけ過ぎれば、他の国にいる英雄達が動き出すぞ・・・」
「そうならないために、ゾンビによるスタンピード騒動が起こっている内に破壊し進軍するつもりだ。
たとえ向こうの友好国でも簡単に自軍の切り札をそうそう簡単には動かせない。
動くとしたら、その者達の独断という事になる。
それで自国に別の国が攻め入られては堪ったものではないからな~・・・」
「一応、奴らは厄災、災害に備えての側面があることを忘れるな。
このモンスター共がそれに該当すると向こうが判断すれば条約上、国が動いても問題ないと、みなされないからな?」
「分かっておる。
・・・いつまでも、ここで立ち話している時間はない。
私は向かうぞ」
「これを持っていけ。
念のための制御用だ。
これがある内は何かしらの暴走でもお前の指示が優先される」
ツェーゲンは腕輪の形をした半透明の金属板の水晶を渡した。
「気を付けろ。
これが壊れ、向こうが幻惑魔法を使えばただの暴れるモンスターだからな」
「肝に銘じておこう・・・。
・・・しかし・・・私は見るのは初めてなのだがこのようなモンスターがいるのか?」
「実験して作った存在だ。
いくつかのモノを融合させている複合体だ。
そもそも、自然に生まれてくるものとは歪になる」
モダンメストは、体にいくつもの触手の様な黒いものを体に巻き付けた、頭が牛の様なしかし体は別の獣の様なモンスターを見て質問した。
他にも豚、羊など・・・もとは人の顔していたのか形だけはそれらしくは見えるが半分近くが内側から膨れ上がり醜い姿に変化した生物達。
「俺の方も用事がある。
後は好きに使え」
ツェーゲンはそれだけを残し森の奥へと消えていった。
「(まだ、何か隠していそうだが・・・まあ、今はいいだろう)」
ツェーゲンが去ってすぐに別の方向からローブを羽織り顔を隠した男が現れた。
「モダンメスト様、よろしいので?」
「かまわん・・・あ奴らは十分に役立ってくれている。
今はこれで良しとしよう・・・。
それで、例の方は・・・?」
「相応の金と暮らしを貰えるのなら受けてもかまわないと・・・」
「・・・腐っても元英雄・・・使えるなら使うか・・・。
こちらの手駒として働いてもらう・・・もし、邪魔なるようなら機会を見て、あ奴らにぶつけ同士討ちにさせろ。
瀕死になった所にトドメを刺して、この証拠をもみ消せ」
「はっ」
ローブの男はすぐにどこかへと走り出していった。
「・・・ついてこい!
好きなだけ暴れさせてやる・・・。
さあ、始めるとするか、ワタシの未来のために・・・」
ドガンッ・・・バキンッ・・・・・・ッドオオオオォォォォォォォン~・・・・・・。
「・・・もう少し離れて戦いたい」
「・・・そうだな。
これじゃあ、くだらねえ巻き添えで、せっかくの戦いが興ざめになる」
イスカとダルゾは、隣で楽しそうに戦う1人の男と、同じく笑ってはいないが楽しそうに戦う2つ目のサイクロプスから独自進化した男、ゴクガスと戦っていた。
「・・・あれはホントにサイクロプス?
動きが俊敏だし・・・2つ目だけど・・・?」
「別にサイクロプスが1つ目だけとは聞いてないけどな。
ただ・・・あいつの強さは独自に進化した過程でそうなった・・・とは聞いている」
「ふーん・・・」
さして興味が無さそうな口調なイスカだが、本人にとってはかなり関心を持っていた。
そんな話をしながらもイスカとダルゾはどんどんと砦の門から離れていく。
暴れているトウジロウ達のせいで、門の周囲は破壊され瓦礫と化していので巻き添えを喰らわないために・・・。
その結果、トウジロウ達の周囲の地面が抉れたりと、どんどん更地にされていく。
・・・もはや砦の入り口は消失していた。
砦の門があった場所、半径20メートルほどが2人の争いで無くなっていた。
門が無くなり砦の中がむき出しになっていて、簡単に入れるくらいにボロボロになっている。
しかし・・・。
「・・・まだマシな方・・・」
イスカは砦が一部崩壊した現状を見て言う。
「まだ、実力を確かめ合ってる・・・って所か・・・良いね~。
俺もあんたに期待していいのか?」
「あれぐらいなら・・・」
「はっ・・・これは楽しみ・・・」
時間は夕方から徐々に日が沈み始めていく。
イスカ達は森の中の暗闇に向かう様にして、誰もいない場所へと移動していく。
「・・・~っはっはっはっはっはー、面白れぇじゃねえかお前。
ここまでの力を持っていて、何でこの城の主に協力してる?
もっと、外に出ればつえぇ奴とかいくらでもいただろうが・・・?」
「我は確かに強い奴を求めている・・・しかし、わが配下にそれを望んでいる物も多くはない」
「お前だけが外に出る事に問題でもあんのか?」
「・・・わが部族は少ない・・・故に、この我が儘を我個人が通すことは出来ない。
我は一族の代表でもあるからな・・・。
たまたま、そこにデルトが現われ、協力関係が出来たにすぎん。
それに・・・奴のおかげで、我が一族は絶えることは無くなった。
だからこそ、我個人の願いとデルトの目的がたまたま、今回重なっただけだ・・・」
「・・・まあ、運ってのはままならねえからな・・・。
だが・・・今回、俺が相手してやってんだ。
期待を裏切らせねえつもりだぜ?」
「ああ、先ほどの小手調べである程度は理解したつもりだ。
全力を持って・・・殺してやる・・・!」
トウジロウに向ける殺意が一層強く濃いものへと変化した。
それを受けたトウジロウはますます歯を見せ楽しそうになる。
「じゃあ、続き・・・・・・始めようか・・・?」
「!・・・これは・・・」
「たぶん先生です。
あの人は戦う時、常にマナを抑えて戦っているのですが・・・今回は、相当相手も強いという事でしょう・・・」
微かな振動が砦内を調査中のメルム達にまで届く。
そして、そこへ荒れ狂うマナがメルム達にまで届き、通り抜けていく。
「ここまで凄いと、たとえ遠くてもハッキリと分かるもんですね・・・」
「メルムさん達は凄いですね。
私はそこまでハッキリとは先生たちのマナを感じ取れなくて・・・」
「戦いが始まって少し経ちましたから・・・それに、私達もずいぶん奥に来てしまいましたし、ここまで来ると流石に私達も感じ取れるマナは微量でしかありませんよ・・・」
ゾッドがカレンにフォローを加える。
小手調べで戦っていた最初は、そこまでのマナは感知していなかった。
また、メルム達も入り口に近かった所ではそこまで気にしてはいなかった。
戦闘音とマナから流れてくる気配には危険な感じがそこまでしなかったからだった。
しかし、今、遠くに離れた現在。
お互いが命を懸けた本気の戦いが行われたことでマナの中にある雰囲気が急に殺意の籠った鋭いものへと変化した。
それが強ければ強いほど、内包している者の強さ、能力の高さがあるという事。
そして、高ランク・・・Aランクに入るトウジロウが出したものとなれば・・・メルム達、魔法タイプの者達はたとえ数百と離れていても感知してしまう事がある。
カレンはマナを感知しているわけではなく、それに近い解釈にもとれる気配によって何となく分かっているだけである。
マナほど見えたり明確ではないが、その者が持つ``氣``・・・エネルギーの1つが、自身の中にあるエネルギーによって感じ取っているのである。
自然界にあるマナと似ているがどうも、理に多少の差異があるらしく、一部の学者の中ではちょっとした研究対象に扱われることもあったりする。
しかし、その氣も、カレンにはかなりあやふやで未だにしっかりとは習得しているわけではなかった。
トウジロウ曰く、身体強化の中にあるものだというらしいが・・・まだ修行中。
だからこそ、メルム、カイル、ゾッドの3人が感知できていることに内心、カレンは関心と驚嘆を覚える。
自分には未だできないことが3人には別の方法でも理解できているという事が・・・。
「(まだまだ修行中とは言いましても・・・これでも高ランクの仲間入りしているのに・・・。
上に行ってる人達はこんな化け物だらけなのでしょうか・・・。
私も、もっともっと頑張らなくちゃ・・・)」
密かな決意と意欲を燃やすカレン。
「(・・・でも、ちょっと気になる・・・)
あの・・・皆さんは・・・今回、参加した子供・・・クリスという子をどう思いますか?」
カレンは気にならずにはいられなかった。
自分の師匠である人ですら、確信を持てない者。
しかし、マナの能力だけは今回の冒険者達の中では1番と言われるほどの子。
全く、自分には理解できなかった子供の事を、自分よりも経験も実力も上だろう3人に確かめずにはいられなかった。
「カレンさんやイスカ達が話していた事ですよね?
・・・正直、私は分かりませんでした。
あの子のマナはかなり小さくて・・・それ以上は何とも・・・」
「ただ、小さいだけだったらギルド長も推さない。
だから、彼には何かあるとは思いましたが・・・」
「ええ・・・正直、カレンさんの先生のトウジロウさんやボールドさん。
あの2人が話題にするまで気にはしても戦力としては全く考えていませんでした。
外周班のウチのパーティでも、分からないんじゃないでしょうか?」
「・・・やっぱり、そこまで感じられないと?」
「・・・大体の幼い子供の中でもかなりマナの素養が無い子なのかと・・・」
「詳しく調べようにも・・・無理やりはマズいですし・・・」
「私達も魔法系、遠距離タイプです。
だから感知系で調べたりするのですが・・・ほとんど感じ取れなかったので・・・やはり、彼は特殊能力を持っていて、今回の依頼の案内役だとばかり・・・」
「でも・・・先生は気付いた・・・いえ、何となく気付けただけ・・・」
「・・・どういう生き方をしてきたのかは不明ですが・・・もはや、ただの子供では踏み込めない場所にいるのかもしれませんね・・・彼」
「今回はともかくとして・・・あそこまでの子を誰も知らないというのは、おかしな話ですけどね」
「いずれは勇者出なくても英雄になれる可能性の高い子ですからね~・・・。
誰かが自分の組織に引き入れそうですけどね?
無理やり勧誘なんかして・・・」
「子供だから分からず、それを良い事に・・・って事ですか?」
「・・・ま、条約に則っているからと言って、道理を超える様な事をすれば別のどこかから文句が出るから、大きな問題として目立つ前に避けるとは思うけど・・・」
「貴重な人材を放置できるかは・・・怪しい所ですね・・・」
「・・・ボソッ(もしかして、テスはそのことも考えて?・・・。
あ、いや違うな。
彼女は単純に子供が好きだったから、こんな仕事に参加させられた子供を気遣ってかな・・・)」
カレン達の会話にゾッドはクリスの今後について先に手を打ち、助けるためにテスが動こうとしている可能性を考える。
自分の傍ならいくらか擁護できると考えて、今回の仕事の後に、保護という扱いで、厄介な連中の勧誘から守るために・・・。
しかし、子供が好きという側面が強い事を改めて思い出し、考えを中断した。
「・・・では、誰も彼の存在も名も知らなかったのですね?」
「はい・・・同じような名前ならたくさん聞いたことがありますが・・・子供となると・・・」
「同じく・・・ですね」
「そう・・・ですか・・・」
ますますクリスというイレギュラーに考えさせられながらもカレン達は砦の中でひと際大きな部屋に出る。
「ギヒヒ・・・俺様が相手するのは誰だ・・・?」
大広間の中央ではギルフが部下達とカレン達を待っていた。
【クリス】5才 人間(変化)
レベル 19
HP 224 MP 201
STR 89
VIT 80
INT 92
RES 81
DEX 84
AGI 88
LUK 56
『マナ性質:レベル 1』『強靭:レベル 1』『総量増加:レベル 5』




